建物への水の侵入を防ぐ工事を行う防水屋こと防水工事業。
実は、この職業が独立に向いているということをご存じでしょうか?
今回の記事では、防水工事業で独立した場合の収入、メリット、注意点などを紹介します。
防水屋で独立した場合の年収
収入面について説明していきます。
「令和2年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)」によると防水工の年収は平均433.7万円、月収は27.7万円となっています。
全業種の一般労働者全体の平均値307.7 万円と比べると高めですが、建設業全体と比べると低めの年収でしょう。
一方、防水屋として独立した場合の一般的な年収は450万円~650万円と言われています。
しかし、下記の2016年に中小企業庁が公開した、「フリーランスとして得ている現在の年収」の建築技術者、土木・測量技術者部門を見ていただければ分かるように、年収にはかなりのばらつきがあります。
100万円未満 14.5%
100万円以上 300万未満 43.6%
300万以上 500万未満 29.1%
500万以上 800万未満 9.1%
800万以上 1000万未満 3.6%
フリーランスとして得ている現在の年収(建築技術者、土木・測量技術者部門)
独立して、1000万円近くを得る少数派もいれば、雇用されていた時よりも低くなっている層もあります。
この中でも500万以上をたたき出している事業主が、回答した仕事受注に向けた取り組みは「技術・技能の向上」が一番多いです。
さらに、「仕事発注者の企業規模」では、収入が多いフリーランスほど小規模事業者、中規模事業者及び大企業と言った大規模な取引先からの受注が多くなっている傾向があります。
このデータから、防水工事業での独立を成功させるためには、技術・技能の向上に向けた取組を怠らず、人脈構築を積み重ね中規模以上の取引先との信頼関係を得ることは必要だと言えるでしょう。
防水屋になる為に必要な資格
防水工事業として独立するために資格は必要ありません。
建築一式工事でなく、請負金額が500万円未満であれば「軽微な工事」となり、防水工事業としての建設業許可すら不要で開業することが可能です。
ただし、技術の証明として「防水施工技能士」を取得した方が、受注も多く見込めます。
また、有機溶剤を取り扱う場合は、労働安全衛生法により、有機溶剤作業主任者を必ず設置しなければならないと定められています。
防水施工技能士受験資格
1級 実務経験7年以上で受験可能
2級 実務経験2年以上で受験可能
防水施工技能士
有機溶剤作業主任者技能講習を受講し修了試験合格が必要。
請負金額が500万円以上(延べ面積が150㎡以上の木造住宅)の軽微な工事以外も範囲に含めるのであれば、建設業法第3条に基づき防水工事業としての許可を受ける必要があります。
防水モルタルを用いた防水工事は左官工事業としての登録も可能です。
許可に必要な条件はこのようになっています。
- 国土交通省令で定める学科の高等学校、または中等教育学校を卒業し、5年以上実務の経験を有する者、または同様に大学を卒業した後3年以上実務の経験を有する者。
- 10年以上実務経験を有する者。
- 国土交通大臣が1または2に掲げる者と同等以上の知識及び技術又は技能があると認定した者。
3の「同等以上の知識及び技術又は技能」は例えば、このような資格保持者の事を示しています。
- 1級建築施工管理技士
- 2級建築施工管理技士(仕上げ)
- 防水施工技能士(職業能力開発促進法)(2級の場合は実務経験3年以上)
防水屋が独立に向いている理由
防水屋が独立に向いている理由は、以下の3つです。
- 需要が多く安定している
- 資格支援、独立サポート有りの職場が多い
- 都市緑地法による緑地化の促進
需要が多く安定している
厚生労働省は、防水工事業の令和2年度の有効求人倍率を8.88と公開しています。
これは、1人の求職者に対して8.8件の求人があるということになり、一般職業紹介状況が1.1~1.2倍を行き来する状況なのに比べ、非常に恵まれていると言えるでしょう。
この背景には、建物の新築の数だけ防水工事は必要となり、さらに老朽化すれば、再び修繕工事が必要になるという工事数の多さが理由としてあげられます。
仕事が多く需要が安定しているため、防水工事業は独立に向いていると言えるでしょう。
資格支援、独立サポート有りの職場が多い
資格支援や独立サポートを行っている企業が多いことも、防水屋が独立向きである理由の一つです。
通常、「熟練した社員に独立されては困る」と考える企業が多いかと思いますが、防水工事業は一風違っていて、「資格支援、独立サポート有り」と書かれた求人募集を散見します。
