フリーランスとして働いている方や個人事業主の方にとって、「法人化すべきか」「どのタイミングで法人化するのが最適か」は大きな悩みのひとつでしょう。
特に売上が1000万円を超えると、節税や社会的信用の観点から法人化の検討が現実味を帯びてきます。
そこで、この記事ではなぜ年商1000万円を越えたら法人化した方が良いと言われているのか、そして年商1000万円を越えた段階で法人化するメリット・デメリットについてお伝えしていきます。
目次
なぜ「売上1000万円」が法人化の分岐点になるのか
売上1000万円という数字は、単なる売上目安ではなく、税務・制度・経営の各観点で重要な意味を持ちます。
最初に多くの個人事業主やフリーランスが「年商1000万円」をきっかけに法人化を検討するのか、その背景を挙げると以下のとおりです。
消費税の免税期間が終了するため
消費税には「基準期間」の概念があり、原則として開業から最初の2年間は売上高にかかわらず消費税が免除されます。
しかし、国税庁の「納税義務の免除」によると、年商が1000万円を超えると、2年後には課税事業者として消費税の納税義務が発生するのです。
この免税期間が終わるタイミングで法人化を検討することで、法人として新たに2年間の免税期間を得られる可能性があります。
▶参考:No.6501 納税義務の免除
課税所得800万円を超えると節税効果が見込める
個人事業主の所得税は累進課税であり、所得が増えるほど税率が高くなります。
具体的には、課税所得が900万円を超えると所得税率は33%、住民税を含めると実質40%を超えるほどです。
一方、法人税は所得800万円までは軽減税率15%、それを超えても23.2%と安定しています。
そのため、一定の所得を超えた段階で法人化することで大幅な節税が期待できるのです。
また、家族への給与支給による所得分散や、福利厚生費などの経費計上も法人のメリットとして活用できます。
事業規模や信用力の観点からも有利
年商1000万円を超えるということは、事業がある程度軌道に乗っている証拠です。
法人化することで、対外的な信用力が向上し、大企業や自治体との取引、金融機関からの融資審査にもプラスに働くでしょう。
また、法人登記により会社情報が公的に管理されるため、ビジネスパートナーからの信頼度も高まります。
年商1000万円でも法人化しない方がよいケース
課税売上高が1000万円を超えると消費税の支払いが発生するだけでなく、所得税の税率も課税所得金額が900万円を超えると33%となり、法人税の税率より高くなってしまいます。
そのため、年商1000万円を目安に法人化を考えた方が良いと言われています。
しかし法人化しない方が支払い税額が少なく済む場合もあります。
経費が多く、利益が少ない場合
経費が多く、売上から経費を引くと所得が900万円を大きく下回る場合は法人化をおすすめできません。
所得が900万円以上の場合は、法人化した方が支払い税額が少なく済みます。
しかし個人事業での経費が多く、所得がそこまで多くない場合には、売上が1000万円を超えていたとしても、法人化しない方が良いでしょう。
具体的には、所得税率は国税庁の「所得税の税率」によると330万円〜694万9千円で20%が課されます。
対して、中小企業の法人税は、同じく国税庁の「法人税の税率」によると800万円以下で15%です。
そのため、経費を除いた所得が330万円以上であれば法人化した方が税率は低くなりますが、それ以下であれば法人化すると損する可能性が高くなります。
一時的に年商が1000万円を超えた場合
何か特別な要因によって、年商が1000万円を超えた場合はすぐに法人化をすると損する可能性が高くなります。
今後の年商の見込みを分析し、来年度以降も安定して年商1000万円以上が見込める場合のみ法人化を検討することをおすすめします。
法人化したら本来の事業以外の業務に時間が取られて、売上が落ちてしまうということもあるでしょう。
売上が1000万円を超えたからといって、焦って法人化する必要はありません。
売上1000万円で法人化するメリット
法人化するメリットについてお伝えします。
家族への給与を経費にできる
法人化すると、役員報酬を経費として計算できます。
自分1人で事業を営んでいる場合、自分の給与のみを役員報酬として計算するはずです。
しかし、家族を役員として登記することで、その家族への給与も経費として計算できます。
法人の利益が大きくなると同時に法人税も高くなるため、法人に利益を残しておくより役員報酬として自分の家族に支給することで、法人税の節税につながるのです。
