会社を設立しようとすると、決定しなければならない事項が山のように出てきます。
代表者、資本金額、決算日など、数ある決定事項の中でも、最も頭を悩ませるのは、会社名(商号)ではないでしょうか。
会社名は、個人の氏名と同様に第一印象に大きくかかわってきます。
会社名をつける所から、まだ見ぬ取引先との交渉は始まっているといっても過言ではありません。
特に、海外の企業や顧客との取引を予定している場合、アルファベットや英語表記の会社名をつけたいという方は多いのではないかと思います。
しかし、アルファベット表記で会社名をつけるということは可能なのでしょうか。
そこで今回は、会社名にアルファベットを使うことはできるのかについて詳しくご紹介します。
会社名にアルファベットを使うことはできる?
平成14年に商業登記規則等の改正が行われ、アルファベットやその他の記号が利用できるようになりました(現商業登記規則第50条)。
また、アルファベット、英語表記を大文字小文字に関わらず使用可能です。
しかし、株式会社、合同会社など会社の種類となる部分を「Co.,Inc.」,「Co.,Ltd.」のように英語表記とすることはできません。
詳しくは、法務省のHP「法務省(商号にローマ字等を用いることについて)」に記載されていますのでご確認ください。
会社の種別部分も英語表記として利用したいという場合は、定款に「本会社はABC株式会社と称し、英文ではABC Co.,Ltd.とする」といった文言を入れてください。
定款とは、会社設立時に法務局に登記申請をする際に必要な書類です。
商号、本店住所、代表者などを定め、設立後は定款の内容に沿って経営を行うことになります。
定款作成時に、「英文ではABC Co.,Ltd.とする」と定めてしまえば海外との取引時にCo.,Ltd.などの英語表記で利用することができるという訳です。
「既に登録した会社名を今からアルファベット表記にしたい」と言う場合も、後半に記載の「会社名(商号)の登録・変更方法」に記載した方法で変更可能となっています。
会社名のルール
アルファベットの利用可否以外にも、会社名を決める際のルールが会社法、現商業登記規則で定められています。
禁止事項に該当すると百万円以下の過料に問われる場合もありますので、ルール、禁止事項をしっかりとチェックした上で、会社名を決定してください。
- 会社名に利用できる文字・記号
- 禁止または避けたほうがいい会社名
会社法(第二章 会社の商号)
商業登記規則第50条(第二節 商号の登記)
会社名に利用できる文字・記号
会社名として登録が可能な文字・記号は、以下のようになっています。
- ひらがな・カタカナ・漢字
- ローマ字(大文字、小文字問わず)
- アラビヤ数字(0~9)
- 「&」(アンパサンド)
- 「’」(アポストロフィー)
- 「,」(コンマ)
- 「-」(ハイフン)
- 「.」(ピリオド)
- 「・」(中点)
例えば、ABC株式会社やabc株式会社、株式会社123、株式会社ab-cdなどでも問題ありません。
符号(「&」、「’」、「,」、「-」、「・」)は、先頭や末尾ではなく文字を区切る為の中間地点であれば利用できます。
また、「.」(ピリオド)は省略を表すという意味合いで末尾での使用が可能です。
複数の英単語(ローマ字)を用いて表記する場合に限り、スペース(空白)を用いることも許可されています。
禁止または避けたほうがいい会社名
「公序良俗に反する会社名」、「会社の一部門を表す会社名」、「他の会社や種類と誤認されるような会社名」は禁止されています。
公序良俗に反する会社名
民法第90条で公序良俗に反する法律行為は無効となると定められています。
会社名である商号においても同様で、社会の秩序や道徳観念に反する会社名は認められていません。
そのため、犯罪や反社会性など秩序や道徳に反する物事を想像させるような会社名は避けるようにしてください。
会社の一部門を表す会社名
「支社」、「支店」、「営業所」など会社名が会社の一部を表すような会社名も禁止されています。
例えばABC支店株式会社、ABC営業所株式会社といった感じですね。
他の会社や種類と誤認されるような会社名
既にある会社と同じまたは類似しているものや、会社の種類を誤認してしまうような会社名も避ける必要があります。
例えば、ABC株式会社という会社が既にあり、関係がないにも関わらず新ABC会社、ABC2号株式会社としたり、合同会社であるにも関わらずABC株式会社合同会社にしたりといった名前の付け方です。
法務省では、重複、または類似した会社名がないかを調査する商号調査を窓口、インターネットネット上で受け付けています。
定款作成前に確認して誤認の可能性がないか確認しておきましょう。
法務省(オンライン登記情報検索サービス)
