多様な働き方が求められる時代だからこそ、人材紹介業のニーズが高くなっています。
これから人材紹介業の会社を設立する場合、一般的な会社設立に加えて必要となる要件や書類が必要です。
また、人材紹介の手数料や登録などの知識も必要になってきます。
人材紹介業の会社設立で知っておくべき情報やポイントをまとめました。
人材紹介業の会社設立を目指している人は、ぜひ参考にしてスムーズな会社設立につなげましょう。
目次
人材紹介業とは
人材紹介業とは、仕事を求めている人と企業をマッチングさせるための会社です。
正式名称は「有料職業紹介事業」と言い、厚生労働大臣の許可を受けて求人者(企業)と求職者(就職・転職希望者)との間を取りもつ斡旋(あっせん)を事業としています。
3つのビジネスモデル
人材紹介業にはおもに以下3つのビジネスモデルがあります。
- 一般紹介・登録型
- サーチ型
- 再就職支援型
それぞれの特徴を解説します。
一般紹介・登録型
一般紹介・登録型とは人材紹介会社が保有する登録者データベースの中から、採用要件に合う人材を企業へ紹介するサービスです。
一般紹介・登録型のなかでも保有する登録者データによって幅広い業種・職種を取り扱う「総合タイプ」と、特定の専門業界・職種に特化した「専門タイプ」の2種類があります。
ほとんどの人材紹介会社が一般紹介・登録型です。
そのため、「人材紹介サービス」という場合は一般紹介・登録型を指す場合が多くなっています。
サーチ型
サーチ型とは、人材紹介会社が保有する登録者データベースのほか、いろいろな情報を使い幅広く採用候補者を探す人材紹介サービスです。
ほかの人材紹介会社のデータベースやSNSなども活用しつつ、採用要件に合う人材を探します。
主に役員クラスでの求人を対象としているためヘッドハンティングやスカウト、エグゼクティブサーチともよばれています。
再就職支援型
再就職支援型は、その通りリストラなどで退職してしまった求職者を対象とした人材紹介業です。
再就職のために求人者とマッチングさせます。
人材紹介と人材派遣の違い
「人材紹介業」と似た事業に、「人材派遣業」があります。
両者の違いを解説します。
人材紹介業は、求職者と求人者をマッチングさせるサービスです。
求職者と求人者を合わせたあと、スムーズな採用につながるためのサポートをします。
採用決定後は、求職者と求人者が直接雇用契約を結びます。
長期雇用が前提であり、労働時間や休日、残業に関することも企業と採用者の間で取り決めます。
人材派遣業は、厚生労働大臣から許可を得た「労働者派遣事業」を行う会社です。
求職者は人材派遣会社と雇用契約を結びます。
人材派遣会社に業務委託を依頼された企業に対して、雇用契約を結んだ派遣スタッフを労働者として派遣します。
派遣スタッフは、雇用契約は人材派遣会社と結んでいる状態で、指揮命令は派遣先企業に従って業務を行います。
就業規則は人材派遣会社のものが適用されるため、企業側が労働条件を変えることはできません。
派遣契約のほか、労働者派遣法により同一労働者を派遣できる上限期間が決まっているため、契約途中の雇用契約期間の変更も基本的には不可能です。
つまり、人材紹介業は「求職者と求人者のマッチング」が事業であり、人材派遣業は「派遣スタッフの派遣」が事業と言えます。
人材紹介のための4つの要件
人材紹介業は国の許認可事業です。
人材紹介業を行うには、人材紹介の免許の取得が必要になります。
人材紹介の免許取得には、以下4つの要件を満たさなければいけません。
- 職業紹介責任者に関する基準
- 財産に関する基準
- オフィスに関する基準
- 個人情報に関する基準
それぞれの要件について解説していきます。
職業紹介責任者に関する基準
人材紹介業は、1事業所(50名)あたりに1人、職業紹介責任者を選出しなければいけません。
職業紹介責任者は、以下の4つの条件を満たす必要があります。
- 成人していること
- 成年に達してから3年以上の就業経験を要すこと
- 他の会社の社員ではないこと(出向・非常勤除く)
