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個人事業主が知っておきたい持ち家の自宅経費で節税につなげるための対策

個人事業主が知っておきたい持ち家の自宅経費で節税につなげるための対策

個人事業主として仕事をしていると、事務所を外部に借りずに「自宅開業」している人も多いはずです。

自宅開業している場合も、仕事で使っておりますので、経費として計上できます。

もちろん、24時間、家のすべてを仕事で使っているわけではないので、使用比率に応じて「経費按分」をします。

寝室やお風呂で仕事をする人はいませんよね。

マンションなどを借りている場合は、家賃や更新料にその按分比をかければいいのですが、持ち家の場合はどうなるのでしょうか?

今回は、個人事業主の方が、ご自身の持ち家を仕事場として使っている場合の自宅経費の算出方法について解説します。

借家と共通で家事按分できる自宅経費

持ち家の場合もマンションなどを借りている場合も、生活費(自宅経費)の一部を経費に計上できます。

「仕事に使っている時間」「仕事に使っている部分」「仕事に必要な経費」の条件を満たすことができれば、使用割合(時間や家の面積)に応じて経費按分できます。

経費按分の方法

自宅経費を使用割合に応じて按分する方法を解説します。

在宅で週5日1日8時間仕事をしている人がいます。
また、仕事をしている部屋は1DK40㎡のマンションで、仕事部屋は25㎡です。
仕事部屋以外(キッチンやお風呂)は完全にプライベートな利用しかしません。

1週間のうち、仕事に使っている時間は

1週間:24時間×7日=168時間
仕事時間:8時間×5日=40時間
1週間のうち仕事時間:40÷168=23.8%

仕事に使っているスペースは

25㎡÷40㎡=62.5%
つまり、自宅経費(家賃)のうち、仕事に使っていて経費計上できるのは
23.8%×62.5%=14.9%
約15%となります。10万円の家賃ならば「地代家賃」として経費計上できるのは15,000円となります。

自信をもって按分できる比率で、やや抑制的に経費計上するのがよいと思われます。

自宅家賃の家事按分仕訳

按分について理解していただいたところで、実際の仕訳は、以下のように行います。

毎回按分する方法と、年末(12月31日)に按分する方法があります。

家賃10万円を事業費率30%で按分する(事業用3万円、プライベート7万円)例を見てみましょう。

1)毎回按分する仕訳

日付 借方 貸方 摘要
2022年1月26日諸口 100,000普通預金 100,000自宅兼事務所の家賃
地代家賃 30,000諸口 30,000家賃(経費分)
事業主貸 70,000諸口 70,000家賃(私的利用分)

毎月このように按分していきます。水道光熱費なども同様の仕訳になります。

按分比は各費目で異なるはずです。

2)年末に按分する方法

毎月とりあえず経費として計上し、年末、12月31日に按分比で事業主貸を計上します。

日付 借方 貸方 摘要
2022年1月26日地代家賃 100,000普通預金 100,000自宅兼事務所の家賃

・・・(12月まで)

日付 借方 貸方 摘要
2022年12月26日地代家賃 100,000普通預金 100,000自宅兼事務所の家賃
日付 借方 貸方 摘要
2022年12月31日事業主貸 840,000地代家賃 840,000自宅兼事務所の家賃家事按分(70%)

経費按分できる自宅経費

地代家賃を例にしましたが、ほかにも経費に計上できる(ただし経費按分が必要な)自宅経費があります。

代表的なものを表にしました。

勘定科目内訳の一例
地代家賃自宅兼事務所の家賃、更新料、初期費用(前家賃、契約手数料)
水道光熱費水道代、電気代、(ガス代)
租税公課固定資産税、自動車税
通信費インターネット料金、電話代、プロバイダー代、携帯電話代
旅費交通費自動車のガソリン代
損害保険料事業用の自動車の自動車保険料、自宅兼事務所火災保険料
新聞図書費自宅の新聞で仕事の参考にしているもの

