会社設立の際、融資を受けたいと考えている方は多いことでしょう。
しかし、「実績がないので、スムーズに融資を受けられるか不安だ」「いきなり銀行に融資を申し込んで大丈夫だろうか」といった不安を抱えている方もいると思います。
会社設立の際に借入れしたい方におすすめなのが、日本政策金融公庫や自治体で取り扱っている創業融資です。
今回は、創業融資で借入れできる金額や融資を受けられる場所、審査方法などを詳しく解説します。
目次
創業融資制度の基礎知識
はじめに、創業融資制度とはどのようなものかを説明します。
銀行で受けられる一般的な融資との違いやメリット・デメリットを詳しく解説しましょう。
創業融資とは
創業融資とは、その名のとおり創業用の資金を融資してくれる制度です。
銀行等で融資を受ける際は、信用や実績が必要になります。
会社の運転資金や事業資金の融資ならば、業務成績を示せばよいのですが、まだ設立前の会社では示せるものがありません。
そのため、審査に通らなかったり希望する額の融資を受けられなかったりすることもあります。
創業融資は、創業資金に特化した融資なので、実績がない方でも受けられるのが大きなメリットです。
創業融資には、以下のような種類があります。
日本政策金融公庫の新創業融資制度
日本政策金融公庫の新創業融資制度とは、日本政策金融公庫の国民生活事業が取り扱っている融資です。
無担保無保証で最大3千万(運転資金は1500万)まで融資を受けることができます。
日本政策金融公庫は政府系金融機関の1つなので、安心して利用ができ、年利も2021年1月現在で0.6~2.45%とかなり低くなっています。
年利は担保の有無や融資の額、方法によって変わるので、説明をよく聞くの大切です。
ただし、誰でも無条件に融資が受けられる訳ではありません。
「新たに事業を始める方」または、「事業開始後税務申告を2期終えていない方」が対象です。
それに加えて、「新たに事業を始める方」と「事業開始後税務申告を1期終えていない方」は、創業時に「創業資金総額の10分の1以上の自己資金」を用意できることが融資を受ける条件になっています。
つまり、自己資金がまったくない状態では融資を受けることはできません。
ただし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」、「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」など、一定の条件を満たすことができれば、自己資金が少なくても融資を受けることができます。
詳しくは、全国にある日本政策金融公庫の支店に問い合わせるか、ホームページを確認してください。
自治体施行う制度融資
「制度融資」とは、自治体・信用保証協会・指定金融機関が連携して運営している融資制度の総称です。
創業融資だけでなく、販路開拓融資・設備融資・経営強化融資なども受けることができます。
融資の内容や仕組み、受ける条件などは自治体によって異なりますが、今回は東京都の制度融資を例にとって説明しましょう。
東京都で制度融資を利用した場合、自治体が利用者に指定金融機関を斡旋します。
融資を受ける際、信用保証協会が連帯保証をすることで、融資したお金が返済不能になるリスクを低くするのです。
さらに、自治体は利用しに返済のサポートをしてくれるので、返済がより容易になります。
ただし、この制度も誰もが無条件に利用できるわけではありません。
東京都の場合は、資本金が5千万~3億円以下、従業員が最大で300人以下の会社であることが条件です。
資本金の額や従業員の人数は業種によって異なります。
また、保証付融資額の合計が8,000万円を超える場合は物的担保が必要です。
このほか、信用保証協会が債務の保証を行うために一定の信用保証料を支払わなければなりません。
銀行の通常融資と比較して
創業融資は、銀行の通常融資より金利が低いのが最大の特徴です。
銀行から融資を受ける際の金利は、2%~4%前後が相場となっています。
一方日本政策金融公庫や制度融資は条件が合えば金利1%以下で融資を受けることも可能です。
また、創業融資は担保や保証人が不要なことが多く、会社を設立する際の負担を少なくすることができます。
銀行で受ける融資よりも大きな額を借入れできることもメリットです。
その一方で、と銀行の融資は条件があえば審査から融資までの期間が短いのが大きなメリットです。
創業融資制度は適用される条件が厳しい分、審査にも時間がかかります。
利用できる人にも制限があり、「利用したかったけど条件に合わなかった」ということもあるでしょう。
銀行は融資対象が幅広いので、「理由があっていますぐ融資を受けたい」という場合や、保証人や担保が用意できるという場合は、銀行の融資を利用した方がおすすめなこともあります。
どちらの融資にもメリット・デメリットがあることを理解して、よりメリットが多い融資の方を利用するといいでしょう。
ちなみに、創業融資を受け、さらに銀行から融資を受けるということは可能です。
創業融資に必要なものは?
