ビットコインなど仮想通貨の売買をする人が増えてきました。
数年前にはビットコインが暴騰し、その売却益で多額の利益を得た人もいます。
しかし、仮想通貨は新しい投資の方法であり、現状制度が追い付いていない面があります。
したがって、既存の税制度を(強引に)適用するため、税金が非常に高くなっています。
制度としてある以上、高い税金を納めるのも義務ですが、他の投資案件である株式やFXなどと比較しても、条件は良くないようです。
今回は仮想通貨の取引について、なぜ税金が高くなるのか解説していきます。
理解していただき、仮想通貨の取引の可否や他の投資案件との比較検討をお願いいたします。
仮想通貨の税率を計算してみよう
仮想通貨で税金がかかるのは、仮想通貨の取引、売買をして利益が出た場合になります。
仮想通貨を買っただけで保有している場合は税金は発生しませんが、本来の目的で購入し、(WEBマネーなど通貨として)使用した場合も税金がかかることがあり、非常に厄介です。
もちろん、仮想通貨を購入し、株式のようにその価値が値上がりした段階で売却し、利益が出た場合に税金がかかります。
仮想通貨の税金は雑所得で総合課税になる
仮想通貨の取引で生じた利益は「雑所得」となることをまず理解してください。
株式については、配当部分は「配当所得」、売買によって生じた利益は「譲渡所得」(専業投資家は「事業所得」)で、まずここが違います。
株式の場合、証券会社に口座を設定する際「特定口座(源泉徴収あり)」にすると、売買で生じた利益について証券会社の方で、税金を源泉徴収してくれるため、確定申告の必要すらなくなります(源泉徴収なしの場合は自分で確定申告の必要あり)。
しかし、雑所得である仮想通貨の場合、確定申告不要な20万円未満のケースを除くと、確定申告義務が発生します。
30万円でも40万円でも確定申告しないと「脱税」になります。
また、株式の場合は分離課税で、本業の事業収入や給与収入とは分けて税金を計算できますが、仮想通貨の場合、「総合課税」となり、本業の収入が多い人は、仮想通貨にかかる税率も高くなります。
株式売買にかかる譲渡所得の税率は一定(15.315%)であり、仮想通貨は累進課税なので儲ければ儲けるほど税率も高くなります。
仮想通貨 | 株式・投資信託・FX等 | |
---|---|---|
譲渡所得 | 雑所得 | 譲渡所得(一部の人は事業所得) |
所得税の税率 | 他の所得と合算後、超過累進税率 | 15%(固定)(+復興特別所得税) |
住民税の税率 | 10% | 5% |
売却損の相殺と繰越 | 不可 | 可能 |
住民税も仮想通貨は10%、株式等は5%で異なります。
【所得税税率表】
参考:国税庁 所得税の税率
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
この所得税の累進課税税率は「本業の所得+仮想通貨の利益」です。
したがって、本業+仮想通貨で330万円を超える人は、税率が20%となり、株式等の15%を超えます。
仮想通貨遊びができる裕福な家のニート、みたいな人以外は、株式売買などと比べて、税金が高いことになるのはほぼ確実です。
他の投資案件と税率等の比較をしてみた
仮想通貨とほかの投資方法である株式、投資信託等との比較をしてみました。
仮想通貨 | 株式等 | |
---|---|---|
課税方法 | 総合課税 | 分離課税、源泉徴収 |
実態 | 電子データ | 株券 |
最低取引価格 | 80円 | 1000円 |
管理団体 | 利用者 | 企業 |
取引所の介入 | なし | あり |
変動リスク | 大きい | 比較的小さい |
法的保護 | 薄い。法律が追いつかない | 厚い |
仮想通貨は新しい投資方法なので、自由な面はありますが、その辺面、制度面で追いついておらず、法制度も未整備です。
トラブルがあっても保護されにくく、また大損する可能性は株式以上です。
ビットコインを例にしても、価格は乱高下し、大きく上がったと思えば、急降下することもあり、非常にリスクが高い取引になります。
株式売買も「ハイリスクハイリターン」と言われますが、仮想通貨はその何倍もハイリスクハイリターンで、慣れない人が多額の投資をすると大やけどを負ってしまうリスクがあります。
仮想通貨の税金を実際に計算してみた
それでは、仮想通貨の税金が本当に高いのか計算してみましょう。
比較のため、株式売買で同様の利益を上げたケースも考えてみましょう。
(例) ・Aさん ・会社員 ・会社員給与所得600万円 ・投資(仮想通貨、株式)の譲渡益200万円 ・各種控除は考えない ・復興特別所得税も考えない(2.1%一律なので) <仮想通貨の場合> 総合課税なので 課税所得=600万円+200万円=800万円 所得税の一覧表より800万円の所得税は23% 所得税=800万円×23%-636,000円=1,204,000円 住民税=800万円×10%=80万円 税金=1,204,000円+800,000円=2,004,000円 実際には各種控除でもっと下がります <株式譲渡の場合> 分離課税なので、給与所得にかかる所得税と株式譲渡にかかる所得税を別計算します 1)給与所得課税所得=600万円 所得税の一覧表より800万円の所得税は20% 所得税=600万円×20%-427,500円=772,500円 住民税=600万円×10%=60万円 税金=772,500円+600,000円=1,372,500円 2)譲渡所得課税所得=200万円 所得税=200万円×15%=300,000円 住民税=200万円×5%=100,000円 税金=772,500円+600,000円+300,000円+100,000円=1,772,500円 |
・仮想通貨の場合:税金 2,004,000円