- 職業紹介責任者講習の受講(許可または更新、5年以内)が済み、受講証明書が発行されていること
3年以上の就業経験は明確な定義はなく、正社員ではなくアルバイトでも問題ありません。
また、職業紹介責任者は兼任ができません。
副業として人材紹介会社の設立を考えている場合には、別に職業紹介責任者を選出する必要があります。
最後に、職業紹介責任者は講習の受講が必要です。
いろいろな会社で講習を行っていますので、足を運びやすいところや、日時の合うところで選んで問題ありません。
講習を受けて最後に行われる理解度確認試験に合格すると、受講証明書が発行されます。
財産に関する基準
人材紹介業は人と企業をつなげる事業を展開するため、事業展開のために一定の財産があることが条件となります。
以下の財産に関する基準を満たさないと、免許が取得できません。
- 基準資産が500万円以上あること
- 自己名義の現金預金額が150万円以上あること
基準資産とは資産(繰延資産及び営業権を除く)の総額から負債の総額を控除した額を指します。
そのため、現金で500万円あっても負債があると基準を満たせません。
個人事業主として人材紹介業を設立する場合、住宅ローンや車のローンも負債に入るため、注意が必要です。
自己名義の現金預金額が150万円以上は、事業所数ごとに満たす必要があります。
資産要件を満たすのは人材紹介業免許取得のなかでも難しいため、まずは資産要件を満たすために事前の計画や増資などの対応を行いましょう。
オフィスに関する基準
人材紹介業は、事業を行うオフィスに関する基準も設けられています。
- 求人者、求職者の個人的秘密を保持し得る構造である
- 事務所専用の固定回線がある
- 鍵のかかる金庫やロッカーが設置されている
- 高さ約180cmのパーテーションで区分けされた面談スペースがある など
賃貸物件や自宅の一部を改装した場合、オフィスに関する基準を満たさないと許認可が下りない場合があります。
また、レンタルオフィスでも申請はできますが「区分けされた面談スペース」が設けられているかチェックしましょう。
たとえば、ガラス張りになった共有会議質などは面談スペースとしては認められません。
個室ブースも必要なため、デスクのみを契約しないようにしましょう。
2017年5月末に要件が変更になり、かつてあった「職業紹介の適正な実施に必要な広さ(20㎡以上)を有するものであること」というオフィスの広さに関する要件は撤廃になりました。
その代わり、パーテーションでも可能な面談スペースや個室ブースが必須になりました。
個人情報に関する基準
人材紹介業は、求職者の個人情報を取り扱います。
そのため、個人情報をしっかりと取り扱う体制が整っていることが求められます。
基準では「求職者等の個人情報を適正に管理するため、事業運営体制に問題がなく、これを内容に含む個人情報適正管理規程を定めていること」をはじめ、個人情報に関するこまかい基準が定められているため、定期的にチェックするようにしましょう。
申請の流れと必要書類
人材紹介業の会社設立は、職業紹介責任者講習の受講や必要書類の提出が必要です。
申請の流れと必要書類をおさえて、スムーズな会社設立につなげましょう。
申請の流れ
人材紹介業をはじめる上で、全体的な流れは以下の通りになります。
法人で会社設立する場合は、定款の作成や法務局への法人登記が必要です。
- 事業計画の立案
- 事業所などの準備
- 職業紹介責任者講習の受講
- 申請書類の準備
- 公証人役場で定款を認証(法人の場合)
- 資本金の証明
- 法務局で登記(法人の場合)、許認可申請
- 法務局で会社登記簿類を取得(法人の場合)
- 許可証の受領
- 事業の開始
人材紹介業をはじめる準備から許可証の受領、実際に事業を開始するまではおよそ3カ月かかります。
免許の取得日は毎月1日で、最短で許可がおりるのは書類申請後の翌々月末のためです。
つまり、申請から許可がおりるだけで丸2カ月がかかります。