では、創業融資を受けたい場合はどのような書類が必要なのでしょうか?ここでは、日本政策金融公庫の新創業融資制度と制度融資、それぞれに必要な書類について解説します。
日本政策金融公庫の新創業融資の場合
日本政策金融公庫の新創業融資を利用したい場合、最大で以下の6種類の書類を提出しなければなりません。
- 借入申込書
- 創業計画書
- 任意:月別収支計画書(資金繰り計画書)
- 履歴事項全部証明書の原本(申込人が法人の場合)
- 見積書(資金使途が設備資金の場合)
- 不動産の登記簿謄本または登記事項証明書(不動産担保を希望する場合)
この中で、業種や申し込み者の形態にかかわらず必要なのが、借入申込書と創業計画書です。
借入申込書とは、文字どおり借入れを申し込む最も基本となる書類となります。
申込人名・申込金額・借入希望日・返済期間・資金使途・連絡先などを記入しましょう。
記入用紙は、各都道府県にある日本政策金融公庫の支店で配布しているほか、ダウンロードも可能です。
この書類は全ての基になるものなので、最初に記入してください。
創業計画書には、創業の動機・経営者の略歴・取扱商品・サービス、必要な資金や調達方法、事業の見通しなどを記入します。
これは、融資の審査を受ける際、担当者が最も重要視する項目です。
ですから、どんな質問をされても答えられるようにしておくことも重要になります。
なお、借入申込書や創業計画書は全国共通フォーマットがありますが、創業計画書は支店によって独自の書き方を定めているところもあるので、確認してから書き始めましょう。
すでに会社を立ち上げ、法人として融資を申し込む場合は、履歴事項全部証明書の原本も必要です。
これは、法人の名称・本店所在地、代表者などの登記事項が正しいか確かめるために用います。
法務局から取り寄せてください。
このほかの書類は、職種や条件によって提出が必要です。
分からない場合は、日本政策金融公庫の各支店に尋ねてみてください。
このほか、創業融資を申し込む際の面談には、以下のような書類が必要です。
- 預金通帳:普通、定期等などで直近6カ月以上の取引を記帳したものに限ります。公共料金やクレジットカードの引き落としに利用されていたものが必要です
- 自己資金の額、蓄積状況がわかるもの:通帳には記入できない自己資金(有価証券)などがある場合は提示します。なければ不要です
- 各種ローンの支払明細:住宅・自動車・会社を設立する際に必要な設備のローンがある場合は、借入額や月々の支払額などが分かる書類を用意してください
- 固定資産課税明細書と固定資産税の領収書:会社が不動産を所有している場合に必要です。
- 賃貸借契約書:店舗や事務所の賃貸契約書です。自宅が賃貸分権の場合は自宅の分も必要になります。まだ契約が結ばれてない場合は、賃貸借予約契約書を用意してください。
- 勤務時の源泉徴収票:すでに創業しており、前職が勤務者の場合に提出します。まだ会社を退職していない場合は、最も新しい源泉徴収票を提出してください
- 運転免許証等の公的な本人確認資料:パスポートやマイナンバーカードでも可能です
このように必要な書類が多いので、確認しながらそろえていってください、
自治体や銀行の場合
自治体の制度融資や銀行の融資を利用する場合も、日本政策金融公庫の新創業融資を利用するのと同様に、書類が必要です。
ただし、自治体や銀行によって必要な書類が違います。
東京都の場合は、以下の書類が必要です。
- 信用保証委託申込書:1部
- 信用保証委託契約書:1部
- 個人情報の取り扱いに関する同意書:2部
- 印鑑証明書(申込人及び連帯保証人のもの):1部
- 商業登記簿謄本:1部
- 確定申告書(決算書)の写し(原則直近2期分):2部
- 納税証明書(法人税<その1>又は事業税、すでに創業している場合):1部
- 見積書又は契約書の写し(設備資金の場合のみ必要):1部
- 創業計画書(創業融資を利用する場合及び業歴1年未満の場合に必要):1部
これは、創業融資を受けるために最低限必要な書類です。
また、融資の内容によって必要な書類が変ってくるので、分からないことがあればその都度問い合わせてください。
書類が間違っている、もしくは不足している場合は審査に通らずに書き直しになり、時間のムダです。
また、今回挙げたのは東京都の例なので、自治体によっては別の書類が必要になることもあります。
事前に必ず問い合わせてから作成していきましょう。
銀行融資を受ける場合も同様です。
銀行によって必要な書類が異なるので、確認してから準備してください。
種類だけでなく、どの書類が何通必要なのかも確認しておくことが大切です。
銀行によってはホームページなどでは確認できないこともあります。
その場合は電話で問い合わせてください。
審査に受かるためのポイントは!
