株式会社を設立する際には出資者や代表取締役がどんな責任を負うことになるのか知っておくことは大切です。
損害賠償請求を受けるようなケースもあるため、どんな責任を求められるのか正確に理解しましょう。
この記事では株式会社設立で負うことになる責任について詳しく解説します。
目次
株式会社設立で出資者は有限責任を負う
株式会社の設立で出資者が負うことになる有限責任について解説します。
株式会社は有限責任
株式会社の出資者は有限責任を負います。
法人形態の中では株式会社と合同会社が有限責任です。
一方、合名会社や合資会社の場合は無限責任とされています。
有限責任と無限責任では会社の債務についての責任の範囲が異なっているのです。
有限責任では所有する株式の価格を限度とした責任しか負わない
有限責任の場合は所有している株式の価格を限度とした責任のみを負います。
仮に会社が借金を返済できずに倒産したとしても、株式の価格分のお金を損するだけです。
株主個人に会社の借金の責任を問われることはありません。
有限責任のため不特定多数の人が安心して資本参加できる
株式会社では株式を公開し不特定多数の人から株式を購入してもらうことで資金を集められます。
その際に株主は有限責任のため、安心して株式を購入できるのです。
このような仕組みのため、株式会社では不特定多数の人に気軽に資本へ参加してもらうことができ、多くの資金を調達できます。
株式会社の出資者は経営には参加しない
株式会社の大きな特徴として所有と経営の分離があります。
株式会社の所有者は株主です。
一方、実際に会社の経営に携わるのは株主が選んだ取締役です。
株主は出資するだけであり、会社の経営はプロである取締役に委任します。
ただし、出資と経営が分離しているのは主に大企業です。
株式譲渡制限会社の場合は定款により取締役や監査役の資格を株主に限定することができます。
そのため、日本の多くの中小企業では株主が経営に参加しているのが一般的です。
株式会社で融資を受ける際には注意する
株式会社で融資を受けたいときに注意するべき点を紹介します。
融資を受ける際に経営者個人が連帯保証人になるケースがある
株式会社が融資を受ける際には経営者個人による連帯保証を求められるケースがあります。
特に中小企業の場合は、信用が低いために経営者個人が連帯保証人にならないと融資を得られないケースが多いです。
中小企業は資金面で信用が低く、財務や会計などについてもあまり信用されていません。
金融機関にとっては融資のリスクがあるため、もしものときを考えて連帯保証を要求するのです。
連帯保証人になれば無限責任を負うことになる
融資の際に経営者個人が連帯保証人になると無限責任を負うことになります。
この場合は、株式会社が倒産して借金が残っている場合に、連帯保証人である経営者個人にまで借金返済の責任が求められるのです。
経営者個人で払いきれない場合は、個人の財産を処分してでも借金返済することが要求されます。
それでも返済できない場合は、最後の手段として自己破産しなければいけないケースもあるのです。
融資の条件として連帯保証人を求める金融機関は多い
株式会社は有限責任のため、経営者にとってリスクが少ないとされています。
しかし、現実的には株式会社が融資を受ける際の条件として連帯保証人を求められるケースは多いです。
連帯保証人を要求する金融機関はたくさんあるため、株式会社といっても実質的には無限責任になってしまう場合が少なくありません。
創業融資ならば連帯保証人を求められない
連帯保証人を用意せずに融資を受けられる制度として創業融資があります。
日本政策金融公庫の提供する創業融資であれば、担保も保証人もなしでまとまった融資を得ることが可能です。
創業して間もない企業を対象とした制度のため、資金繰りに苦しい時期に多くのお金を得られるチャンスがあります。
ただし、審査に通らないと融資を得られないため、しっかり対策することが大切です。
創業融資の利用で不安を感じている方は経営サポートプラスアルファにお任せください。
税理士法人の経営サポートプラスアルファがしっかりと創業融資利用のサポートをいたします。
株式会社の代表取締役は損害賠償請求を受けるケースがある
株式会社の代表取締役が損害賠償請求を受けるケースについて説明します。
代表取締役は適切に業務を遂行する責任を負う
株式会社の代表取締役は業務を適切に遂行する責任を負っています。
株主により経営業務を委任されているのが代表取締役です。
そのため、会社の利益を高めることに貢献することが求められています。
代表取締役には代表権と業務執行権という強い権限が与えられており、会社に関するあらゆる業務を行うことが可能です。
そのため、代表取締役が適切に業務を進めることができないと会社経営は破綻します。
代表取締役は大きな責任のある役職なのです。
代表取締役が株主から株主代表訴訟を受けるケースがある
代表取締役はさまざまな意思決定や行動をすることができます。
その結果として、会社に大きな損害を与えるケースも少なくありません。
その際に株主は所定の手続きを経た上で会社役員に対して責任を追求する訴訟を提起できます。
