会社を設立するためには、さまざな手続きが必要です。
会社の基本原則である定款の作成、登記書類の作成、税務署への届出、社会保険への加入など、会社を設立しなければ携わることのないような細かい事務手続きがたくさんあります。
それゆえ、会社が無事設立でき一安心した後は、こういった手続き関連の知識についてアンテナが立ちにくくなってしまうケースも多いかと思います。
しかし会社設立後に人を雇ったり業務を委託したりする際に契約などの手続きを曖昧にしたまま臨んでしまうと、思わぬトラブルに発展することがあります。
今回は、会社設立後に取引先と仕事を始めたり、人を雇用する際に必須となる契約書に関する知識を紹介します。
契約書はなぜ必要なのか
まずは、契約書を締結する必要性について解説します。
会社設立後に契約書が必要になる場面
会社設立後に契約書が必要になる場面について紹介します。
人を雇用するとき
人を雇用して、社員となって働いてもらう時には、雇用契約を結ぶ必要があります。
雇用系客を結ぶ際には、雇用形態や契約期間、報酬額など具体的な内容を明記しておく必要があります。
たとえアルバイトであっても雇用契約書は必要です。
融資をしてもらうとき
会社を大きくしていくためには、自己資本だけでは足りないことが多いです。
こうした場合には、金融機関に融資をしてもらう必要があります。
この際、金融機関とも契約書と結ぶ必要があります。
契約書の内容には、借入金額、借り入れた資金の用途、返済期限、利息率などを明記します。
また、期限までに返済がなかった場合には遅延損害金が発生するなどの項目も明記する必要があります。
業務を委託するとき
人を雇用せず、業務委託を結ぶ場合でも、契約書は必要です。
契約目的、委託業務内容、契約期間、報酬額、知的財産の権限、秘密保持などの項目を明記します。
契約書を交わさなかった場合
実は、契約書を交わさなくても、契約を成立させることはできます。
なぜなら、法律で定められている契約に必要な項目は「当事者の同意」だけだからです。
つまり、人を雇う際に、「〇〇円の給料で働いてね」といって相手側がそれに同意すれば、その時点で契約は成立していることになります。
契約を成立させる上で契約書は必須ではないのです。
しかし、会社として事業を行なっていく以上、契約書をしっかりと交わすことは非常に重要です。
以下で、契約書を交わさなかった場合起こりうるリスクについて紹介します。
契約を反故にされる可能性がある
契約書を結んでいない場合、契約を反故にされる可能性があります。
もちろん、当事者の同意で契約自体は成立しているため、契約を反故にされた場合は相応の賠償を要求できると考えるべきでしょう。
しかし、契約書を結んでいなければ、「同意した証拠」がどこにもないのです。
現状の日本の司法制度では、証拠がない罪を立件することはできません。
民事裁判においていくら契約を反故されたと主張しても、証拠がなければ敗訴する可能性が極めて高いです。
つまり、契約が当事者の同意でしかない以上、相手がそれを破らないようにするために証拠を残しておくという意味で契約書は必須なのです。
不利な取引を強いられる恐れがある
取引の内容は、「記載しなくてもよいのでは?」と思うくらい細かいものであっても、契約書に盛り込んでおくべきです。
特に取引を締結する企業が自社よりも大きい企業の場合、簡易的な契約を結んでおいて、後から契約にはない重要な要求を出してくるケースが多いからです。
そしてそういった要求は中小企業にとって不利に働くものが多いです。
こうした「後出しじゃんけん」を避けるためにも、契約書には様々なパターンを細かく盛り込んで作成すべきです。
細かいトラブルになる
不利な取引を強いられたり、契約を全て反故にされるような極端なケースではなくても、人間の記憶に頼った口約束の同意では、認識の齟齬が生じやすくトラブルの種になりやすいです。
こうした細かいトラブルを防ぎ、事業に集中するためにも、最初は面倒でもしっかりとした契約書を作成することが重要であると言えます。
・契約書は、人を雇用するとき、融資をしてもらうとき、業務を委託するときなどに必要になってくる。
・契約書なしでも契約は成立するが、契約書を交わさなかった場合には、様々なトラブルが起こり得る。
人を雇用するときの契約書/雇用契約書とは?
ここでは、人を雇用するときの契約書について紹介します。
雇用契約書とは?