さて、融資を申し込んだからといって必ず借入ができるとは限りません。
その前に審査があります。
審査次第で融資が受けられなかったり減額されたりすることがあります。
ここでは、審査に受かるポイントについて解説しましょう。
融資の審査は一発勝負
融資の審査に一度落ちれば最低でも半年、長ければ1年間は再審査を受けられません。
「創業計画書の不備を直したのでもう一度審査してください」といった要望は基本的に受け入れられないので、注意が必要です。
融資を申しこめる先は日本政策金融公庫や制度融資だけではありません。
しかし、金利の低さ、無担保で融資を申しこめるなどのメリットは大きいものです。
審査に落ちてしまえば事業計画の大幅な修正を迫られることになるでしょう。
特に、会社の設立の為の融資に銀行は厳しめの判断を下すことが多いので、可能ならば、日本政策金融公庫や制度融資を利用したいものです。
そのためにはどうしたらいいのか、解説して行きましょう。
創業計画書を作り込む
融資とは、返済できる可能性が高い人に行うものです。
事業拡大資金や設備を増設するための資金ならば、これまでの実績を審査してもらえばいいでしょう。
しかし、会社の創業資金の場合は実績がゼロです。
ですから、審査する人は今までの経験や仕事での実績をみて、融資が可能かどうか審査します。
たとえば、今まで会社に所属してやってきた仕事を独立して行いたい場合などは、比較的審査が通りやすいです。
仕事に関するノウハウをある程度身につけている可能性が高いからです。
反対に、全く畑違いの分野で起業したい、もしくは経営に関する知識や経験がない場合は、別の点から厳しく審査されます。
創業融資の場合、注目されるのは創業計画書と自己資金です。
創業計画書は、会社の設計図のようなもので、これがいいかげんでは審査に通りません。
特に、売上げと利益の予想に説得力がない、事業計画の妥当性がないと審査する人に判断されれば厳しく質問されたうえ、審査に落ちる可能性が高まります。
そのため、創業経緯各所は十分な時間を使って練り上げてください。
ネットを検索すれば「審査に通りやすい創業計画書の作り方」のようなテンプレがたくさんヒットしますが、それを丸写ししても審査には通りません。
都市部で大人気な事業でも、地方ではいまひとつであることもあれば、その逆なこともあります。
業種だけでなく、事業を始める場所や従業員の数なども考慮にいれた上で作成することが大切です。
信用情報や返済能力
創業融資の審査は、信用情報や返済能力もチェックされます。
信用情報とは、民間の金融機関が共通して保管している情報です。
たとえば、クレジットカードで買い物をしたりローンを組んだりした場合、その経歴が全て記録されます。
延滞や滞納があった場合はすぐに分かるうえ、審査に影響するので注意が必要です。
また、公共料金や携帯電話の料金などもチェックされます。
ローンやクレジットカードの滞納や延滞については注意していても、公共料金や携帯電話の遅延や滞納は無頓着という方も以外と多いのです。
滞納や延滞がある場合は、信用度が大幅に下がりますので、審査を受ける前にしっかりとチェックして起きましょう。
家族が使っている携帯でも、名義が自分の場合は滞納や延滞があると信用情報が傷つきます。
返済能力の有無は、自己資金力と創業改革署の両方で判断されるのが一般的です。
今は資本金が1円でも会社を作ることができますが、これでは返済能力に不安があります。
自己資金を全額自分で賄うのは無理でも、可能な限り多く用意しておくのがおすすめです。
たとえば、会社員から独立した場合は、退職金を自己資金に含めることもできます。
なお、自己資金などの申請は正確に行いましょう。
虚偽の報告をすると審査する人の印象が悪くなるだけでなく、審査に悪影響が出るので絶対にやってはいけません。
消費者金融などから借り入れがあれば審査前に返済しておく
会社を設立しようと考えている人の中には、すでに銀行や消費者金融に借入れがあるという方もいるでしょう。
必要であれば、借入れは決して悪いことではありません。
しかし、借入れが多ければ必然的に返済も多くなります。
借入れが多い人は、返済能力が低いとみなされてしまうこともあります。
ですから、審査を受ける前に自分の借入れ状況を確認しておきましょう。