損害保険料(火災保険、家財保険)は按分して経費にできますが、生命保険や地震保険は経費にできません。

これらは個人の確定申告の際「生命保険料控除」「地震保険料控除」として、所得から控除します。

ガス代は、仕事中にガスを使うことがあれば経費として按分できます。

自分の携帯電話、スマホを仕事でも使っているならば按分できます。

個人事業主の持ち家の自宅経費(建物にかかわるもの)はどのようにしたらよいのか

賃貸物件に住んでいる場合は、家賃(+更新料など)という形で、経費計上と家事按分がわかりやすかったのですが、これが持ち家の場合どうなるのでしょうか?

住むために買った家のはずなので、事業用に購入した物件ではないはずです。

持ち家の場合も、水道光熱費などは上記と同じです。建物の経費ついては、以下のルールに沿って経費計上することができます。

持ち家の減価償却費を計算し経費にする方法

持ち家は重要な固定資産になります。

固定資産は一度に経費にできず、数年~数十年にわたり、一定の割合で経費にしていく「減価償却」を行います。

持ち家の場合も減価償却費として費用計上します。

持ち家の減価償却費を計算するために、まず、建物の取得価額(物件価額+仲介手数料、登記費用等取得費)を計算してください。

なお、基本的に持ち家として経費計上できるのは建物部分のみです。

持ち家の土地を経費計上するには、庭などで仕事をする合理的根拠が必要となります。

減価償却費は、建物の取得価額×通常の耐用年数の償却率で計算します。

  • ・平成10年3月31日以前に取得した建物は旧定額法or旧定率法
  • ・平成10年4月1日以後平成19年3月31日以前に取得した建物は旧定額法
  • ・平成19年4月1日以後に取得した建物は(現)定額法

が適用されます。

こうして算出した1年間の減価償却費に、上記で計算したような事業で使っている割合(%)をかけて、減価償却費として費用計上できる金額が決まります。

1年間の減価償却費200万円、事業用面積30%ならば、費用計上できるのは、200万円×30%=60万円となります。

減価償却費 = 建物購入価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

償却率と耐用年数は、国税庁HPによると以下になります。

建物の構造

耐用年数

償却率

鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造 

70年

0.015

れんが造、石造又はブロック造

57年

0.018

 

 

 

金属造

骨格材の肉厚4mm超

51年

0.02

骨格材の肉厚3mm超4mm以下

40年

0.025

骨格材の肉厚3mm以下

28年

0.036

木造又は合成樹脂造

33年

0.031

木骨モルタル造 

30年

0.034

持ち家購入と同時に仕事を始めた場合は、この計算でよいのですが、購入後5年後自宅開業したケースもあるでしょう。

そういう場合は、事業で兼用しはじめた時点の建物の評価額を計算し、未償却残高を算出します。

確定申告の際、青色申告決算書の貸借対照表に建物の「簿価」の記載が必要になるからです。

未償却残高は下記のように計算します。

未償却残高=建物の取得価額-建物の取得価額×0.9×耐用年数の償却率×経過年数

持ち家は、事業用ではなく居住用や建物であり、非事業用資産に該当するので、通常の耐用年数の1.5倍で年数の定額法の耐用年数を使用します。

経過年数は6か月未満は切捨て、6か月以上は切り上げとなります。

住宅ローン金利を経費計上する方法

借入をした場合、「支払利息」を経費計上できるのは知られています。

自宅兼事務所の持ち家の場合、住宅ローンを使って借入して支払いに充てます。

この場合の住宅ローンの金利も費用に計上できます。

借入金そのもの(元本)は経費にできないので注意してください。

なお、確定申告の際「住宅借入金等特別控除」(住宅ローン控除、住宅ローン減税)の適用ができるのは、事業用比率が50%未満の場合のみです。

事業按分=プライベート:事業=60%:40%の時は、住宅ローン控除が受けられますが、事業按分=プライベート:事業=40%:60%(この按分比自体は事業によってはあり得る)の場合、住宅ローン控除は受けられません。

