商号とは、会社が事業を行うときに自分自身を表すために使う名称で、いわゆる会社の正式名称にあたります。
個人事業主が自由に付けられる屋号とは違い、会社の商号は登記が必要で、使える文字や付け方にルールが定められています。
決めてから登記の段階で差し戻されると設立日がずれてしまうため、先にルールを押さえておくと安心です。
📋 この記事で分かること
- 商号・屋号・商標の違いを一覧で比較
- 商号に使えるローマ字・数字・6種類の符号と、その使える位置
- 同一の商号でも登記できるケースとできないケース
- 登記は通れても後から使えなくなる商号の落とし穴
- 商号の被りを調べる5つの方法
- 個人事業主の屋号をそのまま商号にするときの考え方
- 商号を変更するときの手続きの流れ・費用・届出先
会社設立を考え始めたとき、最初につまずくことが「商号とは何か」という点です。
商号は、会社が営業活動を営む上で用いる正式な名称で、会社設立時には必ず必要とされます。
今回は、商号とはどういったものかという基本知識から間違えやすい言葉との違い、禁止事項などを解説します。
目次
商号とは?
最初に、商号とはどういった意味を持つのか、基本事項から確認していきましょう。
商号の基本的な意味
商号とは、会社が営業活動を営む際に用いる正式な名称のことです。
株式会社や合同会社などの法人を設立する場合、定款に商号を記載しなければなりません。
そして、法務局で登記することで正式に使用できるようになります。
一般的には「会社名」と呼ばれることが多いですが、法律上・登記上の正式な呼び方が「商号」です。
取引先との契約書、請求書、銀行口座、公式サイトなど、会社の対外的な活動はすべて商号を用います。
商号は単なる名前ではなく、会社の信用やブランドイメージにも直結する重要な要素だといえるでしょう。
「商号」「会社名」「名称」の違い

商号・会社名・名称は、日常会話では混同されがちです。
一般的に、実務では以下のように整理できます。
- 商号:法務局に登記される正式な名称
- 会社名:商号を分かりやすく言い換えた表現で法律用語ではない
- 名称:商号・屋号・サービス名などを含めた総称として使われがち
意味の違いを厳密に気にする必要はありません。
ただ、登記や手続きを行う場面では「商号」が正式用語になる点だけは押さえておきましょう。
屋号との違い
「屋号」とは、主に「個人事業主やフリーランスが、事業で使用する名称」のことです。
たとえば店舗名の「○○屋」や、事務所名の「××オフィス」などです。
個人事業主の場合、屋号は必須ではなくデザイナーやカメラマンなどでは屋号を持たずに個人名で活動することもあります。
対して「商号」とは、「事業を法人登記する際に使用した会社名」のことで、法人として登記する際には必須です。
会社であるならば、必ず「商号」があります。
個人事業主の場合には、開業時に法人登記を行わないので「商号」はありません。
なお、個人事業主が法人化する場合には、「屋号」をそのまま「商号」として使用することができます。
ただ、後述する「商号を決める際のルール」に沿って、少しだけ変更する必要があります。
商標との違い
商標は、自社の商品やサービスを他社のものと区別するために特許庁へ登録する権利です。
商号が「事業を行う主体そのものの名前」であるのに対し、商標は「商品やサービスに付ける目印」を守るもので、根拠となる制度が異なります。
両方を同じ名称で押さえている会社もあれば、商号と商品名がまったく別という会社もあります。
この3つは混同されやすいため、違いを整理しておきましょう。
| 商号 | 屋号 | 商標 | |
|---|---|---|---|
| 何を表すか | 会社などの事業主体そのものの名称 | 個人事業主が使う店舗名・活動名 | 商品やサービスを区別する目印 |
| 登記・登録 | 法人は登記が必要 | 登記は任意 | 特許庁への登録が必要 |
| 決め方の制約 | 使える文字や種類の明示にルールあり | 原則として自由 | 先行登録があると登録できない |
| 主な役割 | 取引の相手方に事業主体を示す | 屋号として対外的に名乗る | 類似する使用を排除できる |
商号の登記が通ったからといって、その名称を商標として自由に使えるわけではありません。
先に他社が同じ名称を商標登録していれば、使い方によっては差止めや損害賠償を求められることもあります。
商号を決める際のルール
商号は自由に付けられるように見えて、会社法や商業登記のルールが複数かかっています。