そもそも雇用とは、一方が労働に従事する代わりに、もう一方が報酬を支払う契約のことを指します。
この雇用契約の内容を書面にまとめたものが雇用契約書です。
上で述べた通り、雇用契約書の作成自体は義務ではありませんが、トラブルを避けるためには必須で作成すべき書類であると言えます。
雇用契約書の作成方法
雇用契約書には、作成する際に必須で盛り込むべき絶対的明示事項と、その定めをする場合には盛り込むべき相対的明示事項の2種類に分かれています。
絶対的明示事項
絶対的明示事項に該当する項目は、以下の通りです。
- 労働契約の期間
- 期間の定めのある労働契約を更新する際の基準
- 就業の場所、従事すべき義務
- 始業・就業の時刻
- 所定労働時間を超える労働の有無
- 休息時間、休日、休暇
- 賃金の決定、計算方法、支払い方法
- 賃金支払いの時期、昇格
- 退職(解雇の事由含む)
労働契約の期間は、期間の定めがない正社員などに関しては、定めがないという旨を記載します。
また期間に定めがある場合、更新条件(自動更新かどうかなど)を記載します。
また、特に重要なのが退職の事由です。
退職時の手続き、条件、解雇の条件などを細かく記載する必要があります。
相対的明示事項
相対的明示事項は、以下の通りです。
- 退職手当が適用される労働者の範囲
- 臨時に支払われる賃金、賞与
- 労働者に負担させるべき食費
- 安全および衛生
- 職業訓練
- 災害補填
- 表彰および制裁
- 休職
・人を雇用するときには、雇用契約書が必要になってくる。
・契約書に記載することとしては、絶対的明示事項と相対的明示事項の二つがある。
業務を委託するときの契約書/業務委託契約書とは?
続いて、業務を委託するときの契約書である「業務委託契約書」について紹介します。
業務委託契約書とは?
業務委託とは、委託者である企業が、受託者である個人もしくは企業に業務を委託する契約のことです。
業務委託契約で発生するのはあくまでも成果物のやりとりであり、受託者に対する委託者からの指揮命令は発生しません。
この業務委託に関する契約を書面に落とし込んだものが、業務委託契約書です。
業務委託契約には、月額で固定報酬を払う固定報酬型と、成果物に応じて報酬を払う成果報酬型の2種類が存在します。
業務委託契約書の作成方法
業務委託契約書に必要な項目は、主に以下の通りです。
- 契約目的
- 委託業務内容
- 委託業務の遂行方法
- 再委託の可否
- 契約期間
- 報酬額と支払い時期
- 知的財産の権限
- 禁止事項
- 秘密保持
特に知的財産の権限や、秘密保持に関しては、会社に雇用するという形で属さないからこそ雇用契約よりもより重要になってきます。
なぜならば、雇用という形であれば知的財産も基本的には会社に属す上、秘密保持も当然の義務となるからです。
一方で、会社の外部の人もしくは法人に仕事を依頼する業務委託の形式だと、そのあたりのラインが曖昧になりがちです。
このため、委託業務によって生まれた成果物の知的財産権が受託者と委託者のどちらに属するのかをあらかじめ定めておくことは極めて重要です。
また、秘密保持に関してはその重要性から、業務委託契約書とは別で秘密保持契約書を作成する会社も多くなっています。
スポット契約でも契約書は必要なのか
継続的に業務委託契約を結ぶわけではなく、単発で業務委託を依頼することをスポット契約と呼びます。
このような場合に、「一回だけだからいいか」と業務委託契約書を交わすことを疎かにしてしまってはいけません。
知的財産権の帰属の問題でトラブルになってしまったり、報酬額の有無や成果物のクオリティで揉めたりする可能性があります。
・業務委託契約書とは、業務を委託する際の報酬の取り決めなどを記載した契約書のことである。
・単発案件などでスポット契約を結ぶ時でも、きちんと契約書を交わしておくほうが安全に取引を行うことができる。
ミスなく契約書を作成するなら
ここまで解説してきたように、会社設立後様々な会社、人と取引をする中で、契約書を作成することは非常に重要です。
契約書を作成せずに取引を行うと、相手に裏切られてしまったり、言った言わないのトラブルになる可能性があるからです。
しかし、こういった契約書類の作り方について多くの創業者の方が知らないのも事実です。
そこでオススメなのが、経営サポートプラスアルファへの相談です。
経営サポートプラスアルファには、契約書の作成に詳しい専門家が多く在籍しており、気軽に相談をすることが可能です。
また、契約書の作成だけでなく、事業の成長や会社設立の方法についても相談をすることができます。
気になる方はぜひ一度お問い合わせください。