人材派遣会社を設立することは、労働市場のニーズに応えるための重要な一歩です。人材派遣業は、求職者と企業を結びつける役割を果たし、多くの企業で欠かせない存在となっています。
しかし、設立には特定の要件とプロセスが必要です。本記事では、人材派遣会社を設立するために必要な情報や費用、そしてメリットと注意点について詳しく解説します。
目次
人材派遣会社とは
人材派遣会社は、「労働者派遣事業」を営む会社のことを言い、厚生労働大臣の許可が無ければ営業することができません。
仕事を探している人は、それぞれに得意なスキルを少なからず持っています。
その得意なスキルを活かせる職場が見つからない人たちを、人材派遣会社が自社の社員として雇用し、人材を求めている企業に送り出して仕事をさせます。
自社の社員として送り出すために、人選と教育をするのは、人材派遣会社の役割です。職を求める人材が持つスキルを有効活用して社会に循環させることは、とても意義があることです。
企業が求める人材をリサーチし、必要に適した人材を企業で活躍させるお手伝いをするのが人材派遣会社の使命とも言えるのです。
人材派遣会社と人材紹介会社の違い
人材派遣会社と人材紹介会社は、働く場を求める人材と働いてくれる人材を求める企業を結び付ける役割や社会的使命は似ています。
また、どちらも厚生労働大臣の許可が必要な点は共通しています。
しかし、その仕組みや事業内容は大きく異なります。
人材派遣会社が労働者と雇用契約を結んで、企業に派遣するのに対し、人材紹介会社は、採用された人材が企業と雇用契約を結ぶことになるのです。
さらに、人材派遣会社が派遣労働の対価を企業から受け取るのに対し、人材紹介会社は、紹介した人材が採用に至った時だけ、企業から一定の料金を受け取る形になります。
人材派遣会社 | 人材紹介会社 | |
サービス内容 | 派遣先企業の業務に適した人材の派遣 | 採用企業の要件に合致した人材紹介と支援 |
契約形態 | 派遣会社と派遣スタッフが雇用契約 | 採用企業と採用決定者が雇用契約 |
利用料金 | 時間単価×労働時間 | 入社者の想定年収の35%程度 |
人材派遣会社の仕組み
人材派遣会社の仕組みは次の通りです。
人材派遣会社は、自社で雇用した「派遣スタッフ」を派遣し、派遣先企業で労働を提供します。
派遣先企業は、派遣スタッフに対して仕事の指示をして労働をさせます。その労働の対価として、派遣先企業は派遣契約に基づいて、料金を人材派遣会社に支払います。
そして、人材派遣会社は、雇用契約に基づいて給与を派遣スタッフに支払います。派遣スタッフとして人材派遣会社と雇用契約を結んだ労働者は、「労働派遣法」によって保護されています。
人材紹介会社の仕組み
人材紹介会社というのは、人材を雇用したい企業と、転職を希望する人材とを結びつける会社のことを言い、「有料職業紹介所」として厚生労働大臣の許可が必要です。
転職を希望する人が人材紹介会社に登録をして、ニーズに合致した企業があれば、人材紹介会社は企業に対して、人材紹介契約に基づいて人材を斡旋します。
企業側が人材の採用を決めると、企業と人材が雇用契約を結ぶことになり、企業は人材紹介会社に一定の料金を支払う仕組みです。
人材派遣会社を設立するための基本手順
1. 会社形態の選択
人材派遣会社を設立する際、まず会社形態を決定する必要があります。一般的には株式会社や合同会社(LLC)が選ばれます。株式会社は、社会的信用が高く、資金調達が容易ですが、設立費用が高くなる点が特徴です。一方、合同会社は設立費用が低く、経営の柔軟性が高いですが、信用力や資金調達の面で制約があります。
2. 定款の作成と認証
会社設立には、定款を作成し、公証役場で認証を受ける必要があります。定款には会社の目的や事業内容、役員の構成などが記載され、これに基づいて会社が運営されます。
3. 労働者派遣事業許可の取得
人材派遣業を開始するには、労働者派遣事業の許可が必要です。この許可を得るためには、厚生労働省に対して労働者派遣事業許可申請書を提出し、審査を受ける必要があります。許可取得には、事業所の規模や資本金、資産要件などの条件を満たす必要があります。
4. 資本金の準備
人材派遣会社の設立には、一定の資本金が必要です。資本金の額は自由に設定できますが、事業を継続的に運営するためには、十分な資本金を確保することが重要です。また、資産要件として「純資産額が2,000万円以上」「1,500万円以上が現金または預金であること」「負債が純資産の7分の1以上でないこと」が求められます。