登記の段階で差し戻されると設立日がずれてしまうため、決める前に次の7点を押さえておきましょう。
- 会社の種類を表す文字を必ず入れる
- 同一の所在場所に同一の商号があると登記できない
- 公序良俗に反する商号は使えない
- 法令で使用が制限されている語句がある
- 使用できる文字と符号が決まっている
- 登記は通っても使用を止められる場合がある
- 他社の商標と紛らわしい名称は避ける
商号は自由に決められるように思われがちですが、会社法や関連法令に基づく一定のルールがあります。
ルールを知らずに商号を決めてしまうと、登記できません。
必ず会社の種類を明示する
商号には、会社の種類を表す文言を必ず含める必要があります。
たとえば、株式会社であれば「株式会社」、合同会社であれば「合同会社」といった形です。
「株式会社〇〇」「〇〇株式会社」のように、前株・後株のどちらでも問題はありません。
登記上の表記と実際に使用する表記は一致させる必要があるため、定款作成時に慎重に決めておくことが大切です。
同一住所・同一商号では登記できない
もしも同一の住所に同一の商号を使う会社があったとすると、二つの会社を区別できなくなってしまうため、登記することができません。
住所が同じでなければ、同じ都道府県内でも同一の商号の登記をすることは可能です。
(後述する「不正競争防止法」の対象になると、登記はできても使用できない場合があります)
同じビルでも部屋番号が違う場合には、別の住所の扱いになります。
ここでいう「同一の商号」は、文字列が完全に一致するかどうかで判断されます。
- 「ホウム株式会社」と「ホウム合資会社」は、同一の商号には当たりません
- 「ホウム株式会社」と「株式会社ホウム」も、同一の商号には当たりません
- 一方で、商号と本店の所在場所がどちらも同一の場合は登記できません
つまり、会社の種類が違う場合や、種類を示す文字が前に付くか後ろに付くかが違う場合は、登記そのものが可能です。
ただし登記が通ることと、営業上のトラブルが起きないことは別の話です。
(出典:法務局「よくあるご質問(商業・法人登記関係)」/法務省「オンライン登記情報検索サービスを利用した商号調査について」)
公序良俗に反しないこと
社会通念上、不適切と判断される商号は認められていません。
たとえば、わいせつな表現や差別的な表現、社会秩序を乱すおそれのある名称などです。
公序良俗に反するとして登記が却下される可能性があります。
また、実際には問題なさそうに見える名称であっても、誤解や不信感を与える表現は避けた方がよいでしょう。
法令により使用が制限されている語句がある
商号には、法律によって使用が制限されている語句があります。
代表的な例として、「銀行」「信託」「保険」など、特定の許認可が必要な業種を連想させる言葉です。
これらの語句を、実態のない事業で使用すると、誤認を招くおそれがあるため認められません。
たとえ事業内容に近い場合であっても、安易に使用せず、事前に確認することが大切です。
使用できない文字がある
商号に使用できる文字は決められていて、「!」や「?」といった記号は使用できません。
商号に使用できる文字は以下の通りです。
- ひらがな、カタカナ、漢字
- ローマ字(大文字および小文字)
- アラビヤ数字(1,2,3…)
- 「&」(アンバサンド)
- 「’」(アポストロフィー)
- 「,」(コンマ)
- 「-」(ハイフン)
- 「.」(ピリオド)
- 「・」(中点)
登記できる文字と符号は、商業登記規則で定められています。
日本文字のほかに使えるのは次のとおりです。
| 種類 | 使えるもの | 位置の制限 |
|---|---|---|
| ローマ字 | 大文字・小文字 | 制限なし |
| アラビヤ数字 | 0〜9 | 制限なし |
| 符号6種 | &(アンパサンド)、’(アポストロフィー)、,(コンマ)、-(ハイフン)、.(ピリオド)、・(中点) | 字句を区切るときに限り使用でき、商号の先頭と末尾には使えません |
| スペース | ローマ字で複数の単語を表記する場合の単語間のみ | 単語を区切る目的に限る |
符号のうちピリオドだけは例外があり、省略を表すものとして商号の末尾に使うこともできます。
「+」「*」「!」といった符号や、「①」などの丸数字は使えません。
(出典:法務省「商号にローマ字等を用いることについて」/法務局「よくあるご質問(商業・法人登記関係)」)
登記できても商号が使用できない場合があるので注意!
