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運送業を始めるためには?開業までの流れを一挙に説明!

運送業とは

運送業とは、車を使って物資や人を運ぶ事業です。

なかでも、物資を運ぶ運送業は「貨物自動車運送事業」と呼ばれ、以下3つの種類に分かれます。

  • 一般貨物自動車運送事業
  • 特定貨物自動車運送事業
  • 貨物軽自動車運送事業

運送業の会社設立には、事業ごとに必要な手続きが異なります。

まずは設立したい運送業の会社がどの事業にあてはまるかを把握しておきましょう。

運送業の種類は、事業に使用する自動車の種類や依頼主が特定されているかで異なります

貨物自動車運送事業法に基づいた、それぞれの貨物自動車運送事業について解説します。

一般貨物自動車運送事業

他人からの要望や需要に応じて、有償で自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車を除く)を使用して貨物を運送する事業、かつ特定貨物自動車運送事業以外のものが一般貨物自動車運送事業です。

ほとんどの貨物自動車運送事業が、一般貨物自動車運送事業に該当します

事業用自動車である「緑ナンバー」の車を使い、依頼者から運賃を受け取って品物を目的の場所まで運ぶのが事業の内容です。

車のナンバーの色から「緑ナンバー」「青ナンバー」と呼ばれることもあります。

特定貨物自動車運送事業

特定の者からの要望や需要に応じて、有償にて自動車を使用して貨物を運送する事業が特定貨物自動車運送事業です。

一般貨物自動車運送事業との違いは、依頼主が特定されていることです。

たとえばA株式会社が子会社としてA運送やAロジスティックなどの運送業者を設立したとします。

A運送やAロジスティックがA株式会社のみの貨物を運送するための会社なら、特定貨物自動車運送事業に該当します。

特定の1社からのみ運賃を受け取って品物を目的の場所まで運ぶ場合は、特定貨物自動車運送事業の許可が必要です。

貨物軽自動車運送事業

他人からの要望や需要に応じ、有償で自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車に限る)を使用して貨物を運送する事業が、貨物軽自動車運送事業です。

軽貨物自動車を使用して依頼を受けた品物を目的の場所に運び、運賃を受け取ります。

事業用の軽自動車や125cc以上の二輪車につける「黒ナンバー」の自動車やバイクを使用しているのが特徴です。

黒ナンバー」や「軽貨物」とも呼ばれています。

一般貨物自動車運送事業よりも一度に運べる荷物の量や大きさは少ないものの、貨物軽自動車運送事業は使用する軽自動車や二輪車を貨物自動車登録すればはじめられます。

必要な許可申請が一般貨物自動車運送事業もかんたんなため、運送業を容易にはじめられる事業といえます。

なお、一般貨物自動車運送事業では軽トラックなどの軽自動車、二輪車を事業に使用するのは禁止されています。

運送業の許可が必要なケースとそうでないケース

運送を事業として会社設立をする場合、運送業の許可が必要なケースと必要でないケースがあります。

(運送業の許可=一般貨物自動車運送事業とします)それぞれのケースについて解説します。

運送業の許可が必要なケース

運送業許可が必要なケースは、自動車を使って貨物を輸送する際に「他人から運賃をもらう場合です。

ある企業から依頼を受けて、製品を工場から工場へ運んで報酬を受け取る場合や、個人の依頼を受けて自宅から特定の場所まで荷物を運んで報酬を受け取る場合などが該当します。

ただ貨物を目的の場所に運ぶだけでなく、積載車を使って自動車などを運ぶ場合、引っ越しで荷物を運ぶ場合なども、依頼主から運賃を受け取る場合には運送業の許可が必要です。

運送業の許可が必要でないケース

運送業許可が必要でないケースとは、依頼された荷物を運ぶ際に運賃が発生しない場合です

ほかにも、一般貨物自動車運送事業では軽自動車を使って荷物を運ぶのも該当します。

おもに以下の4つのケースでは、運送業の許可が不要です。

  • 自社の荷物を運ぶ
  • 軽自動車を使って荷物を運ぶ(貨物軽自動車登録が必要)
  • 自動二輪車を使って荷物を運ぶ
  • 運賃をもらわずに荷物を運ぶ

それぞれについて解説します。

自社の荷物を運ぶ

自社の荷物を運ぶ場合は、他人や他社から依頼されるのではなく自社の業務として行います。

つまり運賃をもらう人がいないため、運送業許可は不要で行えます。

たとえば、仕入れのために大量の製品を自社倉庫にトラックを使って運ぶ、工場で使用する原材料を購入して工場へ運ぶ、といった場合でも報酬が発生しないため、運送業には当てはまりません。