人材派遣会社設立のメリット
1. 高い収益性
人材派遣業は、安定した収益を生み出すビジネスモデルです。派遣スタッフの給与は派遣元企業が支払い、その分を派遣先企業から徴収するため、リスクを分散しつつ収益を確保することができます。
2. 社会的貢献
人材派遣会社は、求職者に雇用の機会を提供するだけでなく、企業に適切な人材を供給することで、社会的に大きな貢献を果たしています。特に、働き方の多様化が進む現代において、派遣労働は重要な雇用形態の一つとなっています。
3. フレキシブルな事業展開
人材派遣業は、業種や地域に応じて柔軟に事業展開できる点が大きなメリットです。需要の高い分野に特化した派遣サービスを提供することで、競争力を高めることができます。
人材派遣会社設立の注意点とデメリット
1. 許可取得のハードル
労働者派遣事業を行うためには、厳格な許可要件を満たす必要があります。特に、資産要件や事業所の条件は厳しく、これを満たさない場合は許可が下りません。また、申請にかかる時間も長いため、計画的に準備を進める必要があります。
2. 法的リスクとコンプライアンス
人材派遣業は、労働法規や派遣法に基づいて厳しく管理されています。これに違反すると、事業停止や罰則を受けるリスクがあります。したがって、コンプライアンスを徹底し、適正な事業運営を行うことが求められます。
3. 競争の激化
人材派遣業界は競争が激しく、特に大手企業との競争が厳しい状況です。新規参入者が市場で生き残るためには、他社との差別化やニッチ市場の開拓が重要となります。
請負契約とは?
請負契約というのは、求められた仕事を完成させることで、その対価として報酬を受け取る契約のことを言います。
発注者から業務に関する指示を受けることはなく、仕事を完成させるまでは自己責任で行います。
請負契約の金額は労働に対する対価だけでなく、資材や外注などを含めた完成物を引き渡すまでに掛かる費用全般について算出します。
例えば、住宅建設の場合、住宅会社と発注者(施主)は建築に関する請負契約を締結します。その場合は、建築に関わる全ての工事をひとまとめにして、一括して請負契約を結ぶ形になります。
そして完成した住宅を発注者に引き渡すことで請負契約が終了します。資材の販売店や協力工事店、あるいは社員の誰が何時まで働くか、などの細かいことの取り決めは一切ありません。
あくまでも設計通りの住宅を完成させて引き渡すことの契約になるのです。
また、個人が発注者と直接請負契約を結ぶケースもあります。例えば、ロゴマークを作成する特技がある個人が、ロゴマークの作成を依頼した会社と請負契約を結ぶのです。
個人は何時から何時まで作成の仕事をしようが、一切会社からの指示を受けません。自分の好きな時間を使ってロゴマークを作成すれば良いのです。会社はロゴマークの完成と同時に、契約した金額を支払います。
このように、請負というのは完成品を納品することを目的としているのです。
人材派遣会社の設立要件
人材派遣会社を設立するために必要な要件は5つあります。
「資産要件」「派遣元責任者の要件」「事業所に関する要件」「適正な事業運営についての要件」「個人情報の管理要件」の5つです。
「資産要件」というのは、自己資金で事業を継続的に運営することができるかどうかの判断をするために確認する要件です。
「派遣元責任者の要件」というのは、設立する会社が社会的責任を確実に果たすことができるための責任者の存在について確認するものです。
具体的には「派遣元責任者講習」を受講した者がいることが要件のひとつになります。
そして、事業主についての要件もあります。事業主としての要件は多岐に渡っていますが、全てをクリアすることが求められます。
「事業所に関する要件」では、事業所の床面積の規定や、近隣に関する要件があります。
「適正な事業運営についての要件」というのは、労働者派遣事業の運営に関する禁止項目の取り決めについて確認をするものです。「個人情報の管理要件」というのは、個人情報の管理体制についての確認と、差別や思想などの収集できない個人情報についての理解度を確認するものです。
人材派遣会社設立にかかる費用
資本金規定
人材派遣会社を設立するために必要な資本金は、「資産要件」をクリアする金額以上なければいけません。
資産要件として規定されているのは3つです。
「基準資産額が2,000万円以上」「資産のうち1,500万円以上が現金もしくは預金」「基準資産額が負債の7分の1以上」この3つの要件を全てクリアしなければなりません。