他人の商号や商品名と同じ、または似た名称は、登記が通っても営業に使えなくなることがあります。
代表的なのが、不正競争防止法による「周知表示」と「著名表示」の保護です。
需要者の間に広く知られた他人の商号などと同一・類似の名称を使い、相手の営業と混同を生じさせる行為は、不正競争に当たります(不正競争防止法第2条第1項第1号)。
著名な商号などであれば、混同が生じていなくても、同一・類似の名称を自社の表示として使うこと自体が不正競争になります(同項第2号)。
不正競争に当たると、相手から使用の差止めを請求されるうえ、故意または過失があれば損害賠償の責任も負います(同法第3条・第4条)。
会社法にも、商号の使い方そのものを制限する規定が置かれています。
違反すると過料の対象になるものがあるため、主な規定を整理しました。
| 規定 | 禁止されている使い方 | 違反した場合 |
|---|---|---|
| 会社法第6条第3項 | 他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字を商号に使う | 100万円以下の過料(会社法第978条第1号) |
| 会社法第7条 | 会社でない者が、会社であると誤認されるおそれのある文字を名称や商号に使う | 100万円以下の過料(会社法第978条第2号) |
| 会社法第8条第1項 | 不正の目的で、他の会社であると誤認されるおそれのある名称や商号を使う | 侵害の停止・予防の請求(同条第2項)、100万円以下の過料(会社法第978条第3号) |
| 不正競争防止法第2条第1項第1号・第2号 | 広く知られた、または著名な他人の商号などと同一・類似の表示を使う | 差止請求(同法第3条)、損害賠償(同法第4条) |
会社ではない個人の商人についても、商法第12条に同じ趣旨の禁止があり、違反すると100万円以下の過料の対象です(商法第13条)。
一方、登記の審査で問われるのは、同じ本店所在場所に同一の商号がないかどうかという点です(商業登記法第27条)。
似た名称の有無までは登記では確かめられないため、後述する「商号の被りを避けるための調査方法」で自社で確認しておくと、後のトラブルを避けやすくなります。
(出典:e-Gov法令検索「会社法」/「不正競争防止法」/「商法」/「商業登記法」)
【参考】【結論:使用可能】会社名にアルファベットは使える?メリット・デメリットなどを詳しく紹介
他社の商標は避けること
あなたの決めた商号が、すでに商標登録されている他社の商品やサービスの名称と同一もしくは類似の名称だった場合には、その商号を使用して営業すると、他社の商標権を侵害したことになってしまいます。
そうすると、損害賠償を請求されたり、商号差し止めの請求を受けたりする可能性があります。
こうした事態を避けるためにも、商号を決める際には、他社の登録商標に、同一の名称や類似の名称が無いか確認しましょう。
個人事業主から法人化する場合の商号の決め方
個人事業主から法人化する場合、個人事業主の時に使用していた屋号をそのまま商号に使用する、という方法が取られがちです。
屋号をそのまま商号に使用すると、取引先や顧客にとってもわかりやすいからです。
しかし、商号のルールでは「株式会社」や「合同会社」などの文字を入れる必要があります。
法人化で心機一転、まったく新しい商号をつけよう、ということも可能ですが、取引先や顧客に混乱を招いてしまう可能性もありますので、注意しましょう。
商号を決める際のおすすめの方法
商号は、前述したルールを守れば自由につけることができますが、一度決めたらす末永く付き合っていくものです。
じっくり考えて、できるだけ良い商号をつけたいですよね。
ここでは商号を決める際のおすすめの方法をいくつか紹介します。
参考にしてみてください。
地名を入れる
商号を決めるのにおすすめの方法のひとつは、地名を入れることです。
商号に地名を入れることで、インターネットで検索した際に上位表示されやすくなります。
インターネットであなたの会社のことを知った地元の方々を、将来の顧客とできるでしょう。
商号に地名を入れることで地域の顧客を獲得しやすくなるため、悩んだ際は地名を入れる方法がおすすめです。
事業内容を入れて、わかりやすくする
顧客は、会社名から業務内容を想像することが多いでしょう。
たとえば建築設計の会社を探すとしたら、「建築」とか「設計」という言葉が社名に入っている会社を探すのです。
