会社の設立を考えるとき、まずは設立する会社の形態を決めなければなりません。
現在一番多く設立されているのは株式会社ですが、株式会社に続いて多く設立されているのが、合同会社です。
今回は、合同会社の特徴、株式会社との違いや、メリット・デメリットを解説します。
目次
合同会社とは
現在日本で設立できる会社の形態は、株式会社・合同会社・合名会社・合資会社の4つです。
- 株式会社
- 合同会社
- 合名会社
- 合資会社
合同会社はこの中でも一番新しく作られた会社形態で、アメリカのLLC(Limited Liability Company)をモデルとして設計されています。
合同会社の特徴
株式会社と同様に会社の債務に有限責任であり、また経営上の意思決定のプロセスが迅速に出来ることが特徴です。
小規模事業を法人化する際によく利用される会社形態であり、現在では年間に設立される会社のうち約2割は合同会社です。
これを株式会社の設立件数と比較すると、以下のグラフのようになり、非常に合同会社の設立数が増えてきていることがわかります。
合同会社の主な役職
社員
合同会社における「社員」は、株式会社の「従業員」ではなく 出資者=会社のオーナーを指します。
出資者はすべて「有限責任社員」となり、出資額を限度として責任を負う仕組みです。
社員全員に議決権があり、定款に基づいて利益配分や経営方針の決定に関わります。
業務執行社員
社員の中から選ばれ、会社の 日常的な業務を執行する権限と義務を持ちます。
株式会社における「取締役」に近い立場です。
必要に応じて複数名選出できます。
代表社員
業務執行社員の中から選ばれ、会社を代表して外部と契約や登記手続きを行う役割を担います。
株式会社でいう「代表取締役」にあたる立場です。
代表社員は登記簿にも記載され、対外的な権限を持つ重要な人物だと考えましょう。
合同会社と株式会社の違い
| 項目 | 合同会社(LLC) | 株式会社 |
|---|---|---|
| 設立コスト(目安) | 登録免許税:最低6万円/定款認証不要 紙定款は収入印紙4万円、電子定款は0円 | 登録免許税:最低15万円相当(資本金×0.7%※下限あり) 定款認証:約5万円+謄本費用/電子定款で印紙0円 |
| 登記事項の主な違い | 代表社員・業務執行社員・社員の出資等 | 取締役・代表取締役・発行可能株式総数・資本金等 |
| 意思決定機関 | 原則、社員全員の同意(定款で別段の定め可) | 株主総会・取締役会などを設置 |
| 役員任期 | 任期規定なし(変更時のみ登記) | 原則あり(非公開会社は柔軟化可だが任期到来ごとに手続き) |
| 決算公告義務 | 公告義務なし | 公告義務あり(官報/ウェブ開示など) |
| 上場可否 | 上場不可 | 上場可能 |
| 社会的信用・認知度 | やや低め(取引や融資で説明が必要な場面あり) | 高い(取引先・金融機関で受け入れが広い) |
設立コスト
株式会社の設立には登録免許税15万円以上や定款認証費用などを含め、20万~25万円ほどかかります。
これに対し合同会社は登録免許税6万円で済み、定款認証も不要なため、最低で6万円程度から設立可能です。
費用面では合同会社が圧倒的に安く済みます。
経営スタイル
株式会社は「所有と経営の分離」が特徴で、株主が所有し取締役など経営陣が運営します。
合同会社は出資者=経営者であり、社員全員が経営方針の決定に関与できる仕組みです。
任期の制限もなく、柔軟で小回りの効く経営が可能かどうかという違いがあります。
議決権や利益配分
株式会社では出資比率に応じて議決権や配当金が決まります。
一方、合同会社は出資額に関係なく社員全員が対等の議決権を持ち、利益配分も定款で自由に決められます。
貢献度や役割に応じた柔軟な配分が可能です。
機関設計
株式会社は株主総会や取締役会などの機関を設置し、形式的な意思決定を行います。
合同会社ではこうした機関は不要で、社員全員の合意で柔軟に経営判断が可能です。