運ぶ荷物が大量でも運賃が発生しなければ運送業ではないため、許可は不要となります。

ただし自社のグループ会社の製品や商品を運ぶ際は、運送業許可が必要な場合があります。

自社のグループ会社とはいえ、自社とは別会社です。

会計上の処理でも別会社扱いとなるため、グループ会社から運賃をもらって製品や荷物を運ぶ場合には、報酬が発生するため運送業の許可が必要になります。

軽自動車を使って荷物を運ぶ

軽自動車を使って荷物を運ぶ場合は、他人や他社から依頼を受けて運賃をもらっても運送業(一般貨物自動車運送事業)には該当しません

逆に、軽自動車を使用して他人から運賃をもらって荷物を運ぶのは、一般貨物自動車運送事業では禁止されています。

軽自動車を使って運送業を行う場合は、運送業許可ではなく、別途軽自動車を事業用として登録する貨物自動車登録が必要です

貨物自動車登録を受けた軽自動車は、ナンバープレートが黒になるため「黒ナンバー」と呼ばれています。

黒ナンバーの登録は、通常の運送業許可を得るよりも要件が少なく登録がかんたんなため、小規模やはじめて運送業を開業したいときにも向いています。

自動二輪車を使って荷物を運ぶ

バイク便と呼ばれる自動二輪車を使って運賃を受け取って荷物を運ぶ場合も、軽自動車と同じく貨物軽自動車運送事業に該当します。

軽トラックを使用して運送業をする場合は黒ナンバーですが、バイクを貨物自動車登録すると緑ナンバーになります。

なお、緑ナンバーが取れるのは排気量が125cc以上のバイク(軽二輪、小型二輪)のみです。

125cc以下のバイクは規制がなく、白ナンバーのままバイク便をしても問題ありません。

運賃をもらわずに荷物を運ぶ

運賃をもらわずに荷物を運ぶ場合は、運送業には該当しないため運送業許可は不要になります。

他人や他社からの依頼でも、トラックで大量の貨物を運んだとしても運賃が発生しないなら不要です。

大量の資材をトラックで運搬する建築業者などが該当します。

あくまで運賃という名目で報酬を受け取っていなければ、運送業で利益を出したことにはならないため、運送業許可は不要です。

ただし、税務署から運賃が発生しているとみなされた場合は、運送業許可が必要となります。

たとえば、建設業者でも実際の建設費用以上の金額が請求書に上乗せされている場合、運賃という名目でなくても運賃が含まれている、とみなされてしまうのです。

運送業許可に必要な4つの要件

運送業許可は、国土交通大臣または事業所を管轄する地方運輸局長の許可が必要になります。

運送業許可をとるためには、以下4つの要件を満たして申請しなければいけません。

  • 人の要件
  • 資金の要件
  • 場所の要件
  • 車両の要件

それぞれの要件について解説します。

人の要件

運送業許可の条件として、以下の人の要件も設定されています。

  • 申請者が欠格事由に該当しない
  • トラックを保有している台数に応じたドライバーを確保する
  • トラックの台数に応じた運行管理者を確保する
  • 運行管理者を確保する
  • 運行管理補助者を確保する
  • 整備管理者を確保する
  • 整備管理補助者を確保する

それぞれの要件について解説します。

申請者が欠格事由に該当しない

個人事業主の場合は事業主、法人の場合は役員全員が以下の欠格事由に該当する場合は申請許可が下りません。

まずは以下の欠格事由に該当していないかを確認しておきましょう。

  • 運送業許可を受けようとする者と密接な関係のある者が、一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業の許可取消を受けてから5年を経過していない者
  • 運送業許可を受けようとする者が、一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業の許可取消の処分に係る聴聞の通知が到達した日から処分をする日またはしないことを決定する日までの間に事業の廃止の届出をしてから5年を経過しない者
  • 運送業許可を受けようとする者が、事業場への立ち入り検査が行われた日から聴聞決定予定日までの間に事業の廃止の届出をしてから5年を経過しない者
  • 2の期間内に事業の廃止の届出があった場合、運送業許可を受けようとする者が、2の聴聞の通知が到達した日前60日以内に届出に係る法人の役員であった者で、届出日から5年を経過しない者

