有限会社は2006年(平成18年)5月の会社法施行で新設できなくなり、今作るなら株式会社か合同会社が一般的です。
今ある有限会社は、法律上は株式会社の一種(特例有限会社)として続いています。
この記事では、有限会社・合同会社・株式会社の違いを比較表で整理し、合同会社を選ぶときの注意点を解説します。
目次
有限会社・合同会社・株式会社の違いを比較
3つの会社の主な違いは、次のとおりです。
| 項目 | 有限会社(特例有限会社) | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|---|
| 新しく設立できるか | できない | できる | できる |
| 法律上の分類 | 株式会社の一種 | 持分会社 | 株式会社 |
| 出資者の責任 | 有限責任 | 有限責任 | 有限責任 |
| 定款の認証 | ― | 不要 | 必要 |
| 設立の登録免許税 | ― | 資本金の0.7%(最低6万円) | 資本金の0.7%(最低15万円) |
| 役員の任期 | なし | 法律上の定めなし | 取締役は原則2年(非公開会社は定款で10年まで) |
| 決算公告 | 不要 | 不要 | 必要 |
| 経営する人 | 取締役 | 出資した社員(業務執行社員) | 取締役 |
| 商号に使う文字 | 有限会社 | 合同会社 | 株式会社 |
出資者の責任はどれも有限責任で、違いは主に運営のルールと設立の費用です。
役員の任期がないことと決算公告が不要なことは、特例有限会社に残された特則です。
これから会社を作るなら、株式会社か合同会社から選ぶのが一般的でしょう。
会社法では、ほかに合名会社と合資会社も設立できます。
(出典:e-Gov法令検索「会社法」(2条・6条・30条・332条・440条・576条)、e-Gov法令検索「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(2条・3条・18条・28条)、国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」)
有限会社とは?
有限会社とはどのような法人形態なのか説明しましょう。
かつて存在して現在は廃止されている法人形態
有限会社はかつて日本で設立が認められていた法人形態です。
2006年(平成18年)5月1日に会社法が施行されたことで、今は有限会社を新規に作れません。
有限会社は有限責任社員だけが出資を行い、出資によって社員権を得られます。
出資者が持つのは株式ではなく、「持分」でした。
現在は経過措置として特例有限会社が残っている
会社法の施行で有限会社の制度はなくなり、当時あった有限会社は株式会社として存続しています。
存続のために特別な登記の申請は必要なく、これを特例有限会社と呼びます。
特例有限会社は、商号に「有限会社」という文字を用いなければなりません。
また、旧有限会社の持分は、株式会社の株式とみなされています。
(出典:e-Gov法令検索「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(2条・3条)、法務省「会社法の施行に伴う会社登記についてのQ&A」)
特例有限会社は法的には株式会社の一種で有限会社の特性が一部残っている
特例有限会社は法的には株式会社として扱われています。
ただし、完全に株式会社と同一の存在ではありません。
一部には有限会社の特性がそのまま残されています。
たとえば、特例有限会社には役員の任期や決算の公告義務がありません。
株式の発行は譲渡制限株式のみに限定されています。
このような特例が不都合に感じる場合は、株式会社へ移行できます。
定款を変更して商号に株式会社という文字を用いることで移行可能です。
(出典:e-Gov法令検索「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(9条・18条・28条・45条))
合同会社とは?
