見せ金とは、資本金額を大きく見せるために、一時的に借り入れたお金を資本金として換算することです。
今回は、見せ金の違法性やリスクについて解説します。
見せ金の定義
見せ金を正確に定義すると、「発起人・取締役などが個人的に資本金払込取扱金融機関以外から借り入れた金銭を資本金に加算し、会社設立後にその金銭を返済すること」です。
会社法第52条の2でも、「出資の履行を仮装」「払い込みを仮装」として言及されています。
例えば、資本金500万円で会社を設立する際、300万円を発起人が個人的に借り入れたお金から出資したとします。
この場合、300万円が見せ金ということになります。
会社設立後は、資本金から支払われる役員報酬などで返済するのが一般的です。
見せ金は違法!
資本金の額を誤魔化す見せ金は違法ではないのか、気になる方も多いかと思います。
結論から言うと、見せ金は違法です。
見せ金は公正証書原本不実記載等罪に当たる可能性
見せ金は公文書の偽造に当たる可能性があり、偽造と認められると公正証書原本不実記載等罪に問われる可能性があります。
この場合、罰則として5年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
また、見せ金に関する規定は会社法第52条の2でも述べられており、「払込みを仮装した場合 払込みを仮装した出資に係る金銭の全額の支払(第52条の2の一)」が定められています。
第52条の 2 発起人は、次の各号に掲げる場合には、株式会社に対し、当該各号に定める行為をする義務を負う。
一 第34条第1項の規定による払込みを仮装した場合 払込みを仮装した出資に係る金銭の全額の支払
二 第34条第1項の規定による給付を仮装した場合 給付を仮装した出資に係る金銭以外の財産の全部の給付(株式会社が当該給付に代えて当該財産の価額に相当する金銭の支払を請求した場合にあっては、当該金銭の全額の支払)
2 前項各号に掲げる場合には、発起人がその出資の履行を仮装することに関与した発起人又は設立時取締役として法務省令で定める者は、株式会社に対し、当該各号に規定する支払をする義務を負う。
ただし、その者(当該出資の履行を仮装したものを除く)がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。
3 発起人が第1項各号に規定する支払をする義務を負う場合において、前項に規定する者が同項の義務を負うときは、これらの者は、連帯債務者とする。
4 発起人は、第1項各号に掲げる場合には、当該各号に定める支払若しくは給付又は第2項の規定による支払がされた後でなければ、出資の履行を仮装した設立時発行株式について、設立時株主(第65条第1項に規定する設立時株主をいう。次項において同じ。)及び株主の権利を行使することができない。
5 前項の設立時発行株式又はその株主となる権利を譲り受けた者は、当該設立時発行株式についての設立時株主及び株主の権利を行使することができる。
ただし、その者に悪意又は重大な過失があるときは、この限りでない。
見せ金を隠そうとすると脱税になる可能性
見せ金を返済するためには、会社から個人にお金を移す必要があります。
この時、種々のレシート・領収書を集めて、経費として使ったことにしようとする方が少なくありません。
しかし、これは明らかな脱税にあたり、さらに違法行為を積み重ねてしまうことになります。
見せ金を資本金にする意味・メリットとは
違法行為であり、最悪の場合罰則を受ける可能性もある見せ金ですが、どうしても資本金額を大きく見せなければならない時には、例外的に有効である場合もあります。
以下2つに該当する場合です。
①許認可取得の際に最低資本金額がある業種の場合
業種によっては、事業を営むのに必要な許認可取得の際に最低資本金額が設定されている場合があります。
例えば、職業紹介事業は、500万円、人材派遣業は2,000万円以上ないと事業を行うことができません。
この場合、人材派遣業をやろうと思って資本金500万円で起業しても何もできません。
「資本金は足りないがどうしても人材派遣業をやりたい」という時には見せ金も一つの手段になり得るかもしれません。
②許認可取得の際に最低資本金額がある業種
- 職業紹介事業 500万円以上
- 建築業 500万円以上
- 一般労働者派遣業 1,000万円以上
- 人材派遣業 2,000万円以上
あまりにも用意できる資本金が少ない場合
現在の日本では、資本金が1円から会社を設立することができます。
しかし、実際に資本金を設定する際は、数ヶ月分のランニングコストを踏まえて決める場合がほとんどです。
資本金が少なすぎると倒産のリスクが高まるため、金融機関から融資を受けるのも難しくなってしまいます。
このため、「資本金が10万円しか用意できないけど、どうしても起業したい」という場合は一時的に見せ金を用意することで会社の運営をまかなえるようになるかもしれません。
見せ金で会社設立した際のリスク
では、見せ金で資本金を大きく見せた場合、その後どのようなリスクがあるのでしょうか。
違法行為として罰則を受ける
前述の通り、見せ金は違法行為にあたります。
会社法上では罰則規定はありませんが、悪質な見せ金と見なされれば公正証書原本不実記載等罪に問われ、5年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられてしまいます。
例え見せ金の存在を社員や他の株主・取引先などに隠していたとしても、罪に問われれば一気にその事実は広まり、あっという間に会社の信用は失われます。
融資を受けられなくなる
金融機関から融資を受ける場合、会社の運営体力に直結する資本金の内訳や自己資金の額は非常に重要です。
自己資金の額によって融資の額が変わることも多いため、金融機関は創業者の通帳をしっかりとチェックします。
もし見せ金を使って出資していた場合、個人の通帳に振り込まれた巨額のお金を、そのまま自己資金として資本金に加えることになります。
このため、金融機関に通帳の履歴を見られるとすぐに見せ金であることがバレてしまいます。
こうなると、金融機関から融資を得ることは不可能です。
違法行為をしている会社にお金を貸してくれる金融機関などありません。
見せ金が課税対象になる
見せ金で会社を設立した場合、大抵の場合は役員貸付金として見せ金の分を会社から出資者に戻し、その出資者が見せ金の提供元に返済することになります。
つまり、会社設立直後に会社から役員に巨額のお金を貸している、という状態になるのです。
これだけでも会社の信用は大きく損なわれますが、この役員貸付金がその後も返済されずにいると、会社から出資者へ報酬が支払われたと見なされ、見せ金に所得税が課せられるリスクが生まれます。
資金調達にお困りなら専門家に相談を
資本金額の設定は、会社設立において非常に重要です。
資本金が少ないと倒産のリスクが高まる上、金融機関からの信用も得にくくなります。
場合によっては、許認可が受けられず事業ができないリスクもあります。
しかし、資本金が確保できないからといって見せ金を作るのは賢明ではありません。
見せ金はそもそも違法行為であり、金融機関や利害関係者からの信用を一気に失ってしまいます。
資本金が集まらない場合は、資金調達のプロフェッショナルに相談するのが有効です。
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資本金額の不足でお悩みの方は、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。