公務員が副業をしたり、会社を設立したりする際には、厳しい規制が存在します。しかし、特定の条件を満たすことで、公務員でも会社を設立することは可能です。この記事では、公務員が会社を設立するための具体的な手順や必要な許可、設立後の運営方法について詳しく解説します。
目次
公務員は副業をしても問題はない?
結論から言いますと、公務員は副業をしても問題ありませんが、かなり選択肢は絞られてしまうというのが現状です。
公務員は基本的には「営利団体に関わってはいけない」というルールがあるため、利益を追求する一般企業に関わる副業をすることは原則不可です。
このため、公務員ができる副業は、NPO法人であったり、地域振興を目的とした活動といった非営利的で公益性がある職業のみです。
また、家業の手伝いといったものであれば問題ないでしょう。
つまり、自由に副業をすることは基本的には難しいです。
また、その副業規制の厳しさも自治体によって違いがあるため、事実上副業がほとんどできない自治体も存在するでしょう。
とはいえ、上記の話はあくまで2021年現在の話です。
世の中のトレンドは「副業の解禁・促進」であり、その波は公務員にも押し寄せています。
実際、奈良県生駒市など一部の地方自治体では副業ができる職種や活動の範囲を大幅に拡大する取り組みを始めています。
つまり、数年後には公務員は今よりも自由に副業をできるようになる可能性もあるということです。
地方公務員法での規制
第38条2には、公務員の副業を制限する理由となる条文も記載されています。
✔︎地方公務員法第38条
1 職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
2 人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる。(1)他の仕事をすることで、肉体的や精神的に本業に集中できず、仕事に支障が出ることを防ぐため(職務専念)
(2)本業の秘密を、副業の際に利用、流出されないため(秘密保持)
(3)世間的にイメージの良くない副業につくことにより、勤務先の社会的な信用を損なわせないため(信用確保)
公務員が会社設立するための流れ
公務員が会社を設立する際の一般的な流れは以下の通りです。
- 事業計画の策定
- 定款の作成
- 法人の登記
- 必要な許可の取得
- 人員の確保
- 取引先への営業
事業計画の策定
公務員が会社を設立するためには、まず事業計画を策定することが重要です。事業計画は、会社の運営スケジュールや資金計画を明確にするためのものであり、初期費用として必要な資金の調達方法を含めて計画を立てる必要があります。事業計画には、以下の要素が含まれます。
- ビジネスモデル:提供するサービスや商品の概要、ターゲット市場、収益モデルなどを具体的に記述します。
- マーケティング戦略:市場調査の結果に基づき、競合分析や市場参入戦略、広告・プロモーションの方法を計画します。
- 財務計画:初期投資の必要額、運転資金の見積もり、収益予測、資金調達方法などを明確にします。
- リスク管理:事業に伴うリスクを特定し、それに対する対策を講じます。
定款の作成
次に、定款を作成します。定款は、会社の基本的な運営方針や構成を定める重要な文書です。株式会社の場合は公証役場で定款の認証が必要ですが、合同会社の場合は定款認証は不要です。定款の作成方法には、紙の定款と電子定款があります。電子定款を使用すると印紙税が免除されるため、費用を抑えることができます。
法人の登記
会社を法人として設立する場合、法人登記が必要です。法人登記は法務局で行い、登録免許税がかかります。株式会社の場合は15万円、合同会社の場合は6万円の登録免許税が必要です。
公務員が会社を設立する際の許可
公務員が会社を設立するためには、所属する組織からの許可が必要です。国家公務員と地方公務員で若干の違いがありますが、基本的な流れは同様です。
国家公務員の場合
国家公務員が会社を設立する際には、事前に「兼業許可申請書」を提出し、内閣総理大臣または所轄省庁の長官の許可を得る必要があります。この際、兼業先との契約条件や移動経路、時間が分かる資料も必要です。
地方公務員の場合