もしも書類に不備があったなどで許可が下りなかった場合は再申請になり、さらに丸2カ月待たなければいけません。
また、厚生労働省の対応数によっては3カ月以上かかる場合もあります。
とくに近年では人材紹介業のニーズが高くなっているため、申請をする会社が多くなっています。
事前に準備をしておき、希望する時期に改行できるように手続きを進めていきましょう。
職業紹介責任者講習とは
人材紹介業の設立には、職業紹介責任者講習の受講が必要です。
職業紹介責任者講習とは、人材紹介業を事業とするさいに選任を義務付けられている(職業安定法第32条の14)職業紹介責任者等を対象に、事業運営を適正に実施する目的で行われる講習です。
職業紹介責任者は1事業所(職業紹介従事者50名あたり)1名以上選任しなければいけません。
職業紹介責任者講習を受講すると、受講証明書が交付されます。
職業紹介責任者講習は、以下の条件にあてはまる人が受講できます。
- 新たに職業紹介事業を行う予定の人
- 既に許可を受けている職業紹介事業者から、職業紹介責任者として選任されることが予定されている人
- 職業紹介責任者に選任されている人
実施機関と受講料
職業紹介責任者講習は、以下の5つの機関で実施されています。
- 公益社団法人 全国民営職業紹介事業協会一般社団法人
- 日本人材紹介事業協会
- 株式会社 オファーズ
- 株式会社 オープンリソース エージェントパートナーズ事業部
- 株式会社 ウェルネット
受講料は8,800円〜13,000円です。
実施機関によって、受講する場所や受講料が異なってきます。
会場へのアクセスしやすさや受講料などを比較し、受講しやすいところを選びましょう。
申し込みは、各機関の公式サイトで受け付けています。
講義内容と時間
職業紹介責任者講習は、基本的に講義内容を座って聞く座学です。
以下の内容を学びます。
- 民営職業紹介事業制度の概要について
- 職業安定法と関係法令について
- 職業紹介責任者の職務、職務遂行上の留意点及び具体的な事業運営について
- 個人情報の保護の取扱いに係る職業安定法等の遵守と公正な採用選考の推進について
- 理解度確認試験民営職業紹介事業の運営状況
また、すべての講習を受けたあと理解度確認試験を行い、合格すると講習修了となります。
講義をしっかり聞いていないと試験に合格できないため、かならず講習はしっかり受けるようにしましょう。
講習実施場所によって異なりますが、およそ10時~18時の約8時間のスケジュールで講習は進みます。
PCやスマホの作業は禁止されているので気をつけましょう。
必要な書類一覧
人材紹介の許認可申請時に必要な書類は以下の通りです。
- 有料職業紹介事業許可申請書 3部(正本1部、写し2部)
- 有料職業紹介事業計画書 3部(正本1部、写し2部)
- 届出制手数料届出書部 3(正本1部、写し2部)※上限制手数料による場合は提出不要
- 添付書類2部(正本1部、写し1部)
添付書類は、設立する人材紹介業が法人か、個人かによって必要なものが異なってきます。
法人・個人両方で必要な添付書類
- 代表者、役員、職業紹介責任者の住民票の写し(番号法第2条の規定に基づく個人番号の記載のないものであり、本籍地の記載のあるもの)
- 代表者、役員、職業紹介責任者の履歴書
- 代表者役員の法定代理人の住民票の写し及び履歴書(代表者役員が未成年者で職業紹介事業に関し営業の許可を受けていない場合。なお、営業の許可を受けている場合は、その法定代理人の許可を受けたことを証する書面(未成年者に係る登記事項証明書)。)
- 職業紹介責任者講習会受講証明書(受講証明書)の写し(職業紹介責任者に限る)
- 最近の事業年度における貸借対照表及び損益計算書
- 最近の事業年度における確定申告書の写し(法人にあっては法人税の確定申告書別表1及び4、個人にあっては所得税の確定申告書第一表)
- 個人情報の適正管理及び秘密の保持に関する規程(個人情報適正管理規程)
- 業務の運営に関する規程
