会社設立を考えたとき、「行政書士に頼んでいいの?」「司法書士とどう違うの?」と迷う方は少なくありません。
行政書士は、定款作成・許認可申請・補助金申請書類の作成など、会社設立にまつわる幅広い書類業務のプロです。
ただし、法務局への登記申請だけは行政書士が行えない業務であるため、依頼の前にその点を理解しておくことが重要です。
この記事では、行政書士への依頼で何ができるか・何ができないかを整理したうえで、費用相場・流れ・選び方までを徹底解説します。
📋 この記事で分かること
- 行政書士が会社設立で「できること」「できないこと」の違い
- 司法書士・税理士など他士業との役割分担
- 行政書士に依頼する具体的なメリット(許認可・補助金含む)
- 費用の内訳と自分で手続きした場合との差額
- 失敗しない行政書士の選び方4つのポイント
目次
行政書士とは?会社設立で担える業務の範囲
最初に、行政書士の役割と他士業との違いを理解することが重要です。
行政書士の主な役割
行政書士は、官公庁に提出する書類の作成・手続き代行を専門とする国家資格者です。
会社設立においては、以下の業務を中心に担当します。
- 定款の作成・電子定款認証代行(収入印紙代4万円の節約が可能)
- 許認可申請の代行(建設業・飲食業・運送業など業種別の申請)
- 補助金・助成金の申請書類作成(創業融資の事業計画書サポートを含む)
- 各種契約書の作成
- 法律改正に伴うアドバイス
書類作成と申請手続きにかけては行政書士が最も幅広く対応できます。
一方で、法務局への登記申請代理は司法書士の独占業務であるため、行政書士単独では対応できません。
行政書士と他士業の違い
| 専門家 | 会社設立で担える主な業務 | 登記申請 | 許認可 | 税務 | 労務 |
|---|---|---|---|---|---|
| 行政書士 | 定款作成・許認可・補助金申請 | × | ○ | × | × |
| 司法書士 | 登記申請・定款作成 | ○ | × | × | × |
| 税理士 | 税務顧問・開業届・節税アドバイス | × | × | ○ | × |
| 社労士 | 労働保険・社会保険手続き・就業規則 | × | × | × | ○ |
多くの行政書士事務所は司法書士と提携しており、定款作成から登記完了まで一括で依頼できる体制を整えています。
依頼前に「登記まで対応可能か」を確認するのが重要なポイントです。
行政書士に依頼した場合の会社設立フロー
行政書士に依頼する場合、以下の流れで会社設立します。
①登記に必要な事項と印鑑の準備
会社設立に先立ち、以下の基本事項を事前に決めておきます。
行政書士と打ち合わせながら決定するケースが多いですが、大枠は依頼前にイメージしておくとスムーズです。
- 商号(会社名)
- 本店所在地
- 事業目的(定款に記載する内容)
- 資本金の額と出資者
- 役員構成
- 事業年度
- 会社の種類(株式会社・合同会社など)
また、代表者の個人実印と印鑑証明書、および法人用の印鑑(代表者印)の準備も並行して進めます。
②定款の作成と認証
行政書士が定款を作成し、株式会社の場合は公証役場で認証を受けます。
電子定款を利用することで、紙定款で必要な収入印紙代4万円が不要です。
合同会社の場合は定款認証が不要なため、この工程は省略されます。
③資本金の払込
定款認証完了後、発起人の個人口座に資本金を払い込みます。
通帳のコピーが「払込証明書」として登記申請時に必要になるため、手続きが終わっても通帳は保管しておきましょう。
④必要書類の作成と登記申請
行政書士が登記申請に必要な書類一式を作成します。
法務局への登記申請自体は提携司法書士が代行するため、確認が必要です。
設立から登記完了まで通常7〜10営業日程度かかります。
⑤登記完了後の諸手続き
登記が完了しても、事業開始に向けてさらに手続きが必要です。
税務・労務の届出は行政書士の業務範囲外であるため、提携の税理士・社労士に引き継ぐか自分で対応します。
| 届出先 | 主な手続き | 担当専門家 |
|---|---|---|
| 税務署 | 法人設立届出書・青色申告承認申請書 | 税理士 |
| 都道府県・市区町村 | 法人設立届出書 | 税理士 |
| 年金事務所 | 健康保険・厚生年金保険新規適用届 | 社労士 |
| 労働基準監督署 | 労働保険成立届(従業員雇用時) | 社労士 |
行政書士が会社設立において行える業務とは
続いては、会社設立において行政書士が対応できる業務範囲を紹介します。