地方公務員も同様に「営利企業等従事許可申請書」を提出し、所属長の許可を得る必要があります。また、離職する場合も「営利企業等離職(廃止)届」を提出しなければなりません。
公務員が会社を設立する際の注意点
役員になることの制限
公務員が会社の役員になることは、国家公務員法および地方公務員法で厳しく制限されています。基本的に、公務員が営利企業の取締役や代表社員などの役員になることは認められていません。
非営利企業の設立
公務員が会社を設立する場合、非営利企業としてNPO法人や一般社団法人を設立することは可能です。この場合も、職場の許可を得る必要がありますが、営利目的の企業とは異なり、設立が比較的容易です。
出資と株主
公務員が会社設立に関与する場合、出資して株主になることは可能ですが、経営には直接関与しないようにする必要があります。つまり、取締役や役員としての活動は避け、株主としてのみ関わる形になります。
公務員が会社を設立する際の手順
- 事業計画の策定:事業内容や運営方法、資金計画を詳細に計画します。
- 定款の作成:定款を作成し、公証役場で認証を受けます。
- 法人の登記:法務局で法人登記を行います。
- 許可の取得:所属する組織から必要な許可を得ます。
- 人員の確保:必要な人材を確保します。
- 営業活動:取引先を開拓し、事業を開始します。
公務員が会社を設立する際の実例と成功事例
公務員が会社を設立して成功した事例も存在します。以下はその一例です。
成功事例:地域振興を目的としたNPO法人
ある地方公務員は、地域の観光資源を活用して地域振興を図るためのNPO法人を設立しました。このNPO法人は、地元の特産品を活用した観光ツアーの企画・運営を行っており、多くの観光客を呼び込むことに成功しています。この成功の鍵は、地域住民との協力体制を構築し、地域全体を巻き込んだ取り組みを行ったことです。
公務員が会社を設立する際のデメリットと対策
デメリット
公務員が会社を設立する際には、いくつかのデメリットが存在します。
- 費用の捻出:株式会社の場合、資本金と設立費用を合わせて20万円~25万円程度が必要です。計画的な資金作りが重要です。
- 会計処理の手間:法人としての会計処理は複雑であり、専門的な知識が必要です。税理士に依頼することを検討しましょう。
- 赤字でも課税:法人住民税の一部は資本金に応じて課税されるため、赤字でも一定の税金がかかります。
- バレる可能性:副業で会社を設立した場合、本業に知られるリスクがあります。家族を代表者にするなどの対策を講じることができます。
公務員が会社を設立する際の追加の重要ポイント
法的リスクとコンプライアンス
公務員が会社を設立する際には、法的リスクとコンプライアンスの遵守が重要です。特に、情報漏洩や利益相反のリスクを回避するための対策を講じる必要があります。また、会社の運営においては、公務員としての倫理規定を厳守し、社会的信用を損なわないようにすることが求められます。
継続的な教育と研修
公務員が会社を運営するためには、継続的な教育と研修が不可欠です。特に、経営やマーケティングに関する知識は、会社の成功に直結するため、定期的なセミナーや研修への参加が推奨されます。最新のビジネストレンドや法律改正にも敏感に対応できるようにしましょう。
家族や友人の支援
公務員が会社を設立する際には、家族や友人の支援も重要です。特に、役員としての活動が制限されているため、信頼できる人に役員を依頼し、自分はアドバイザーとして関わる形を取ることが効果的です。また、家族や友人のサポートを受けることで、精神的な負担を軽減することができます。
まとめ
一般企業に勤める会社員と異なり、公務員が副業をしたり、会社を設立したりするにあたっては厳しい規制があります。
こうした規制を顧みずに会社を設立して事業を行ってしまうと、最悪の場合、免職や停職になることがあります。
このため、会社を設立したい場合には、専門家に相談して、事前にリスクを潰しておくことが大切です。
会社設立の専門家である経営サポートプラスアルファであれば、こうした会社設立のリスクに関する相談や実際の設立の代行まで、ワンストップでサポートを受けることが可能です。
ご興味のある方は、ぜひ一度お問い合わせください。