- 建物の登記事項証明書(事業所の建物を申請者が所有している場合)
- 建物の賃貸借又は使用貸借契約書(事業所の建物を借りている場合)
- 手数料表(届出制手数料の届出をする場合)
国外にわたる職業紹介を行う場合に、法人・個人ともに必要な書類
- 相手先国の関係法令及びその日本語訳※相手先国において職業紹介が認められている根拠となる規定に係る部分のみ
- 相手先国において、国外にわたる職業紹介について事業者の活動が認められていることを証明する書類及び当該書類が外国語で記載されている場合にあっては、その日本語訳(取次機関を利用しない場合に限る)
- 取次機関及び事業者の業務分担について記載した契約書その他事業の運営に関する書類及びその日本語訳 ※業務分担がわかる部分のみ。
- 相手先国において、当該取次機関の活動が認められていることを証明する書類(相手先国で許可を受けている場合にあっては、その許可証の写し)及びその日本語訳※相手先国において当該取次機関の活動が認められていることを証明する部分のみ。
法人の場合必要な書類
- 定款又は寄附行為
- 法人の登記事項証明書
- 最近の事業年度における法人税又は所得税の納税証明書
個人の場合必要な書類
- 預貯金の残高証明書等所有している資産の額を証明する書類(貸借対照表から計算される基準資産が納税証明書及び確定申告書により証明される場合は、残高証明書等は不要)
- 所有している資金の額を証明する預貯金の残高証明書(貸借対照表から計算される事業資金が納税証明書及び確定申告書により証明される場合は、残高証明書等は不要)
人材紹介業の立ち上げにかかる費用
人材紹介業を設立するときには、免許取得前、免許取得後でいろいろな費用がかかります。
実際にかかる費用について解説します。
免許取得前
免許取得前にかかるのは以下の4つの費用です。
- 基準資産
- 法人手続き費用
- 免許申請手数料
- オフィス賃料
基準資産
人材紹介業は国の許認可事業です。
人材紹介の免許を取得するためには、基準資産500万円以上、および現金預金額150万円以上の要件を満たさなければいけません。
基準資産は負債を除いた額が該当するため、負債分を考えて500万円以上となる基準資産を準備しましょう。
基準資産の準備には、融資の増額や負債の返済など、計画的な準備が必要です。
人材紹介業を希望の時期に設立できるようにまずは基準資産を準備しておきましょう。
法人手続き費用
人材紹介業を法人として設立する場合は、法人手続きの費用が発生します。
法人では「定款作成」と「法人登記」のために以下の費用が必要です。
- 定款認証手数料…5万円
- 定款に貼る印紙代…4万円(電子定款の場合は不要)
- 謄本交付料…およそ2千円
- 登録免許税…15万円
ほかにも、管轄の公証役場や法務局へ足を運ぶ際に発生する交通費や、会社の印鑑証明代なども発生するのを覚えておきましょう。
免許申請手数料
人材紹介業の免許申請には、以下の費用がかかります。
- 登録免許税…9万円
- 収入印紙代(許可手数料)…5万円
ひとつの人材紹介業の事業所の設立で、免許申請では合計14万円かかります。
また複数の人材紹介業の事業所を設立する場合、1事業所につき追加で1万8千円の収入印紙代が発生します。
オフィス賃料
人材紹介業の事業所として活用する、オフィスに関する費用も発生します。
賃貸物件の場合はオフィス賃料が必要です。
また、人材紹介業の免許申請に必要な要件を満たすために、パーテーションや個室ブースの設置にかかる内装料、オフィスの設備に必要な初期費用なども合わせてかかることを覚えておきましょう。
免許取得後
人材紹介業の免許取得後は、以下の費用がかかります。
- 求人集客費用
- 求人獲得費用
- 人件費
求人集客費用
人材紹介業は求職者と求人者をマッチングさせる事業です。
免許を取得して人材紹介業として事業を展開するにあたり、求人集客費用が必要になります。
求人を集めるための広告料金や初期費用などを考えておきましょう。
求人獲得費用
