貿易会社の起業ガイド|輸出入ビジネスの手順とポイント解説

貿易会社の起業は個人・法人どちらでも可能で、取扱品目によっては輸出入に許認可が必要です。

働き方の多様化によって、最近では貿易業を個人で営み利益を上げる人が増えてきました。

商材、およびマーケットによっては多額の利益を得られる事業ですので、起業した人の中には法人化の道を模索する人もいます。

ただ、法人化には少なからずリスクも伴いますから、及び腰になってしまう人もいるでしょう。
現状のままがよいのか、それとも法人化した方がよいのか悩んでしまいますよね。

そこでこの記事では、輸入ビジネスにまつわる基礎的な知識と共に貿易業を個人でしていく上でのメリット、加えて法人化した場合のメリットについて詳しく解説していきましょう。

起業を考えている人にとっては特におすすめの内容となっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

貿易業の年収

貿易業の年収(事業から得られる利益)は、取り扱う商材や利益率、販売量、物流費などによって大きく変わるため、一律の目安を示すのは難しいのが実情です。

副業として小さく始めるのか、専業として本格的に取り組むのかによっても、扱える取引量は変わります。

普段はサラリーマンとして勤務している人が、平日の夜や休日等を利用して商売をしている場合はビジネスの範囲も小さくなるでしょう。

一方で、本業として取り組む場合は取引量を増やしやすい反面、仕入れや在庫、物流にかかる資金の負担も大きくなります。

商材ごとに仕入価格・物流費・関税・検査費などを積み上げ、採算を試算してから取引量を判断することが大切です。

販路を徐々に広げて事業を拡大させていけば、次なるステップとして法人化の道も見えてくるでしょう。

ただし、法人化すれば必ず収入が増えるわけではなく、利益の水準や取引先の条件をふまえて判断する必要があります。

法人化のメリットと注意点については、後ほど詳しく見ていきましょう。

個人で貿易業を始める場合

先ほども書いたとおり、個人で貿易業を展開している人には副業の人もいれば本業として取り組んでいる人もいます。

この項では、個人で始める貿易業について見ていきましょう。

貿易業には二種類のビジネス体系があります。

輸入ビジネスと輸出ビジネスです。

それでは、まず先に輸入ビジネスについてお話しをさせていただきます。

輸入ビジネスは厳しい?

貿易業は、市場のリサーチ力や最低限の資金が調達できれば誰でも始められる商売ですが、輸入ビジネスには、いくつかの障壁が存在します。

ここでは、起業して輸入ビジネスを行う上で押さえておきたい点を見ていきましょう。

市場規模

市場規模はあなたが取り扱う商材によって異なってきます。

例えば格安のアパレルなどの商材は、大きな市場がありますのでそれにともなって高い需要が見込めますが、同じアパレルでもハイブランド商材はターゲットが限られていますので、市場は小さくなるでしょう。

ただ、市場が大きければそれだけ大勢のライバルの参入も考えられますので、市場が大きければ一概に儲かるとは限りません。

おすすめなのは、自分が知識を持っているジャンルで、なおかつニッチなアイテムを狙って取り扱うことです。

言語の壁

輸入ビジネスをする上で避けて通れないのが、言語の壁でしょう。

外国の人と取引をするわけですから、ある程度の言語力は必要です。

ただし、この言語力のボーダーがライバルの参加を防ぐ参入障壁となっているのもまた事実。

個人で貿易業をしている人の中には、一年ほどの海外留学を経てからスタートさせている人もいますので、みなさんも試してみてはいかがでしょうか。

資金の問題

貿易業に限ったことではありませんが、事業を行う上で必ず必要となるのが活動資金です。

銀行からの融資や知人・家族からの借金が王道の調達方法ですが、最近ではクラウドファンディングを利用して資金を集めて起業している人も散見されます。

必要な資格

貿易業を営む上では、資格は基本的に必要ではありません。

ただし、酒類の販売には酒類販売業免許、医薬品などの輸入・販売には許可や届出が必要になるなど、商材によっては事業者としての手続きが求められます。

また、特許権・商標権・著作権などの知的財産権を侵害する物品は輸入が禁止されているため、権利関係の確認も欠かせません。

輸出入に許認可は必要?

