目次
起業するときに税理士に相談するメリットとデメリット
税理士というと、「確定申告や税務申告の時に頼りになる専門家」というイメージがあります。
税務申告が税理士の本職であることは否定しません。
ですが、起業準備中に税理士に相談することでいろいろなメリットがあるのです。
以下にそのメリットとデメリットをまとめました。
予算とも相談しながら、税理士を使うか決めましょう。
メリット
融資が受けやすくなる
事業を始めるとなると、まず資金面の問題が浮上するでしょう。
短期でまとまったお金が必要となると、融資も視野に入ってきます。
融資には創業融資と普通融資の二種類があります。
創業融資は起業前か起業後一定期間内にしか申請できない融資です。
それ以降も申請できるのが普通融資と考えるといいでしょう。
どちらにも共通して必要になるのが、創業計画書や事業計画書などの計画書です。
融資はいうなれば借金です。
返せない事業主と判断されてしまえば、融資判断が降りることはないでしょう。
そのための計画書作成の相談に乗ってくれるのが税理士です。
起業の頃から付き合っている税理士なら、喫緊で融資が必要になった際にも、的確なアドバイスをもらえる可能性が高くなります。
資金面を盤石にした経営をしたいのであれば、迷わず税理士に相談しましょう。
節税
税理士は税務のスペシャリストです。
納付する税金を最低限にしてくれるのが、彼らの最大の特徴でしょう。
税金の知識を一からつけるのは至難の業です。
起業準備でバタバタと慌ただしい中、税金のことはつい後回しになりがちです。
加えて、起業準備で使った費用についても、開業費として計上することができます。
節税できるかどうかで、来年度、再来年度の資金繰り、予定にも差が発生します。
税金を最小限にするのは経営者としての務め。
最初に節税のノウハウを教えてもらうことで、税金による出費をおさえることができます。
税務調査
税務調査とは、税務申告内容への調査です。
つまり、申告内容が間違っていないかの調査です。
税務署があなたの会社に来て、会社の帳簿が実態と合っているかを調査します。
脱税する気はない思っている方でも、無自覚な脱税の可能性は充分あります。
申告漏れがあると延滞税を払うことになりますし、罰金刑もあります。
無意味で手痛い出費をするくらいなら、税理士に相談して安心を買うというのは充分賢明な選択肢です。
経理
重ねてにはなりますが、税理士は税務申告のプロです。
彼らに相談することは、その知識にお金を払っていることと同義です。
あなたが経理業務を担当するか、または経理担当を雇うのか、いずれにしても、最低限の経理知識は必須です。
書籍で勉強するのは時間も手間もかかります。
税金系のサイトを読み漁っても、あなたが本当に欲している知識にたどり着ける保証も、それが正しい知識なのかの保証もありません。
その点、相談できる税理士の存在は非常に心強いでしょう。
申告漏れや甘い事業計画など、金銭面での破綻を防いでくれるのが、起業前に税理士に相談できるメリットとなります。
デメリット
起業の専門ではない
どれだけ頼れる税理士だとしても、起業にまつわるすべてをサポートできるわけではありません。
例えば会社登記であれば、司法書士の独占領域です。
助言・指導程度なら問題ありませんが、手続き行為の代理はできません。
設立の際に必要となる会社定款は、抜けがあるとそもそも定款として機能しません。
そうなると、会社設立自体が認められない可能性があります。
専門分野は対応する専門家に指導を乞いましょう。
費用がかかる
当然ですが、費用が発生します。
会社設立時や起業準備期間中は何かと物入りな時期です。
予定外の出費が発生することもままあるでしょう。
税理士への報酬形態は毎月契約の顧問料と、一度限りの単発契約(スポット)があります。
顧問料の範囲内での仕事量は、税理士によってまちまちです。
契約前には必ず確認しましょう。
相性がある
得意分野との相性と、人間性の相性があります。
税理士といえど、人間です。
いろいろな人がいるでしょう。
税理士の中には特定の業界や分野を専門にしている人もいます。
業界の理解がおぼつかないと、そのたびに説明する必要があります。
建築なら建築、人材なら人材と、業界に明るい方を選ぶと、余計なストレスを抱え込むことはありません。
また、人間的な相性が合わない税理士もいます。
税理士資格は難関資格なので、学習能力に優れている、忍耐力がある方なのは間違いないです。
しかし、勉強ができるということと説明上手ということは同義ではありません。
税理士は知識を提供する立場にあります。
伝え方が下手な人や、ひとりよがりな人であれば、付き合うこと自体はばかられるでしょう。
契約を結ぶ前には、人間性を見極める必要もあります。
税理士に会社設立を依頼するときの費用は?