求人を集約したあとは、企業とマッチングさせるために採用業務を代行するのも人材紹介業の特徴です。
求職者を管理するための業務管理ツールの導入など、求人獲得のための費用がかかります。
人件費
実際に求職者や求人者とコンタクトをとる営業やエージェントをはじめ、人材紹介業は多くのマンパワーが必要になります。
人材紹介業のビジネスモデルや取り扱っている職種、業種に合わせた人件費がかかります。
また、すでに設備や人材などのリソースが確保できている場合は追加で費用がかかることはありません。
また、上記で紹介したのはあくまで初期費用です。
オフィス賃料や広告代、人件費など月ごとに発生する費用についても考えて、人材紹介業を経営していきましょう。
人材紹介業の紹介手数料
人材紹介業は求職者と求人者をマッチングさせた際、求人者からの手数料を利益にして経営していきます。
人材紹介業を設立するには、紹介手数料を設定しなければいけません。
紹介手数料の仕組みや決め方をおさえておきましょう。
手数料の仕組み
人材紹介業の紹介手数料には「届出手数料制」「上限手数料制」の2種類があり、いずれかを選択しなければいけません。
選択した手数料の制度は許認可申請時に報告が必要です。
ふたつの手数料の仕組みや申請方法について解説します。
届出手数料制
届出手数料制は、人材紹介業の紹介手数料の制度として一般的に採用されているものです。
最大50%を上限に自由に手数料を自由に設定できます。
届出手数料制を選択する場合は、上限手数料(求人者から手数料を徴収する割合の上限)を添えて申請します。
ただし最大50%まで設定できるものの、実際に設定する場合の手数料の相場は30~35%となっているのが現状です。
相場以上の手数料率に設定する場合は、届出をする際に合理的な理由を説明できなければいけません。
たとえば、医療従事者やITエンジニアなど集客が困難、かつ求人者からのニーズが高い業種や職種の人材紹介を行っている場合には、50%などの高い手数料に設定している人材紹介業もあります。
上限手数料制
上限手数料制は、紹介した人材に支払われる賃金の10.5%相当額を上限として定型の手数料を得る制度です。
求職者が採用後6カ月を超えて継続して雇用される場合には、6カ月間の賃金の10.5%を手数料相当額として徴収します。
一部の職種を扱う人材紹介業を除き、上限手数料制を採用している人材紹介業はほとんどありません。
届出手数料制の方が、人材紹介会社が受け取れる手数料が多くなるためです。
年収500万円の労働者をあっせんした場合で比較すると、以下の通りです。
上限手数料制…紹介した労働者の6カ月の賃金の10.5%以下の金額を手数料として徴収できるため、年収500万円の6カ月分の250万円の約10%=25万円が手数料として受け取れる。
届出手数料制…年収500万円の約30%(業界の相場)=150万円が手数料として受け取れる。
また上限手数料制の手数料の支払いは手数料徴収の基礎となる賃金支払日以降でないと徴収できないのも選ばれない理由になっています。
たとえば、採用後6カ月を超えて継続して雇用される場合なら、手数料の支払いは求職者の採用決定から6カ月後になってしまいます。
なお上限手数料制を採用する場合、申請時に求人受付手数料を添えて申請します。
求人受付手数料とは求人を受け付けた時点で徴収できる手数料で、670円以下で設定できます。
ただし、現状求人受付をしただけで手数料は徴収しない成功報酬型を採用している人材紹介業が多いです。
特別な理由がない限り、手数料は届出手数料制を採用しておきましょう。
上限手数料制を採用する可能性があるのは、取り扱う求職者や職種が「求職者からも手数料を徴収できる例外」に該当するときだけです。
以下の職種の場合は例外的に求職者からも手数料を徴収できますが、適応されるのは上限手数料制を採用している場合のみです。
- 芸能家
- モデル
- 経営管理者(年収700万円を超える場合)
- 科学技術者(年収700万円を超える場合)