合同会社の特徴について紹介しましょう。
2006年に新しく誕生した法人形態
会社法の施行で有限会社がなくなるのと同時に、新しく生まれたのが合同会社です。
法務省の登記統計では、2025年(令和7年)の設立の登記は株式会社100,165件、合同会社45,161件でした。
株式会社と合同会社の合計に占める合同会社の割合は、2016年(平成28年)の約2割から約3割に増えています。
(出典:法務省「登記統計」商業・法人 25-00-16 株式会社の登記の件数(e-Stat)、25-00-20 合同会社の登記の件数(e-Stat))
設立費用が安い
合同会社は株式会社とは会社設立の法定費用が異なっています。
登録免許税の最低額は6万円からであり、定款の認証を受ける必要がないため認証手数料は発生しません。
法定費用は、株式会社が約17万〜24万円、合同会社が約6万〜10万円です。
差が出る主な理由は、株式会社だけに必要な定款の認証手数料と、登録免許税の最低額の違いにあります。
定款の認証手数料は、資本金の額などに応じて1万5,000円〜5万円です。
(出典:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」、e-Gov法令検索「公証人手数料令」)
役員の任期がない
合同会社には株式会社と異なる点がいくつも存在しています。
役員の任期がなく、決算公告の義務もありません。
そのため、役員の変更登記や決算公告の費用を節約できるのです。
合同会社ならば、同じ人物がずっと役員を続けることができます。
もちろん、役員の任期を定めておくこともできます。
出資者と経営者が同一
合同会社は設立時に出資した人がそのまま経営者になります。
会社の所有と経営が分離されていないのです。
出資した人はすべてが議決権を持つ社員となります。
ただし、社員の中から業務執行するものを限定することも可能です。
業務執行社員を選ぶことができ、これは株式会社の取締役とほとんど同じ存在といえます。
また、業務執行社員から代表社員を選ぶことも可能です。
合同会社は機関構成について自由度が高く、それぞれの都合に合わせて構成を決められます。
有限会社と合同会社の違い
有限会社と合同会社にはどのような違いがあるのか説明しましょう。
有限会社を新しく設立することは不可能
これから会社設立をするときに有限会社を選択することはできません。
2006年(平成18年)5月1日の会社法の施行に合わせて、有限会社法が廃止されたからです。
現在残っている有限会社は、会社法の施行より前に設立された会社です。
一方、合同会社は2006年(平成18年)から生まれた新しい法人形態であり、今でも多くの合同会社が新設されています。
【参考】【税理士が解説】有限会社を作るには?株式会社・合同会社との違いも詳しく解説
有限会社は出資者の人数に上限があった
かつての有限会社には、出資者(社員)の人数に上限がありました。
一方、合同会社には出資者の人数の上限はありません。
そのため、出資者の人数を気にせずに設立できます。
有限会社は老舗企業が多く合同会社は新しい企業が多い
有限会社は2006年(平成18年)までに設立された会社です。
そのため、多くの有限会社は歴史が古く、中には老舗企業と呼ばれている有限会社もたくさんあります。
一方、合同会社は古くても2006年(平成18年)に設立された会社であり、歴史の浅い新しい企業が多いのが特徴です。
有限会社は資本金が最低でも300万円以上
かつての有限会社は設立する際に資本金の最低金額が300万円以上必要でした。
当時は株式会社でも、最低1,000万円以上の資本金が求められていたのです。
会社法の施行で、最低資本金の制度はなくなりました。
そのため、今では株式会社も合同会社も資本金の最低金額は1円とされています。
(出典:法務省「会社法の施行に伴う会社登記についてのQ&A」(Q17))
合同会社を設立する際の問題点
合同会社設立における問題点について説明しましょう。
社会的な認知が低い
合同会社は、株式会社に比べると社会的な認知が十分とはいえません。
合同会社の制度ができて20年ほどたちますが、会社の数では今も株式会社が大半を占めます。
国税庁の会社標本調査(2024年度分)では、株式会社が法人の89.7%、合同会社は7.2%です。
(出典:国税庁「令和6年度分 会社標本調査」(第4表。株式会社には特例有限会社を含む))
そのため、営業活動などで合同会社であることが不利に働く場面もあるでしょう。
信用度が低い
合同会社はそれほど知られていないため、取引先に信用されないケースがあります。
合同会社には株主総会や取締役会などはなく、決算の公告の義務がない点も信用度が低い理由といえるでしょう。
株式を発行できない
合同会社は株式を発行できないため資金調達の方法が限られます。
社員からの出資を集めるか、銀行から融資を得るのが主な資金集めの方法です。