可能ならば、他の借入れは審査前に完済しておくのがおすすめです。
特に、事業とは関係ないことで借入れがある場合は、完済しておくか少しでも借入額を減らしておきましょう。
ひとりで悩まないで相談することが大切
融資をしてもらうために審査を受けることは生涯で1,2度しかありません。
ほとんどの方が、会社を設立するときが初めて融資の審査を受ける機会であることでしょう。
ですから、分からないことがあって当然です。
特に、創業計画書を作る場合はひとりで悩まず知識や経験がある人に相談してみてください
融資を受ける際の自己資金はいくら必要?
自己資金とは、会社を設立したり運営したりしていくために自分で用意するお金です。
現在は、自己資金1円でも会社を設立することができます。
しかし、創業融資を受ける場合は自己資金が少なければ審査に通りません。
ここでは、融資を受ける際に必要な自己資金について説明します。
自己資金とは
自己資金とは、手元にあって自分が自由に使えるお金です。
会社設立の自己資金とは、会社を設立するためだけに使える自前で用意したお金を指します。
会社を設立するには、法務局などに提出する書類をそろえるだけでも、20~30万円が必要です。
そのため、最低でもそのくらいの費用は自己資金として用意しておく必要があります。
最初の資金は0円でもスタートできる?
2006年に新会社法が施行され、自己資金が1円でも会社が設立できるようになりました。
ですから、法律上は自己資金がほぼゼロでも会社を設立することは可能です。
しかし、会社を設立する際はもちろんのこと、運営にも資金が必要です。
会社を設立してもすぐに利益が出るわけではありません。
利益が出るまで会社を維持していく費用がなければ、会社はつぶれてしまいます。
それに加えて、職種によっては設備投資も必要です。
ですから、自己資金がゼロで会社を立ち上げるのは厳しいといえます。
また、利益が出やすい職種であっても、何かあった時のためにすぐに使える資金があれば、安心感が違います。
自己資金の調達方法
自己資金を調達するには、以下のような方法があります。
- 自分で貯める
- 国や自治体の補助金・助成金を利用する
- 親から借りる
- クラウドファンティングなどを利用する
自分で貯めたり補助金・助成金を利用したりして集めた資金は返済の必要はありません。
親から借りたお金は返す必要がありますが、利子は不要です。
信用があれば、返済期間も長くしてもらえるでしょう。
なお、友人・知人・親戚から借りたお金というのは自己資金に含まれません。
借入金に該当します。
クラウドファンティングは、ここ数年でメジャーになってきた方法です。
創業計画をネット上で公開して賛同者から出資を募ります。
数千円から出資額を調節することができるので、誰でも気軽に参加しやすいのがメリットです。
見返りとして、会社の商品やサービスを提供します。
創業計画や見返りが魅力的だと大勢の出資者を集めることが可能です。
ただし、出資者が都合よく集まらないこともあります。
クラウドファンディングを頼りにし過ぎるのはおすすめできません。
会社設立に必要なお金を考える
前述したように、会社設立のための書類をそろえるだけで20万円以上の費用が必要です。
それに設備費・人件費・家賃・商品仕入れ代などが加わります。
職種によって費用の内訳や総額は異なりますが、最低でも数十万~100万円程度は必要になるでしょう。
さらに、会社設立後に利益が出ないことを見越して、運転資金も用意しておかなければなりません。
月商予測の2~3倍を用意しておくのが理想です。
これらすべてを自己資金で賄うのは厳しいという方も多いでしょう。
それを補うのが融資です。
返済を考えた場合、受ける融資金額の目安は自己資金の2~3倍と言われています。
ですから、自己資金が100万ならば、200万~300万、400万ならば800万~1200万の融資を申し込むのが妥当です。
なお、日本政策金融公庫の融資を受ける場合、「創業資金総額の10分の1以上の自己資金」が必要です。
自己資金ゼロでは融資を受けることができません。
自己資金は起業者の本気度
自己資金は、起業する人がどれほど真剣に経営のことを考えているかを測るバロメーターの役割も果たしています。
