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個人事業主が知っておきたい納税の仕組みと必要な税金について徹底解説!

個人事業主が知っておきたい納税の仕組みと必要な税金について徹底解説!

個人事業主が納めるべき税金は4種類あり、所得税・住民税・個人事業税・消費税です。

そのなかでも最も大きな比重を占めるのが所得税です。

ただし、個人事業主になったばかりの人のなかには、それぞれの税金の違いや納付方法について理解できていない人も多いのではないでしょうか?

そこで、この記事では4種類の税金の概要を説明したのち、個人事業主とは関連が深い所得税を中心に解説していきます。

そのほかにも、青色申告とは何かや納税の仕組みについても関しても徹底紹介。

個人事業主の納付すべき税金は4種類

個人事業主が納めるべき税金は所得税・住民税・個人事業税・消費税の4つです。

それぞれの特徴と納付の仕方を押さえておきましょう。

所得税

申告納税方式の国税です。

毎年、1月1日から12月31日までの1年間に事業を通じて得た所得に対して課せられます。

所得税額の出し方には独特の計算式があり、所得の金額によって税率が異なるので注意しましょう。

ちなみに、申告納税方式とは、納税者が自分で税額を計算して申告するもので、所得税のほか、法人税、相続税などが申告納税方式にあたります

給与所得者(会社員)の場合は、源泉徴収されますが、個人事業主の場合は自分で計算して確定申告をする必要があります。

住民税

個人事業主の事務所がある都道府県、市区町村から納付書が届きます。

賦課納税方式の地方税です。

賦課納税方式とは、申告納税方式に対して、国や地方公共団体が税額を計算して納税者に通知する方式をいいます。

そのため、確定申告をしていれば、別個に申し出る必要はありません。

個人事業主の場合は、給与所得者(会社員)のように給与から天引きされる特別徴収にはなりません。

したがって、届いた納付書をもとに、年4回(6月、8月、10月、翌年1月)に分けて納付します。

もちろん、一括で納付しても大丈夫です。

個人事業税

一定の事業所得もしくは不動産所得のある個人に課せられる賦課納税方式の地方税です。

これも住民税同様に、確定申告をしていれば、都道府県が税額を計算して通知書が送付されます。納付は原則として8月と11月の年2回です。

ただし、個人事業税には290万円の事業主控除額があり、290万円以下の場合には申告は不要になります。

消費税

原則として、前々年の売り上げが1,000万円を超えた場合に課されます。

消費税は、原則預かった消費税から支払った消費税を差し引き、その差額を税務署に納めます。

個人事業主の確定申告

申告納税方式の所得税は、会社員の場合など給与所得者は給与等から源泉徴収され、年末調整で精算が行われます。

しかし、個人事業主は自分で税額を計算して申告しなくてはなりません

1月1日から12月31日までに生じた所得から所得税額を計算し、その翌年の2月16日から3月15日までの間に申告します。

申告の仕方は用紙に記入して郵送や提出しに行くほか、インターネットで提出するe-Taxも可能です。

個人事業主の所得税額はどのように決まるのか

所得税の計算方法にはルールがあります。

自分で納税額を計算して申告しますので、その仕組みを理解しておきましょう。

①必要経費を差し引く

収入のすべてが所得税の課税対象になるわけではありません。

税法上、所得とは「所得=収入−必要経費」で収入額から必要経費を引いた額になります。

必要経費とはその収入を得るためにかかった費用のことです。

飲食店の場合などは、食材費や水道光熱費などが必要経費となります。

何が必要経費として計上できるかをはっきりさせないと、正しく所得金額を出すことができません。

そこで、国税庁では経費を以下のように定義しています。

(1)総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
(2)その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額

必要経費に含められるのは、一般的に以下のものになります。

  1. ◆売上原価
  2. ◆賃借料
  3. ◆水道光熱費
  4. ◆旅費交通費
  5. ◆事務用品費
  6. ◆消耗品費
  7. ◆交際費
  8. ◆広告宣伝費
  9. ◆通信費
  10. ◆支払手数料
  11. ◆保険料
  12. ◆修繕費
  13. ◆租税公課
  14. ◆会議費
  15. ◆新聞図書費
  16. ◆運賃
  17. ◆荷造費
  18. ◆利子割引料
  19. ◆給与
  20. ◆専従者給与……家族への給与(事前に届出が必要)
  21. ◆福利厚生費
  22. ◆法定福利費
  23. ◆減価償却費
  24. ◆雑費

なお、必要経費として認められるかどうかはケースバイケースです。

また、必要経費ではありませんが、以下のものは収入があっても所得税は非課税になります。

  1. ◆社会保険(労災や失業・障害・遺族給付)の給付金
  2. ◆通勤手当(月15万円まで)
  3. ◆生活用動産(30万円超の貴金属や絵画などを除く)の譲渡による所得
  4. ◆損害または生命保険契約の保険金で、身体の傷害に起因して支払われるもの
  5. ◆損害保険契約の保険金で、資産の損害に起因して支払われるもの

②所得を10種類に分ける

総収入から必要経費を差し引いた所得を10種類に分け、それぞれごとに所得金額を計算します。

10種類の所得とは以下のようになります。

  1. 1.◆利子所得
  2. 2.◆配当所得
  3. 3.◆不動産所得
  4. 4.◆事業所得
  5. 5.◆給与所得
  6. 6.◆退職所得
  7. 7.◆山林所得
  8. 8.◆譲渡所得
  9. 9.◆一時所得
  10. 10.◆雑所得