許認可の申請
建設業・飲食業・運送業・介護事業など、特定の業種で事業を始めるには行政からの許認可取得が求められます。
行政書士は許認可申請の書類作成・申請代行ができる唯一の専門家(独占業務)です。
許認可は1回取得すれば終わりではなく、定期的な更新が必要なものも含まれます。
設立時から関係を持っておくと長期的に心強い存在になるでしょう。
定款の作成と認証代行
会社のルールブックである定款の作成は、法的な要件が多く、ミスがあれば公証役場での認証が通りません。
行政書士は定款作成の専門家として、事業目的の適法性・明確性を確認しながら仕上げます。
電子定款に対応している行政書士に依頼することで、印紙代4万円の節約が可能です。
補助金・助成金の申請書類の作成
行政書士の中には、創業融資(日本政策金融公庫など)の事業計画書作成支援や、国・自治体の補助金申請を専門とする方もいます。
会社設立時に活用できる主な制度として以下があります。
- 小規模事業者持続化補助金
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
- 事業承継・引継ぎ補助金
- 地域雇用開発助成金
なお、厚生労働省管轄の助成金申請は社労士の業務範囲です。
補助金(経済産業省管轄)は行政書士が対応可能ですが、助成金については社労士への依頼が必要です。依頼時に確認しておきましょう。
契約書の作成
取引先との業務委託契約書・秘密保持契約書・利用規約など、会社運営に必要な各種契約書の作成も行政書士に依頼が可能です。
設立初期から法的に整った書類を整備しておくことで、トラブルの予防になります。
法律改正時のアドバイス
会社法・各種許認可法令は定期的に改正されます。
顧問契約を結んでいる場合は、法改正に伴う定款変更や許認可の更新対応についてもアドバイスを受けられます。
会社設立に必要な許認可とは
会社設立には許認可が絡むことがあり、行政書士が大きな役割をになることもあります。
許認可の種類
許認可には以下の5種類があり、業種によって必要な手続きの種類と申請先が異なります。
| 種類 | 概要 | 例 |
|---|---|---|
| 免許 | 最も厳しい規制。条件を満たさなければ取得不可 | 酒類販売業免許、宅地建物取引業免許 |
| 許可 | 行政機関が一定の基準で審査・許可 | 建設業許可、飲食店営業許可、古物商許可 |
| 認可 | 行為の効力を補完する行政行為 | 保育所設置認可、旅行業登録 |
| 登録 | 名簿に記載し、適格性を確認する手続き | 貸金業登録、人材派遣業登録 |
| 届出 | 行政機関への事実の通知(許可不要) | 理美容業の保健所届出、個人情報取扱事業者届出 |
許認可が必要な主な業種
| 業種 | 必要な許認可 | 申請先 |
|---|---|---|
| 飲食業 | 飲食店営業許可 | 保健所 |
| 建設業 | 建設業許可 | 都道府県・国土交通大臣 |
| 不動産業 | 宅地建物取引業免許 | 都道府県・国土交通大臣 |
| 運送業 | 貨物自動車運送事業許可 | 国土交通省 |
| 人材派遣業 (社会保険労務士が担当) | 労働者派遣事業許可 | 厚生労働省 |
| 介護サービス | 介護サービス事業者指定 | 都道府県 |
| 古物商 | 古物商許可 | 警察署 |
| 酒販売 | 酒類販売業免許 | 税務署 |
| 旅行業 | 旅行業登録 | 都道府県 |
| 警備業 | 警備業認定 | 都道府県公安委員会 |
許認可の中には、登記が完了していないと申請できないものも多くあります。
設立段階から必要な許認可を見据えて行政書士にアドバイスをもらいながら進めることが、スムーズな事業開始への近道です。
会社設立を行政書士に頼むメリット
会社設立を行政書士に頼めば、プロとしての安心感を得られます。
許認可申請のプロなので安心
許認可申請は行政書士の独占業務です。
建設業・飲食業・運送業・介護など特定の業種で起業する場合は行政書士なしでは手続きが困難といえます。
許認可は申請書類の不備があると却下されたり、再申請に時間がかかったりするリスクが高い分野です。
要件を熟知した行政書士に依頼することで、申請の確実性が高まります。
許認可には定期更新が必要なものも多く、関係を継続することで長期的なサポートが受けられます。
本業に専念できる
会社設立の手続きには、定款作成・公証役場対応・各種書類の収集・法務局とのやり取りなど、慣れない作業が山積みです。