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アルファベットで会社名を登録するメリット
- 海外進出をしやすい
- 会社名を覚えられやすくなる
海外進出をしやすい
日本語表記の会社名の場合、読みにくい、聞き取りにくいなど、海外の会社や顧客とのやり取りで不利になる可能性が考えられます。
その点、アルファベットや英語表記の会社名であれば、海外の方にも読み聞きしやすく、取引をスムーズに進めることができ、交渉が有利になります。
海外との取引が多い業種であったり、ゆくゆくは海外進出も視野に入れていたりという事であれば、アルファベット、英語表記の会社名で登録する、または定款に「英文ではABC Co.,Ltd.とする」といった文言を追加することをおすすめします。
会社名が頭に残りやすくなる
アルファベット表記の会社名にするとインパクトのあるイメージを与えやすく、頭に残りやすくなります。
デザイン性が増して、ロゴとしても使いやすくなりますので、堅苦しいイメージではなく、おしゃれで覚えやすい名前にしたいと言う場合は、アルファベットが適しているのではないでしょうか。
アルファベットで会社名を登録するデメリット
- 聞き間違い、記入間違いが多くなる
- 銀行振り込み、ネットのフォーム入力などでエラーになる場合がある
聞き間違い、記入間違いが多くなる
よくある〇〇工業株式会社、〇〇商事株式会社などに比べると、どうしても聞き間違い、誤記入が多くなります。
インパクトを与えやすく頭に残りやすいというメリットがある反面、定着するまでは、聞き間違いや誤記入がある程度発生することは覚悟しておいたほうがいいかもしれません。
聞き間違い等を防ぐためにも、長すぎず、覚えやすい名前付けを心がけてください。
銀行振り込み、ネットのフォーム入力などでエラーになる場合がある
銀行振り込みやフォーム入力などの作業に関しては、アルファベット表記の方が手間になりやすいです。
日本語やカタカナに比べてエラーも出やすいので、こちらもある程度は覚悟しておいた方がいいと思います。
銀行振込を窓口で行ったり、フォームは窓口に問い合わせたりと対処方法を考えておきましょう。
会社名の登録・変更方法
ここまでで、会社名をつけるためのルール、メリット・デメリットについて分かっていただけたのではないでしょうか。
ここからは、会社名の登録・変更方法についてご説明します。
会社名(商号)の手続きは、管轄の法務局で行う必要があり、手続き方法には主に以下の2通りがあります。
- 会社名を新規に(会社設立と同時に)登録する場合
- 既に登録した会社名を変更する場合
会社名を新規に(会社設立と同時に)登録する場合
会社を設立する際は、管轄の法務局へ会社設立登記申請手続きを行う必要があります。
会社設立登記申請の必要書類として、定款という設立予定の会社に関する法律のようなものを作成するのですが、そこに会社名となる商号を記載します(会社種類によっては公証役場で定款認証が必要)。
定款を含めた必要書類をもとに会社設立手王機申請を行い、内容に問題がなければ会社名が登記簿に登録されます。
海外との取引で会社種類部分も英語表記で表したい場合は、定款に「本会社はABC株式会社と称し、英文ではABC Co.,Ltd.とする」といった文言を入れて手続きしてください。
既に登録した会社名を変更する場合
会社名を変更する場合は、定款の内容によって方法が2パターンに分かれます。
- 定款に「英文ではABC Co.,Ltd.とする」といった文言を入れている
- 定款に「英文ではABC Co.,Ltd.とする」を入れておらず日本語表記の会社名のみ
定款に「英文ではABC Co.,Ltd.とする」といった文言を入れている
法務局で商号の更正申請を行い、商号を訂正します。
申請後は、日本語、英文での利用時ともにアルファベット表記の会社名を利用できるようになります。
定款に「英文ではABC Co.,Ltd.とする」を入れておらず日本語表記の会社名のみ
商号変更申請を行ってください。定款変更のために、登記申請書、株主総会議事録、株主リスト、委任状(代理人の場合)、登録免許税3万円、代表取締役の個人実印、代表取締役個人の印鑑証明書、変更前の会社実印、変更後の会社実印、印鑑届出書などを準備し、法務局で手続きを行う必要があります。
まとめ
平成14年に商業登記規則等の改正によって、アルファベットを含む、会社名に利用可能な文字・記号が増やされたことにより、会社名の可能性が広がりました。
アルファベットのみにしたり、漢字や記号も混ぜて見たりと、さまざまな名前を付けることができます。
既に登録した会社名をアルファベットに変更することもできます。
必要な場合は、法務局で更生または変更手続きを行ってください。
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