「経営のことを本気で考えている人ほど、お金をためているはず」という理屈です。
また、自己資金が多ければそれだけ会社としての体力があり、利益を上げる可能性も高まります。
ですから、融資できる額も大きくなります。
自己資金を何千万も用意する必要はありません。
それに、職種によっては「今すぐに商売を始めなければ、儲け時を逃がす」ということもあるでしょう。
しかし、融資を受けるためにも自己資金は必要です。
特に、創業融資を受けたい場合は、その10分の1は最低でも自己資金を用意しておきましょう。
なお、自己資金には起業する人の個人資産も含めることができます。
例えば、個人名義の家や土地などです。
土地のほか、有価証券や仮想通貨も個人資産に含まれます
創業融資の返済期間は?
融資を受けたら返済しなければなりません。
では、日本政策金融公庫の創業融資はどのくらいの返済期間があるのでしょうか?この項では、返済期間について詳しく解説します。
返済期間は自分たちで決められる
日本政策金融公庫の創業融資は、運転資金が借入れから7年以内、設備資金は20年以内で返済するように決められています。
運転資金とは人件費・広告宣伝費・仕入れの費用などです。
光熱費や家賃も運転資金に入ります。
設備資金とは、事業をおこなうために必要な店舗・工場・機器・施設にかかる費用です。
設備費用を借入れするには、見積書が必要になります。
ですから、日本政策金融公庫はどんな名目でどのくらいのお金を融資したかしっかりと把握しています。
この年数を超えなければ、「何年間、何回払いで返済する」と借り手が返済期間を決めることが可能です。
ただし、誰でも7年以内、20年以内での返済が認められるわけではありません。
融資を受ける条件、自己資金の額、借入金の額により、日本政策金融公庫から「何年以内で返済してください」と注文を付けられることもあります。
自治体の融資制度は自治体ごとに返済期間が異なりますので、各自治体が作っている融資制度のホームページなどを参考にして調べてみてください。
返済期間を長く設定することもできる
日本政策金融公庫の創業融資を利用する場合、運転資金では1年以内、設備資金では2年以内の「据置期間」を設けることができます。
据置期間とは、利息だけを払えばよい期間です。
日本政策金融公庫の金利は低いですから、据置期間内の返済は数千円~1万円代になることが一般的です。
会社は、設立してしばらくは利益が上がらず運転資金を崩しながら操業していくこともあります。
そんなときに据置期間があれば、返済がかなり楽になるでしょう。
また、返済期間を長くすればそれだけ1回に払う金額は少なくなります。
ただし、返済が長くなるほど返済する総額は大きくなるのでよく考えて返済期間を決めることが大切です。
会社の設立に関するノウハウを記した本やwebサイトの中には、「だいたいこのくらいの期間で操業融資は返済するといいでしょう」とよく目安が記してあります。
しかし、それはあくまでも一例です。
職種によって会社を設立してすぐ利益が出るところと、利益が出るまでに時間が必要なところがあります。
会社を経営して行くには、人件費・商品を仕入れる費用・光熱費・店舗や事務所の家賃などさまざまな経費がかかるものです。
その総額も、実際に会社を運営してみなければ分かりません。
短期間で融資を返そうとすれば、それだけ負担も大きくなります。
職種や会社の売り上げ、必要経費などを熟考したうえで、返済期間を決めてください。
また、突発的なアクシデントがあることも想定し、多少余裕あるプランを作っておくのがおすすめです。
計画的に返済すれば負担は少ない
日本政策金融公庫の金利は単利です。
元本にのみ利息がかかるので、元本を減らすほど利息も減っていきます。
ですから、返済期間を短くするほど月々の負担はだんだんと軽くなっていき、返済する総額も少なくなります。
ただし、前述したように短期間での返済は1回当たりの返済額が大きくなるので、創立したばかりの会社では負担が大きくなりやすいでしょう。
特に、利益が上がりにくい会社の場合、借入額が大きければ返済額が負担になって会社が立ちゆかなくなってしまいます。
ですから、返済額や期間は税理士などと相談し、無理のない計画を立てていきましょう。
会社を設立する時はやるべきことがたくさんあり、融資の返済期間にまでなかなか頭が回りません。