基準資産額というのは「純資産」とも言います。
純資産というのは、総資産から負債を差し引いたもので、純粋に自分の資産のことを言います。ちなみに、負債というのは、借入金など返済義務を伴う「他人の資産」と言われていて、純粋な「自分の資産」と真逆の資産です。
「総資産」というのは、会社が持っている全財産のことを言い、他人の資産である「負債」と自分の資産である「純資産」を足したものです。
なぜ、負債が会社の財産になるかと言うと、例えば土地を購入するのに借入金で賄ったとした場合、土地の名義は会社ですから財産になります。しかし、お金を借りて取得した財産なので、「負債」という名前の財産にするという考え方です。
自分の資産が2,000万円以上あって、そのうちの1,500万円以上が現金もしくは預金ということですから、かなりの現金を持っていないと人材派遣会社を設立するためのスタートに立てないことがわかります。
しかも、この金額は1つの事業所を設立するために必要な資金ですから、複数事業所を設立するとしたら、その数だけ現金が掛け算で増えていきます。
派遣元責任者講習にかかる費用
人材派遣会社を設立する際は、労働者派遣法により、人材派遣会社は「派遣元責任者」を選任して配置することが要件となっています。
そして、派遣業を営む場合には、雇用管理を適切に行ない、派遣労働者の保護等を図ることが求められています。
派遣元責任者となるためには、一般社団法人日本人材派遣協会をはじめとする17団体が主催する「派遣元責任者講習」を受講しなければなりません。
受講料は、一般社団法人日本人材派遣協会の場合を例にすると、協会会員であれば3,000円(税込)で、会員以外の一般の方は、9,000円(税別)となっています。
各団体によって、受講料が異なりますが、どんなに高くても9,000円ほどが上限となっています。
また、会場は全国の主要都市が中心になっているので、それ以外の住所地の人は交通費を掛けて出かけなければなりません。
受講は1日で終了しますから、他に宿泊代などは考えなくても良いです。
ただ、講習会の開始時間に間に合うか不安な人は、前泊することも考えなければならないかもしれませんが、多くの場合はそこまでかつかつなタイムスケジュールにはならないです。
従って、受講料に交通費を足したものが、派遣元責任者講習に要する費用と考えて良いです。
急遽やむを得ない事情が発生して受講をキャンセルする場合、キャンセル料が掛かります。
キャンセル料も各団体で異なりますが、当日キャンセルの場合は全額のキャンセル料が掛かる場合もあります。
詳しくは、受講する団体のホームーページなどで確認すると良いでしょう。
厚生労働省に労働者派遣事業許可申請
人材派遣会社を設立して事業を開始するには、労働者派遣事業の許可申請をしなければなりません。
提出する様式は3種類です。
「労働者派遣事業許可申請書」「労働者派遣事業計画書」「キャリア形成支援制度に関する計画書」この3つの書類に添付する書類が、14種類もあります。
そして、手数料として120,000円の収入印紙が必要になります。また、登録免許税として90,000円納付しなければなりません。
合計すると、210,000円の費用を用意しなければなりません。
さらに、複数の事業所を同時に申請する場合は、2事業所目から1事業所につき55,000円の収入印紙を用意する必要があります。
これは、法人として事業を行なう場合も、個人で事業を行なう場合も同じです。但し、添付書類や申請手数料等は住所地の都道府県によって異なる場合がありますから、あらかじめ確認しておくことが大事です。
それぞれの住所地を管轄する労働局に許可申請書を提出すると、申請書のチェックから始まって、事業所の現地をチェックし、厚生労働省が審査内容を確認し、そして、厚生労働大臣を通じて月1回の労働政策審議会で諮問をします。
会社や事業所の実体が無いと現地調査ができませんので、あらかじめ会社を登記しておいて、事業所を構えていなければなりません。
会社の定款の目的には派遣事業が掲載されていなければなりません。
許可申請書を提出してから、許可が下りるまで3ヶ月位は掛かります。申請はしたけれど、結局許可が下りなかったとなれば、会社登記したことも、申請したことも無駄に終わってしまいます。
そうならないように、前もって、派遣事業に詳しい専門会社などに相談しておくべきことをおすすめいたします。
派遣元責任者講習を受けるには?