なお、必要に応じて定款で社員総会を設けることもでき、この場合は株式会社に近くなります。
合同会社のメリット
設立・運営コストが安い
合同会社は株式会社に比べて設立費用が安く、最低6万円から設立可能です。
さらに決算公告の義務や役員任期がないため、公告費用や再登記費用も不要という利点もあります。
ランニングコストも抑えられる点が大きな魅力です。
手続きが簡単
株式会社では定款認証や株主総会、決算公告など多くの手続きが必要ですが、合同会社はこうした義務がありません。
設立から経営判断までシンプルに進められ、スピード感のある運営が可能です。
柔軟な組織運営ができる
合同会社では定款で組織のあり方や利益配分を自由に決められます。
株主の意向に縛られず、社員の貢献度や役割に応じた柔軟な経営体制を作れるのが特徴です。
合同会社のデメリット
信用力が低い
設立や運営が容易な反面、大企業や金融機関からは「基盤が弱い」と見なされる可能性があります。
結果、取引や融資で不利になることも十分にありえるのです。
社会的信用度では、まだまだ株式会社に劣る点は否めず、デメリットと言わざるを得ません。
資金調達の幅が狭い
合同会社は株式を発行できないため、上場や株式投資による資金調達ができません。
大規模な資金調達を目指す場合は、株式会社の設立が前提となります。
出資者間の関係に左右される
社員全員が経営に関与できる一方、意見の衝突や出資額の違いからトラブルになることもあります。
株式会社のような明確な階層がないため、人間関係が経営に直結しやすい点は注意が必要です。
合同会社設立の流れ・フロー
合同会社の設立には複数のステップがあります。
ここでは大まかな流れを時系列で整理し、起業準備から登記完了までの全体像を把握できるようにしました。
各手続きの細かな進め方や必要書類の書き方は、合同会社設立の流れを詳しく解説した記事はこちら をご覧ください。
会社の基本事項を決める
合同会社設立の第一歩は、会社の基本事項を決めることです。
会社名(商号)や本店所在地を決定し、同一住所内で重複しないか確認しなければなりません。
本店所在地は自宅はもちろん、オフィスを借りてそこで登記することも可能です。
また、事前に事業目的を決定しておく必要があるため、実際に行う業務に即した明確な記載が求められます。
他にも、出資者の人数や出資額を確定しておくことで、この後の定款作成や出資比率の取り決めがスムーズに進みます。
定款を作成する
次に会社の基本的な方針となる定款を作成していきましょう。
定款は会社における憲法のようなもので、ここで定めた方針をもとに会社が成り立っていくという基本方針を掲げる重要なものになります。
定款の作成には以下の6つのポイントがあり、これらを決めなくてはいけません。
① 商号(社名)の決定
会社の顔をなる社名になりますので非常に重要な事項です。
② 会社の事業目的を明確にすること
どのような業務を行う会社なのか?を明確にしておかなくてはなりません。
大まかにはカテゴライズされているものがありますので、もっとも当てはまる業種を選定します。
③ 会社本店(本社)の所在地住所
本社を構える場所の決定とその住所になります。
④ 社員(合同会社なので出資者と同じ)の氏名と住所
ここでいう社員とは従業員ではなく、出資者を指します。
⑤ 会社債務への責任についての明確化
関節的な有限責任となります。
⑥ 社員の出資金や現物出資の内容について
出資金の額や現物での出資内容をすべて把握しておく必要があります。
万が一の倒産や負債時に有限責任における支払い義務の管理にも必要となります。
なお、定款の作成は紙と電子があり、それぞれ以下の特徴を持ちます。
| 項目 | 電子定款 | 紙定款 |
|---|---|---|
| 収入印紙 | 0円(印紙税非課税) | 4万円(課税文書) |
| 費用全体の目安 | 印紙代節約で総額を圧縮可能 | 印紙代が上乗せされ総額は割高 |
| 手続き方法 | オンライン作成+電子署名で完結 | 紙で作成・押印・原本保管 |