トラックを保有している台数に応じたドライバーを確保する

運送業で保有しているトラックの台数に応じたドライバーをすでに確保している、またはこれから確保予定であることが必要です。

最低でも確保しなければいけない人員は5人になります。

また、ドライバーは会社の直接雇用の従業員でなく長期雇用の派遣社員であっても問題ありません。

申請時、確保予定のドライバーが他の会社で勤務していても申請できます。

トラックの台数に応じた運行管理者を確保する

保有しているトラックの台数に応じた運行管理者を確保、または確保予定であることが必要です。

トラックの台数は29台までにつき運行管理者が1人で問題ありません。

以後1台以上29台まで増えるごとに、1人ずつ運行管理者を増やす必要があります。

運行管理者を確保する

運行管理者とはトラックの安全運行の確保や運転者の指導監督を行う職種です。

運送業を運営していくなかでも重要なポジションといえます。

運行管理者となるには運行管理者試験に合格するか、一定の実務経験を積むかが必要になります。

試験を受けて運行管理者となる場合は、運行管理者試験を受験する条件を満たして試験に合格する必要があります。

運用管理者資格の受験条件は以下のいずれかに該当していることです。

運慶管理者資格は毎年3月と8月にしか実施していないため、計画的に行動に移しましょう。

  • 事業用自動車の運行管理の実務経験が1年以上ある者
  • 自動車事故対策機構等が行う基礎講習を修了していること

実務経験を積んで運営管理者となるには、運送業許可等を有する運送事業者のもとで運行管理補助者に選任された期間が 5年以上必要です。

その上でその期間の間に自動車事故対策機構等が行う基礎講習1回以上、一般講習4回以上を受講していることが条件となります。

運行管理者の欠格要件である地方運輸局長による解任命令により解任され、その解任の日から5年を経過しない者ではないことが必要です。

なお、運送業許可を取ったあとに運行管理者資格を持った人がいないまま運送事業を行うと、重大な法律違反として初犯の場合事業停止30日の行政処分が下されます。

運行管理補助者を確保する

運行管理補助者を確保または確保予定であることが必要です。

運輸管理補助者とは運行管理者が不在の時に運行管理業務を行います

運行管理補助者の選任は運輸業許可に必須のため、忘れないように選任しましょう。

運行行管理補助者は、自動車事故対策機構などの行う運行管理者基礎講習を修了することで選任できます。

整備管理者を確保する

整備管理者を確保または確保予定であることが必要です。

整備管理者とは、事業用トラックの点検整備の実施や点検整備記録簿の管理、車庫の管理などを業務として行います。

整備管理者になるには、決められた資格を取得しているか、実務経験を積んでいるかが必要です。

資格で整備管理者になる場合、一級自動車整備士、二級自動車整備士、三級自動車整備士いずれかの資格を取得している場合に選任できます。

実務経験で整備管理者となる場合は、運送業許可を取得している運送事業者のもとで整備管理補助者として選任された期間、または整備工場やガソリンスタンドで点検整備業務を行った期間が2年以上ある者が、整備管理者選任前研修の受講を修了していることが条件となります。

整備管理者の欠格要件である地方運輸局長による解任命令により解任されて、その解任の日から2年を経過しない者ではないことも条件です。

整備管理補助者を確保する

整備管理者が不在の場合に整備管理業務を行う、整備管理補助者を確保または確保予定であることが必要です。

なお、整備管理補助者になるための欠格要件は特にありません。

資金の要件

運送業許可を取得するために、運送業を事業として営むために必要な当面の資金が準備できていることが条件として定められています。

運送業許可申請が通っても、資金不足ですぐに大量の運送業が撤退してしまうと国土交通省や運輸省への負担が大きくなるためです。

資金の要件として必要なのが、以下の項目です。

  • 人件費
  • 燃料費
  • 油脂費
  • 修繕費
  • 車両費
  • 車両の税金関係
  • 保険料
  • 事務所と駐車場の費用
  • 什器・備品
  • 登録免許税
  • その他の費用

必要な資金は事業の規模や設備、車両の数などで変動はありますが、おおよそ800~2000万円ほどはかかる可能性が高いです。

必要な資金の準備を事前に行うようにしましょう。

それぞれの要件ごとに必要となる費用の項目を解説します。

人件費

人件費としては給与・手当・役員報酬の2カ月分、社会保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・労災保険料の会社が負担する金額の2カ月分、福利厚生費が必要です。

