会社設立または創業をするにあたり、自己資金だけで事業を運営ができるのならば、それにこしたことはありません。
しかし、例えば店舗出店費用や仕入資金がなければ事業が立ち上げられないといった場合、どうしても資金が必要になるため、自己資金だけでは資金が足りなくなる場合があります。
「2011年度版中小企業白書」でも、創業時の一番の課題は資金調達(54.9%)であるとされ、また、日本政策金融公庫総合研究所「2010年度新規開業実態調査」でも、創業開業時の必要資金のうち自己資金の占める割合は約26%であり、残りは金融機関等からの借入れでまかなっていることが見受けられます。
このように創業開業時の必要資金が自己資金だけで足りない場合、日本政策金融公庫や金融機関などから創業者向けの融資を検討することになります。
今回はその資金調達について着目をし、実際に創業融資を受けた方の事例を紹介するとともに、会社設立をする際の融資が有利になる設立のしかたについて解説します。
個人事業・法人の融資事例
個人事業の場合
将来自分の店を持つことを夢に美容専門学校を出た後、東京都内の美容室に就職したSさん。
アシスタント、店長と順調にキャリアを積み、30歳になったのを機にいよいよ独立することを決意しました。
そこでSさんがまず行ったことは「キャリアの棚卸し」でした。
過去に経験したこと、勉強したこと、そして身についたことを時系列で振り返り、「自分に身についたスキル・ノウハウは何か」を分析し誰もがわかりやすく見えるようにしました。
次にSさんが行ったのは、自分の将来のビジネスイメージを図で書くことでした。
これは「エグゼクティブ・サマリー」といわれるもので、自身の夢とそれに実現するためのスキルやノウハウ、創業の動機やその背景をわかりやすくしました。
そして、マーケティングの4Pを明確にしていきました。
- Produbct(プロダクト:製品)
- Price(プライス:価格)
- Place(プレイス:流通)
- Promotion(プロモーション:販売促進)
※マーケティングに関しては、別記事にて詳しく説明します。
詳しくは、「経営戦略で必要な3分析とは?」はご覧ください。
ビジネスプランは書く量が多ければいいというものではありません。
逆にA4一枚にまとめることの方が難しいものです。
見事、自身のビジネスイメージ図を書くことのできたSさんは創業計画書を作成し、融資希望額500万円の資金調達に成功。
念願の自分の店を持つことができました。
・個人で事業を起こす際は「キャリアの棚卸し」をして、これまで身に付けたスキルやノウハウを明確にすることが効果的である。
・創業の動機や背景をわかりやすくまとめ、このために必要なスキルやノウハウを明記した「エグゼクティブ・サマリー」を作成すると良い。
・マーケティングの4Pとは、以下の事である。
Produbct(プロダクト:製品)
Price(プライス:価格)
Place(プレイス:流通)
Promotion(プロモーション:販売促進)
法人の場合
会社内での部署異動の内示が出たのを機に、自身の将来設計に疑問が生じ同僚のAさんと一緒に会社を出ることを決意し、今までの経験を活かして独立することにしました。
独立を決意したYさんが、まず会社を辞める前にやったことはセミナーの受講と、異業種交流会への参加でした。
事業のノウハウそのものには自信のあったYさんですが、創業に当たっては幅広い経営知識が必要だと感じていたため、とにかく時間を作り、創業者や経営者向けのセミナーをできる限り受講しました。
また、会社以外での人脈を構築するため、異業種交流会などに積極的に参加しました。
そして、創業者向けのセミナーで、創業融資に当たっては創業計画書を書くことの重要性と、創業計画書を書いていく中で、自分のビジネスのSWOT分析(S:強み、W:弱み、O:機会、T:脅威)が最も重要であることなどを知ったYさんは、早速、同僚のAさんと一緒に、それまであたためていたビジネスアイデアを創業計画書にまとめました。
創業計画書は、そのセミナー講師に何度もみてもらった上で融資を申し込み、事務所の設備資金として300万円を調達することに成功しました。
・法人として創業する前に、経営者向けセミナーや異業種交流会などに参加して人脈を広げることは有効である。
・自分のビジネスのアイデアを考える中で、SWOT分析が重要である。
・創業計画書を添付した上で、創業融資を申し込み、資金調達をするのも良い。
融資が有利になる会社設立とは?