行政書士に書類業務を一任することで、起業家は事業計画の策定・営業先の開拓・資金調達といった本来の業務に集中できます。
設立にかかる時間は自分で行う場合と比べて大幅に短縮でき、「スピードを優先したい」という方にも適しています。
法的に有効な書類をミスなく作成できる
定款は「会社の憲法」とも呼ばれる重要書類で、事業目的の適法性・明確性・営利性が厳しく求められます。
個人で作成した場合、公証役場で認証が下りないケースや、後から変更が必要になるケースもあるのです。
行政書士に依頼することで、法的要件を満たした正確な書類を作成でき、手続きの遅延やトラブルを未然に防げます。
補助金・助成金の申請もワンストップで対応できる
補助金・助成金の情報収集や申請書類の作成は、起業家にとって手間のかかる業務です。
行政書士の中には創業融資・補助金申請を専門とする方もおり、どの制度が使えるかの発掘から書類作成まで一括でサポートしてもらえます。
会社設立を行政書士に頼むデメリット・注意点
行政書士によるサポートは、メリットだけではなくデメリットや注意点もあります。
登記手続きは行政書士に依頼できない
行政書士の最大の制約は、法務局への登記申請代理が行えない点です。
これは司法書士の独占業務であるため、行政書士に依頼した場合でも登記申請は自分で行うか、司法書士に別途依頼する必要があります。
登記申請を自分で行うことは可能ですが、書類の不備があると補正や却下になりかねません。
費用を抑えたい場合は自分で申請、確実に進めたい場合は司法書士に依頼する、という選択が現実的です。
司法書士との連携状況を必ず確認する
ほとんどの行政書士事務所は司法書士と提携しており、定款作成から登記完了まで一括で依頼できる体制を整えています。
依頼前に以下の点を確認しましょう。
- 同一事務所内に司法書士が在籍しているか、外部提携か
- 司法書士との連携はスムーズに行われるか(情報共有の方法)
- 提携司法書士の実績・信頼性
同一事務所に司法書士が在籍している「ワンストップ型」の場合、情報共有がスムーズで余分なコストや手間が発生しにくいです。
設立後の税務・労務は別の専門家が必要
行政書士は税務申告・社会保険手続き・就業規則作成などには対応できません。
会社設立後には税務署・年金事務所への届出が必要になるため、税理士・社労士との連携が不可欠です。
設立前の段階で税理士に相談しておくと、資本金の額・役員報酬の設定・事業年度の選択など、税務的に有利な判断がしやすくなります。
行政書士に依頼する際は「税理士・社労士の紹介が可能か」も確認しておくと安心です。
会社設立を行政書士に頼む場合の費用
行政書士に依頼する場合の費用目安を紹介します。
行政書士報酬の目安
行政書士への報酬は依頼する業務範囲によって異なりますが、会社設立の基本的なサポートの相場は以下のとおりです。
| 会社の種類 | 行政書士報酬の目安 |
|---|---|
| 株式会社 | 10万円〜15万円 |
| 合同会社 | 4万円〜7万円 |
※ 上記は定款作成・認証代行・書類作成を含む一般的な相場です。
※ 許認可申請は別途費用が発生します(業種によって5万〜20万円程度)。
法定費用の内訳
行政書士への報酬とは別に、国・公証役場に支払う「法定費用」が必要です。
こちらは金額が固定されており、自分で手続きしても変わりません。
| 費用項目 | 株式会社 | 合同会社 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 定款認証手数料 | 30,000〜50,000円 | 0円 | 合同会社は認証不要 |
| 定款印紙代 | 0円(電子定款) | 0円(電子定款) | 紙定款の場合は4万円 |
| 登録免許税 | 150,000円〜 | 60,000円〜 | 資本金×0.7%(最低額あり) |
| 定款謄本手数料 | 約2,000円 | — | 公証役場での取得費 |
※ 100万円以上500万円未満:4万円 / 500万円以上:5万円(※別途、謄本手数料が約2,000円かかります)
株式会社・合同会社の総額目安
法定費用と行政書士報酬を合算した総費用の目安は以下のとおりです。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 定款認証手数料 | 約52,000円 | 0円 |
| 定款印紙代(電子定款) | 0円 | 0円 |
