会社を経営していると、妻を役員にすると経済的メリットがあると聞いたことがある人もいるでしょう。
もちろんメリットもありますが、デメリットも存在することを忘れてはいけません。
今回は妻を役員とするデメリットとみなし役員について解説します。
会社経営者や起業を考えている人は、ぜひ参考にしてください。
目次
妻が役員になる4つのデメリット
妻が役員になると4つのデメリットがあります。
- 社内に不和をうむ可能性がある
- 給与としてみなされないことがある
- 役員報酬を変更できない
- 副業をできない可能性がある
メリットもありますが、妻を役員とする場合のデメリットも存在するので覚えておくといいでしょう。
ここでは妻が役員になる4つのデメリットを紹介します。
社内に不和をうむ可能性がある
家族が役員になると、親族が努力なしに高額な給料を受け取っている、家族以外は役員になれないなどのイメージをつけてしまうでしょう。
これらのイメージにより社員の労働意欲を低下させることも多いです。
そして、どんなに成績を残しても出世できないと諦めてしまう社員が出る可能性もあるでしょう。
その結果、社内の人間関係などの労働環境が悪くなるかもしれません。
そのため、社員のやる気を削いでしまい、結果として社内に不和を生む可能性があることは覚えておくといいでしょう。
給与としてみなされないことがある
妻を役員にすると給与としてはみなされず、役員報酬となります。
役員報酬に関するルール作りをしっかりしなければ、役員報酬が損金として認められない可能性もあるでしょう。
給与と役員報酬とでは会計上の取り扱いも変わります。
また、給与と同じく役員報酬を全額損金として扱いたくてもうまくできないケースもあるので注意しましょう。
たとえば、毎月同じ金額を支払っていない限り、損金に算入することはできないなどのルールを守らなければ、法人税調整に利用されていると判断されてしまいます。
もし給与として扱いたければ、妻を役員ではなく従業員にした方が安心です。
役員報酬を変更できない
役員報酬は基本原則として、事業年度途中では変更できないため、もし業績が下がっても期首に決めた金額を支払わなくてはなりません。
ただし例外もあります。
例えば、経営が著しく悪化して、役員報酬の変更をしないといけないと認められれば変更することも可能です。
ただし、基本的には役員報酬は変更できないため、妻を役員にしても役員報酬は変えにくいことを覚えておきましょう。
副業ができない可能性がある
妻が他の会社で働いている場合、その会社が副業を禁止していると夫の会社で役員になることが副業とみなされてできないケースもあります。
もし他の企業に従事している妻を役員にしたい場合は、その会社の就業規則を事前に確認しておきましょう。
また、副業でも役員となると扱いが変わるかもしれないため、場合によっては妻が働いている会社に確認をした方がいいかもしれません。
妻に退職金は支給できる?
法人であれば妻を役員にしている場合、従業員と同様に退職金を出せます。
ただし、適正な金額でなければ費用としては扱えず、またどのような業務をやっていたか税務調査で聞かれる場合もあるため注意は必要です。
一方で、個人事業者が妻に支払った退職金は必要経費となりません。
ただし、必要経費にならなくても妻にこれまで働いてきた行為を労う退職金を支払うことは制限されていませんので、支払うこと自体の問題はありません。
みなし役員とは?
みなし役員とは「税法上の役員」を指します。
役員には「会社法上」と「法人税法上」の2種類があり、会社法上の役員は「取締役」「会計参与」「監査役」で、法人税法上の役員は「取締役」「執行役」「会計参与」「監査役」「理事」「監事及び清算人」「みなし役員」です。
みなし役員の定義は2つあります。
- 法人の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る)以外で、該当する法人の経営に従事しているもの
- 同族会社の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る)のうち、株式所有割合の要件を満たす者。かつ、該当する会社の経営に従事している者。
みなし役員は、実質的な役員とみなされ役員報酬の制限などを受ける場合があります。
また、「法人の経営に従事」している方とみなされ、「取締役など、事業主と利益を一にする地位にないこと」という条件に該当してしまい、「雇用保険適用対象外」と判断されるかもしれません。
みなし役員は、税務調査での論点となる1つのために注意が必要です。
妻を役員にした時の給与相場とは?