人材派遣会社を設立する際に必要になる添付書類のひとつに、「派遣元責任者講習」の受講証明書があります。
これを労働派遣事業の許可申請をする前までに取得しなければなりません。派遣元責任者講習の受講証明書を取得するために、責任者を選任して受講させなければなりません。
講習を受けるには、全国で17団体が主催している「派遣元責任者講習」のいずれかに申し込みをして、受講費用を支払って受講します。講習時間はほぼ1日掛かると思った方が良いでしょう。
開始時間はそれぞれの会場によって異なりますから、申込み時に確認するようにしましょう。
講習内容は、「労働者派遣法について」「労働基準法等の適用について」「派遣元責任者の職務遂行上の留意点について」「個人情報の保護の取扱いに係る労働者派遣法の遵守と公正は採用選考の推進等について」となっています。
申し込みの方法などは主催する団体によって細かい部分で異なるかもしれませんが、大まかな流れは一緒です。
まずは、受講申込フォームに必要事項を入力して申し込みます。会場には定員があるので、先着順で申し込みを受け付けるようです。
注意しなければならないことは、受講者の氏名と生年月日は、住民票に記載されている通りに間違いなく記入しなければならないことです。
受講証明書には、申込フォームに記入した氏名と生年月日の通りに記載されるので、間違ってしまうと、労働者派遣事業の許可申請の内容と異なることになり、許可が下りなくなってしまいます。
申し込みが完了すると、確認メールが届くので、内容を確認しておきます。
そして、受講料は、支払い期限までに振り込む形になります。
振込手数料は受講者負担となっています。受講料の入金確認後に、受講票メールが届くので、それをプリントアウトして当日会場で使用する形になります。
受講の際には、厚生労働省の指示による本人確認が必須となっています。受講票と一緒に公的な身分証明書の提示を求められます。
あとは、途中退席せずに、最後まで講習を受けるだけです。
特に試験は無く、最後まで受講すると「派遣元責任者講習」の受講証明書が発行されます。
もし途中退席をしてしまった場合、受講証明書は発行されませんが、受講を続けることはできます。受講証明書は即日交付されるところもありますが、主催団体によって異なる場合がありますので、必要に応じて講習の主催団体に確認するようにしてください。
まとめ
人材派遣会社の設立及び労働者派遣事業の許可申請には、慣れとコツがあります。
初めてでいきなり完璧に全てをこなすのは不可能ではありませんが、非常に難しいことです。時間と労力を掛けて完璧を期していても、どこかにミスが生じるのはやむを得ないことです。
限られた時間内で書類作成をして、添付書類を取り寄せて提出したとしても、どこかに不備があると、訂正作業が入ったりします。時間が戻れば良いのですが、過ぎた時間は戻ってきません。
ミスしてからあれこれと考えるよりも、事前に相談できる窓口があると楽に申請作業をこなすことができます。
経験ある専門家からアドバイスをもらいながら自分で行なうのも良いのですが、どうせなら、費用を掛けても専門家に依頼する方がずっと楽に会社設立も許可申請もできます。自分で全てを行なうにしても費用は掛かります。
そもそも本業を考える時間を削るわけですから、費用負担の損失は大きくなります。
それを考えれば、専門家に依頼することが安上がりになると言えるのではないでしょうか。そこで、弊社、経営サポートプラスアルファを頼ってみてはいかかでしょうか。
弊社は会社設立代行のエキスパートです。
そして、経営・財務コンサルティングのプロフェッショナル集団です。会社設立時の煩雑な書類作成などの業務を一人で抱え込まずに、ぜひ我々に任せてみてはいかかでしょうか。
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