株式を発行できないため、大規模に資金を集めることがやりにくく、事業拡大で苦労する場面が出てくるでしょう。
意見が対立すると収拾がつきにくい
合同会社は出資者がそのまま経営にも参加します。
会社の所有と経営が分離されていないため、経営者の意見が対立すると収拾がつきにくいのが特徴です。
合同会社では、定款で定めがない場合は、定款を変更するのに原則として総社員の同意が必要になります。
したがって、経営者同士の意見対立が発生すると何も決められなくなります。
合同会社を設立する際のポイント
これから合同会社を設立する際に意識しておきたいポイントを説明します。
利益の配当の比率にこだわろう
合同会社の設立では利益の配当の仕方にこだわりましょう。
自由に配当の比率を決められます。
誰も不満を抱かないような利益配当を実現できれば、社員それぞれのモチベーションを高めることが可能です。
よく話し合いをして、いろいろな意見を出し合って決めると良いでしょう。
利益配当に関する事項はすべて定款で自由に定められます。
利益配当の時期や回数、請求方法など細かな点もきちんとルール化しておきましょう。
議決権割合を定款で定めよう
合同会社での議決権割合は、原則として1人1票となっています。
しかし、これでは不公平だと感じる社員がいるかもしれません。
その場合は定款によって変更可能です。
たとえば、株式会社のように出資額に応じた議決権割合を定めることもできます。
合同会社のリーダー的な存在に議決権を51%以上確保できるように定めることも可能です。
たとえば、2人で合同会社を設立すると、議決権を均等に持つことになり意見が分かれれば何も決められません。
このような事態を避けるには、定款で片方に過半数の議決権を持たせる方法があります。
資金不足への対策として創業融資を利用しよう
合同会社は株式の発行ができないため資金不足には注意しましょう。
資金集めの方法が限られているため、常に資金繰りを意識するべきです。
これから合同会社を設立するならば、創業融資を活用することをおすすめします。
起業してすぐに多くの融資を得られるのが創業融資の良いところです。
ただし、創業融資の利用には面談や審査などがあるため対策が必要です。
専門家に相談をして、対策を練ると良いでしょう。
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合同会社の手続きや制度設計について専門家に相談しよう
合同会社の設立をするならば、手続きの際に注意するべき点はたくさんあります。
特に定款の作成は重要であり、制度設計を意識しておかないと設立後のトラブルの原因となるのです。
そこで、事前に専門家に相談をしてアドバイスをもらうと良いでしょう。
そうすれば、さまざまなリスクへの備えを万全にできます。
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よくある質問
Q. 今から有限会社を作れますか?
作れません。
2006年(平成18年)5月1日に有限会社法が廃止され、今は株式会社か合同会社などを選んで設立します。
Q. 特例有限会社と株式会社は何が違いますか?
特例有限会社も法律上は株式会社ですが、取締役の任期や決算公告の規定が適用されないなどの特則があります。
商号には「有限会社」という文字を使い続けます。
Q. 合同会社と株式会社では、どちらが設立費用を抑えられますか?
合同会社です。
登録免許税の最低額が6万円と株式会社の15万円より低く、定款の認証も要りません。
Q. 有限会社・合同会社・株式会社で、出資者の責任に違いはありますか?
どれも出資者は有限責任です。
出資した額を超えて、会社の債務を負うことは原則としてありません。
Q. 合同会社に決算公告は必要ですか?
必要ありません。
会社法で貸借対照表の公告を義務づけているのは株式会社で、特例有限会社にもこの規定は適用されません。
(出典:e-Gov法令検索「会社法」(104条・440条・576条・580条)、e-Gov法令検索「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(1条・28条)、国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」)
合同会社の設立は専門家に依頼しよう
有限会社はかつて存在していた法人形態であり、今では移行措置として特例有限会社が残っているのみです。
一方、合同会社は有限会社が廃止されたのと同時に生まれた新しい法人形態です。
そんな合同会社は出資者と経営者が同一であり、役員の任期がないといった特徴があります。
合同会社の特徴を理解して、制度設計などにこだわると良いでしょう。
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