燃料費

燃料費としては1リッター当たりの平均価格×1か月にかかった燃料費の2カ月分が必要です。

油脂費

必要な油脂費の2カ月分が必要です。

修繕費

修繕費は外注した修繕費×保有車両台数の2カ月分およびタイヤなどの消費本数×1本あたりの価格の2カ月分が必要です。

車両費

車両費は事業開始に車両を購入する場合には購入費用の全額、リースを行う場合にはリース費用の6カ月分、分割払いの場合には頭金と毎月の支払いの6カ月分が必要です。

車両の税金関係

車両の税金関係として、自動車税、自動車重量税、自動車取得税の1年分が必要です。

保険料

保険料は自賠責保険、任意保険の保険料の金額の1年分が必要です。

事務所と駐車場の費用

事務所と駐車場の費用として、事業開始に土地建物を購入する場合には購入費用の全額、賃貸物件を利用する場合には賃貸費用の6カ月分、分割払いの場合には頭金と毎月の支払いの6カ月分が必要です。

什器・備品

什器・備品として運送業を始めるにあたって購入した備品や設備などの購入金額の全額が必要です。

登録免許税

運送業許可取得時に収める税金として、登録免許税12万円が必要になります。

その他の費用

水道光熱費・通信費・広告費など経費の2カ月分がその他の費用として必要です。

資金の要件を満たせる資金があるかは、銀行などの金融機関が発行する「残高証明書」で証明します。

さらに、運送業許可申請書の「事業開始に要する資金の調達方法」の中で実際にかかる費用を計算し、運送業開始後の経営計画作成にも使用します。

場所の要件

運送業では以下4つが場所の要件として求められています。

  • 営業所の要件
  • 休憩室の要件
  • 睡眠施設の要件
  • 車庫の要件

決められた要件を満たせばプレハブなども営業所や睡眠施設として使用できます。

プレハブを使用する場合は建築確認申請が必要な場合があるので、合わせて確認しておきましょう。

具体的な場所の要件をそれぞれ解説します。

営業所の要件

営業所は以下の7つの要件を満たす必要があります。

  • 都市計画法上の区域区分が原則として市街化調整区域でないこと
  • 市街化調整区域にある場合は、都市計画法の条件を満たし第1種低層住居専用地域・第2種低層住居専用地域・第1種中高層専用地域・第2種中高層専用地域に建っていないこと(一定条件を満たせば可)
  • 建築基準法、消防法等に抵触していないこと
  • 農地法等に抵触していないこと (地目が「田・畑」の場合は、農地転用が必須になるので注意)
  • 建物に対して適切な使用権限があること (自己所有の証明、賃貸借契約書の内容で確認)、賃貸の場合、1年以上の契約期間と期間終了後は契約が自動更新であること、建物の使用目的に「事務所使用」との記載がされていること
  • 適切な広さがあること
  • 車庫から直線距離で10km以内にあること(地域によって5kmまたは20km以内)

休憩室の要件

休憩室の要件は営業所と同様ですが、広さの規定はありません。

ドライバーが休憩することを目的に設置する施設のため、少なくともドライバーがくつろげる程度の広さを確保しておきましょう。

睡眠施設の要件

睡眠施設は営業所の要件と同様ですが、広さの要件として1人当たり2.5㎡以上の広さの確保が設定されています。

なお、睡眠施設自体は必要な場合のみの設置で問題ありません。

車庫の要件

車庫は以下の10要件を満たす必要があります。

  • 有蓋車庫(屋根のある車庫)の場合は市街化調整区域にないこと、農地でないこと、合法に建築された建物であること。屋根なし車庫の場合は制限なし
  • 営業所から直線距離で10km以内にあること
  • 使用する車両を容易に収容できる面積があること(車両と車両の間に50cm以上の隙間が確保できる、車庫と車両の間に50cm以上の隙間が確保できる)
  • 出入口前面道路の幅員が使用する車両に対して適切であること(双方向通行の場合は、基本的に5.5m以上あること、一方通行の場合は、基本的に2.5m以上あること)
  • 出入口前面道路が通学路などの交通規制がないこと
  • 5m以内に交差点、曲がり角、急な坂がないこと
  • 10m以内に、バス停留所、横断歩道、横断陸橋、踏切がないこと
  • 200m以内に幼稚園、保育園、学校、公園など児童の行き来する施設がないこと
  • 駐車場出入口の幅が基本的に6m以上、8m以下であること
  • 道路幅員証明書または車両制限令に抵触していない旨の証明書が取得できること

車両の要件

運送業で使用する車両が満たす条件として、以下の要件が定められています。

  • 緑ナンバーとして登録する車両を最低5台以上確保または確保予定であること(トレーラーとトラクターは2つ合わせて1台と計算)
  • 車検証上の所有者が運送業許可の申請者になること
  • 第3者や他の株式会社などの法人から無償で譲渡を受ける場合は、譲渡契約などを交わしていること
  • リースやローンで購入する場合はリース・ローン契約を交わしていて、かつ車検証上の使用者が運送業許可の申請者になること
  • 緑ナンバーに変更後、自動車任意保険は対物無制限の補償にすること