「事業内容そのもの」の言葉を入れるのではなくて、事業内容に関わる言葉、事業内容を連想させるような言葉を商号に使用するのも良いでしょう。
また、扱っている自社の商品名を商号に使用する、という方法もあります。
発音しやすい名前にする
商号を発音しやすい名称にすることで、取引先や顧客の記憶に残りやすく、容易に思い出してもらうことができます。
顧客に覚えてもらいやすい名前は、愛着にもつながるでしょう。
また、外国人の顧客や海外展開を視野に入れているのなら、外国人にも発音しやすい商号かどうかも考えておくと安心です。
【参考】【会社設立】会社名の決め方!5つのポイントを実例つきで徹底解説
商号の被りを避けるための調査方法
商号を決める際には、「登記できるかどうか」だけでなく、「実務上問題なく使えるか」を確認することが重要です。
以下の手順で調査すると、設立後のトラブルを大きく減らせます。
法務局・登記情報で商号を確認する
まず確認すべきは、すでに同一または類似の商号が登記されていないかどうかです。
法務局が提供する登記情報やオンラインの登記情報提供サービスを利用すれば、全国の法人情報を確認できます。
特に、同一住所で同じ商号が存在しないかは、登記可否に直結するため必ずチェックしましょう。
国税庁の法人番号公表サイトを確認する
国税庁の法人番号公表サイトで同名または類似名称の法人が存在しないかを確認します。
登記情報と合わせて確認することで、実際に活動している法人の有無を把握しやすくなるのです。
同一業種・同一地域で似た名称が多い場合は、混同リスクが高まるため注意しましょう。
商標登録の有無を確認する
商号トラブルで特に注意したいのが、商標権の侵害です。
特許庁が提供する商標検索サービスを使い、同一または類似の商標が登録されていないかを確認しましょう。
登記が可能でも、商標権を侵害している場合は使用を差し止められる可能性があります。
商号候補が決まった段階で、必ず確認しておくことが重要です。
インターネット検索で実態を確認する
登記や商標に問題がなくても、実際には同じ名称で活動している事業者が存在する場合があります。
検索エンジンで商号候補を入力し、企業サイトやサービス名、SNSアカウントなどを確認しましょう。
特に、同業種での使用例が多い場合は、混同や信用低下につながるおそれがあります。
ドメイン・SNSアカウントの取得状況も確認する
現代では、会社の公式サイトやSNS運用が前提となるケースがほとんどです。
そのため、希望する商号に対応するドメイン名やSNSアカウントが取得可能かどうかも確認しておきましょう。
商号とWeb上の名称が一致していると、ブランディングや集客の面で大きなメリットがあります。
商号を決める前の最終チェックリスト
候補の商号が決まったら、登記を申請する前に次の項目をまとめて確認しておくと安心です。
設立後に商号を変えるには、定款の変更と変更登記が必要で、登録免許税だけでも3万円かかります。
最初の段階で確認を済ませておくことが、手間と費用のいちばんの節約になります。
- 「株式会社」「合同会社」など、会社の種類を示す文字が入っている
- 使える文字(日本文字・ローマ字・アラビヤ数字・6種類の符号)だけで構成され、符号が先頭や末尾にない(省略を表す末尾のピリオドを除く)
- 同じ本店所在場所に同一の商号の会社がない(登記情報・法人番号公表サイトで確認)
- 法令で使用が制限されている語句を含んでいない
- 広く知られた他社の商号や商品名と同一・類似になっていない
- 同じ名称や似た名称が、他社に商標登録されていない
- 商号に対応するドメインやSNSアカウントを取得できる
- 読みやすく、電話口で伝えても聞き間違えられにくい
当てはまらない項目が1つでもあれば、候補を見直すタイミングといえます。
商号を変更するには|手続きの流れ・費用・必要書類
会社を設立したあとでも、商号は変更できます。
ただし商号は定款に必ず記載する事項のため、変更には定款の変更と変更登記の両方が必要です(会社法第27条第2号・第576条第1項第2号)。
登記が終わったあとも、税務署や年金事務所などへの届出が続きます。
以下では、手続きの流れ・費用・必要書類・変更後の届出の順に整理しました。
商号変更に必要な手続きの流れ
株式会社の場合、商号変更はおおむね次の4つのステップで進みます。
- 新しい商号を調査する(同じ本店所在場所に同一の商号がないか、似た商号や商標がないか)
- 株主総会の特別決議で定款を変更する
- 変更が生じた日から2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局へ変更登記を申請する