起業時に税理士に依頼するメリットは解説した通りです。
次はその費用について解説いたします。
会社形態を株式会社にするか合同会社にするかで費用は異なります。
まとめると、以下になります。
株式会社の場合 | 合同会社の場合 | |
---|---|---|
税理士への報酬相場 | 5万前後 | 5万前後 |
定款印紙代 | 4万円 | 4万円 |
定款認証手数料 | 5万円 | なし |
謄本交付手数料 | 約2000円 | 約2000円 |
登録免許税 | 15万円~ | 6万円~ |
合計 | 約30万円 | 約15万円 |
株式会社、合同会社を問わず、税理士への報酬は同じであることが多いです。
というのも、事業計画書の作成支援が主であり、内容は変わりません。
税理士への依頼料相場は以下になります。
依頼料相場
- 事業計画書の作成支援:5万円~
- 資金調達支援:成功報酬(資金調達の1%程度)
- 記帳代行:1仕訳あたり50~100円
- 決算申告:10万円~
決算申告の内容や記帳代行の量、また資金調達計画などは事業所ごとに変わります。
よって、会社形態で税理士報酬が変わってくるのは、設立後となります。
以下は株式会社と合同会社での違いをまとめました。
株式会社を設立する場合の費用
株式会社の設立を専門家に頼った場合、以下の費用が考えられます。
株式会社設立の費用
- 定款印紙代:4万円
- 定款認証手数料:5万円
- 謄本交付手数料:約2000円
- 登録免許税:15万円~
- 税理士報酬:5万円
- 司法書士報酬:5万円
株式会社は社会的な信用が高い代わりに、維持費や初期費用が合同会社に比べて高額なのが特徴です。
法人を相手にする場合や、無形商材を売る場合などは株式会社にするのがベターです。
株式会社は合同会社に比べ、設立の際に必要な書類なども多いです。
代表的なのが、会社の定款となります。
定款とはルールのひとつで、会社内での憲法のようなものと考えられています。
定款作成の際には公証役場に届ける必要があるので、安易な変更はできません。
その定款にも触れながら、以下、一つずつ解説してきます。
定款印紙代
費用は0円~4万円です。
定款作成自体を司法書士に頼る場合は、不要なケースが多いです。
そもそも印紙ですが、定款を作成した後、公証役場へと提出して認証を受けます。
その際に必要なのがこの定款印紙代となります。
定款を認証しない場合の合同会社や、電子定款の場合は必要ありません。
この電子定款ですが、専用のライターや特定ソフトを必要とするため、0から揃えるとかえって高くつく場合があります。
よく定款作成を依頼される司法書士は一式を所持していることもあるので、印紙代が浮く可能性があります。
依頼する際には最優先で確認しましょう。
定款認証手数料
費用は5万円です。
作成した定款は、前述したように公証役場で認証してもらわなくてはなりません。
その際の手数料となります。
株式会社の定款認証は必須です。
合同会社との違いに注意しましょう。
謄本交付手数料
費用は約2000円です。
この場合の謄本とは、会社や法人の登記事項証明書や、登記簿の謄本にあたります。
1通あたり250円となり、一般的な場合だと2000円程度用意しておけばよいでしょう。
主に定款認証の際に発生する費用で、登記申請用の定款謄本も同時に請求します。
登録免許税
費用は約15万円です。
登録免許税とは、会社を登記したり登録したりすることに対して課税される税金です。
免許事業でなかったとしても払う必要がある点に注意です。
この登録免許税ですが、資本金をもとに算定されます。
その一つの基準が資本金~1000万ですので、免許税は最低額の15万という認識で構いません。
専門家報酬
費用は0円~10万円です。
税理士と司法書士を合算した費用となります。
それぞれで5万円ずつ予算を考えると良いでしょう。
心許ない資金を専門家報酬に割くかどうかは非常に悩ましい点ではありますが、無知故にかえって高くつく可能性は否定できません。
経営者の仕事は会社経営であり、登記に詳しくなることでも税務に詳しくなることでもありません。
効率よい時間配分のために、専門家を頼ることをオススメします。
合同会社を設立する場合の費用
合同会社は株式会社と違って、手軽に安くできるのが特徴です。
会社=株式会社のイメージが強いため、社会的信用という点においては株式会社に敵いません。
また株式会社を名乗ることもできませんので、LLCなど別称を使用するなどして信用性を担保しましょう。
合同会社設立の費用
- 登録免許税:6万円
- 税理士報酬:5万円
合同会社の場合、会社定款を作成する義務がありません。
