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店舗賃貸の保証金の意味と原状回復の範囲|コロナ禍での新たな事態を解説

店舗賃貸の保証金の意味と原状回復の範囲|コロナ禍での新たな事態を解説

店舗用物件を借りる場合は、居住用物件の場合に比べてどのような違いがあるのでしょうか?

そこで、この記事では保証金の意味合いも含めて店舗賃貸の保証金について解説します。

さらに、原状回復の範囲として、スケルトン戻しと居抜きの違い、さらに居抜き物件を借りる際の注意点についても紹介します。

また、コロナ禍で店舗の閉鎖が相次ぐ現状と賃貸の現場で新たに起こっている事態にも触れていきます。

内装工事リース株式会社

店舗用物件を借りる際に必要な保証金とは?

事業用の物件を借りる際には保証金が必要になります。

保証金とは、居住用物件を借りる際の敷金とほぼ同じ性格を持つものですが、居住用物件とは違う点が多々あり、注意が必要です。

とくに店舗用物件は保証金の持つ意味合いをよく理解しておきましょう。

敷金も保証金も、入居時に賃借人が賃貸人に預ける債務保証担保としての性格を持ちます。

この場合の債務とは、賃料の支払いや退去時の原状回復義務のことです。

店舗用物件には賃借人保護の観点はない

前提として、居住用物件の場合は賃借人保護の観点から、国土交通省住宅局が作成している「原状回復ガイドライン」において細かな規定がされています。

しかし、店舗用物件の場合は両者の交わす賃貸借契約書に記載されるのみで、ガイドラインが詳細に制定されているわけではないです。

店舗用物件は入居時も退去時も賃借人が工事を行う

居住用物件は、入居者がすぐに住める状態にして賃貸に出します。

しかし、店舗用物件の場合は賃借人の方で入居するための工事を行い、かつ退去時には入居時と同じ状態にして(設備や内装の撤去工事を行い原状回復して)返却することが基本です。

店舗用物件の保証金はまとまったお金が必要

店舗用物件は、テナントの業績によって賃料を払えなくなることもありうるほか、退去時に支払い能力がなく原状回復義務を履行できないリスクもあります。

そのため、居住用物件の敷金が賃料の1~2か月分であるのに対し、店舗用物件の場合は6~24か月となり、数百万円単位のお金が必要です。

なかでも、飲食店の店舗用物件は、売上げに波があり廃業の可能性も高いほか、物件の汚損・毀損も起きやすいので保証金が高めに設定されています。

一方で、飲食店のなかでも、軽飲食店や小型の飲食店では比較的保証金は安めに設定されていることが多いようです。

また、オフィス用物件の場合は、特殊な大型の設備工事などは通常行わないため、保証金は比較的安めになっています。

保証金の返還時に償却費が差し引かれる

保証金は、償却費という名目で保証金の返還分から無条件に差し引かれるお金があります。

契約時に定められ、「保証金の〇%」というように指定されることが多いです。

つまり、賃料の滞納などや原状回復に不備がなかった場合でも、全額は返還されないということ。

居住用物件では、賃借人の責めによる物件の汚損・毀損がない場合には、通常敷金はそのまま全額返還されます。

保証金が全く返還されないこともありうる

店舗用物件の保証金の返金額は、預け入れたお金から償却分と原状回復費用に充てられるお金(賃借人に撤去のための工事費用の支払い能力がない場合や、原状回復が不十分であると賃貸人が認めた場合)を差し引いた金額です。

もちろん、賃料の未納がある場合にはその分も差し引かれます。

したがって、まったく返還されないというケースも珍しいことではありません。

居住用物件の場合は、前述のように賃借人の責任による物件の汚損・毀損がない場合には、敷金は基本的に全額返還されることが多いです。

保証金の返還時期が先になることもありうる

保証金の返還時期についても契約書によって定められ、物件の返却のみならず債務の清算がすべて済んだときから起算して「遅滞なく」、「1か月以内に」、「6か月以内に」などの取り決め内容にしたがって返還されます。

長い場合には6か月も先になることもあります。

一方、居住用物件の場合には、物件の返却から1か月以内に返還されることが多いです。

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物件返還時の原状回復の考え方

原状回復の範囲については、契約書に記載されています。

しかし、現状回復をどこまで行えばいいのかわからない人も多いでしょう。

そこで、ここでは原状回復の2つの方法である、スケルトン戻しと居抜きを紹介します。

スケルトン戻し

事業用(店舗用)物件の場合は、貸借人(テナント)の方で入居のための工事を行い、退去時には設備や内装をすべて撤去して、建物の躯体以外何もない状態で返却することが基本です。

