医療法人設立のスケジュールと流れを解説|期間の目安・必要書類・自治体ごとの違い

医療法人の設立にかかる期間や手続きを解説。医療法人のメリット・デメリットも

医療法人の設立を考え始めたとき、まず気になるのは「どれくらいの期間がかかるのか」「どのような流れで進むのか」という点ではないでしょうか。

医療法人設立は、会社設立のように短期間で完了する手続きではありません。

事前準備から認可、登記、開設手続きまで含めると、半年以上かかることもありえるのです。

この記事では、医療法人の基本から設立スケジュール、準備しておきたい書類、注意点までを流れに沿ってわかりやすく解説します。

医療法人設立とは

医療法人設立を検討する際は、まず医療法人そのものの仕組みを理解しておくことが大切です。

個人開業との違いや、どのような医院が法人化に向いているのかを把握しておくことで、その後の判断や準備を進めやすくなります。

医療法人とは

医療法人とは、病院や診療所、介護老人保健施設、介護医療院などを開設、運営するための法人です。

一般的な営利法人とは異なり、医療法人には非営利性が求められます。

そのため、利益を自由に分配するための法人ではなく、医療を継続的かつ安定的に提供するための組織と考えるとわかりやすいでしょう。

医療法人を設立する場合は、主たる事務所の所在地を管轄する都道府県に対して認可申請を行います。

そのため、同じ医療法人設立であっても、都道府県によって受付回数や申請様式、求められる手順に違いがあるのです。

まずは制度の概要を理解したうえで、自院が所在する自治体のルールを確認することが大切です。

医療法人化を検討すべきか

医療法人化を検討するタイミングは、今後も継続的に診療所を運営していきたい場合です。

たとえば、院長個人の事業としてではなく、組織として医院経営を安定させたいケースが挙げられます。

また、将来的に親族や後継者への承継を見据えている場合、医療法人化を考えるべきでしょう。

他にも、分院展開や役員体制の整備など、規模を拡大したいときに医療法人化の意義は大きくなります。

つまり医療法人化は、設立できるかどうかだけでなく、設立後にどのように運営していくかまで含めて判断することが重要です。

医療法人設立の流れ

医療法人設立は、単に申請書を提出するだけでは終わりません。

事前準備から認可後の届出まで、複数の工程を順に進める必要があるため、全体像を把握しておくことが大切です。

事前準備

最初に、医療法人化に向けた前提条件の整理が必要です。

人的要件を満たせるか、役員体制をどうするか、賃貸借契約や設備の扱いをどう整理するかなどを確認します。

この段階で確認が曖昧なままだと、後から書類の整合性が取れなくなりかねません。

あわせて、自治体の手引きや様式を確認し、どの書類が必要なのかを把握しておくことも重要です。

医療法人設立では、この事前準備の精度が全体の成否を左右するといっても過言ではありません。

設立総会の開催

事前準備が進んだら、設立総会を開催します。

設立総会では以下を確認し、議事録として残しましょう。

  • 定款の内容
  • 役員構成
  • 設立の趣旨
  • 今後の運営方針など

議事録は、後の申請書類との整合性を取るうえでも重要な資料です。

仮申請または事前審査

自治体によっては、本申請の前に事前審査や仮申請にあたる工程があります。

この段階では、提出予定の書類内容について事前に確認を受けたり、不備や不足がないかを見直したりするのです。

本申請前に準備が正しいかどうか確認できるため、後から大きな修正が発生するリスクを減らしやすくなります。

また、自治体によっては説明会への参加が前提になる場合もあるため、よく確認しましょう。

本申請

事前審査などを経て、本申請に進みます。

ここでは、医療法人設立認可申請書に加えて、以下のような書類を一式で提出しなければなりません。

  • 定款
  • 設立総会議事録
  • 役員関係書類
  • 財産目録
  • 負債関係書類
  • 事業計画書