- 熟練技能者(年収700万円を超える場合)
さらに、芸能家、家政婦(夫)、配ぜん人、調理師、モデル及びマネキンの6職種に限っては求職受理1回につき690円の求人受付手数料を徴収できます。
手数料の相場と決め方
人材紹介業で一般的に採用されている届出手数料制の場合、上限50%まででどのくらいの手数料を徴収するかを決めなければいけません。
手数料の相場と決め方を踏まえておきましょう。
紹介手数料の相場
届出手数料制の手数料の相場は、30~35%になっています。
この相場を踏まえた上で、次に紹介する手数料の決め方のポイントを考慮し、紹介手数料を決めましょう。
紹介手数料の決め方
実際に紹介手数料を決めるときに、ポイントとなるのが「取り扱う職種や業種の採用市場の現状」と「独自の強みがあるか」です。
人材紹介業によって、取り扱う職種や業種が異なります。
「超売り手市場」と呼ばれる慢性的な人手不足の求人市場の人材を取り扱う人材紹介業の場合は、マッチングの難しさから相場よりも高めの、上限50%に近い手数料を徴収する人材紹介業もあります。
一般的な職種や業種を取り扱っている場合には、相場の30~35%に設定しておいた方がよいでしょう。
また他の人材紹介業にはない独自の強みがあれば、高めの手数料に設定してもよいでしょう。
たとえば、管理職クラスの求人しか取り扱っていない、採用後早期退職(1カ月以内)した場合は返金する、などです。
人材紹介業は多く設立されているため、会社間での競争が激しくなっています。
求人者側も、工程を減らすために利用する人材紹介業を絞るケースが多くなりました。
独自性や強みを合理的に説明できないと、相場より高い手数料を設定した場合他の人材紹介業が選ばれてしまう可能性が高いです。
手数料を低く設定すると多くの採用をこなさなければ利益は出ません。
手数料を高く設定すると求人者が集まらないリスクがあります。
両方のバランスを考えて手数料を決めましょう。
外国人の人材紹介業
近年、日本人だけでなく外国人の求職者を対象とした人材紹介業も増えてきました。
求人市場の拡大を受けて、外国人の人材紹介業の設立を検討する人も多いでしょう。
外国人の人材紹介業を設立する場合に覚えておきたい、今後の可能性や期間、人材紹介をする上での注意点を解説します。
外国人の人材紹介業の可能性
外国人の人材紹介業は、現在増加傾向にあり大きな可能性のある市場です。
外国人の人材紹介業が増えた理由には、人材不足を補えることと、求職者の大量確保が容易であることがあります。
少子高齢化にともなって、日本の労働人口が減っています。
不足している労働人口を補うために、日本人だけでなく外国人も労働力として注目されています。
中でも、慢性的な人手不足である小売や介護などの業種で活躍する外国人労働者も増加傾向にあります。
また、同じく人手不足のIT業界でも、インドやベトナムなどから高度なIT技術を持つ外国人を紹介する人材紹介業も増えています。
日本政府が外国人移民の誘致を推し進めている背景もともない、今後も外国人の人材紹介業は発展していく可能性が高いです。
また、外国人の求職者の集客がかんたんであるのも理由のひとつです。
日本政府や日本の大学が新興国の人材紹介会社と連携して、多くの求職者を集めるケースも多くなりました。
背景には、いまだ衰えない日本の人気があります。
経済的に豊かな国で働きたい、お金を稼ぎたいという外国人からのニーズが高いため、求職者を大量に集められるのです。
特定技能登録支援機関について
外国人の在留が認められる資格として、「特定技能制度」が新設されました。
人材紹介業は、特定技能を想定した外国人を求職者として、求人者に紹介することも可能です。
まず、特定技能に該当する外国人を雇用する上でおさえるべきポイントを解説します。
- 海外・国内の両方からの採用が可能
- 監理団体や送り出し機関は必須ではない
- 受入れ企業と外国人の直接雇用が原則
- 「農業」と「漁業」の2分野のみ派遣就労が可能