これをスケルトン戻しといいます。この撤去のためには、結構な費用がかかります。

飲食店の撤去工事の費用は坪当たり5~10万円と言われており、たとえば50坪の店舗の場合は、工事費だけで250万~500万円もの費用が必要です。

居抜き

退去時の原状回復工事費用を節約するため、最近は居抜きの状態で返還するというケースが増えてきています。

居抜きとは、前のテナントが設置した設備や内装、場合によっては機器や家具なども含めて、新しいテナントに売却することです。

新しいテナントの側からすれば、入居のための工事費用を浮かせられ、初期費用を抑えることができ、かつ開業までの時間を短縮できるというメリットがあります。

また、退去予定のテナントの側からすれば、原状回復のための現状回復工事費用を免れれることがメリットです。

なおこの場合、居抜き物件の内装や設備、機器、家具などの売買については新旧テナント間での話し合いによる契約で決まります。

これを「造作譲渡契約」と呼び、貸出人との間の契約事項ではなく、前入居者と新入居者との話し合いをもとに「造作譲渡契約」を交わしておくことが必要です。

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居抜き物件を借りる際の注意点

実は飲食店の店舗では、居抜き物件を借りるのが一般的になっていると言われています。

また、最近では小売り、クリニック、美容院などでも居抜きの活用が多いです。

借りる側からすると、開業のために必要な設備や内装が残されている方が、工事のための初期費用を抑えることができるというメリットがあります。

とりわけ、水道・ガス・電気・排気などのインフラにかかわる基礎工事ができており、厨房設備が備わっていれば大幅なコストダウンとなります。

一般に、スケルトンからの工事費用は坪あたり50~80万円であるのに対し、居抜き物件の工事費用は坪あたり5~50万円と言われています。

ただし、居抜き物件を借りる時には注意点もあるので、ここでは居抜き物件を借りる時の注意点を紹介します。

造作譲渡契約の費用を確認する

前入居者との間の「造作譲渡契約料」がいくらになるかをきちんと確認しておく必要があります。

実は、造作譲渡契約の金額はケースバイケースで、実際に交渉してみないとわからないことが多いです。

これは、前入居者の事情が大きく関係してくるからです。

前入居者が、撤去のための工事費を節約し、早く解約したいと考えている場合には、安い料金でも応じてくれる場合があります。

しかし、前入居者に余裕があり、解約を急いでいるわけではない場合には、それ相応の金額が必要です。

また、借り手候補が多い場合も、需給バランスによって、金額は高くなる傾向にあります。

居抜きの状態を確認する

「居抜き」と言われていても、実際にどういう状態であるかをよく確認しておく必要があります。

ほぼ、そのままで開業できるような状態の場合もある一方で、床や壁しか残っていないほぼ空っぽの状態の場合も多いです。

また、水道・ガス・電気・排気などのインフラにかかわる設備についても、老朽化で問題が生じていないか、厨房設備や機器は欠陥がないかということも注意深く確認する必要があります。

あくまで中古品ですので、どのくらい今後の使用に耐えられるのかという問題もあるでしょう。

こういった注意を怠ると、開業後に不備が発覚し、造作譲渡契約で支払った他に追加での工事費用や機器の購入費用がかかり、かえってお金がかかってしまうということもあります。

内装上の制約がある

内装や設備が、自分のやりたいお店の雰囲気に合っているかどうか、使い勝手がいいかどうかといったことについても考えましょう。

スケルトンとは違い、1からイメージ通りにつくっていくというわけにはいかない不自由さが居抜きにはあります。

できるだけ、似たような業種の居抜きから選ぶようにした方がよいでしょう。

前入居者の撤退理由を確認する

前入居者の撤退の理由についても確認しておきましょう。

もし、評判が悪く売上げ不振で撤退したという場合には、そうした負のイメージを引きずってしまうという思いがけないマイナス面がある場合もあります。

また、立地条件などで不利になることはないかなどもよく検討しましょう。

保証金の金額には関係がない

物件そのものの賃貸借契約は賃貸人との間で結びます。

したがって、居抜きでもスケルトンでも、保証金の金額への影響はありません。

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コロナ禍での店舗物件の賃貸における動向

長引くコロナ禍によって、飲食店を中心に深刻な影響を受け、倒産が続出しています。

「2021年1月-10月の『飲食業』倒産(負債1,000万円以上)は557件(前年同期比23.6%減)で、コロナ禍の各種支援策が奏功し、5月を除く9カ月で前年同月を下回った。
 ただ、飲食業倒産のうち、新型コロナ関連倒産は260件と約5割(構成比46.6%)を占め、新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けている。」

(引用元:居酒屋倒産が過去2番目の多さ、新型コロナの影響が甚大(2021年1月-10月飲食業倒産動向

このように、多額の負債を抱えたまま倒産してしまう飲食店が多くなっています。

そして、倒産したテナントが、残り期間の賃料や原状回復費用を保証金で清算するよう要求するケースが続出し、実際には賃貸人が保証金を超過した金額まで自己負担するという事態が生み出されているのです。

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まとめ

保証金の役割として大きな役割をしめる物件返却時の原状回復義務、スケルトンと居抜きの違いについてご説明しました。

コロナ禍による影響は、今後の賃貸の現場にも変容をもたらす可能性があるので注視する必要があるでしょう。

今後、店舗用の物件を賃貸したい人は今回の記事を参考にしてください。

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