よって、必要最低限の費用のみで会社設立が可能となります。
定款作成周りの印紙代や謄本代なども不要となります。
複数人で会社を運営する場合は、予算分配などの観点から、定款の作成を強くオススメします。
登録免許税
費用は約6万円です。
合同会社の場合、株式会社よりも免許税の下限が低く設定されています。
これが法人設立の最低限の費用です。
専門家報酬
費用は0円~10万円です。
合同会社の場合だと、利益は出資者に等配分となります。
かつ、これに出資額は関係ありません。
複数人での経営を考え、出資額を揃えない場合は、定款として配分への特記事項を記載する必要があります。
それ以外の場合であれば、定款を作る緊急性はないでしょう。
合同会社を検討する場合、運転資金の予算繰りに困っているケースが非常に多いです。
そういった面で、税理士への相談・融資支援は非常に心強いです。
税理士への相談は検討しましょう。
税理士に起業の相談するタイミング
会社経営において税理士は頼もしい味方となるでしょう。
あなたの敵になることはなく、二人三脚でなんでも相談できる存在です。
とはいえ、顧問契約であっても単発(スポット)契約であっても料金が発生するのは事実。
法人であれば遅くとも起業から二年後に、個人であれば売上が1000万を超えたあたりで、必ず一度相談しましょう。
税理士事務所の中には、起業相談に無料で乗ってくれる事務所があります。
なるべく予算を抑えながらの相談も可能ですので、一度問い合わせ見ることをオススメします。
ここでは以下の場合にかけて、その重要性を解説します。
起業相談のタイミング
- 会社設立時
- 会社設立後
- 個人事業起業後
会社設立時
会社を設立したての頃も、税理士への相談は視野に入ります。
前述の通り、設立手続きを無料で行っている事務所が存在します。
税理士にとって、事業主は長く付き合いたいパートナーです。
ひとりでも多くの事業主と付き合いたいというのが本音です。
税理士の収入は単発契約もそうですが、その大半が顧問料です。
顧問先の確保は税理士事務所の経営において、最重要の課題となります。
だからこそ、最初から過剰に料金を請求するのではなく、「ある程度売上が立つようになるまで育ててから、対等な関係を築こう」という農耕型の税理士もいます。
法人として経営していく場合、税理士との付き合いは避けて通れません。
事業開始時からお付き合いのある税理士の場合、いろいろな場面で話が早いです。
事業概要や会社の状況を逐一把握しているので、報告が手短に済む可能性が高いです。
必要になるたびにスポットでお願いすると安上がりで済みますが、担当する税理士が異なる場合、一から説明する手間が発生します。
顧問契約は固定費になるので難色を示すかと思いますが、勝手知ったる税理士をひとり確保できると考えると安上がりに済みます。
そのほうが時間的にもお得になります。
あなたの時間単価を最大化するための必要経費と考えましょう。
また、起業前で事業計画書に悩んでいる場合、助言をもらえる可能性もあります。
初回相談が無料な税理士が大半ですし、そのアドバイスの内容などで税理士を判断することも可能です。
融資の相談は税理士の腕の見せ所です。
信じるに値するか見極めるためにも、一度話を聞いてみることを強くオススメします。
会社起業後
最低でも起業から2年以内には契約する税理士を探しましょう。
法人は経費計上できる科目も増え、社会的信用が高く、課税面でも多々優遇されています。
しかしそれは、正しく税金を納めている場合に限ります。
勘定科目が増える分、個人で決済申告を行うのは至難の業でしょう。
申告漏れがあると遅滞分の納付義務が発生したり、罰金が発生したりと手痛い出費に鳴っていますし、自覚のない脱税は避けるべきです。
1期目の税務申告を前に、慌てて相談を考える事業主が大半を占めます。
本業が忙しくて決算のことを忘れていたり、個人事業主感覚で申告を断念したりするというのがパターンとして多いようです。
税理士によっては、決算前だけの依頼であっても、顧問料を一年分請求することもあります。
依頼するタイミングはしっかり検討しましょう。
税理士は決算まわりももちろんですが、融資や経営の相談に乗ってくれる貴重な存在です。
いま経営が上手くいっているのなら、なおさら税理士が必要となるでしょう。
経営者は目の前のことで一喜一憂するのではなく、今期・来期と中長期的な計画を立てる必要があります。
何百何千と事業計画書に目を通してきたプロからの意見は、大変有益なものとなるでしょう。
税理士への依頼を税務処理のアウトソーシングと考えるのは間違っていません。
ですが、その真髄は経営相談にあります。