しかし、ここでいいかげんに決めてしまえば設立後に後悔することもあります。
一度決めた返済期間を変えることはとても難しいので、余裕を持ち、かつ返済期間が長すぎないように期間を設定しましょう。
そうすれば、負担もかなり少なくなります。
追加融資を受けたい場合には注意が必要
日本政策金融公庫では、創業融資以外の融資も行っています。
銀行より金利も低く返済期間も長く設定できるので、追加融資を依頼したいと思う方もいるでしょう。
しかし、日本政策金融公庫はすでに融資を受けている場合、最低でも3割の返済が行われていないと追加融資を受けることができません。
たとえば、会社設立3年後事業が好調で設備投資をしたい場合、操業融資がどれくらい返済されているかも審査されます。
返済額が大きいほど追加融資も受けやすくなるでしょう。
ですから、追加融資を受けたい、もしくは受ける予定がある場合は、その時までに最低3割は返済が終っているように計画を立てることが大切です。
融資の面接を受けるときの注意点
融資を希望する場合は、担当者との面接があります。
面接だけで融資の可否を決められるわけではありませんが、面接がうまくいけば融資の希望が通りやすくなることは確かです。
ここでは、融資の面接を受ける際の注意点を解説します。
身だしなみなどの最低限の礼節
見た目で人を判断してはいけないと言われていますが、場にふさわしい格好をしていくことは社会人としてのマナーです。
融資の面接を受ける際、服装の規定はありません。
しかし、カジュアルな格好はもちろんのこと、ジャケットにポロシャツといったオフィスカジュアルもできれば避けましょう。
理想は、男女ともにスーツです。
女性の場合はパンツスーツ、スカートどちらでもかまいませんが、華美すぎるものは避け、シンプルなデザインのものを選んでください。
言葉づかいも、社会人にふさわしいものを意識してください。
過剰な敬語を使う必要はありませんが、友人と話すような砕けた口調はいけません。
基本は「です、ます」で顧客に対するような態度で接してください。
創業計画書との整合性
融資の面接は1時間前後が平均的です。
限られた時間の中で効率よく話をするために、審査する人は、創業計画書に基づいて質問をしていきます。
創業計画書の内容と話す内容に矛盾があればそこを突っ込まれますので、創業計画書はよく読みこんで、自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。
また、創業計画書に不明な点があった場合もいろいろと聞かれるので、注意してください。
たとえば、よく使われている外来語を多用しすぎると、文章の意味がよく伝わりません。
そのほか、マニュアルの例文をそのまま写してしまうと矛盾や意味不明な点が出てきます。
文章はつたなくてもいいので、わかりやすい言葉を使い、具体的に書くように心がけましょう。
関係のない話はしない
面接時間は限られています。
事業の話をすると話が脱線しがちな人は気を付けてください。
熱弁をふるうのはかまいませんが、無駄な話をしていると印象が悪くなります。
その一方で、卑屈になる必要もありません。
こちらは融資を受ける立場ですが、融資をする人と受ける人の立場は対等です。
「自分に投資をしてください」という態度で、堂々と接しましょう。
その方が印象はよくなります。
ただし、感情的になってはいけません。
意地悪な質問をされても、努めて冷静さを保ちましょう。
言ってはいけない言葉はあるの?
いわゆるNGワードのような言葉はありませんが、著しく印象が悪くなる言葉はあります。
ここでは、その一例を紹介します。
売り上げや経費計上の根拠はよくわかりません
創業計画書には、売り上げや経費の計算をして記載する必要があります。
あくまでも計算上のことですから、実際の売り上げや経費とずれていても問題ありません。
しかし、なぜその数字を計算して出したのか、根拠を示す必要があります。
この根拠を示すことができないと、印象派大幅に悪くなります。
特に、「わかりません」といいきってしまうと、「何を根拠にこの数字を出すのか」と突っ込まれる可能性があります。
さらに、経営に関する真剣度が低いと思われてしまうこともあるでしょう。
いくら借りられますか?