| 登録免許税 | 150,000円〜 | 60,000円〜 |
| 行政書士報酬 | 100,000円〜150,000円 | 40,000円〜70,000円 |
| 合計(目安) | 約30万円〜35万円 | 約10万円〜13万円 |
※ 登記申請を司法書士に依頼する場合は、別途5万円〜10万円程度の司法書士報酬が加算されます。
自分で手続きした場合との費用差
自分で手続きした場合は行政書士への報酬がかかりません。ただし、電子定款の作成には専用ソフトや電子証明書の用意が必要で、紙定款で作成した場合は収入印紙代4万円が発生します。
| 自分で手続き | 行政書士に依頼 | |
|---|---|---|
| 定款印紙代 | 4万円(紙定款の場合) | 0円(電子定款対応) |
| 行政書士報酬 | 0円 | 10万円〜 |
| 実質的な費用差 | — | 約6万円〜(印紙代4万円節約後) |
| 手続きにかかる時間 | 数十〜数百時間 | 大幅削減 |
行政書士報酬が10万円でも電子定款対応により4万円が節約できるため、実質の追加コストは6万円程度です。
この金額で煩雑な手続きから解放され、許認可・補助金のプロサポートが受けられると考えると、費用対効果は高いといえます。
よくあるプラン設計と注意点
行政書士事務所のプランは大きく3種類に分かれます。
依頼前にプランの内容をしっかり確認しましょう。
| プラン | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| スポット(定款のみ) | 定款作成・認証代行のみ | 登記・許認可は別途対応が必要 |
| 設立フルサポート | 定款〜登記完了まで一括(司法書士連携) | 費用は高くなるが手間がかからない |
| 0円設立プラン | 自社サービス契約を条件に費用を無料化 | 月額費用や他の条件が発生するケースも |
「0円プラン」は一見お得に見えますが、特定の会計ソフトや銀行口座の開設が条件になっているケースが多いため、長期的なコストを見比べたうえで選択することが重要です。
行政書士の選び方
これから会社設立したい人へ向けて、行政書士の選び方もまとめます。
会社設立・起業支援の実績が豊富か
行政書士の業務範囲は非常に広く、すべての行政書士が会社設立に精通しているわけではありません。
農業・在留資格・遺産相続など、全く別の専門分野を持つ行政書士も多いためです。
事務所のウェブサイトで「法人設立サポート実績○件」「起業支援専門」といった表記があるか、顧客の声・事例が掲載されているかを確認しましょう。
実績の多い事務所は様々なケースのノウハウを持っており、想定外の問題が発生した際も対応力があります。
自社の許認可分野に詳しいか
許認可が必要な業種で起業する場合、その許認可に特化した行政書士を選ぶことが極めて重要です。
例えば「建設業許可専門」「飲食店許可に強い」「介護・福祉の許認可に詳しい」といった専門特化の事務所を選ぶことで、申請の確実性と速度が上がります。
相談しやすく相性が良いか
設立後も許認可の更新・補助金申請・契約書作成などで継続的に関わる可能性があります。
専門用語を多用せず分かりやすく説明してくれるか、レスポンスが迅速か、といったコミュニケーション面の確認が重要です。
無料相談を提供している事務所がほとんどですので、事前に複数の事務所に相談し、人柄や相性を見極めることをおすすめします。
料金体系が明確で追加費用の説明があるか
「会社設立一式○万円」という表示でも、含まれる業務範囲は事務所によって大きく異なります。
「定款作成のみ」「登記申請の司法書士費用は別途」「許認可費用は別」といったケースも多いため、見積もり時に以下を確認しましょう。
- 料金に含まれる業務の範囲(定款作成のみ?登記まで含む?)
- 追加費用が発生するケースとその金額
- 許認可申請・補助金申請を依頼した場合の費用
- 司法書士への連携費用が含まれているか
経営サポートプラスアルファはワンストップでの対応が可能
会社設立には、行政書士・司法書士・税理士・社労士と複数の専門家が関わります。
それぞれに個別に依頼するよりも、複数士業が連携したワンストップ型の事務所やサービスを活用することで、手続きの漏れを防ぎ、設立から事業開始までをスムーズに進めることができます。
経営サポートプラスアルファは、行政書士や税理士、司法書士と連携して会社設立を支援できます。
「すべてまとめて依頼したい」とお考えの際は、お気軽にお問い合わせください。