車検証上の所有者と使用者は、運送業許可取得後に変更できれば問題ありません。

また、売買契約書などの提出ができれば申請受付時に現車がなくても申請はできます

リース・ローン車両の場合は、緑ナンバー変更後にリース・ローンの支払人が変わることの承認を得ている旨の書類が必要な場合があるので準備しておきましょう。

運送業で開業するまでの流れ

運送業を開業するには、運送業許可申請が必要です。

運送業許可申請から、実際に改行するまでの流れを解説します。

運送業許可の申請をするまで

運送業許可申請までは、申請のための要件を満たすために以下の流れを踏みます。

  • 自己資金の確保(最低500万円。およそ1,300~2,500万円で、平均1,500万円ほど)
  • 車両の台数に合わせた人数の運転者、運行管理者資格を持った者1名以上、運行管理者資格を持っているか、または運行管理基礎講習を修了している者1人以上、整備管理者1人の確保
  • 運送業に使用する営業所、休憩室・睡眠施設の確保(睡眠施設は必要な場合のみ)
  • 事業に使用するトラックを駐車する車庫の確保
  • 申請に必要な添付書類の収集
  • 運送業許可申請書類の作成
  • 地方運輸支局へ運送業許可申請書の提出

運送業許可は、以下の書類を添付して地方運輸支局に申請します。

地方運輸支局は各都道府県にひとつしかないため、場所を確認しておきましょう。

  • 申請者が法人の場合は履歴事項全部証明書(原本が必用)と定款
  • 申請者が個人の場合は、戸籍抄本および住民票(原本必用)と資産目録
  • 法人の場合は役員全員、個人の場合は事業主の履歴書
  • 運行管理者資格者証
  • 整備管理者の整備士3級以上の資格者証
  • 営業所および休憩室・睡眠施設の使用権限がわかる登記簿謄本または賃貸借契約書
  • 営業所および休憩室・睡眠施設の位置図、平面図、求積図と写真
  • 車庫の使用権限がわかる登記簿謄本または賃貸借契約書
  • 車庫の位置図、平面図、求積図と写真
  • 事業用自動車の車検証および使用権限を証明するための売買契約書・リース契約書など
  • 道路幅員証明書または幅員が車両制限令に抵触しない旨の証明書など