これまでの知見を元に何を考えるか、それを知ることで経営を再確認できるでしょう。
単発契約だけで済ませるよりも、顧問契約を強くオススメします。
個人事業起業後
個人事業主であった場合、売上が1000万を超えた当たりから、本格的に相談を検討しましょう。
もちろん、相談は早いに越したことはなく、
確定申告の負担が重い場合には、積極的に活用するのもいいでしょう。
しかし、売上1000万というのが法人化を検討する一つの基準となります。
売上が800万を超えた時点で控除などでの節税メリットはあるのですが、1000万を超えると消費税課税の対象者となります。
このタイミングで法人に切り替えると、消費税の納税が免除されます。
納税までの猶予が少し伸びることになります。
起業相談をするときの税理士の選び方
税理士は国家資格で稀少だとはいえ、あなたの地域にも数多くの税理士事務所があることでしょう。
その中で、税務申告や科目仕訳などの作業には差がありません。
税理士としての価値は税務申告以外のところにあります。
悪質な税理士事務所と契約すると、経営相談はおろか融資相談すらままなりません。
中には顧問契約を結んだ途端、何もしなくなる事務所があったり、新人や無資格の事務委員に仕事を担当させる事務所があったりします。
わざわざ予算を割いて使っているサービスですので、一円でも多く元を取りたいのが本音。
ここでは税理士の選び方について解説します。
見るべきポイントは以下の4点です。
税理士選びのポイント
- 資金調達の実績
- 経営相談や会計指導をしてくれるか
- 自分の業界に精通しているか
- 大手事務所か個人事務所か
どれだけ好条件の先生でも、あなたが話をしていて不快に思う税理士はオススメできません。
また税理士を選ぶ際は、ひとりでも多くの税理士と実際にあって話をしましょう。
どんな依頼であっても、会話の上に成り立っています。
あなたが不信感を覚えるような税理士と付き合う必要はありません。
なるべく多くの税理士と会って、その中であなたが信じられる一人を探し出しましょう。
資金調達の実績
融資実行率を尋ねてみるのがいいでしょう。
資金調達の実績として、どれだけの融資を成功させてきたのかを尋ねてみましょう。
その際には精通する業界を確かめると、より具体的に実力が窺えます。
別な角度としては、「経営革新等支援機関」に認定されているか確認することをオススメします。
「経営革新等支援機関」とは中小企業庁が認定する支援機関で、この機関から認定されると言うことは国のお墨付き税理士と考えることもできます。
実績のない新人や熱意のない税理士を分ける篩いになります。
誠実な仕事ぶりが期待できるでしょう。
また、金融機関での勤務経験も判断材料の一つです。
融資を通す側として長年培った知見をもとに、アドバイスをしてくれます。
税理士によっては「自分だったらココを見る」という独自のポイントを持っていることがあります。
要点の抑え方は一生モノの知識なので、検討材料としては充分です。
経営相談や会計指導をしてくれるか
税務、会計のプロとして、あなたの経営に意見できる税理士は貴重な税理士です。
金融機関には正しい付き合い方があります。
何の関係性もないまま巨額の融資を申し込んだとしても、認可が下りる可能性は低いでしょう。
会計事情を公開すると言うことは、会社の腹を見せることと同義です。
赤字経営に傾こうとしている時、何の助言もできない税理士に払う報酬はありません。
ひとりでは気づきにくいことも、第三者であれば客観的な視点で気づくことができます。
そういったアドバイスをしてくれる税理士かどうか確かめましょう。
会計指導をしてくれる税理士を多機能な講師として考えることもできます。
起業時はあなたひとりですべてをこなさなくてはなりません。
特に経理部門は腰が重い仕事の一つでしょう。
税理士から指導を仰ぎながら、会計を勉強することも可能です。
独学や知人ではなく、プロから教わることができるのです。
効率の良く勉強できる税理士を探すといった視点も、税理士選びとしては間違ってはいないでしょう。
自分の業界に精通しているか
税理士の得意業界を確認することの重要性はここまでで確認してきました。
というのも、税理士に関わらず、士業は複数社を掛け持ちしている場合がほとんどです。
よっぽどの大企業でもない限り、一社専属だと生活が成り立ちません。
あなたの会社に割ける時間は必然的に減ってしまいます。
あなたの業界を知らない税理士は、あなたからしか業界知識を得ることができません。
専門書や新聞などの媒体では得られる情報量に限界があります。
具体例として支払い方法で考えてみましょう。
どの業界にも業界特有の決算方法、手段があると思います。
