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会社の登記には特別な資格が必要? 設立時に士業に頼る場合の費用を解説

会社設立の登記をするには資格が必要?

会社(法人)を設立するにあたり、会社として法的に登録する「登記」という手続きを行います。

「登記」とは、手続きに関する法律によって、法人や不動産などを公的に登録することを言います。

会社登記では、商号(社名)や本社所在地、代表者の氏名と住所や、事業目的など、取引を行う上で重要な会社に関する情報を、法務省の一部局である法務局に登録し、一般に開示します。

設立する会社の概要を公表することで、社会的信用を得、安心して取引してもらえるようにすることができます。

会社(法人)には、株式会社、持分会社(合同会社、合資会社、合名会社)、一般社団法人、一般財団法人、特例有限会社、NPO法人などがあり、それらすべてについても法人として活動し、権利・義務関係を守るために登記を行う必要があります。

登記された会社には、法務省から「登記事項証明書」が発行されます。

また、登記事項は誰でも自由に閲覧できるので、取引先の情報確認として用いられるものです。

このように会社設立の際に重要な手続きである会社登記ですが、登記をするのに特に必要な資格はありません。

自分で登記する人や知り合いなどに頼む人もいます。

しかし、登記を行うには登記に関する知識も必要になりますし、役所とのやり取りや連絡などの時間も割かなければなりません。

今は安価な代行サービスも増えていますので、そういったサービスを利用するのも有効な選択肢と言えます。

なぜ専門家に依頼する人が多いの?

一言でいえば、登記が役所相手の煩雑な作業であり、知識や時間も必要になるということが、登記の代行を頼む人が多いことの理由と言えます。

具体的にどのような準備が登記に必要になるのかという点を交えながら、専門家に登記を依頼するメリット、依頼しない場合に生じるデメリットを見ていきましょう。

知らない知識が多いから

自分で登記する場合のメリットは、専門家に依頼するコストを抑えることができる点にありますが、逆に言うとそれ以外の点でメリットになることはあまりないと言われています。

専門家でないのであれば、必要な知識がない状態でのスタートとなり、勉強する時間が必要になったり、問題が発生したりすることも考えられます。

コストパフォーマンスがよいから

自分で登記する場合の最大のデメリットは、時間がかかることだと言えます。

必要書類の準備や、記載事項に不備があった場合の訂正、法務局への出向や連絡など、登記にはかなりの時間や手間がかかることが想定されます。

また、知人に頼む場合も無料という訳にはいかないでしょうし、間違いが起きた場合の責任の問題も生じます。

専門家に登記を依頼した方が、より短期間で会社を設立することができ、依頼側としてはかかる時間も労力も最小限に抑えることができます。

登記の委託にかかるコストを必要経費と捉え、正確に登記の作業を進めてくれる代行サービスを利用することは、非常にコストパフォーマンスの良い手段だと言えます。

用意するものが少なくてすむから

登記には、提出する書類の準備が必要です。

必要な書類は、「設立登記申請書」や「定款」だけでなく、「登録免許税納付用台紙」「発起人決定書(発起人が複数の場合は発起人会議事録)」「代表取締役等の就任承諾書」「取締役の印鑑証明書」「印鑑届書」「出資金の払込証明書」があります。