妻の役員報酬目安は、社長の報酬の60%~80%という考え方もあるようですが、いくらだったらいいという相場や基準値は存在しません。
なぜなら、妻の職務内容や会社の収益状況、従業員の給与などによって変わってくるからです。
たとえば妻を役員にしても経理の仕事しかさせずに役員報酬として100万円を支払っていて、一般従業員が30万円だった場合、税務調査で高いと指摘される可能性は高いでしょう。
そのため、税務調査で納得させられる根拠がなければ高額な報酬を支払えないと考えた方がいいかもしれません。
また、社長との報酬に差を設けておけば業務内容や権限や責任を考慮した報酬額となり、税務調査時に「いくらなら適正なのか」の質問もできます。
一番安全なのは役員報酬額を顧問税理士の先生と決めることで、事前に相談しておくといいでしょう。
常勤役員としてみなされる場合とは?
常勤役員としてみなされるには、下記3つの条件が必要です。
- 週5日で出勤をしている
- 経営の中核を担っている
- 管理職として部下の管理を行っている
それぞれの内容を詳しく見てみましょう。
週5日で出勤をしている
従業員と同じく、週5日で出勤していると常勤役員としてみなされます。
非常勤役員は必要な時だけの出勤でいいため、例えば会社でトラブルや案件が発生してからの出勤でも問題なく、毎日決まった時間に出社する必要はありません。
出勤日数は常勤と非常勤とで大きな違いなので、常勤役員とみなすには週5出勤になると認識しておきましょう。
経営の中核を担っている
常勤役員は、経営の中核を担っている必要があります。
なお会社法で定められている常勤役員の役割は以下の通りです。
取締役:業務執行の意思決定を担当
監査役:取締役と会計参与の業務を監査
会計参与:取締役と共同で、株式会社の計算書類等を作成
上記はあくまでも役割として定められているものであり、会社ごとにあるミッションをそれぞれ遂行しなければなりません。
社内でいざこざを起こさないためにも、常勤役員としての役割を全うすることは重要です。
一方で、毎日出社していても会社の業務に関係ないことをしている場合は、常勤役員に認められないことも多いでしょう。
特に、家族経営の会社の場合は出社しているだけで経営に関与していないこともあるでしょう。
このような場合は、常勤役員として認められにくいです。
管理職として部下の管理を行っている
常勤役員は管理職として部下の管理を行っているケースも多いです。週5で出社しているため、常日頃の業務にも精通していなければなりません。
部下を持っていることも常勤役員の特徴といえるでしょう。
また、直接部下を持っていなくても外注の管理などをしている場合でも、部下を持っているとみなされることもあります。
そのため、形式にかかわらず自分の裁量で人を動かす権利があり、動かす人がいるということが必要になるでしょう。
妻が役員になるメリットとは?
妻が役員になるメリットは以下3つです。
- 給与を経費にできる
- 信頼できる人材である
- 社会保険に加入できる
それぞれ詳しく解説します。
給与を経費にできる
妻を役員にすると給与を経費として計上でき、効果的な節税を実行できます。
とくに大きいのは、役員個人にかかる「所得税」と「住民税」が減額される点です。
所得税は累進課税率を採用しており、所得が下がれば税率も下がる仕組みとなっており、住民税は給与所得控除や基礎控除を使えるため、夫婦2人で報酬を分けると税率を下げられます。
ただし、実態のない形で妻を役員にしてしまうと報酬を損金として計上できないので、勤務をしっかりしていると認められるようにしましょう。
信頼できる人材である
役員は任期を簡単に変更できず、また経営日も近いので信頼できる人材である必要があります。
その点、自分の妻であれば信頼できる人材といえるでしょう。
とくに創立間もない忙しい時期に共に過ごす時間を作れるし、信頼できるパートナーと一緒に働くことで仕事のモチベーションアップにつながるかもしれません。
社会保険に加入できる
妻を役員にすると社会保険を経費にできます。
会社の役員報酬から妻の社会保険料は給与から天引きされ、会社は天引き保険料と同額を負担して社会保険料を納付すれば問題ありません。
さらに妻の年金受給時には国民年金(基礎年金)に上乗せされた報酬比例年金(厚生年金)も支給されるため、生活資金を増やせるメリットもあります。
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まとめ
信頼できるパートナーだからと妻を役員にするメリットは確かにありますが、会社内の不和を生む可能性や給与として認められないケースなどのデメリットも存在します。
また、みなし役員と判断される場合もあるため、妻を役員にするには注意が必要です。
創業間もない頃は安いコストで一緒に働けるため役員にしてもいいかもしれませんが、会社を大きくしていく段階で従業員にするなども考えた方がいいかもしれません。
個人でも法人でも独立を少しでも考えている人はお気軽に経営サポートプラスアルファにご相談ください。
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