利子所得

預貯金や公社債の利子などによる所得のことです。

利子所得=収入金額」となります。

配当所得

株式配当金や投資信託(公社債投資信託を除く)の収益分配金などによる所得のことです。

「配当所得=収益金額−株式等」で求めます。

不動産所得

不動産の貸付けによる所得のことをいい、土地の賃貸料、アパートやマンションなどの家賃収入などです。

不動産所得=総収入金額必要経費(−青色申告特別控除額)」で求めます。

事業所得

農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業、その他の事業から生じる所得を指します。

事業所得=総収入金額−必要経費(−青色申告特別控除額)」です。

給与所得

会社員やアルバイト、パートタイマーなどが、会社から受けとる給料や賞与などの所得を指します。

給与所得=収入金額−給与所得控除額」で求めます。

退職所得

退職によって勤務先から一時に受け取る退職金などの所得のことです。

退職所得=(収入金額−退職所得控除額)×1/2」で求めることができます。

山林所得

山林(所有期間が5年を超えるもの)を伐採して売却したり、立木のままで売却することによって生じる所得をいいます。

山林所得=総収入金額−必要経費−特別控除額(−青色申告特別控除額)」で求めます。

譲渡所得

土地・建物・株式等・ゴルフ会員権・書画・骨董などの資産を譲渡(売却)することによって生じる所得のことです。

譲渡所得は譲渡した資産および所有期間によって、計算方法や課税方法が変わるので注意が必要になります。

一時所得

一時的な所得で、以下のようなものが当てはまります。

  1. ◆懸賞、クイズの賞金
  2. ◆競馬・競輪などの払戻金
  3. ◆生命保険の満期保険金や損害保険の満期返戻金

一時所得=総収入金額−支出金額−特別控除額(最高50万円)」で求めることが可能です。

雑所得

上記のどれにも当てはまらないもので、以下のようなものが雑所得に当てはまります。

  1. ◆公的年金
  2. ◆個人年金保険
  3. ◆講演料や作家以外の原稿料

雑所得=公的年金等の雑所得+公的年金等以外の雑所得」で求められます。

*公的年金等の雑所得=収入金額−公的年金等控除額
*公的年金等以外の雑所得=総収入金額−必要経費

このうち、個人事業主に直接かかわってくるのは「事業所得」です。もちろん、その他の所得がある場合はそれも申告する必要があります。

たとえば、会社員を辞めて個人事業主になった場合には、初年度のみ「退職所得」の申告が必要です。また、配当所得のある人もいるでしょう。

もれなく確認して、申告できるように整理しておくことが必要です。

③所得控除

所得控除とは、税金を計算するとき、所得から控除することができるものです。所得控除には、人的控除と物的控除とがあり以下のようになります。

人的控除

納税者自身や家族の事情を考慮した控除のことで、以下のものがあります。

  1. ◆基礎控除
  2. ◆配偶者控除
  3. ◆配偶者特別控除
  4. ◆扶養控除
  5. ◆障害者控除

物的控除

社会政策上の理由による控除のことで、以下のものがあります。

  1. ◆社会保険料控除
  2. ◆生命保険料控除
  3. ◆地震保険料控除
  4. ◆小規模企業共済等掛金控除
  5. ◆医療費控除

④課税所得金額

所得から、所得控除を差し引いた金額が課税所得です。

課税所得金額=所得−所得控除」で求めることができます。

⑤所得税額と税額控除

課税所得金額に所定の税率をかけて所得税額を計算します。

所得税額(納税額)=課税所得金額×税率

さらに、この所得税額から税額控除額を差し引いて、申告税額(申告納税額=納税額−税額控除)を出します。

税額控除額となるのは、以下のものです。

  • ◆住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
  • ◆住宅の三世代同居改修工事にかかる特例
  • ◆配当控除

確定申告で青色申告を選ぶ 

確定申告には、白色申告と青色申告があります。

事業所得がある場合には、青色申告の届け出をすると最高65万円の特別控除があり節税効果が大きいです。

青色申告とは

青色申告とは、複式簿記に基づいて取引を帳簿に記録し、その記録をもとに所得税を計算して申告することをいいます。

青色申告事業者になるには届け出が必要です。

青色申告をしようとする年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を税務署に提出し、承認された場合に翌年青色申告ができます。

1月16日から開業する人は開業から3か月以内に届け出をし、青色申告以外を白色申告といいます。

青色申告した場合の特典

個人事業主が、青色申告をするメリットは以下の3つです。

  1. 1.青色申告特別控除
  2. 2.青色事業専従者給与の必要経費の参入
  3. 3.純損失の繰越控除、繰戻還付

青色申告特別控除

青色申告によって、所得金額から55万円(e-Taxの場合はプラス10万円で最大65万円の控除)を受けることができます。

55万円の控除を受けるためには、正規の簿記の原則に基づいて作成された賃借対照表と損益計算書を添付し、法定申告期限内に申告書を提出することが必要です。

また、法定申告期限を過ぎた場合は、10万円の控除になります。

青色事業専従者給与の必要経費の参入

青色申告者が青色事業専従者(青色申告者と生計を同一にする親族で事業に専従している人)に支払った給与のうち適正な金額は、必要経費に算入することができます(通常は家族に支払った給与は必要経費に算入できません)。

純損失の繰越控除、繰戻還付

青色申告者は純損失が生じた場合に、その純損失を翌年以降3年間にわたって、各年の所得から控除することができます。

前年も青色申告している場合には、損失額を前年の所得から控除して、前年分の所得税の還付を受けることが可能です。

まとめ

個人事業主の場合、自ら計算して税金を納付する必要があります。

また、申告納税方式である所得税の確定申告をすることが中心の作業です。

必要経費や各種控除によって税額を低くできますので、正しく行うようにしましょう。