手形決済や売掛など、他業種から見た常識が当てはまらない場合が多々あります。
勉強不足の税理士からの指摘ほど、不毛なものはありません。
ましてや経営相談や会計指導をお願いするなど考えにくいでしょう。
結果的にあなたの損につながります。
業界に精通しているベテランの税理士を信頼するか、駆け出しで担当企業数の少ない税理士を育てるほうがいいでしょう。
大手事務所か個人事務所か
税理士は大手事務所と個人事務所のどちらにも長所と短所があります。
どちらがいいかは一概にいうことはできませんが、売上高の状況で選ぶという方法があります。
予算に余裕がないうちは個人事務所で、余裕が出てきたら大手事務所に切り替えるという手法です。
どちらの事務所を選ぶとしても、最終的には担当者との相性がモノを言います。
自身の好みに合わせて選びましょう。
大手事務所の場合
大手事務所の長所は、サービスの質が保証されていることにあります。
大手として一枚看板でやっている以上、サービス内容にムラがあってはいけません。
ある程度業務内容や担当領域を明確化しているので、良くも悪くも付き合いやすいという特徴があります。
担当税理士が変更になった際も、事務所内で引き継ぎがされるので、情報はしっかりと共有されます。
長期的に安定して付き合うことができるでしょう。
短所は、個人事務所に比べると高くつく可能性があることです。
売上高が少ないうちは、割高に感じてしまうこともあります。
事業規模と相談しながら、選ぶのが無難でしょう。
個人事務所の場合
個人事務所の長所は小回りが利くことです。
個人事務所だと、個人が事務所の看板になります。
開業税理士は大手と差別化を図るため、細かいサポートで歓待してくれるでしょう。
担当者数が少ないうちはスケジュールを抑えるのも容易なので、聞くのも憚られる質問を遠慮なくすることができます。
何かと頼りになる存在になってくれるでしょう。
熱意のある税理士と会社を大きくしていきたいと意気込むのであれば、個人事務所をオススメします。
個人事務所の短所は、担当にムラがあることです。
当初は開業税理士が担当していたものの、事務所の規模が大きくなるにつれて、担当から外れることがあります。
税理士としての仕事を新人に任せ、本人は新規開拓に出るといったケースです。
当然、知識や技量に差があるわけですが、顧問料や依頼料は据え置きというパターンがあります。
実質上の値上げとなります。
また、個人事務所は離職率が高いという難点もあります。
担当変更があるたびにあなたの会社について説明をし、当初よりも質の下がったサービスを受けることになります。
それが何度も続くこともありますし、ひどい場合は監修を税理士が務め、無資格の事務員に作業をさせる事務所もあります。
それを煩わしいと思うのであれば、大手事務所を選ぶ方が無難でしょう。
あるいは、売上規模で切り替えるのも正しい選択です。
税理士とそのほかに相談する場合の違い
大手の事務所では複数の士業を抱え、ワンストップでサービスを展開しているところもあります。
「たくさんの先生がいるほうが安心できる」
確かに相談先が増えるのはメリットですが、そもそもあなたの事業や会社形態に関係しない士業もあります。
会社設立の際に関わるのは、税理士と司法書士と行政書士です。
以下にそれぞれの特徴をまとめました。
必要に応じて取捨選択をするとよいでしょう。
税理士の業務内容と得意分野
税理士は、税務や決算の専門家です。
税理士の独占業務は「会社設立及び運営に際しての税務手続き代行」となります。
当然ですが、税務が発生していない場合、独占業務はありません。
そもそも、税理士にお願いしなくてはいけない業務自体が存在しないことになります。
しかし、税理士は個人法人問わず、税務や所得申告をする際に心強い味方となります。
担当している領域について、詳しく確認していきましょう。
税理士の業務内容
税理士の主な業務内容
- 税務代理
- 税務書類の作成・提出
- 税務相談
- 会計業務
税理士は当事者に代わって税務手続きを行うことができます。
具体的には、確定申告の代理や税務調査の立ちあい、税務署への申し立てなどが該当します。
会社設立時の業務として独占業務を持っているわけではありませんが、大手事務所の場合だと他の士業とのつながりから手続きの概要を知っている場合があります。
税務相談をしていたら他の執行を紹介された~というのは珍しい話ではありません。
注意しなくてはならないのが、あくまで独占業務は税務関連であるということです。
いくら詳しいからと言って、会社登記の手続きを代行してもらうことはできません。
違法行為となるので依頼しないようにしましょう。
そのほかにも税務相談や会計業務なども業務内容にあたります。