登記の手順としては、これらの書類をそろえ、本店所在地の管轄法務局に登記申請を行う、という流れになります。

定款とは、会社(法人)の目的、組織、活動などについて定めた基本規約のことで、会社設立に必ず必要な書類の一つです。

定款を準備するには、記載しなければならない必要な情報などについても知識が必要ですが、こうした必要書類の作成・準備も専門家に任せることができます。

士業に依頼する場合の費用比較

行政書士は10万円程度

行政書士は、会社設立に必要な書類を作成したり、許認可取得を代行してくれます。

許認可の手続きは、建設業、運送業、飲食業などの業種で必要となるものです。

登記の手続きそのものは行ってくれませんので、自分で行う必要があります。

司法書士は20万円程度

司法書士は、唯一法人手続きの代行ができる専門家です。

許認可の申請が必要ない場合であれば、会社設立に必要な書類の作成から、登記の手続きまで、一連の作業をすべてお願いすることができます。

税理士は10万円弱

税理士には、主に税務関係の届け出書類の作成・提出を代行してもらえます。

登記手続きや定款作成などは行ってもらえませんので、自身で行うか司法書士に依頼する必要があります。

会社設立後も、税理士には税務に関する相談をすることができます。

補足として、社会保険労務士には、会社設立時に必要となる社会保険や雇用保険などに関する手続きを代行してもらえます。

また、助成金の専門家なので、助成金申請の相談をしたい場合も社会保険労務士にサポートをお願いするといいでしょう。

専門家に依頼しなかった場合の失敗例

立ち上げた会社を成功させるために、会社の設立・運営においてによくある失敗例からも学ぶことは多くあります。

ここでは、二つの失敗例を紹介したいと思います。

後先考えず本店住所を指定してしまった

Aさんはある会社の代表を務めており、さらに融資を受けるために2社目の会社設立をすることにしました。

事業を拡大する際、一つの会社を大きくするだけでなく、会社を分社化する(「別会社」を設立する)方法です。

その際、2社目の本店住所の項目に、実家の住所を登録しました。

1社目と2社目で異なる住所にしたのは、金融機関から1社目の別会社を設立したことが知られないようにするためでした。

しかし、税務署や取引先の書類が送られてくるのは、登録された住所のある実家です。

実家の両親にいちいち届いた書類の確認や送付を頼まなければならなくなってしまったそうです。

これでは連絡の手間も時間もかかりますし、なによりビジネスの世界において非常に重要なスピードや効率の面においてマイナスとなります。

解決策としては、本社住所を変更したり、名刺に営業所として書類を受け取りやすい住所を記載する、といった対応策を講じることはできます。

しかし、最初から効率よく事業を回せるように、本店住所に登録・名刺に記載する住所についてあらかじめ考えておく必要があった例だと言えるでしょう。

金融機関への頼り方がわからない

金融機関との付き合い方も、会社の運営にとって重要です。

起業後に金融機関から融資を受けるケースは多いと思いますが、金融機関に相談に行くタイミングは、「早すぎても遅すぎてもいけない」と言われています。

早すぎるというのは、資金がまったくなく事業計画も不十分という状態では、金融機関に融資の相談をしても、話をまとめるのは難しいでしょう。

また、事業が赤字続きになり資金繰りに困ってから、ほかに手立てがないから相談しよう、というのでは遅すぎると言えるでしょう。

金融機関への相談のタイミングとしてベストなのは、事業が「軌道に乗り始めた時」「上がり調子の時」です。

事業が軌道に乗っている時には、金融機関もあなたへの融資をビジネスチャンスとして捉えて、交渉もまとまりやすくなります。

こうした会社の立ち上げ、運営における失敗も、あらかじめ専門家に相談することで防げたり、回避する知見を得ることができます。

困ってからでは遅い、というケースもありますので、事前に専門家とのつながりを持っておくことが重要だと言えます。

まとめ

これまで、会社の登記や、登記を専門家に依頼する際のメリットや費用などについて解説してきました。

専門家への依頼は一見高額にも思えるかもしれませんが、自分でやるよりもコストパフォーマンスが高い選択だということができます。

また、あらかじめ専門家とのコネクションを作っておくことで、専門家に相談することなく会社登記や運営を進めたときの失敗を回避することもできます。

起業して成功するのは当たり前ではなく、むしろ失敗する例の方が少なくありません。

少しでも成功する可能性を高めるために、専門家をうまく使うことは非常に重要な選択肢であると言えます。

企業を考えている方には、事業成功のために、ぜひ一度専門家へ相談してみることをおすすめします。