創業融資の相談にのっている中で、ポイントとなる点がいくつかありますので紹介します。
設立をする際に注意・参考にしてください。
1:代表取締役・代表社員
代表取締役・代表社員がブラックリストに載っている場合や、(過去に3ヶ月以上の延滞や保証履行、債務整理がされているなど)代表取締役・代表社員が日本国籍を持っていない場合は、融資を受けることが極めて難しくなります。
2:本店所在地
バーチャルオフィス・レンタルオフィス・シェアオフィスを本店所在地にすると、事業に対する本気度が低いとみなされて、融資の審査に通りにくくなる可能性があります。
3:事業目的
「金融業・投資業・保険業・風俗業」等が含まれていると、融資がそれらの事業に使われると見なされて、審査で非常に不利になる可能性があります。
許認可が必要な事業でなければ、事業目的に書かなくても営業はできます。
4:資本金
融資の額は、資本金の2倍以内だと審査が通りやすいので、自己資金はなるべく資本金に計上した方が良いでしょう。
このように会社を作る際の登記では、創業融資のことを視野に入れた登記が必要になってきます。
・創業融資を有利に受けるためのポイントを熟知しておくことが重要。
・融資を受ける上で、会社の代表がブラックリストに載っていないことや日本 国籍を持っていることが大事。事務所がバーチャルオフィスでないことも融資には有利である。
・事業目的に「金融・投資・保険・風俗等」が入っていると不利になる。
融資を受けるために、本当に重要なこととは
創業融資は、これから起業をするという方や、事業を始めたばかりの方にとっての資金調達の手段としてとても有用なものです。
他に、これほど破格の条件で資金を借り入れできるところはないと言っても良いでしょう。
また、創業融資の申し込みは、業歴の長い会社の融資の申し込みとは違い、実績は当然ありませんのでゼロになります。
これから行う事業のマーケティング分析を行い、その内容をまとめた「創業計画書」、すなわち「ビジネスプラン(事業計画書)」をしっかり内容あるものを書き、融資申し込みをするようにしましょう。
創業融資は、「創業計画書」を担保に融資を受けるといっても過言ではありません。
また、会社を作る際の登記で決めることがいくつもある中、創業融資のことを視野に入れた内容ですすめるよう意識をすることが本当に重要になります。
効率的な会社設立をして、これからはじめる事業にストレスなく事業開始が出来る状態ができるように最善をつくしましょう。
・創業融資は業績がゼロにも関わらず破格の条件で資金が借りられる方法である。
・創業融資は、創業計画書を担保に融資を受けると言われるくらい重要でなる。
・会社を作る際の登記では、創業融資を視野に入れた内容にすることが望ましい。
まとめ
会社設立の際に、日本政策金融公庫や金融機関などから融資を受けるのが一般的です。
融資を受けるには、「これからどのようなビジネスを経営していくのか」を明らかにし、申し込みを行いましょう。
個人の場合は、これまで身につけてきた経験的技術やノウハウなどを踏まえたエグゼクティブ・サマリーを作成しましょう。
法人の場合は、経営者向けセミナーや異業種交流会などに参加してコネクションを作ることが大切です。
代表取締役の経歴や、本店所在地、事業目的、自己資金の割合などがポイントになり、融資可能か判断されます。
大切なことは、ビジネスプランや創業計画書の中身を充実させ、相手に不信感を抱かせないことです。
創業融資のことを視野に入れた内容で、資料を制作するようにしましょう。
経営サポートプラスアルファは、会社設立代行を行っている税理士法人です。
「初めての会社設立で不安を感じている」「融資を借りられるか分からない」という場合でも、会社設立に関して提案型のサポートを行うことが可能です。
コストが抑えられるだけでなく、スピーディーに会社を設立できるため、会社設立を考えている方はぜひ、一度ご相談ください。