特定技能と似た在留資格に「技術実習」がありますが、特定技能の場合は技術実習で必須の管理団体や送り出し機関はかならずしも必要ではありません。
企業が直接雇用するのが原則で、すでに国内にいる外国人はもちろん、海外から呼び寄せての雇用もできます。
また、派遣の場合は農業と漁業の2分野のみで認められています。
これを踏まえた上で人材紹介業が特定技能の外国人を求人者へ紹介する場合、以下3つの条件を満たさなければいけません。
- 職業紹介事業の許可を得る
- 新たな許可基準を守る
- 特定技能の登録支援機関になる
まず人材紹介業の免許を取得するのは、日本人を対象とした人材紹介業と同じです。
また、外国人紹介にあたり守るべき許可基準があります。
具体的な許可基準は以下の通りです。
- 取扱職種の範囲などとして届け出た国以外を相手先国としない
- 入管法や相手先国の法令を遵守して職業紹介を行う
- 求職者に渡航費用その他の金銭を貸し付け、または求人者がそれらの金銭を貸し
付けた求職者に対して職業紹介は行わない - 相手先国において活動を認められていないもの、および 職業紹介に関し、保証金の徴収その他名目のいかんを問わず、求職者の財産を管理し、違約金など不当に財産の移転を予定する契約を締結し、または求職者に対して渡航費用その他の金銭を貸し付ける取次機関を利用しない
- 求職者の財産管理や、違約金などによる不当な財産の移転を加えた契約を締結する職業紹介をしない
特定技能の登録支援機関になると特定技能の人材紹介に大きく関われるようになります。
特定技能の外国人が日本でスムーズに就労するために、支援計画が定められています。
この支援計画の実施の委託を受けるのが、特定技能の登録支援機関です。
人材紹介業が特定技能の登録支援機関になるには、以下の要件を満たした上で申請が必要です。
- 支援責任者及び1名以上の支援担当者を選任していること
- 以下のいずれかに該当すること
- 登録支援機関になろうとする個人又は団体が,2年以内に中長期在留者(就労資格に限る。)の受入れ実績があること
- 登録支援機関になろうとする個人又は団体が,2年以内に報酬を得る目的で,業として,外国人に関する各種相談業務に従事した経験を有すること
- 選出された支援責任者及び支援担当者が,過去5年間に2年以上中長期在留者(就労資格に限る。)の生活相談業務に従事した経験を有すること
- 上記のほか,登録支援機関になろうとする個人又は団体が,これらと同程度に支援業務を適正に実施できると認められていること
- 外国人が十分理解できる言語で情報提供等の支援を実施することができる体制を有していること
- 1年以内に責めに帰すべき事由により特定技能外国人又は技能実習生の行方不明者を発生させていないこと
- 支援の費用を直接又は間接的に外国人本人に負担させないこと
- 5年以内に出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為を行っていないこと など
特定技能の登録支援機関の申請は、法務局で行っています。
登録後は5年ごとの更新制になるのを覚えておきましょう。
外国人の人材紹介をする上での注意点
大きな可能性のある外国人を対象とした人材紹介業ですが、受け入れる側である日本企業がまだ少ないという点に注意が必要です。
外国人を採用するための新しい採用体制が整っていない、外国人人材をマネジメントするノウハウがないなどの理由で「外国人可」としていても、外国人と日本人が同時に応募してきたら日本人を採用する企業が多いでしょう。
逆に考えると、外国人労働者を獲得できるつながりや、日本企業が外国人労働者を受け入れる際に問題解決できるノウハウなどを持っている人材紹介業が外国人の人材紹介市場で大きく成長する可能性が大きいと言えます。
人材紹介業における個人事業主と法人
人材紹介業を設立する際、法人ではなく個人事業主として考えている人もいるでしょう。
人材紹介業における個人事業主と法人、どちらが良いかを比較しました。
個人事業主でも免許は取れる?