会計で会社の収支常用を把握し、税務の相談に乗りながら書類を作成して、税務手続きを代行するというのが税理士の主な役割となります。
税理士が本格的に活躍するのは、起業してからとなります。
税理士の得意分野
税理士の得意分野は税務と決算全般となります。
会社設立時の税務相談としては、開業経費が多く寄せられます。
資金繰りは経営者の課題なので、起業にあたっていろいろな物品を取りそろえた場合は、税理士への相談を強くオススメします。
司法書士の業務内容と得意分野
司法書士は登記手続の専門家です。
税理士が税務のスペシャリストであったように、司法書士は登記のスペシャリストです。
また登記手続きは司法書士の独占業務となります。
株式会社を設立する際には必ずお世話になるので、しっかりと確認しましょう。
司法書士の業務内容
- 登記業務
- 書類作成業務
- 訴訟代理業務
そもそも登記とは、一定の事項を広く示すために公開された帳簿に記載することを指します。
登記の代表例としては、不動産や会社、債権、相続などが該当します。
権利関係を明確にするための行為と言い換えてもいいでしょう。
一定数の需要がある不動産や相続、または会社設立が司法書士の担当領域となります。
司法書士の得意分野
司法書士の得意分野は登記全般です。
法人登記の際には会社定款が必要となりますので、司法書士はこの定款作成に明るい場合が多いです。
定款の中でも絶対的記載事項に漏れがある場合、定款そのものが無効となります。
そうなると、会社が設立できないどころか、定款のための印紙代など高額の費用が無駄となります。
また定款は、言うなれば会社の憲法にあたります。
適当に作るわけにはいきません。
この登記手続きについて、他士業ができることは助言のみに留まります。
知識、経験の有無にかかわらず、他士業が代行することはできないので注意しましょう。
また登記手続きは会社設立に限った話ではありません。
株式会社の場合、役員が交代するたびに役員変更登記を届け出る必要があります。
登記=司法書士と思い出せるようにしておきましょう。
行政書士の業務内容と得意分野
行政書士は行政へ提出する書類のスペシャリストです。
行政書士は他の士業は違い、独占業務を持っておりません。
行政への提出書類の作成は他士業はおろか、一般人でさえ作成可能です。
ですが、作れることと正しく作れることは大きく異なります。
飲食業、運送業、建設業、人材紹介での起業を考えている方は必ず行政書士への相談を検討しましょう。
行政書士の業務内容
行政書士の業務内容
- 書類作成業務
行政書士は行政に提出する書類作成が主な業務となります。
具体的には会社設立や飲食店開業、産業廃棄物関連、民官取引の契約書、相続に関する書類などが挙げられます。
行政書士の得意分野
行政書士の得意分野は、行政向けの書類作成となります。
事業の中には許認可事業と呼ばれる区分があります。
これは、法人登記をしたとしても、許認可がなければ営業することができない事業区分です。
提出先は警察署、保健所、行政機関など、業界によって異なります。
代表的な業界は、飲食業、建設業、人材紹介、警備業、運送業などが挙げられるでしょう。
行政書士は、こういった許認可にまつわる行政書類に強い士業です。
許認可が降りず営業ができないというのは、なんとも歯がゆい思いをするでしょう。
手間を時間で買わず、お金で時間を買いましょう。
該当する事業は要注意です。
何が税理士に頼れて、何が頼れないのか
各士業の長所と短所に触れてきましたが、いまいちど税理士に頼れる業務内容をまとめました。
税理士に頼れること
- 税務相談
- 税務申告
会計指導から節税対策、税務関係書類の作成や税務申告まで、税金のことならワンストップで任せられるのが税理士です。
また融資の相談などにも強いので、資金繰りが少し厳しいときにも心強い味方になってくれるでしょう。
会社の財務状況を伝えなくてはならないので、信頼できる方でないと務まりません。
顧問契約やスポット依頼のどちらにせよ、見極めが必要になるでしょう。
税理士に頼れないこと
- 登記手続き
- 許認可申請
税理士に頼れないのは、登記手続きと許認可申請です。
税理士に依頼した場合は、その税理士と提携している行政書士・司法書士が
対応することになります。
早く、確実に営業を始めるためにも、各士業を正しく使うことをオススメします。
ただ、助言や独占業務外での関与は認められています。
他士業と交流のある税理士なら、包括的に知識を仕入れていることも珍しくはありません。
まったく何も知らない状態なのであれば、アドバイスをもらう程度は良いでしょう。
顧問税理士は必要?