| 所要時間 | 即日~数日(環境が整えば迅速) | 数日~(郵送や窓口での待ち時間あり) |
| 必要機材・スキル | 電子署名環境(ICカードリーダー等)が必要 | PC+プリンタ+押印で実施可能 |
| 専門家依頼 | 司法書士・行政書士に電子対応で依頼可 | 紙でやり取り中心/郵送や原本管理の手間あり |
出資金を払う
会社設立に伴う出資金を決定し支払います。
合同会社では、代表社員の個人口座へ出資金を入金し、通帳のコピーなどで証明を残す形が一般的です。
銀行で専用口座を用意する必要はなく、比較的簡単に進められるのが特徴といえます。
ただし、出資金額や出資者ごとの割合が証拠として残るため、後のトラブルを避けるためにも丁寧に記録しておくことが重要です。
登記申請を行う
出資が完了したら、法務局で設立登記を申請します。
必要な書類として登記申請書、定款、印鑑証明書、印鑑届書などを準備しなければなりません。
登録免許税は資本金の額に応じて決まりますが、最低6万円が必要です。
登記申請は管轄法務局で行い、受理されれば2週間程度で法人格が付与されます。
提出書類の不備は補正を求められる原因になるため、事前に内容を確認し、司法書士や専門家へ依頼すると安心です。
各種届出を提出する
法務局での登録申請を終えますと会社自体の設立はできますが、実際の運営に際しての事業はまだ開始できない状態です。
ここから先重要な事項としては事業を開始するための各種届出が必要となります。
会社名義での銀行口座を開設したり、国や都道府県、市町村に対して税金の届け出を申請したり、代表者と従業員たちの社会保険に関する申請手続きなどを要します。
ちなみにこれらの届け出をする際には登記簿謄本と印鑑証明書が必須となりますので、事前に作成して準備しておく必要があります。
特に会社名義の銀行口座の新設は近年の犯罪傾向から審査が大変厳しくなってきているため、事業所や本社の事実環境をしっかりと整備したのちに窓口へご相談に行かれることをお勧めします。
合同会社設立に税理士は必要?
合同会社においての税理士意味
合同会社を設立するにあたり、その後の運営も含め税金対策や資金繰りに関しての相談役として、専属の顧問税理士と契約をするという方が多いです。
その理由としては法人税に関する全般の相談ができることで、会社として絶対に行ってはいけないボーダーラインなどの基準も教授してくれるため、健全経営を成しえるためにはなくてはならない必要不可欠な存在なのです。
では顧問税理士との契約で会社にとってのメリットにはることにはどのようなことが考えられるか、以下の項目に沿って解説してきましょう。
決算の申告を任せることができる
合同会社においては毎期ごとに税務申告をしなければいけないという義務があります。
税務申告をする際には膨大な対策案や豊富な専門的な知識を要しますので、個人で解決するのは得策とは言えません。
税務に長けた顧問税理士にすべて一任する方が賢明であることは間違いありません。
税務申告をする際には節税対策についてや税額控除のやり方など細かく難題が発生しますので、それらの処理にすべて対応してくれます。
助成金を受け取るための助言をもらえる
税理士のネットワークは通常では開示されていない情報もたくさんあります。
税務処理のみならず、助成金や補助金に関する申請の仕方や成功事例なども数多く保有しており、当事者によりフィットする妙案を提案してくれることも期待できます。
合同会社では資金繰りに苦労するケースが多いので、国からの助成金や補助金はしっかりと活用していくことは必要不可欠と言えます。
補助金の申請をして受理されるためには入念な事業計画などを提出しなければなりません。
どのような情報を取り入れると加点となりやすいかなどのノウハウももっているため、助成金などの対策にも税理士を大いに活用すると良いでしょう。
資金の運用に関しての助言をもらえる
前途でもお話したように助成金や補助金での資金補填は抜け目なく行うものとして、更に運営資金の調達などについても助言をしてくれる税理士も多く存在します。
