• HOME
  • 飲食店の店舗物件を借りる際に必要な「保証金」と契約時の注意点

飲食店の店舗物件を借りる際に必要な「保証金」と契約時の注意点

飲食店の店舗物件を借りる際に必要な「保証金」と契約時の注意点

飲食店を開業するためには多くの初期費用がかかりますが、その中でも大きな割合を占めるのが、店舗を借りる際に必要となる「保証金」。

「保証金」の金額や条件は、契約時に決定しますので、最初の段階でよく契約書を確認しておくことが大切です。

そこで、この記事では「飲食店の保証金」とは何かと契約時の注意点について説明します。

内装工事リース株式会社

「保証金」とは何か?

保証金とは、飲食店の店舗用の物件を借りる際、借主が貸主(オーナー・大家)に預けるお金のことです。

厳密にいうと、「賃借人が賃貸人に対して負う債務保証担保」と定義されます。つまり、借主が賃料を支払えなくなった場合に備えて、あらかじめ貸主に預けておくお金のことです。

保証金の目的の第一義は賃料の滞納リスクへの備えですが、同時に退去時の「原状回復費用」にも充てられるのが一般的になります。

居住用物件における「敷金」と似ていますが、居住用物件の敷金が通常家賃の1~2か月分が相場なのに対して、店舗用物件の場合はそれよりずっと高額なのが特徴です。

飲食店の保証金の相場は?

保証金の金額は、居住用物件の敷金と同様「家賃〇か月分」というかたちで表示されるのが一般的です。

では、保証金の相場はどのくらいなのでしょうか。

一般的にはおよそ「10か月分」といわれていますが、立地条件などによっても変わってきますし、物件によってもさまざまです。駅の近くや繁華街など人気のあるエリアでは、高くなる傾向があります。

少ない場合は2か月分ほどで済む物件もありますし、多ければ24か月分(2年間分)にもなる場合もあります。

保証金は契約時にあらかじめ現金で預けるものですので、手持ちのお金で融通できる金額かどうかをしっかりと確認しておくことが必要です。

内装工事リース株式会社

飲食店の保証金が高額になる理由

飲食店の場合、居住用物件や他の用途の物件と比べて、保証金の相場はかなり高くなる傾向があります。

その理由は次の2点です。

  1. ①飲食店の経営は売上の変動が大きく、売上が落ちると、賃料滞納のリスクが発生しやすくなるため。また、飲食店は経営がうまくいかず廃業にいたるケースが多いため(新規出店した飲食店の実に4割が1年以内に撤退するとも言われています)。
  2. ②飲食店の店舗として使用する場合には、他の用途の物件に比べて、内装の破損や汚損などのリスクが高く、退去時の「原状回復」のための費用が高額になりがちなため。

原状回復の範囲は居住用物件とは異なる

居住用物件については、貸主と借主との間のトラブルを回避するため、その基準が社会的に明らかにされています。

具体的には、国土交通省のガイドラインでは、「経年劣化」、「自然損耗」、「通常損耗」は貸主の負担で原状回復することが明確化されています。
つまり借主の故意・過失や通常の使用を超えるような使用に関する破損・汚損でない限りは借主の負担は生じません。

これに対し、店舗用物件については、もっと厳密な「原状回復」、つまり入居時と同じ状態に戻すことが求められます。
また、原状回復の範囲は「賃貸借契約書」や「特約」において、最初の段階で提示されるのが一般的です。

店舗用物件の場合は居住用とは異なり、壁紙の張替えや間仕切りの撤去などを行ない、入居時と同じ状態に戻すことが定められているので、現状回復のための工事に莫大な費用がかかります。
また、工事請負業者があらかじめ指定されていることも多く、相場よりも高額になる場合も多いのです。

退去費用が高額になる

借りる物件が居抜き物件なのか、スケルトン物件なのかによっても、退去時の負担金額は大きく変わってきますので、注意しましょう。

居抜き物件とは、前の借主が残していった内装、厨房設備、什器、備品などを使うことができる物件のことです。

スケルトン物件とは、建物を支える柱や梁、床以外には何もない状態の物件のことです。
スケルトンとは「骨」の意味で、文字通り骨組みだけの状態だといえます。

注意しなくてはならないのは、スケルトン物件の場合、退去時には取りつけた設備、内装などをすべて撤去して何もない状態にして返還しなければならないということです。
そのため、撤去費用(工事費など)が莫大な金額になることが多くなります。

内装工事リース株式会社

保証金の償却分とは?