税理士との契約は大きく分けて二種類あります。
顧問契約とスポット(単発)契約です。
税務についての勉強が苦手であったり、勉強する時間を割いたりできないほど忙しい場合は顧問契約を、最低限の仕事だけでいいのであればスポット契約をオススメします。
とはいえ、スポット契約はあまりオススメできません。
贔屓にしている税理士がいるなら別ですが、決算時期ごとに税理士を変えるのは時間的に非効率です。
教える手間が発生したり、割増賃金を請求されたりする場合があるからです。
ここでは「顧問契約とは何か」から掘り下げ、具体的にお願いできる内容をまとめました。
顧問契約とは
顧問契約とは、月額料金で長期的にお付き合いをする契約を指します。
相談の有無、依頼の有無にかかわらず、毎月顧問料が発生する点に注意しなければなりません。
税理士にも寄りますが、訪問のペースは三ヶ月に一度程度が目安となります。
そのタイミングで経営に関する相談であったり、決算用の資料を渡したりすることになります。
訪問のタイミングは税理士や事務所によっても異なります。
駆け出しの税理士の場合、スケジュールを抑えやすいというメリットがあるので、とにかくいろいろ聞きたいと思っている方は、独立したての税理士をオススメします。
また、税理士にとって顧問契約は重要な収入源でもあります。
顧問契約をしてくれるという条件に限り、費用を抑えて依頼できる場合もあります。
良好な関係を築くための交渉材料と考えても良いでしょう。
当然ですが、顧問契約をダシに無理難題を押しつけるのはNGです。
優秀な税理士ほど、顧問先の企業が多い傾向にあります。
税理士同士で「あそこの会社は・・・」と噂されてしまう可能性もあります。
あくまで対等に付き合うよう注意しましょう。
やってくれる仕事
顧問税理士にお願いできる仕事を以下にまとめました。
顧問税理士にお願いできる仕事
- 決算書や確定申告書類の作成
- 経理業務全般
- 経営アドバイス
決算書や確定申告周りをお願いしたときの最大のメリットは、速さと正確さが金備わっていることです。
つど担当が代わるスポットとは違い、顧問の場合だとあなたの会社の勝手を分かってくれています。
細かいことをいちいち説明することもなく、書類を任せるだけで仕上がってきます。
多くの経営者にとって、決算書類や確定申告は通常業務と無縁でしょう。
利益の最大化を考えたときに、余分な業務は一切しないのが経営者の理想です。
また、経理業務全般もお願いできることがあります。
領収書の計算や帳簿作成などの記帳代行、社員の給与計算、年末調整など、経理としても頼ることができます。
雇った経理の能力が心許ない場合、税理士の知恵を借りることもできます。
スポット契約の場合、あなたの会社を知らないので、その知識のすりあわせから始める必要があります。
事情を知った税理士はこういった場面でも役に立つでしょう。
そして何より、経営アドバイスをしてもらえるメリットもあります。
会社の経理情報、経営情報を逐一確認しているのが税理士です。
経営者よりも税理士のほうが把握しているなんてことは珍しくありません。
大抵の税理士は、複数社を掛け持ちしています。
つまり、多くの成功例や失敗例を把握しています。
その視野の広さは税理士ならではと言えるでしょう。
融資を考えたときにも必ず役に立つはずです。
顧問税理士の契約は、経営者にとって基幹作業の外注化に他なりません。
経営者の仕事は決定であり、分析ではありません。
不得意分野ならなおさらです。
一日に活動できる時間は限られています。
時間効率を最大化するためにも、顧問契約は必ず検討しましょう。
顧問税理士の相場
顧問税理士の相場は、だいたい2万円前後となっています。
料金体系は売上高によって変動し、年間1000万未満の場合、月額2万前後と考えていいでしょう。
売上高によって変動するといっても変動幅はゆるやかで、年間1億だとしても、顧問料は5万円程度になるようです。
記帳代行をお願いする場合は、月額に5000円程度追加する形になります。
依頼料は税理士の人件費と考えたほうが良いでしょう。
短期間で終わる仕事であれば料金は安く済みますし、より多くの時間を拘束するとなると料金は跳ね上がります。
単純な売上だけではなく、実際の作業量や訪問頻度によっても代わるので、顧問契約の際には注意が必要です。