住宅ローン控除の金額と、金利を経費計上した場合の節税額と比較をして、より節税につながる方法を選択するべきです。

住宅ローン控除を計算する際、事業使用割合が10%以下の場合は100%居住用物件として取り扱われます。

10%以下の部分の金利も経費にでき、かつ、事業用部分0%で住宅ローン控除も受けられます。

広い持ち家を建てた場合は、こうした裏技もあります。

固定資産税、火災保険料、地震保険料も経費になる

持ち家の固定資産税や火災保険料、地震保険料などについても、経費にすることができます。

もちろん、100%ではなく、事業用に使用している部分について按分することになります。

なお、地震保険については、個人の確定申告の際「地震保険料控除」を受けることができます。

地震保険料控除は支払った金額(ただし5万円が最大)という限度があります。

実は、地震保険料 については

  • プライベート部分:地震保険料控除
  • 事業用部分:経費計上

ができます。

通常、年間10万円の地震保険料を支払っても、5万円分の控除しか受けられませんが、もし、プライベート:事業=60%:40%で経費按分をする場合、支払った地震保険料が10万円だとすると

  • プライベート部分:6万円→地震保険料控除5万円(上限適用)
  • 事業用部分:4万円(丸々経費にできる)

10万円の地震保険を支払うと、この事業按分比では、9万円まで節税のために使うことができます。

実際に自宅経費を計算してみた

これまでの説明より、実際にケーススタディで考えてみましょう。

・Aさん 年収1000万円 扶養家族2名 東京都在住
・2021年7月 3000万円の木造住宅を新築 
・銀行より2000万円の住宅ローンを借りる。金利0.5% 固定金利
・2022年1月より返済開始
・火災保険 年間5万円 地震保険 年間10万円
・20年で返済
・在宅ワークの個人事業主で、事業用とプライベート用の按分比は30%:70%

2022年の経費、控除(持ち家にかかわるもののみ) 

・住宅ローン減税 13年間にわたり計164万円が減税となる  シミュレータによる計算 

・減価償却費  3000万円×0.9×0.031(木造の償却率)×1(1.5年なので端数切捨て)=83.7万円        
 按分比 3:7なので経費計上は 83.7万円×30%=25.1万円

住宅ローン金利  2000万円×0.5%   シミュレータによる計算
 返済金利毎月6000円×12か月=72,000円        
 按分比 3:7なので経費計上は 7.2万円×30%=2.16万円

・固定資産税 自治体による評価による

・火災保険  5万円×30%=1.5万円が経費にできる

・地震保険 地震保険控除 10万円×70%=7万円 上限5万円なので5万円
 経費計上 10万円×30%=3万円
 5万円を地震保険控除、3万円を個人事業主の経費にできる

経費計上と控除で約100万円になります。

適切に按分することで、節税につなげることが可能になります。

適切な経費按分が節税へのポイント

以上、個人事業主の方で持ち家兼事務所で働いている方の自宅経費について解説しました。

  • 自宅の減価償却費
  • さまざまな経費
  • 住宅ローンの利子
  • 固定資産税や保険料

について、経費にすることができます。

全額経費にすることはできず、プライベート部分と事業部分の按分になり、事業用部分の割合に応じて経費の金額が決まります。

事業用の比率を高くすれば、経費も増え、節税につながりますが、実態を反映しない比率(例:プライベート:事業=20%:80%)などで申告すれば、税務署に調査してくれとお願いしているに等しくなります。

適切な事業用按分比というものがあり、持ち家の場合、賃貸物件の場合などでも異なることがあるようです。

適切な事業用按分比は、なかなか個人事業主の方だけではわかりません。

税務調査などに詳しい税理士など専門家の意見を聞き、適正かつ節税につながる持ち家の経費を算出してください。

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