人材紹介業は厚生労働省から許認可を受けなければ開業できません。
人材紹介業の免許は、許認可を取得するための資産要件を満たせば個人事業主でも取れます。
ただし、「最初は個人事業主として開業し、事業が軌道に乗ったら法人にする」のは危険です。
いずれ法人化を検討しているのなら、最初から法人として人材紹介業を設立しましょう。
個人事業主からの法人化は危険
個人事業主として人材紹介業を行い、法人化する場合は人材紹介業の免許を取り直さなければいけません。
個人事業主の免許はあくまで個人を対象としたもののため、同じ会社かつ業種でも法人化する場合は免許を法人として再取得しなければいけないからです。
法人としての免許申請の費用や手間を考えると、最初から法人として人材紹介業を設立した方がよいです。
個人事業主と法人を比較して
個人事業主と法人、どちらで人材紹介業を設立するべきか迷っている場合は、以下のポイントを踏まえて比較してみましょう。
- 今後事業を拡大するか
- 資産基準要件を満たせるか
- 設立費用面
今後事業を拡大するか
人材紹介業の規模が大きい場合は、法人化した方が税制面でのメリットが大きくなります。
ずっとひとりでできる範囲での人材紹介業を行う場合は、個人事業主として設立しても問題ありません。
今後人材を多く雇用して人材紹介会社を大きくしたいと思っている場合は、法人で設立しましょう。
資産基準要件を満たせるか
人材紹介業の免許を取得する条件のひとつに、資産基準要件があります。
資産基準要件は「基準資産500万円以上、自己名義の現金預金額が150万円以上」で、個人事業主、法人ともに条件は同じです。
ただし、基準資産は負債を除いた額になります。
個人事業主の場合は、事業用の資産と個人用の資産で区分がないため、個人の負債も基準資産に影響するのです。
たとえば個人名義の住宅ローンや車のローン、分割で購入したショッピングローンなども負債となるため、基準資産を満たせない可能性があります。
法人で申請する場合には、個人の負債は基準資産に影響しません。
基準資産を満たせるかも個人事業主か法人かの決め手となります。
設立費用面
節税効果が高い、基準資産を満たせるなど法人で設立するメリットはわかっているものの「法人設立に必要な費用が高いため、個人事業主を考えている」という人も多いでしょう。
法人設立の場合、「株式会社」を設立するイメージですが、設立費用をおさえられる「合同会社」を設立する方法もあります。
株式会社は会社としての信用が大きいなどのメリットがある分、設立費用が高いです。
合同会社は株式会社よりも一定の制限を受けるものの、設立費用を株式会社よりおさえられます。
設立費用面で悩んでいるなら、株式会社だけでなく合同会社も選択肢に入れて、法人での人材紹介業設立を検討してみましょう。
人材紹介で会社を設立する際はご相談ください
人材紹介業は求職者と求人者の間を取り持つ許認可業です。
人材紹介業を設立するためには、免許取得のためのいろいろな要件を満たさなければいけません。
また、要件を満たしたあとも必要な書類作成や申請、手数料の設定や費用の準備などが必要になります。
特に、近年増加している外国人労働者の紹介業を検討している場合、特定技能の登録支援機関の申請も加わるためよりやるべきことが複雑化します。
人材紹介業は個人事業主として設立するよりも、法人で設立した方が将来的なメリットが大きいです。
免許申請に法人設立登記の手間や時間がかかる、自分では正確な書類作成や申請ができるか不安、という人も多いでしょう。
人材紹介業の会社設立は、プロに頼るのがおすすめです。
「経営サポートプラスアルファ」は、人材紹介業を含めた多くの会社設立サポートを手がけた実績があります。
人材紹介業に必要な書類作成や法人登記の代行はもちろん、会社設立後も助成金申請や融資、税務や財務処理などの面で多角的なサポートを行っています。
電話やメール、LINEなどで24時間365日無料相談を受け付けていますので、お気軽にご連絡ください。