貿易業そのものを営むために必要な国家資格はなく、多くの商材は特別な許認可なしで輸出入できます。

ただし、取り扱う商材によっては、次のような法令に基づく届出・免許・承認などが必要になり、「特別な手続きは不要」と一律に考えるのは危険です。

国家資格の要否と、事業者として必要な手続きは別に確認しましょう。

品目・規制確認すべき内容
食品・食品用器具・容器包装など販売や営業上の使用を目的に輸入する場合は、検疫所への食品等輸入届出が必要(食品衛生法)
酒類販売先・販売方法に応じた酒類販売業免許が必要(酒税法)
医薬品・化粧品・医療機器など個人使用のための輸入と、営業目的の輸入・販売は扱いが異なり、営業目的では許可や届出が必要になる(薬機法)
ワシントン条約の対象品(象牙製品・希少な動植物由来の商品など)附属書の区分や品目、輸出か輸入かによって、経済産業大臣の輸入承認・事前確認・通関時確認など必要な手続きが異なる
安全保障上の規制対象となる貨物・技術リスト規制の該非判定に加え、仕向地・用途・需要者を確認するキャッチオール規制にも注意(外為法)
電気用品など対象製品は、輸入事業者としての届出や技術基準への適合、表示などを確認(電気用品安全法など)

取扱商材を決めたら、輸出入を始める前に税関または経済産業省、品目を所管する省庁(食品なら厚生労働省・検疫所、医薬品なら都道府県の薬務担当課など)に確認しておくと安心です。

(出典:税関「輸出入禁止・規制品目」/経済産業省「貿易管理」)

(出典:経済産業省「ワシントン条約規制対象貨物の輸入承認手続き」)

輸出入で押さえたい税金(関税・輸入消費税・輸出免税)

貿易業では、法人税や所得税だけでなく、輸出入に特有の税金の扱いも押さえておきたいところです。

輸入では、関税に加えて消費税(輸入消費税)がかかり、原則として貨物を保税地域から引き取る際に申告・納付します。

輸入消費税の納税義務者は輸入品を保税地域から引き取る者のため、国内の取引で消費税の免税事業者であっても、輸入時の消費税は原則として課税されます。

(出典:国税庁「No.6121 納税義務者」)

一方、輸出取引は、輸出許可書などの証明書類を保存することを条件に、消費税が免除されます(輸出免税)。

課税事業者であれば、輸出のための仕入れにかかった消費税を仕入税額控除でき、還付が生じる場合もありますが、免税事業者は還付を受けられず、簡易課税などの課税方式によっても扱いが変わります。

また、2026年10月1日以後の輸出取引では、代金を現金や、取引相手からの支払いであることが明らかでない方法で受け取る場合、輸出許可書などに加えて、輸入の事実を証する書類(輸入許可書など)の保存も必要になりました。

(出典:国税庁「No.6551 輸出取引の免税」)

輸出入の取引構成によって消費税の申告や資金繰りへの影響が変わるため、取引を始める前に税理士へ相談しておくと安心です。

輸出ビジネスがおすすめな理由

輸入ビジネスは商材を輸入して販売し利益を得る事業ですが、それとは逆の輸出ビジネスも大きな利益につながるでしょう。

日本のアニメやゲームなどのエンターテインメント作品は、海外にも多くのファンがいるジャンルです。

伝統工芸品や、日本酒・果物などの食品にも海外の愛好家がいます。

ただし、人気のある商材でも、相手国の輸入規制や販売条件、物流費によって採算は大きく変わるため、事前の確認が欠かせません。

法人で貿易業を始める場合

個人で貿易業をスタートさせ、軌道に乗ってきたら法人化の道を模索してもよいでしょう。

記事の前半でもお話ししたとおり、法人化をすることで税金対策や社会的信用の獲得など色々なメリットが得られます。

もちろん個人事業主でビジネスを継続させるという方にも、一定のメリットが存在します。

ここでは個人事業主でビジネスを続ける場合のメリットと法人化した場合のメリットなどについて解説していきましょう。

まずは、個人事業主としてビジネスを継続させるケースのメリットを見ていきます。

個人事業主で続けるメリット

個人事業主でビジネスを続けるメリットには確定申告に関するものや事務負担に関するものがあります。

ここでは、それらのメリットについて深掘りしていきましょう。

青色申告を行える

青色申告とは、規定の帳簿に記帳された日々の取引記録をもとに行う確定申告の制度です。

個人の青色申告では、正規の簿記(一般的には複式簿記)による記帳や、貸借対照表・損益計算書の添付、期限内の申告などの要件を満たすと、55万円の青色申告特別控除が受けられます。

さらに、e-Taxで申告するか、優良な電子帳簿保存を行うと控除額は65万円となり、55万円の要件を満たさない場合は10万円の控除です。

(出典:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」)