「いくらなら貸してくれますか」といった意味の言葉は、つい言ってしまいがちです。
借り手としては、自分の信用度を測るための何気ない言葉かもしれませんが、審査する人の印象が悪くなってしまいます。
会社を経営するということは、どこにどれだけお金を使うのか、きちんと把握しておかなければなりません。
創業の際も同様です。
会社を設立する際、どのくらいの費用が必要なのか、自己資金でどの程度賄えるのか知っておく必要があります。
それなのに、「いくら借りられますか?」と尋ねるのは、経営者として未熟であると告白しているのと同様です。
日本政策金融公庫は、最大で3000万(運営資金は1500万)まで融資を受けることができます。
できるだけ多くの融資を受けたいと思う方もいるでしょう。
しかし、「いくら貸してくれるのか?」と尋ねるのではなく「いくら貸してください」と言った方が印象はぐっと良くなります。
資金繰りは専門家に任せてあります
会社経営で一番頭を悩ますのは、資金繰りです。
会社を設立するときだけでなく、その後も四苦八苦することも多いでしょう。
審査する人も資金繰りに関しては突っ込んだ質問をしてくる可能性があります。
会社を設立する際、経理の専門家を雇うという人もいるでしょう。
しかし、経営者も資金繰りについてはしっかりと把握しておく必要があります。
経理に任せたいという気持ちもわかりますが、「任せていて自分では何もわかりません」と言ってしまうと印象が悪くなります。
資金繰りについて尋ねられたら、明確に答えられるようにしておいてください。
創業融資をするときは税理士に頼るべき?
ここまで記事を読んでいただければ、創業融資を受けることが一筋縄ではいかないことをお分かりいただけたと思います。
創業融資を受ける際、相談先として頼りになるのが税理士です。
ここでは、創業融資を受ける際に税理士に相談するメリットや依頼の方法、税理士の探し方を解説します。
税理士に相談したときのメリット
税理士とは、国家資格を持つお金と税の専門家です。
企業や個人から依頼を受け、会計処理や節税対策、納税対策を行います。
税金は財産や所得に対してかけられるものも多いので、財政面全般に詳しい方が多いです。
もちろん、融資に関しての知識もあります。
創業融資に関する相談を税理士にすれば、融資に関して分からないことを説明できることはもちろんのこと、自分では気づかなかった問題点を指摘してくれます。
これにより、審査に通りやすい創業計画書を作ることが可能です。
それに加えて、融資に必要な書類の作成代行も依頼できます。
たとえば創業計画書ならば、売り上げや経費の具体的な算出を依頼すれば、正確な数字を出してもらえます。
経験豊富な税理士ならば、同業者の創業報告を作成したこともあるでしょう。
ですから、作成方法のアドバイスもしてもらえます。
このほか、融資を受ける面接の際同席してもらえることもあります。
税理士が同席してもらえれば、心強いことでしょう。
実際に行ってくれる業務
税理士に依頼できる業務は、依頼する税理士によって微妙に異なりますが、一般的に以下のような業務を依頼できます。
- 融資に必要な書類の作成代行
- 日本政策金融公庫との交渉
- 日本政策金融公庫への書類送付、面談日程の調整など
- 融資に関する相談全般
創業融資の相談を請け負っている税理士の中には、請け負っている業務の内容をホームページに記載しているところもあります。
融資に関する相談をしたい場合は、ホームページを確認し、自分が望んでいることを依頼できるかどうか確かめてから依頼しましょう。
報酬の相場
創業融資の相談や書類作成で税理士を頼った場合の報酬は、税理士によって異なります。
報酬の支払い方は2種類あり、1つは成功報酬制です。
成功報酬とは、融資の審査が通った場合、融資調達額の2~5%を支払うという方法です。
例えば、200万の融資が通った場合、成功報酬は4万円となります。
融資の額が多いほど、報酬の額も上がっていくのが特徴です。
もう1つは、税務顧問契約を結ぶことを条件に無料で相談を依頼する方法です。
「創業融資のアドバイス0円」といった宣伝を出している税理士のほとんどは、顧問契約を結ぶことを条件としています。