  • 予算書など

書類の数が多いため、単純な出し忘れだけでなく、相互の整合性にも注意しなければなりません。

たとえば、基準日や日付のずれ、金額の食い違いなどがあると受理されない可能性があります。

提出前には、個別書類ではなく全体資料として点検することが大切です。

医療審議会での審査と認可書交付

本申請後は、自治体のスケジュールに沿って審査が進みます。

医療審議会での審査を経て、問題がなければ認可書が交付されるのです。

ここでようやく、医療法人設立に向けた大きな山場を越えたといえます。

法人設立登記

認可書の交付後は、法務局で医療法人の設立登記が必要です。

この登記によって、法人としての法的な存在が確定します。

つまり、認可と登記は別の工程であり、認可を受けただけでは法人が成立したことにはなりません。

保健所での開設許可申請と届出

法人設立登記が終わった後は、保健所での手続きに進みます。

診療所を開設するための許可申請や届出が必要です。

また、個人開設から法人開設へ切り替える場合には、個人診療所の廃止に関する手続きも必要になります。

このあたりの手続きが遅れると、法人としての診療開始時期に影響することがあります。

厚生局での保険医療機関指定申請

保険診療を継続しておこなうには、厚生局での保険医療機関指定申請も必要です。

認可や登記だけでは、保険診療に関する手続きが自動的に完了するわけではありません。

そのため、患者対応や診療報酬請求まで視野に入れると、厚生局での手続きは非常に重要です。

税務署・年金事務所・医師会などの手続き

医療法人設立後は、税務署や年金事務所などへの届出も必要になります。

法人としての税務、社会保険、給与、会計の管理体制を整えなければ、設立しても安定した運営にはつながりません。

さらに、必要に応じて医師会などの関係機関への手続きも発生します。

医療法人設立のスケジュール

医療法人の申請から認可までの流れは、各自治体によって異なります。

東京都を例に、主な自治体の設立スケジュールを見ていきましょう。

設立までの流れ(東京都)

医療法人の設立申請はスケジュールが決まっており、いつでも申請できる仕組みではありません。

多くの自治体では、年2回の受付期間を設定しており、期間はそれぞれ異なります。

したがって、医療法人の申請を行う場合、事前にスケジュールを確認しておくことが重要です。

東京都では、3月と9月の年2回、申請を受け付けます。

以下の流れは9月に申請した前提となっています。

申請時点で診療所を1件運営する個人医師が、東京都内で医療法人を設立するケースを想定しました。

1. 6月~7月 設立要件の確認
2. 8月上旬~中旬 必要書類の取得(印鑑証明、領収書、各契約書の控え、診療所開設届けの控えなど)定款の作成
3. 8月下旬 設立総会の開催
4. 9月初頭 設立認可申請書の提出(仮申請)
5. 11月~12月 設立認可申請(本申請)
6. 2月上旬 申請書類の最終審査と医療審議会への意見聴取
7. 2月中旬~下旬 設立認可書交付式
8. 3月上旬 法務局にて法人設立の登記
9. 3月中旬 保健所にて使用許可申請と開設許可申請
10. 4月上旬 診療所開設届と個人診療所廃止届を保健所に提出
11. 関東信越厚生局にて保険医療機関指定申請
12. 税務署や社会保険庁へ届出

各自治体の医療法人設立のスケジュール

自治体

1回目

2回め

3回目

東京都

仮受付9月上旬

認可証交付翌年2月

仮受付3月上旬

認可証交付8月

 

神奈川県

事前審査等の申請書提出5月中旬

認可証交付10月中旬

事前審査等の申請書提出9月下旬

認可証交付翌年3月

 

千葉県

事前審査期間4月下旬~5月中旬

認可証交付8月上旬

事前審査期間8月下旬

認可証交付12月下旬

事前審査期間11月下旬

認可証交付翌年3月

埼玉県

予備審査予約受付5月

認可証交付9月上旬

予備審査予約受付10月下旬~11月上旬

認可証交付翌年3月

 