運送業許可申請受付から運送業開業まで

運送業許可申請受付から、実際に運送業開業までの流れは以下の通りです。

地方運輸支局および地方運輸局での書類審査

運送業許可申請書類の受付をした地方運輸支局では4~5カ月かけて書類の審査が行われます。

審査中にほかに必要な手続きを進めておきましょう。

法令試験の受験とヒアリング

運送業許可申請受付後最初の奇数月に法令試験を受験します。

受験者は個人事業主の場合は事業主本人、法人の場合は常勤の役員のうち一人です。

法令試験終了の当日、運輸局から簡単なヒアリングが行われます。

法令試験は2カ月に一回実施され、不合格が2度続くと申請は一旦取消しとなります。

試験の合否結果は自治体によって出る時期が異なります。

2度目の残高証明書の提出

許可申請受付から約2カ月後に2度目の残高証明書提出の通知が地方運輸支局から来ます。

申請者名義の口座に事業開始に必要な資金が確保されていることを証明するため、指定された期間内の残高証明書を金融機関で取得し、提出しましょう。

社会保険・労働保険の加入と36協定の締結

法人の役員や従業員を健康保険・厚生年金、労災保険・雇用保険(法人役員は除く)へ加入させます。

許可取得後、保険関係に加入した証明書類の提出が必要です。

運送業開業をスムーズに進めたい場合は、許可取得前に各保険への加入を済ませておくこともできます。

従業員に時間外労働(残業や休日出勤など)を行わせるために必要となる、36協定を締結します。

労働組合がある場合はその代表、なければ従業員の代表と協定を結び、労働基準監督署へ提出しましょう。

運送業許可証の交付式と登録免許税納付書類取得

法令試験に合格し、運輸局での審査が終了すると管轄の地方運輸支局から許可取得の通知が入ります。

運送業許可証(正しくは運送業許可書)の交付式は、営業所を管轄する地方運輸支局にて行われます

一般的に交付式が行われるのは許可取得から1週間以内です。

個人事業主の場合は事業主、法人の場合は役員が出席します。

交付式では、運送事業者として守るべき法令や、許可取得後に提出する書類の説明などを受けます。

所要時間は約2時間です。

終了後、手渡された登録免許税納付書で登録免許税12万円を金融機関(銀行または郵便局)から納めます。

許可取得の日から1カ月以内に納めなければいけません。

運行管理者と整備管理者選任届の提出

運行管理者と整備管理者の選任届を、運送業の営業所を管轄する地方運輸支局の保安課(地域により名称が異なる)に提出します。

運輸開始前届の提出

以下の添付書類とともに、運輸開始前届を管轄の地方運輸支局へ提出します。

  • 運輸支局受付印のある運行管理者と整備管理者の選任届写し
  • 従業員や役員が健康保険・厚生年金保険、労災保険・雇用保険に加入したことを証明する書類の写し
  • 労働基準監督署の受付印のある36協定書の写し