・株式の場合 :税金 1,772,500円
仮想通貨の方が23万円超税金が高いことになります。
これはなかなか無視できない数字であり、そのあたりも含めて、仮想通貨取引についてしっかり検討する必要がありそうです。
単に投資の勉強をしてみたい、というレベルであれば株式や投資信託の取引から始めるのをおすすめします。
仮想通貨は登場してから日が浅く、法的規制や保護の面からも脆弱でリスキーです。
それでもやってみたいという方は、しっかり勉強してください。
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仮想通貨の税金が高くなる理由
仮想通貨の税金が高くなるのは、株式や投資信託で認められている赤字の場合の救済措置がないからです。
以下がその代表的な理由になります。
売却損の相殺が不可能
仮想通貨の場合、売却して損が出た場合、利益と相殺ができません。
例えば
A仮想通貨:100万円の利益
B仮想通貨:80万円の損
この場合、B仮想通貨には税金がかかりませんが、A仮想通貨100万円分にはまるまる税金がかかります。
仮想通貨合計では20万円の利益なのに、100万円利益が出たのと同じ税金を支払うことになります。
これが株式の場合、
A社株:100万円の利益
B社株:80万円の損
とすると、100万円-80万円=20万円となり
税金は20万円にのみかかることにあります。
強気の取引をして、あまり利益が出なかった場合も救済されることになります。
もっと言うと、特定口座(源泉徴収選択)を選択していると、証券のほうで勝手に損益合算してもらえ、源泉徴収によって税金は20万円分引かれることになります。
また、株式と仮想通貨の損益合算もできません。
A社株:100万円の利益
B仮想通貨:80万円の損
の場合、A-Bができず、A社株100万円にはそのまま課税されることとなります。
売却損の繰越制度がない
株式や投資信託の場合、売却損を3年間繰り越すことができる制度があります。
例えば、株式投資をしていて
2019年:200万円の売却損
2020年:180万円の売却損
2021年:400万円の売却益
この場合、2020年と2021の売却損を繰り越しでき、2022年の株式にかかる税金は
400万円-(200万円+180万円)=20万円
となります。損をした分を利益が出た年に合算して、課税所得を減らすことができるのです。
しかし、仮想通貨の場合はそれができません。
2019年:200万円の売却損
2020年:180万円の売却損
2021年:400万円の売却益
このケースだと、2019年、2020年分には税金が発生しませんが、2021年分は損益合算できないため、400万円に税金がかかります。
同じ損失、利益でも、株式売買は20万円への課税なのに、仮想通貨は400万円への課税となり、圧倒的に仮想通貨取引の税金が高いことになります。
このように、従来の投資である株式や投資信託と比較し、仮想通貨取引が圧倒的に税金が高く、不利になるのは、仮想通貨が比較的新しい投資対象であり、法制度が追い付いていないからです。
他の所得と損失を相殺できない
仮想通貨ごとの損益合算もできませんが、他の所得との損益合算もできません。
利益が出た場合、利益については合算しますが、上のケーススタディー(年収600万円Aさんの例)
で考えると
給与所得600万円、仮想通貨の利益(雑所得)200万円の際は、200万円超の税額になりますが、給与がそのままで200万円損した場合、課税所得が600万円-200万円=400万円になることはありません!
損が発生した場合、雑所得が0円になるだけで、給与所得600万円に所得税と住民税がかかります。
これは株式譲渡の場合も同様に、(事業所得や給与所得と)損益合算はできませんが、株式の場合、利子・配当所得と相殺することができる制度があります。
もちろん、現在利子はほぼゼロですし、配当も少ないですが、ないよりましです。
仮想通貨の場合、そうした制度もないということです。
法律が改正、制定されないと、仮想通貨に対する税金の扱いが、株式並みになることはありません。
投資というよりも投機ともいえる仮想通貨については、価格も乱高下しており、なかなか株式などと同じ扱いにはしにくいということも背景にありそうです。
いずれにせよ、総合課税となるので、事業者だけではなく、会社員や公務員の方も、仮想通貨取引、およびその後の確定申告には注意が必要となります。
仮想通貨取引や申告についてお悩みの方は「経営サポートプラスアルファ」までご相談を!
「経営サポートプラスアルファ」は主に開業希望の方や、実際に事業をされている方の経営をサポートする会社です。
確定申告の際には、仮想通貨についても総合課税となり、取引をしている事業者、経営者の方は、チェックが必要となります。
税金が高いのですが、経費計上できる余地も少なく、節税が難しく、脱税はバレてしまいます。
株式ならば特定口座(源泉徴収あり)を選択すれば、確定申告の手間はないのですが、仮想通貨はそれができず、確定申告が必要です(所得20万円未満のケース以外)。
しっかりした申告が必要になるので、専門家のチェックを入れた方がいいでしょう。
「経営サポートプラスアルファ」には仮想通貨の税務申告について詳しいスタッフもおり、本業の会計や申告に合わせて、仮想通貨も対応します。
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また、遠隔地にお住まいの方は、LINEやZoom、チャットワークを利用することもできます。
仮想通貨を始めて利益が出た方、あるいは仮想通貨を始めようか悩んでいる方、日々の経営相談も合わせて、ぜひ「経営サポートプラスアルファ」までお問い合わせください。