首都圏の自治体の認可スケジュールを表にまとめました。

多くの自治体では、年に2回の申請期間を設定していますが、千葉県は年3回となっています。

認可が降りるまでおおよそ、4~5ヶ月の期間が必要です。

医療法人設立に関して、事前説明会を行っている自治体もあります。

なお、スケジュールは年度によって変化する可能性があるため、必ず詳細は確認してください。

医療法人設立のメリット・デメリット

医療法人を設立するにあたってのメリット、デメリットを確認しておきましょう。

メリット

病院の運営に関わるメリットは以下の2点です。

節税の方法が増える

医療法人の設立によって、節税の手段を複数手にすることができます。

法人化すると、個人の資産と法人の資産を分けて管理することが可能です。

そのため、法人化をして自分の役員報酬を低く設定すると、所得税を抑えられるようになります。

また、家族へ所得を分散することで、所得税率を抑えることも可能です。

医療法人では、家族を理事にできます。

理事長一人で役員報酬を受け取るよりも、複数の人へ役員報酬を分散したほうが所得税率を抑えられるのです。

事業承継が簡単になる

医療法人は個人と法人の財産が切り分けられています。

結果、理事長が引退して事業を継承する場合、交代の手続きのみで簡単に完了できるのです。

個人事業の場合、税務上の手続きなど、世代交代の際に大きな手間がかかってしまいます。

もし、病院の規模を拡大したいと考える場合、医療法人の設立を検討したほうが良いでしょう。

デメリット

節税では多くのメリットがある医療法人ですが、いくつかのデメリットもあります。

デメリットを4つピックアップしました。

手続きが複雑になる

医療法人には定期的な届け出や、運営上の義務が定められています。

定期的な提出物

・年1回の決算報告書の提出
・年1回の資産総額の登記
・2年に1回の役員重任の登記

運営上の義務

・年2回の社員総会の開催
・年2回の理事会の開催
・年1回の監事による監査

その他、病院での決まりごとの変更や住所の変更にも届け出が必要です。

株式会社と同じ内容もありますが、医療法人の場合、運営の透明性や公益性を前提としたルールが定められており、やるべきことが増えます。

個人事業主から医療法人へ変更すると、煩わしさを感じるかもしれません。

資金が動かしにくくなる

個人の資産と医療法人の資産の切り分けができるため、節税の幅が広がる点が医療法人のメリットです。

一方で資産を簡単に動かせなくなるデメリットもあります。

個人のお金が足りない場合、役員報酬を上げる方法がありますが、役員報酬の改定は年に1回のみなので、取り急ぎの対応はできません。

解散時に残った資産は国のものになる

これから医療法人を設立する場合、持分の定めがない医療法人として設立することになります。

ただ、持分の定めがない医療法人が解散した場合、資産は国や地方公共団体に帰属し、出資者へ分配されません。

事前に手続きを行えば、資産を出資者へ戻すことはできますが、ひと手間かかってしまう点はデメリットといえるでしょう。

業務内容の制限

医療法人は本業である医療行為に集中しなければならないため、業務内容に制限があります。

サプリメントなどの販売は、条件付きで販売が認められますが、通信販売はできません。

アパート経営や病院の敷地外での駐車場運営など、不動産運用は禁止されています。

医療法人の名前でできることは、医療法人の業務範囲として定められており、それ以外の業務は認められていないのです。

不動産運営を行う場合、個人の名前と資産で行う必要があります。

まとめ

医療法人は医療の質の向上を目的に作られた制度で、医療業務に集中できるよう、資金調達の融通が利きやすくなっています。

一方で、一般市民へ向けて運営の透明性を維持しなければならず、過剰に利益を追求しない公益性も求められます。

法人化することで、節税がしやすくなる、事業承継が簡単にできる、など税制上のメリットがありますが、提出物や届け出などの手間が増え、資産移動が困難になる、などのデメリットもあります。

個人事業と医療法人では、それぞれにメリットとデメリットがありますので、事業規模に合わせた運営形態を検討すると良いでしょう。

経営サポートプラスアルファでは、医療法人設立についてのご相談を承っています。

医療法人の設立について知りたい、個人事業主からの移行を考えている、という方は、ぜひ一度ご相談ください。

記事監修者の情報

税理士法人
経営サポートプラスアルファ

代表税理士 高井亮成

保有資格:税理士・行政書士

税理士の専門学校を卒業後、会計事務所に入社。
その後、税理士法人に転職をして上場企業や売上高数十億円~数百億円規模の会計税務に携わる。

現在は税理士法人の代表税理士として起業・会社設立をする方の起業相談からその後の会計、決算、確定申告のサポートを行っている。