完全無料で相談に乗ってくれる税理士はほとんどありませんので、「ただで相談に乗ってくれる」とやみくもに飛びつかないようにしましょう。
多くの企業は特定の税理士と顧問契約を結んでいます。
「税理士を探している」という場合は、顧問契約を結ぶ代わりに無料で融資の相談を依頼してもいいでしょう。
ちなみに、税理士の顧問料は月に1万~2万円が相場です。
一方、すでに顧問弁護士がいる、もしくは税理士と意見が合わないという場合は、成功報酬を支払ってその場限りの契約を結んでください。
ただし、税理士の中には顧問契約を結ばないと相談は受けない、という方もいます。
すべての税理士が相談に乗ってくれるとは限らない
税理士にも得意分野、不得意分野があります。
創業融資の相談や書類作成が得意な税理士が得意な人もいれば、不得意な人もいるのです。
今はホームページを作っている税理士もたくさんいます。
そこに「創業融資に関する相談を受けます」と明記していない税理士は、相談を受け付けていないこともあるでしょう。
また、「知り合いに税理士がいる」という場合も、その方が融資の相談を受け付けているかどうか確認してから依頼してください。
もちろん、初めての依頼でも受けてくれる税理士はいます。
しかし、創業融資の場合は、経験のある税理士の方が頼りになりますし、心強いものです。
融資に特化した税理士の探し方
融資に特化した税理士を探すには、以下のような方法がおすすめです。
- インターネットで探す
- 知り合いに紹介を頼む
- 税理士紹介会社に依頼する
- 会社設立代行業者に依頼する
前述したように、今はホームページ作成している税理士事務所も多く、依頼できる仕事もそこに記載しています。
事務所によってはホームページから相談を申し込むことが可能です。
税理士紹介会社とは顧客の希望を聞き、それにあった税理士を紹介してくれるシステムです。
インターネットを使って自力で探すより、自分の希望にマッチした税理士と出会える可能性が高くなります。
会社設立代行業者とは、文字通り会社設立に関する手続きを代行してもらえる会社です。
税理士が代表を務めていることも多く、そこに依頼すれば融資の相談から書類の製作代行まで丸ごと依頼できるでしょう。
しかし、どの方法を取っても税理士との相性が重要です。
可能ならば実際に税理士と面談してから依頼するかどうかを決めてください。
創業融資際にはお気軽にご相談ください
経営サポートプラスアルファは、業界最安値をほこる経営サポート会社です。
税理士法人でもある当社には、最大2500万円の創業融資実績があります。
2006年の新会社法設立以来、会社を設立するのはずいぶんと簡単になりました。
しかし、実際に会社設立を目指そうとすると、やるべきことがたくさんあり、何から手を付けていいか分からないという方も多いでしょう。
当社は、創業に強い税理士法人です。
資金に関する相談はもちろんのこと、会社設立の際、いったい何から始めるべきかを懇切丁寧にサポートいたします。
会社を設立するには、税理士だけでなく、社労士や経営コンサルタントへの相談が必要になることもあるでしょう。
そのたびに相談先を探していれば、時間も手間もかかります。
当社ならば、それらすべてをまかなうことが可能です。
創業融資だけでなく、会社設立に関するあらゆることをご相談ください。
また、会社設立後のアフターサービスも充実しています。
会社設立代行業者はたくさんあります。
しかし、会社によってはレスポンスが遅くて顧客をイライラさせるところが決して珍しくありません。
当社は、電話やメールはもちろんのこと、LINEやチャットワークからの電話も受け付けています。
また、当社は「お客様の相談を親身になって聞く」ことを大切にしています。
せっかく苦労して見つけ出した税理士が、聞いたことだけしか答えてくれなかったり、手続きだけしかしてくれなかったりしたら不満が残ることでしょう。
当社は、「お客様が何を望み、どんなことに不安を抱いているか」をくみ取り、ともに解決していく姿勢でご依頼をお受けしています。
融資だけでなく、そのほかのことでも疑問点がありましたら、遠慮なくお聞きください。
当社は、無料相談も受けて回っています。
独立開業をしようか迷っている、今、独立開業していいのかどうか判断しかねるという方も、一度ご相談ください。