実際に依頼しようと思っている内容をもう一度まとめ、それをもとに交渉すると失敗しないでしょう。
また個人と法人では、個人のほうが安く済みます。
法人化前であれば、個人の段階で一度依頼してみて、そこから付き合い方を決めるというのも悪くないでしょう。
顧問税理士の必要性
結論から言って、税理士は顧問契約すべきです。
顧問税理士はどの売上フェーズであっても活躍が見込めるからです。
起業前の段階では、開業費用の計上や基本的な税知識を学ぶことに役立ちます。
起業後は創業資金の融資や運転資金の調達、事業計画や確定申告まで依頼できます。
長らく経営していた場合でも、これまでの経営の結果がどうなのか、会社の収支状況がどうなのかを評価してもらうことができます。
売上の有無や規模にかかわらず、税金は社会人に発生する義務です。
知っていると知らないとでは考え方や守り方の差が大きく開いていきます。
そして良き教えは最初に学べば学ぶほど、指数関数的に効果が高くなります。
無駄金を捨てる必要の一切がなくなります。
決算時期に慌てて駆け込んでスポット依頼した挙げ句、顧問料一年分を請求されるケースも珍しくはありません。
決算というと一年分の仕事です。
処理する情報量が多いので、当然の請求と言えるでしょう。
小規模な個人事業主であればともかく、ある程度規模が大きい事業主や法人なら顧問税理士は検討するべきです。
顧問税理士は会計処理、節税のアウトソーシングです。
利益の最大化が経営者の本懐であり、やはり時間は有限です。
事業のことに専念し、リスクを回避するという意味でも、顧問税理士は必ず検討しましょう。
まとめ
結論、やはり税理士には相談するべき
ここまでを総括すると、起業の際には税理士へ相談するべきです。
税理士へ相談するメリットを改めてまとめました。
税理士に相談するメリット
- 会計上のアドバイスをもらえる
- 節税への意識が強くなる
- 事業計画を見直せる
- 時間を有効に活用できる
- 税理士はあなたの味方である
会計上のアドバイスをもらえる
税理士の本領は会計や決算などの申告業務です。
決算末に慌てて依頼を出したとしても、通年の依頼料を請求されることになるでしょう。
それはつまり、本来受けることができていた相談などのサービスが受けられないことを意味します。
経営相談や会計相談など、ひとりでは心細いこともあるでしょう。
頼れる税理士がいれば、懸念要因を一つずつ潰すこともできます。
節税への意識が強くなる
節税は起業時から始まっています。
売り上げの有無、規模に関わらず、納税は社会人の義務です。
違いは納税額だけで、節税への意識はつね日頃から持っておく必要があります。
起業時の開業費用も経費として計上でき、かつ科目仕訳についても学ぶことができます。
税理士を使わない手はないでしょう。
事業計画が見直せる
税理士は多くの会社を渡り歩いているプロです。
創業融資などの資金調達でも頼りになるでしょう。
返済計画に無理がある場合には指摘してもらうこともできます。
金銭感覚は経営者としてまず養わなければならない能力の一つです。
自分の物差しの精度を高めていきましょう。
時間を有効活用できる
慣れない業務には余計な時間がかかってしまいます。
個人ならまだしも、法人の申告内容は複雑です。
早く、正確に、最低限で仕上げることは困難を極め、自覚のない脱税で罰せられるリスクもあります。
あなたが不慣れな会計業務や申告業務を行って経費を浮かせるよりも、本業に集中するほうが売り上げを最大化できます。
手間と時間はお金で買い、事業の拡大に注力しましょう。
下手に経理専門の社員を雇うより、安上がりで済む場合もあります。
税理士はあなたの味方である
あなたと税理士は根本的に対等な関係です。
搾取・被搾取の関係ではなく、ともに助け合う仲間です。
税理士が一番望むのはあなたとの長く太いお付き合いです。
税理士はあなたの売り上げの一部を報酬としてもらいます。
その税理士の仕事で、あなたは会社の利益を最大化することができます。
税理士にも会社を潰すメリットはありません。
安心して頼ることをオススメします。
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