なお、青色申告の制度そのものは法人にもあり、この特別控除は個人事業主向けの制度です。

事業規模が小さいうちは控除のメリットが大きく、法人化するかどうかは、売上高ではなく利益の水準を見て判断します。

利益が小さいうちは税負担を抑えやすい

個人事業主が支払うべき税金には、所得税や住民税、個人事業税、そして消費税の四種類があります。

このうち所得税は、課税所得が増えるほど税率が上がる超過累進税率(5%〜45%)です。

個人住民税の所得割は原則として一律10%で、所得が増えると税額が増える仕組みです。

(出典:総務省「個人住民税」)

利益が小さいうちは所得税の税率も低く、法人化しても税負担はあまり変わりません。

法人化で税負担が軽くなるかは、売上高ではなく利益(所得)の水準と、役員報酬の設定、会社に残す利益、社会保険料、会計・申告費用などを合わせて比較する必要があります。

輸出入の取引構成によっては消費税の扱いも変わるため、試算してから判断すると安心です。

事務負担が少ない

貿易業では国をまたいで契約を取り交わすことが頻繁にありますので、事務仕事が煩雑になりがちです。

取引の事務そのものは個人でも法人でも発生しますが、個人事業主は法人に比べて、会計・申告や社会保険の手続きが少なく済む傾向があります。

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法人化のメリットについて

規模が大きくなった貿易業を法人化すると、上で繰り返し提示してきた諸々のメリットが得られます。

この項では、貿易業の法人化にともなうメリットについて詳しく見ていきましょう。

税金の対策ができる

個人で事業展開している場合にかけられる税金は所得税や住民税などでしたが、法人化した場合には、事業利益に対し「法人税」がかけられます。

中小法人の法人税率は、所得のうち年800万円以下の部分が15%、800万円を超える部分が23.2%です。

個人の所得税は最高45%の超過累進税率のため、利益が一定以上になると法人化で税負担を抑えられる場合がありますが、法人税率が常に所得税率より低いわけではありません。

法人住民税や法人事業税、役員報酬にかかる個人の税金や社会保険料も含めて比較することが大切です。

(出典:財務省「法人課税に関する基本的な資料」)

この法人税の詳細については国税庁のホームページで確認できますので、起業予定のある方はチェックしておくとよいでしょう。

責任が有限になる

貿易業を法人化した場合、責任が有限になるというメリットもあります。

通常、個人事業主がビジネスに失敗した場合、借入金などは個人の負債として重くのしかかります。

一方、株式会社や合同会社では、出資者(株主・社員)の責任は原則として出資額が限度です。

ただし、会社自身は借入金などの債務を全額返済する義務を負い、出資額が会社の返済義務の上限になるわけではありません。

また、代表者が会社の借入れを個人で保証している場合は、保証人として返済を求められることがあるため、法人化すれば個人の負担が必ずなくなるわけではありません。

社会的認知度/信頼が上がる

個人で営んでいる貿易業から起業し、法人化することで得られるメリットには社会的認知度や信頼という要素もあります。

経営者という肩書はどんなビジネスでも活かせるものですが、それは貿易業でも例外ではありません。

取引先によっては法人であることを取引の条件にしている場合もあり、法人化で取引の幅が広がることがあります。

また、社会保険に加入していることは、求人の際に待遇を説明する材料にもなるでしょう。

社会保険への加入が必要になる

社会保険とは、健康保険や年金保険に大別される公的な費用負担のもとで行われる保険制度を言います。

法人の事業所は、従業員がいない社長1人の会社でも、役員報酬を受けていれば原則として健康保険・厚生年金保険への加入が義務付けられています。

(出典:日本年金機構「適用事業所と被保険者」)

保険料は会社と従業員(役員)が折半で負担するため、会社にとっては継続的な負担になります。

一方で、従業員の福利厚生の充実をアピールできるほか、離職率の低下も期待できるでしょう。

経営者自身の厚生年金も、加入期間や報酬の額に応じて将来の年金額に反映されます。

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法人化するときの注意点

個人の貿易業から一転、法人化することで色々なメリットが得られますが、注意点もいくつかあります。

ここでは、注意点のうち代表的なものを取り上げて解説していきますので、しっかり押さえてください。

売り上げに関わらず納税義務がある

法人化した貿易業では、売り上げに関わらず納税義務が課せられます。

個人事業主の場合、事業収入がなくなっても、他の所得があれば所得税がかかり、住民税は前年の所得をもとに課税されるため、その年が無収入でも納付が必要になることがあります。

法人の場合は、赤字であっても法人住民税の均等割は原則として納めなければなりません。

法人住民税は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内に申告・納付し、一定の場合は中間申告も必要です。