「保証金」自体は賃料の滞納リスクなどに備えて貸主が借主から預かるお金ですので、退去時には原則返金されるお金です。

しかし実際には、「償却分」という条件が付けられているのが一般的で、その分が差し引かれた金額が返金されます。

「償却分」とは「原状回復」のための工事や「クリーニング」のために必要な費用として、あらかじめ「保証金」から差し引かれることが決められた部分のことです。

借主には退去時に物件の原状回復をする義務がありますが、それを保証するための費用になります。

したがって、実際には「保証金」から「償却分」の費用が差し引かれたお金が退去時に返却されるのが原則です(賃料滞納があった場合はもちろんその分も差し引かれます)。

これは最初の契約のときに定められますので、賃貸借契約書をしっかりと確認することが非常に重要になってきます。

償却分についての記載を確認

「償却分」についてはあらかじめ正確に予測を立てることは難しいので、現実には契約時に「解約時に〇%(〇か月)を償却」か、「年〇%を償却して契約更新時に費用を充填」かのいずれかの記載がされていることが大半です。

あらかじめおおよその破損や汚損を想定して「償却分」を決めています。
また、「償却分」の記載によって、実際に支払うことになる金額が大きく異なってきますので注意しましょう。

①「解約時に〇%(〇か月分)を償却」

文字通り、「原状回復」や「クリーニング」の費用にあてる名目で、保証金のうちの何割か(何か月分か)を差し引いて借主に返却するということです。

②「年〇%を償却して契約更新時に費用を充填」

このような書き方がされていたら要注意です。
「年〇%」というかたちで借りている間にも償却され、さらに更新時にその補填として追加料金を支払う必要が生じます。
思わぬ出費がかさむことになりますので、このような条件の物件は契約しないほうがいいでしょう。

内装工事リース株式会社

飲食店の保証金が返ってこない場合とは?

契約時に定められた「償却分」はあらかじめ差し引かれることが決められた金額ですが、退去時の借主の「原状回復」が不十分であるとみなされた場合には、さらに保証金の残りからも追加で差し引かれることがあります。

特に飲食店の場合は、火災・漏水などによって物件そのものに傷をつけるおそれもあるほか、内装や設備の破損や汚損も起きやすく、また壁や天井、床が変色したり臭いがついて落ちなかったりという可能性があります。

場合によっては、ほとんど保証金が返還されないこともありえます。

このことについても契約時に、どこまでが「原状回復」の範囲となるのかをよく確認しておきましょう。

飲食店の保証金は安くできる?

保証金の減額交渉は可能です。

とりわけ、周辺地域の似た物件の保証金相場と比較し、それよりも割高な場合などには交渉する価値はあります。

ただし、交渉するのは契約の前にしましょう。正式の賃貸借契約書を交わしたのちに減額交渉をすることはできません。

実際には競合している入居希望者がいたり、人気のある物件であったりする場合には、減額が難しい場合もあります。

内装工事リース株式会社

飲食店の保証金は経費にできる?

保証金はあらかじめ「償却分」が決められている場合は、その分を経費にすることが可能です。

その場合、「償却分」が「20万円未満」であるか「20万円以上」であるか、さらに「20万円以上」の場合は、契約期間が「5年未満」か「5年以上」かによって扱いが異なります。

ちなみに、「償却分」は経費にできますが、「20万円以上」の場合は繰延資産となるので、直ちに全額を経費にすることはできません。数年をかけて償却し費用化します。

  • ①「20万円未満」の場合
    「償却分」は「支払手数料」として費用計上することができます。
  • 「20万円以上でかつ契約期間が5年未満」の場合
    「償却分」は「長期前払費用」とし、期末に契約年数で均等割りにして「支払手数料」として費用計上します。
  • 「20万円以上でかつ契約期間が5年以上」の場合
    「償却分」は「長期前払費用」とし、期末に5年で均等割りにして「支払手数料」として費用計上します。
内装工事リース株式会社

まとめ

飲食店の店舗物件を借りる場合には、借主は貸主に契約時に保証金を預ける必要がありますが、相場は「家賃10か月分」といわれており、手持ちのまとまったお金が必要になります。

また、保証金は家賃滞納のリスクに備える目的のほか、退去時の物件の「原状回復」費用にも充てられることが大半です。

この「原状回復」に充てられる分の費用を「償却分」といい、保証金の返金額から差し引かれます。その際の「償却分」の条件は契約時に決定されますので、賃貸借契約書の内容をしっかりと確認しておくことが重要です。

最初が肝心ですので、あいまいな点や納得のいかないところはきちんと確認することを心がけましょう。

とくに飲食店の場合は、居住用物件やオフィスなど他の目的の物件に比べて保証金が高い傾向があります。
なぜなら、その使用形態から、「原状回復」に大がかりな工事を必要とする場合が多いからです。
場合によっては、「償却分」からさらに差し引かれ、保証金が全く戻ってこないケースも考えられます。

保証金を安くするために交渉したい場合には、かならず正式な契約の前に行いましょう。

賃貸借契約書を取り交わした後に交渉することはできません。

保証金は事前の確認が重要なことは覚えておきましょう。

内装工事リース株式会社