事業用自動車等連絡書の取得

運輸開始前届後、地方運輸支局から事業用自動車等連絡書という書類が発行されます。

一般的に連絡所と呼ばれ、自家用自動車では車庫証明にあたる書類です。

緑ナンバー取得

事業用トラックを緑ナンバーに変更し、新車検証を取得します。

すでに緑ナンバーの付いている車両は、車検証を変更します。

変更後は自動車任意保険の加入や、加入済みの車両を営業用自動車に対応した保険への変更を行いましょう。

運輸開始届・運賃料金設定届の提出後開業

新車検証の写しと営業用ナンバー対応の自動車任意保険の保険証券の写しを添付し、運輸開始届と運賃料金設定届を提出し、運送業を開始します。

運輸開始届の提出後、3~6カ月後を目安に適正化事業実施委員会による巡回指導が行われます。

A~Eの5段階で評価され、DまたはEの場合は行政処分の対象となります。

帳票類、点呼簿と日報を重点的に見られるので日々の業務が適切に行われているか常日頃からチェックしておきましょう。

運送業をフランチャイズで起業

安定した需要がある、将来性が高いなどの理由で軽貨物運送業や宅配業の運送業をフランチャイズで起業する人も多くなりました。

運送業のフランチャイズ起業について解説します。

軽貨物運送業と宅配業の違い

フランチャイズ起業の場合、ドライバー業とも呼ばれる軽貨物運送業や宅配業が選択肢となります。

軽貨物運送業と宅配業それぞれの違いについて把握しておきましょう。

軽貨物運送業は、軽自動車や二輪車を使って荷物を運びます。

集荷したその日に届けることが多く、違法でない限り取り扱う貨物の種類もさまざまです。

宅配業は集荷後荷物を預かり、1~3日後に届けることが多いです。

取り扱う貨物の種類は、企業や業種によってある程度の制限があります。

一度に取り扱う荷物の量が多いため、軽自動車のほか2トンクラスの車両も運送に使用する企業も多いです。

フランチャイズによるドライバー業開業の手順

ドライバー業をフランチャイズで開業する場合、以下の手順を踏みます。

  • 問い合わせ
  • 業務体験
  • 面談と審査、入会手続き
  • 契約書と運輸局への手続
  • 研修
  • 開業

問い合わせ

開業を検討している軽貨物運送業または宅配業のフランチャイズ本部へ問い合わせてくわしい話を聞きます。

説明会への出席や資料のダウンロードなどで、本部方針を理解します。

業務体験

フランチャイズ本部のなかには、実際の配送業務を体験できるところもあります。

業務体験を通じて運転の様子などを診断されることもあります。

面談と審査、入会手続き

起業希望者、本部双方ともにフランチャイズ加入に前向きな場合は、面談と審査をします。

近年では直接対面ではなくリモートでの面談も可能なところもあります。

面談後審査を行い、通過すると入会手続きに移ります。

契約書と運輸局への手続

入会契約書手続き後、運輸局へ貨物軽自動車運送事業の届出を行います。

手続きにはフランチャイズ本部のスタッフが同行する場合もあります。

研修

フランチャイズ加盟後、研修を通じて配送業務を行います。

研修中、仕事の取り方や業務配置指示など、仕事の流れを一通り説明するフランチャイズ本部もあります。

研修終了後、運送業として開業します。

フランチャイズでドライバー業を開業するメリットデメリット

フランチャイズでドライバー業を開業すると、以下のメリットが得られます。

  • 初期費用やランニングコストが安く済む
  • 自分だけで自由に運営できる
  • 本部のサポートが受けられる
  • 未経験可能

初期費用やランニングコストが安く済む

フランチャイズでのドライバー業開業の初期費用はほぼ0円~10万円程度で済むところが多いです。

ほかにも、ユニフォームの貸与や数か月間の無料車両リース、業務中の駐車場料金の実費請求可能など、業務に必要なコストをおさえられるところもあります。

自分だけで自由に運営できる

フランチャイズのドライバー業は、業務量によっては自身の1人開業1人運営が可能です。

従業員の人件費などを考えることなく、自由に業務を行えます。

働き方も自分で決められるため、平日のみで土日は休日にしたり、育児や介護などと両立したりもできます。

年齢制限などもないので、退職後の収入源にしたり、本業とは別の副業として働いたりも可能です。

本部のサポートが受けられる

フランチャイズ本部が大手通販会社と提携している場合、安定して得られやすいです。

自分で営業活動をすることなく、配達業務や連絡に集中できます。

また、再配達が発生しにくい配達先顧客が企業のみ、または企業が多いフランチャイズ本部もあります

未経験可能

運行管理者の資格や運送業許可の取得が必要な一般的な運送業開業とは異なり、フランチャイズは自身の運転免許証や軽自動車があれば、運送業未経験でも参入できる場合があります

ほかにも、業務体験や研修、運転面や接客面など業務に関する本部のサポートが受けられるなど未経験でも働きやすい体制が整っています

一方で、フランチャイズでドライバー業を開業すると、以下のデメリットがあるのに注意が必要です。

  • ロイヤリティが発生する
  • 車両を指定されることがある
  • 本部による規定に従わなければいけない

ロイヤリティが発生する

フランチャイズでは、仕事紹介や本部サポートなどへの対価としてロイヤリティの支払いが発生します。

頑張りしだいでは高収入が得られますが、ロイヤリティ分の収入減を考慮しておきましょう。

車両を指定されることがある

本部が購入かリースで車両を指定することがあります。

自分が所有している車を使いたいときにはデメリットです。

本部による規定に従わなければいけない

フランチャイズ本部が複数の本部規定を設けている場合、従わなければいけません。

規定によって、自分でやりたいように仕事が進められない原因となってしまう場合があります。

運送業で起業する際の注意点

運送業で起業する際に知っておきたい、3つの注意点について解説します。

運行管理の知識

運送業を事業とする際に必須となるのが運行管理の知識です。

改善基準告示の内容のほかにも、ドライバーの1日の拘束時間、休息時間、運行指示書を渡すときなど労働基準法や国交省の出した通達まで含んだ知識を得ていなければいけません。

運行管理の知識がないと適切な運行管理ができず、巡回指導や監査で行政処分となってしまう可能性があります。

トラック運送事業者に課される行政処分では、一定期間トラックのナンバーを運輸局へ返納する車両停止がもっとも多いです。

運送事業者にとってはトラック1台が車両停止となるだけでも経営を圧迫してしまいます。

また、違反が重なれば運送業許可の取消し処分の可能性もあります。

かならず運行管理の知識を身に着けておきましょう。

人手不足について

運送業は国内全業種のなかでも特に人手不足です。

これから運送業を開業する際には、人手不足への対応策を考えておく必要があります。

長距離運送ではなく短時間運送なら、女性やシルバー人材を上手に使う、各種手当や福利厚生を整えて離職を防ぐ、事務所や休憩室などを整備して企業イメージをクリーンにするホームページやSNSなどを募集ツールとして活用する、といった対策方法があります。

許可申請前に確保しておいたドライバーが離職してしまい、開業ができなくなってしまうケースもあります。

自社の運送事業に合わせて適切な人材を確保できる取り組みを考えておきましょう。

運送業の経費の大きさ

運送業として開業するには開業資金を確保するのに加えて、事業でかかる経費が大きいことも考えておかなければいけません。

運送業の許可申請に必要な自己資金は最低500万円ですが、事務所や駐車場を確保するための土地代や賃貸料、購入するトラックの台数、トラックは新車か中古かなどによって異なってきます。

これらを考えると、最低でも1,000万円の開業資金を確保し、銀行などが発行する残高証明書を運輸局に提出しなければ許可申請ができません。

開業資金を確保し開業した後でも、毎月大きな経費がかかります。

運送業でかかるおもな経費には、以下のものがあります。

  • 従業員の給与
  • 従業員の社会保険料・労働保険料
  • ガソリン代や高速道路代
  • トラックのローンやリース料
  • トラックの修繕費
  • トラックの自動車税や重量税、自動車保険料
  • 事務所や駐車場の賃料