その制度が株主代表訴訟です。
株主代表訴訟の大きな特徴は裁判所に支払う手数料が一律13,000円という点です。
高額な賠償請求をする場合でも手数料は変わらないため、容易に訴訟提起できるようになっています。
また、一株でも保有していれば株主は訴訟提起が可能です。
株主代表訴訟では損害賠償責任の範囲を会社が被った損害のすべてと規定しています。そのため、損害賠償金はとても高額になりやすいです。
代表取締役は第三者に対して損害賠償責任を負うケースがある
代表取締役は株主からだけではなく第三者から損害賠償請求を受けるケースがあります。
会社の業務によって第三者に損害を与えるケースがあるからです。
悪意あるいは重大な過失があったとみなされると損害賠償が成立します。
第三者が会社だけではなく代表取締役個人に対しても損害賠償を請求できるのです。
代表取締役が実質会社の所有者である場合は株主代表訴訟は発生しない
日本の多くの中小企業は制限譲渡会社であり、会社の株主が役員を兼ねているケースが多いです。
代表取締役が会社の株主の51%以上を所有しており、他の株主も役員が占めているケースは少なくありません。
このような会社の場合は、そもそも株主代表訴訟をする状況になりにくいです。
特に代表取締役が会社の株をすべて所有している場合は、株主と役員が同一のため株主代表訴訟は発生しません。
代表取締役が責任追及される具体例
代表取締役が責任追及されるケースはたくさんあります。たとえば、下記のような事例があるのです。
- 代表取締役の指示のもと資産運用をして会社が大きな損失を被った
- 食品産地の偽装工作に代表取締役が関与していた
- 従業員が過労死して代表取締役の管理責任が問われた
代表取締役が直接指示をして会社に大きな損失を与えた場合は責任を追求されます。
また、代表取締役が中心となって偽装工作など違法な行為をしていた場合も厳しく責任を追求されるでしょう。
従業員が過労死したようなケースでも、代表取締役には管理者としての責任が問われるため、遺族から訴訟を提起される場合は多いです。
株式会社の代表取締役には義務がある
株式会社の代表取締役に求められる義務について紹介します。
代表取締役には善管注意義務がある
代表取締役は善管注意義務を果たす必要があります。
善管注意義務とはその人の能力や社会的地位などから考えて期待される注意義務のことです。
常識的に払うべき注意義務のことであり、注意義務を怠った結果として履行遅滞や不完全履行、履行不能などが起これば過失があるとみなされます。
取締役はプロとして業務を進める必要があるため、期待される能力水準に見合う注意が求められるのです。
仮に取締役がITの専門家として招聘された場合は、専門分野に関してはより高度な水準で注意義務を果たすことが要求されます。
善管注意義務が問われるケースとしては、法令違反の行為をすることや監視・監督義務を怠ること、経営判断の失敗などです。
代表取締役には忠実義務が求められる
忠実義務とは法令や定款、株主総会の決議を遵守して会社に忠実に職務を全うすることです。
したがって、善管注意義務とよく似た概念といえます。
裁判では、善管注意義務をより明確にしたものが忠実義務とされていて、両者の義務は本質的に同じものとされています。
忠実義務から発展して下記の3つの義務が取締役に要求されます。
- 監視義務
- 内部統制システムの構築義務
- 株主の共同利益に配慮する義務
監視義務とは定款や法令などに遵守した業務が行われるように監視することです。
また、取締役には内部統制システムを構築する義務もあります。
業務の有効性や財務報告の信頼性、資産の保全などを達成するために構築するのが内部統制システムです。
株主の共同利益に配慮する義務とは取締役は株主の利益を最大化することを目指すべきで、会社の利益のみを優先させてはならないとすることです。
代表取締役が義務を果たさなければ解任議案が提出されるケースがある
代表取締役が義務を果たさないと解任を迫られるケースがあります。
取締役会で取締役解任のための株主総会の決議を行い、株主総会で取締役解任の決議をするのです。
ただし、株主総会で決議しなければ取締役の解任はできないため、代表取締役の議決権が50%を超えている場合は解任が困難になります。
このケースでは、株主が裁判所に解任の訴えを起こすという選択肢があります。
しかし、裁判で勝訴して代表取締役が解任されても、株主総会で自身を再任することは可能です。
一方、代表取締役の議決権が半数以下の場合は、株主総会の決議で簡単に解任できます。
善管注意義務に違反した場合は再発防止策を講じる必要がある
代表取締役が善管注意義務に違反した場合は、損害賠償請求を受けます。
それだけではなく、会社として再発防止策を講じることも要求されるのです。
たとえば、取締役同士の相互監視を強化する、社内のコンプライアンスチェック体制を整備するなどです。
顧問弁護士など専門家と協議して対応を考えると良いでしょう。
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