- 税務署・年金事務所・金融機関などへ変更を届け出る
定款の変更は株主総会の決議事項で、特別決議が求められます(会社法第466条・第309条第2項第11号)。
特別決議は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成で成立します(定款で要件を変えている場合を除く)。
合同会社の場合は、定款に別段の定めがない限り、総社員の同意によって定款を変更します(会社法第637条)。
変更登記の期限は、株式会社・合同会社のどちらも、変更が生じた時から2週間以内です(会社法第915条第1項)。
この期限を過ぎると、登記を怠ったとして100万円以下の過料の対象になります(会社法第976条第1号)。
新しい商号の調査は、前章の「商号の被りを避けるための調査方法」と同じ手順で進められます。
(出典:e-Gov法令検索「会社法」)
商号変更にかかる費用(登録免許税・専門家報酬)
商号変更の登記には、登録免許税がかかります。
税額は申請1件につき3万円で、株式会社と合同会社で金額は変わりません。
商号と目的を同時に変更する場合も、同じ「登記事項の変更」の区分に当たるため3万円のままです(法務局の記載例でも、合同会社の商号と目的の同時変更で3万円とされています)。
| 費用の項目 | 金額の目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 3万円(申請1件につき) | 収入印紙などで納付する。商号と目的を同時に変更しても3万円 |
| 司法書士報酬(依頼する場合) | 事務所により異なる | 議事録の作成や申請の代理まで含むかで変わる |
| 登記以外の実費 | 内容により異なる | 会社の印鑑、看板、名刺、Webサイト、封筒などの表記変更 |
自社で申請する場合、法務局へ納める費用は登録免許税の3万円です。
司法書士に依頼すると報酬が上乗せされる一方で、議事録の作成や書類の不備による差し戻しの手間を減らせます。
看板や名刺、Webサイトの表記変更といった登記以外の費用も見込んでおくと、資金計画が立てやすくなります。
(出典:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」/法務局「合同会社変更登記申請書(商号の変更及び目的の変更)」)
商号変更に必要な書類
法務局へ提出する主な書類は、会社の種類によって異なります。
| 書類 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 変更登記申請書 | 必要 | 必要 |
| 定款の変更を決めたことを示す書面 | 株主総会議事録 | 総社員の同意書 |
| 株主リスト | 必要 | ―(株主がいないため該当なし) |
| 委任状 | 代理人に申請を任せる場合のみ | 代理人に申請を任せる場合のみ |
申請書の様式と記載例は会社の種類ごとに法務局のWebサイトで公開されていて、自社で作成する際の手本として便利です。
株式会社の記載例では、株主総会議事録に「定款第1条を次のとおり変更すること」と記載する形が示されています。
申請書への押印には、法務局に届け出ている会社の印鑑を使います。
商号と本店が同一の会社がすでにある場合は変更の登記ができないため、申請の前にもう一度確認しておくと確実です。
(出典:法務局「商業・法人登記の申請書様式」/「株式会社変更登記申請書(商号の変更)」)
商号変更後に必要になる各種届出(税務署・年金事務所・銀行など)
変更登記が終わっても、商号変更の手続きはまだ完了していません。
税金・社会保険・労働保険の窓口にはそれぞれ届出が必要で、期限が短いものもあります。
主な届出先と期限を、チェック表にまとめました。
| 届出先 | 届出書類 | 期限 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 税務署 | 異動届出書 | 異動後速やかに | 異動前の納税地の所轄税務署へ提出。登記事項証明書の添付は平成29年4月から不要 |
| 都道府県税事務所・市区町村 | 異動届出書(法人住民税・法人事業税) | 各自治体の定めによる | 東京都の場合は添付書類不要 |
| 年金事務所(事務センター) | 適用事業所名称/所在地変更(訂正)届 | 事実発生から5日以内 | 法人は登記簿謄本のコピーを添付 |