毎月かかる経費のほかにも、決算後に支払う法人税や消費税に対して資金をたくわえておかなければいけません。

また、突発的な出費があるのも運送業での起業で注意すべきポイントです。

荒い扱いや事故などでまだ走れるトラックの修繕や、廃車となったトラックを新しく購入する場合には百万円単位での経費が発生します。

確実に売り上げを上げることはもちろん、資金調達方法についても考えておかなければいけません。

運送業界の今後

日本の物流を担う運送業界は、日本の大動脈でもあり血流ともいえる業種です。

今後も安定した需要が見込める一方、多くの課題やwithコロナへの新しい対応も求められています。

これから運送業で起業する前に覚えておきたい、運送業界の今後について解説します。

運送業界の抱える課題

運送業界が現在抱える課題として以下4つが挙げられます。

  • 過酷な労働環境
  • ドライバー不足
  • 燃料の高騰化
  • 競合他社との過当競争

過酷な労働環境

運送業のドライバーは全職種のなかでも長時間労働で、労働環境の過酷な職種であると言えます。

長時間労働となる原因は、道路渋滞荷待ち待機再配達依頼などです。

さらに、長距離運転のために深夜や早朝勤務となり昼夜逆転などによる体への負担も大きくなっています。

労働環境が過酷なことで離職率も高く、ドライバー不足に拍車をかけているため早期に改善しなければいけない課題です。

ドライバー不足

過酷な労働環境であることに加えて、ネット通販の拡大によるニーズの高まり、少子高齢化などによって運送業のドライバー不足が深刻化しています。

さらに、50歳以上のドライバーが全体の約49%を占め、若年層のドライバーが少なく年齢バランスが悪いのも、課題になっています。

燃料の高騰化

事業用トラックは軽油を原料とするディーゼル車の利用が多いです。

軽油が高騰化すると、経費が高くなり運送業の経営にも大きなダメージとなります。

燃料価格は社会情勢に左右される傾向が強いため、今後も社会情勢の変動によっては軽油価格も高騰する可能性があります。

燃料が高騰化した場合、運送料金を値上げしなければ売り上げの採算が取りにくくなります。

ところが運送業者は荷主に対する取引上の立場が弱いため、たとえ運賃料金の値上げ交渉をしても荷主や依頼主の理解を取りづらく、燃料高騰による利益削減が大きな課題となっています。

競合他社との過当競争

運送業界はほかの業界よりも参入しやすいため、競合他社同士での競争が激しくなりやすい特徴があります。

顧客を獲得するために値引きや価格据え置き、独自サービスなどを取り入れた結果、利益が落ち込み経営をひっ迫することも多いです。

withコロナの対応

新型コロナウィルス感染防止の影響を受けて、運送業界にもwithコロナの対応が求められるようになりました。

新型コロナウィルス感染防止のために、以下の対応が行われています。

  • 経営トップが率先して感染防止の対策を策定・変更する体制などを確立
  • 従業員の健康管理を徹底
  • 従業員のテレワークや時差出勤、自家用車出勤の励行など
  • マスク着用・消毒・換気などの徹底
  • 休憩スペースで三密回避などの徹底
  • トイレでの感染防止策を徹底
  • 共用設備や工具など共用器具の消毒など
  • 運転者への点呼時の三密回避などの徹底
  • 2名以上での運転中や荷役時のマスクや手袋着用など
  • 事業所への立ち入り者への感染防止対策のお願い
  • 従業員への感染防止対策のお願い
  • 置き配への理解を促すなど、利用者への感染防止対策協力のお願い
  • 感染者が確認された場合の対策の徹底
  • 保健所との連絡体制確立など

withコロナ対策や人材不足、過酷な労働環境の是正のために業務を効率化するのも重要です。

クラウドや管理ツールなどを導入するのも、運送業の業務効率化に有効でしょう。

運送業で会社を設立する際はご相談下さい

運送業で開業するにはフランチャイズへの加入も有効ですが、自分自身で会社を作りたい、規模を大きくしたいときには一般貨物自動車運送事業の許可を取得し、会社設立をするのが有効になります。

また、個人事業主ではなく法人化することで節税効果も高くなり、経費が高くなりがちな運送業のコスト削減にも効果的です。

一般貨物自動車運送事業には、管轄の地方運輸局への許可申請や必要書類の準備など、専門的な手続きが必要になります。

自分で手続きもできますが、手間なく確実に運送業で会社設立するには、専門家に依頼するのがよいでしょう。

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運輸業の会社設立実績も多くありますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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