建設業界の中でも若年層からの就業が多く、実績を積み早い段階で独立して活躍している割合が多いため、独立すると言うことに違和感が少ないのかもしれません。
サポートの強い職場で、独立を考慮しながら技術、実績をつけていくことができるので、独立志望の方にとってはおすすめです。
都市緑地法による緑地化の促進
都市緑地法とは、良質な生活環境を保つ為、都市の緑地を保全することを目的として定められた法律です。
条件を満たすことによって屋上、壁、駐車場などを緑化する為の様々な助成金や支援を受けられます。
そして、緑地化による防水の強化工事が必要です。
緑には水分が必要ですし、特に屋上ともなると防水を強化しておかないと大変なことになります。
そのため、今後も緑地化は進められていきますので、比例して防水工事業の需要も増していくと考えられているのです。
防水屋として独立する場合の注意点
防水屋として独立する場合の注意点には、以下のものがあります。
- 資格・実績を取得してから独立する
- 必要な開業資金をしっかり計する
- 請求書や入金方法に注意
資格、実績を取得してから独立する
防水工事業の独立に資格は必要ないです。
しかし、独立できるかどうかと防水屋として独立して成功できるかどうかは全く別の話です。
国土交通省では、防水施工に関する能力評価基準レベル1~4まで定めており内容は以下のようになっています。
レベル4までマスターしてから独立する必要はないですが、レベル2以上は取得してから独立、開業するのがいいでしょう。
レベル4
就業日数 10年(2150日)
保有資格
◆登録防水基幹技能者
◆優秀施工者国土交通大臣顕彰(建設マスター)
レベル2、レベル3の基準の「保有資格」を満たすこと
職長経験 職長としての就業日数が3年(645日)
レベル3
就業日数 7年(1505日)
保有資格
◆1級防水施工技能士
レベル2の基準の「保有資格」を満たすこと
職長・班長経験 職長または班長としての就業日数が1年(215日)
レベル2
就業日数 3年(645日)
保有資格
◆2級防水施工技能士
◆玉掛け技能講習
◆有機溶剤作業主任者技能講習
レベル1
建設キャリアアップシステムに技能者登録されているが、レベル2~4の判定を受けていない。
必要な開業資金をしっかり計算する
開業資金には、新事務所の賃料や什器(家具、日用品)、工事道具などがあります。
また、法人を設立する際に、株式会社なら定款認証費用と登録免許税で20万円程度、合同会社なら定款認証が必要ないので登録免許税のみが必要で、合同会社の登録免許税は6万円です。
株式会社と合同会社のどちらが合っているのかわからない場合は、経営サポートプラスアルファにご相談ください。
ご相談者様の状況や将来的な目標に合わせて、最適な提案をさせていただきます。
また、独立すると会社勤めの時と異なり、毎月決まった日にちに給与が振り込まれるという訳ではありません。
そのような部分も考慮し、焦らず開業資金を充分に用意してから独立を進める必要があります。
請求書や入金方法に注意
会社勤めと独立後で最も違う部分は、工事以外の仕事も自分で行わなければならないという事ではないでしょうか。
独立前は事務員が行ってくれていた請求書やお金の流れに関しても、独立後は自分で管理する必要があります。
建設業の請求書に指定のルールはありませんが、内容があいまいであったり、不確かなものは防水工事として認められなかったり、取引先とのトラブルを引き起こす可能性もあります。
税務署に「工事に係る書類」のサンプルもありますので、明確な内容で残してしっかり管理してください。
入金など金銭に関しても同様です。
現金支払いなどよりも通帳への入金のような、後に残る方法をとり、管理が容易にできるように心がけましょう。
防水屋として独立するまでの流れ
防水屋として独立するまでの大まかな流れは、以下のようになります。
1.防水屋へ就職(未経験の場合は資格支援、独立サポート有りの職場を探して入社)
2.職場で技術を学びながら、資格取得(防水施工技能士、有機溶剤作業主任者など)人脈構築を進める。
3.開業資金を貯め、各種手続き(開業届、青色申告、国民年金への加入、税務署、都道府県各市町村への届け出など)を調べる。
4.独立開始。開業届、など開業に関する手続きを行う。
まとめ
防水屋は独立しやすく、今後も需要が多いということができます。
そのため、防水屋として独立するのはおすすめでしょう。
ただし、実際に会社を設立するとなると手続きに苦労する場面がたくさんあるのも事実です。
そのようなケースで役に立つのが経営サポートプラスアルファ。
経営サポートプラスアルファであれば、会社立ち上げの最初から最後までしっかりとサポートできます。
防水屋で独立を検討している人は、ぜひとも経営サポートプラスアルファにご相談ください。