| 労働基準監督署 | 労働保険 名称、所在地等変更届 | 変更の翌日から10日以内 | 労働保険に加入している場合 |
| ハローワーク | 雇用保険事業主事業所各種変更届 | 変更の翌日から10日以内 | 雇用保険の適用事業所の場合 |
| インボイスの登録 | 適格請求書発行事業者登録簿の登載事項変更届出書 | 変更後速やかに | 税務署へ異動届出書を提出していれば、重ねての提出は不要 |
| 金融機関・取引先・許認可の窓口 | 各機関の所定の書類 | 各機関の定めによる | 口座名義、契約書、請求書、許認可の変更届などを確認 |
国税庁の法人番号公表サイトに載る商号は、法務局での変更登記の情報をもとに更新されるため、別途の届出はいりません。
ただし税務署には、これとは別に異動の手続きが必要とされています。
許認可を受けて営業している業種では、許認可の窓口にも変更の届出を求められることがあるため、所管の行政庁に確認しておくと手戻りを防げます。
(出典:国税庁「異動事項に関する届出」/「法人設立届出書等について、手続が簡素化されました」/「適格請求書発行事業者登録簿の登載事項変更届出手続」/国税庁法人番号公表サイト「名称・所在地等の変更の届出」/東京都主税局「『法人設立・設置届出書』『異動届出書』届出方法・添付書類について」/日本年金機構「適用事業所の名称・所在地を変更するとき(管轄内の場合)の手続き」/兵庫労働局「事業の名称・所在地等を変更したとき」/三重労働局「雇用保険事業主事業所各種変更届」)
よくある質問(FAQ)
Q. 商号と屋号はどう違いますか?
商号は会社などの事業主体そのものを表す正式名称で、法人の場合は登記が必要です。屋号は個人事業主が店舗名や活動名として使う名称で、登記は任意とされています。個人事業主が法人化する際に、屋号をそのまま商号にすることもできます。
Q. 商号に使える文字や記号を教えてください。
日本文字のほか、ローマ字の大文字・小文字、アラビヤ数字、そして「&」「’」「,」「-」「.」「・」の6種類の符号が使えます。符号は字句を区切るときに限って使えるため、商号の先頭と末尾には置けません。ただしピリオドだけは、省略を表すものとして末尾に使うことができます。
Q. 「株式会社ホウム」と「ホウム株式会社」は同じ商号になりますか?
同一の商号には当たりません。会社の種類を示す文字が前に付くか後ろに付くかが違えば別の商号として扱われます。「ホウム株式会社」と「ホウム合資会社」も同様に別の商号です。
Q. 同じ住所に同じ商号の会社があると登記できませんか?
商号と本店の所在場所がどちらも同一である場合は、登記することができません(商業登記法第27条)。所在場所が異なれば、同じ商号でも登記自体は可能です。レンタルオフィスやシェアオフィスで同じ住所を使う場合は、事前に確認しておくと安心です。
Q. 商号を決めるときに商標も調べたほうがよいですか?
調べておくことをおすすめします。商号の登記が通っても、他社が同じ名称を先に商標登録していれば、その使い方によっては差止めなどを求められる可能性があります。特許庁の検索サービスで、同じ名称や似た名称が登録されていないかを確認しておくと安心です。
Q. 個人事業主のときの屋号を、そのまま商号にできますか?
そのまま使うことも可能です。取引先や顧客に浸透している屋号であれば、引き継いだほうが認知を活かせます。ただし会社の種類を示す文字を入れる必要があるため、「屋号+株式会社」のような形になる点は押さえておきましょう。
Q. 商号を変更するときの費用と期限を教えてください。
変更登記の登録免許税は、株式会社・合同会社とも申請1件につき3万円です。登記は変更が生じた時から2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局へ申請する必要があり、怠ると100万円以下の過料の対象になります。株式会社は株主総会の特別決議、合同会社は原則として総社員の同意で定款を変更してから申請します。
まとめ
商号は、法人登記する際に必要な、会社の正式名称です。
そして、商号のつけ方にはいくつかのルールがあります。
もしも個人事業主からの法人化であれば、屋号をそのまま商号に使用するのもいいですし、新しく商号をつけることも可能です。
設立後に商号を変える場合は、定款の変更と2週間以内の変更登記、税務署や年金事務所などへの届出まで、一連の手続きが必要になります。
商号は、会社にとって大切な、末永く付き合うものですので、ルールを守って素敵な商号をつけましょう。