前年度の決算書を元に今すべきことや長期的に計画を立て、これから将来を見据えた上で、今後取り組むべく事業展開などについても的確なアドバイスを受けることができます。
利益を生むためにはある程度の投資も必要になりますが、その際の見立てにおいても有益な情報を共有してくれることでしょう。
金融機関からの融資面における得策や取引先となる企業の情報など、あらゆる側面から会社をバックアップしサポートしてくれる存在となってくれるはずです。
合同会社を設立するか悩んだ場合のケーススタディ
合同会社を選択するべきか悩む人は多く見受けられます。
続いては、悩んでしまった場合の参考になるケーススタディを一例として紹介します。
ケーススタディ(成功例)
低コストで小規模ビジネスを立ち上げた例
フリーランスのデザイナーで、信用面よりもランニングコストの低さを重視し合同会社を設立。
設立費用を抑えた分、オフィス環境や宣伝に資金を回せました。
社員=経営者という仕組みのおかげで意思決定も早く、2年目には売上を倍増。
コストを抑えつつ効率的に事業を拡大できた成功例です。
柔軟な利益配分でモチベーションを維持した例
システム開発を行う合同会社では、利益配分を出資額ではなく「案件への貢献度」に応じて設定。
結果として努力が正しく報われる仕組みが生まれ、メンバーのモチベーションが高まりました。
株式数に左右されない公平感があり、ベンチャー的なスピード感を持ったチーム作りに成功しました。
ケーススタディ(失敗例)
資金調達で苦労した合同会社の例
あるITベンチャーはコストを抑えるため合同会社でスタートしました。
しかし、銀行融資やVCからの資金調達を進める際「株式会社のほうが信用度が高い」と指摘され、思うように資金を集められませんでした。
結果として、設立から1年後に株式会社へ組織変更する追加コストと手間が発生しました。
初期費用は抑えられても、成長を見据えるなら形態選びは慎重に検討が必要です。
出資者同士で利益配分でもめた例
飲食業を始めた3人の仲間は合同会社を選びました。
出資額は均等でしたが、店舗運営に関与する度合いが異なり、利益配分をめぐって意見が対立。
定款に明確なルールを盛り込んでいなかったため、解決まで時間と労力がかかりました。
事前に貢献度や役割を踏まえた利益配分ルールを定めることの重要性が浮き彫りになった事例です。
合同会社を簡単に設立するには(まとめ)
今回は株式会社と合同会社の両社における設立時のポイントについてご紹介していきました。
合同会社設立における一番のメリットは、設立コストやランニングコストが安いため、株式会社よりも手軽に設立できることです。
また、設立の手続きに関しても定款の認証などを行う必要がないため、費用もやすく済み、株式会社より手続きも簡単に行えます。
このため、技術力やスキルのある方は会社を辞めて独立し、合同会社を設立しようと考えるケースも多いのです。
しかし会社を立ち上げるということは大変なことです。
ここでご紹介していた両社の違いやポイントにおける合同会社設立の利点は、あくまでも「株式会社と比べて」簡単であるということであり、決して会社設立の手続きを甘く見てはいけないのだと肝に銘じておく必要があります。
設立の際には最低でも7種類の登記書類を用意し、法務局に提出しなければなりませんし、この手続きを個人で行おうとすると非常に厄介で手間や時間がかかる上、書類の抜け漏れのため正常に処理してもらえないなどのリスクも生じやすいのです。
さらに、税金対策についても熟知していなければ、節税面において損をしてしまう可能性すらあるのです。
ですので合同会社を設立する際には専門家に依頼されることをお勧めします。
上記のようなリスク回避や面倒な手続きの工数を全てなくすことができ、確実に会社を設立することができます。
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