(出典:三重県「法人県民税」)

社会保険の加入費用がかかる

社会保険の加入費用がかかることも、貿易業を法人化した場合の代表的なデメリットです。

従業員を雇用した場合は会社が保険料の半分を負担するほか、社長1人の会社でも、役員報酬に応じた保険料を会社と本人で負担し続けることになります。

手続きが増える

事業規模の拡大にともなって、契約上の手続きはどんどん増えていくでしょう。

新しい社員が増えた場合、育成して手続きを覚えさせるプロセスも必要になります。

個人で始めた貿易業の成功を受け、法人化を通じてさらなる飛躍を考える上では、こういったデメリットも浮かんできます。

法人化した時のメリットとデメリットを吟味し、メリットのほうが大きい場合に法人化を検討するとよいでしょう。

よくある質問(FAQ)

貿易業を始めるのに許認可は必要ですか?

貿易業自体を営むために必要な国家資格はありませんが、取り扱う商材によっては許認可が必要になります。医薬品や化粧品は医薬品医療機器等法(薬機法)、食品は食品衛生法、酒類の販売は酒税法に基づく免許、希少な動植物由来の商品はワシントン条約に基づく手続きの対象になることがあるため、取扱品目が決まったら税関や経済産業省、所管省庁に事前に確認しておくと安心です。

貿易業は個人事業主と法人のどちらで始めるべきですか?

事業規模が小さいうちは個人事業主として青色申告特別控除などを活用しながら始め、利益が増えてきた段階で法人化を検討するのが一般的な流れです。法人化の判断は売上高ではなく、利益の水準、役員報酬、社会保険料、会計・申告費用などを合わせて比較します。なお、法人化しても有限責任となるのは株主など出資者の責任であり、会社自身は借入金などの債務を全額返済する義務を負います。

輸出ビジネスと輸入ビジネスはどちらがおすすめですか?

輸出ビジネスは、日本のアニメやゲーム、伝統工芸品、日本酒など海外に愛好家のいる商材を扱える一方、相手国の輸入規制や物流費の確認が欠かせません。輸入ビジネスは、輸入時に関税や輸入消費税がかかる点も踏まえて採算を試算する必要があります。どちらを選ぶ場合も、取り扱う商材の市場規模や規制を事前に調べることが重要です。

貿易業の年収はどのくらいですか?

貿易業の年収(事業の利益)は、取り扱う商材や利益率、販売量、物流費などによって大きく変わるため、一律の目安はありません。副業か専業かによっても取引量が変わるため、商材ごとに採算を試算して判断することが大切です。

貿易会社を法人化するタイミングの目安は?

年商ではなく利益(所得)が増え、個人の所得税・住民税と、法人化後の法人税・住民税、役員報酬にかかる税金・社会保険料などを比べて、法人化したほうが有利になってきた時期が一つの目安です。取引先から法人であることを求められる場合も、法人化を検討するタイミングといえます。

貿易業を法人化すると、どんな注意点がありますか?

法人化すると、赤字でも法人住民税の均等割が原則として発生するほか、社長1人の会社でも社会保険への加入が原則として必要になり、会計・申告の手続きも増えます。法人化のメリットとデメリットの両方を踏まえて、タイミングを判断することが大切です。

貿易業で起業を考えているなら経営サポートプラスアルファにご相談ください

ここまで、貿易業の起業に関して解説してきましたが、結論としては、個人で始めた貿易業の利益が増えてきた場合は、法人化を検討する価値があります。

利益の水準によっては税負担を抑えられる場合があり、取引先によっては法人であることが取引の条件になることもあるためです。

ただ、法人化にはメリットだけではなくデメリットも発生します。

事業の法人化の経験が無い人の中にはデメリットを気にして悩んでいる方もいるはずです。

そのような方の不安を少しでも解消させていただきたく、会社設立のコンサルティングを行っているのが、弊社、経営サポートプラスアルファです。

起業に関する専門知識を有したコンサルタントが、親身になって寄り添い、会社設立をサポート致します。

無料面談の他、LINEを用いたオンライン相談も行っていますので、法人化に不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。

記事監修者の情報

税理士法人
経営サポートプラスアルファ

代表税理士 高井亮成

保有資格:税理士・行政書士

税理士の専門学校を卒業後、会計事務所に入社。
その後、税理士法人に転職をして上場企業や売上高数十億円~数百億円規模の会計税務に携わる。

現在は税理士法人の代表税理士として起業・会社設立をする方の起業相談からその後の会計、決算、確定申告のサポートを行っている。