もちろん役員報酬にも決まりがあり、事前に届出が必要になるので、詳しくは国税庁の「No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」などを確認してみることをおすすめします。
融資を受けやすくなる
個人事業主は、税務署で開業届を提出するだけで開業することが可能です。
そのため、届出を出すだけでそこまで力を入れて事業に取り組んでおらず、事業所得がほとんどないという場合もあります。
また、確定申告の際に財政状況を示す書類を提出する義務がないことから、融資をする側が返済能力があるかどうか確認しにくくなっています。
こういった理由から、個人事業主が融資を受けるのは難しいのが現実です。
一方で、法人の場合は決算報告書の中に貸借対照表と損益計算書が含まれているため、銀行の融資を受けやすくなります。
法人化してすぐでも、無担保・無保証人で融資を受けることができる日本政策金融公庫の「新創業融資制度」を利用することも可能です。
企業との取引において信用度が高くなる
事業を拡大するにつれて、取引先が増えたり取引先の企業の規模が大きくなることがあるでしょう。
しかし、大企業になると、個人とは取引を行わないということが多くあります。
法人の場合は開業の際に登記を行うこともあり、企業情報が外部からも分かりやすくなっています。
そのため今後、大企業との取引を視野に入れた事業計画をしている個人事業主の方にとっては、法人化するメリットは十分にあると言えるでしょう。
売上1000万円で法人化するデメリットとは?
ここからは法人化するデメリットについてお伝えします。
法人設立にお金がかかる
個人事業主が事業を開始するには、税務署に開業届を提出するだけなので手間もお金もかかりません。
しかし、法人を設立するには登記が必要で、コストがかかります。
一般的に法人化する際に、1人または家族のみで新設する場合は株式会社か合同会社を選択するでしょう。
それぞれ新設するのにかかる費用や書類が異なりますが、ここでは費用面についてお伝えします。
株式会社の設立にかかるお金
株式会社の設立には、定款認証手数料と定款謄本代・定款印紙代、登録免許税などがかかります。
定款認証手数料額は令和4年1月1日より、資本金の額等が100万円未満の場合3万円、資本金の額等が100万円以上300万円未満の場合4万円、その他の場合5万円に改定されました。
参考:会社の定款手数料の改定(日本公証人連合会)
そのため、定款認証手数料は3万円〜5万円と考えておくと良いでしょう。
定款印紙代は、日本公証人連合会によると電子認証の場合以外は4万円かかるようです。
また、定款謄本代についてはページ数によって異なるため、作成の際に確認が必要になります。
登録免許税は国税庁の「登録免許税の税額表」によると、資本金の額の1,000分の7と決まっており、最低15万円〜です。
そのため、少なくとも20万円程度かかると考えておきましょう。
この他に証明書代など1通数百円程度かかります。
合同会社の設立にかかるお金
一方で合同会社の設立には、定款認証が必要ないため登録免許税と証明書代のみがかかります。
合同会社の登録免許税も株式会社と同様に資本金の額の1,000分の7になりますが、最低金額が株式会社より低く、資本金が6万円に満たないときは、1件6万円です。
参考:登録免許税の税額表(国税庁)
そのため、株式会社を新設するよりも合同会社を新設する方が低コストで済みます。
社会保険の負担金がかかる
個人事業主の場合、ひとりならば社会保険の加入義務はありません。
しかし、法人化した場合、1人で事業を行っていたとしても社会保険に加入しなければなりません。
社会保険料は会社と個人が半分ずつ負担することになるため、個人事業主のときよりも個人の負担金額自体は少なくなります。
しかし、法人化したてで事業が安定していない場合など、会社の少ない利益で社会保険料も賄わなけばならないとなると、社会保険料が法人の負担になりかねません。
個人事業主としてある程度安定した事業所得があり、法人化しても事業の拡大や安定した利益が見込める場合でも、法人化を検討するにあたっては、社会保険料の負担金についても考慮することをおすすめします。
事務処理が増える
個人事業主の場合は、個人でも確定申告できることがほとんどです。
一方で法人化した場合、法人税申告書の作成や決算報告書の作成を個人のみで行うことは難しくなります。
そのため、多くの法人が税理士にお願いしています。
しかし税理士に丸投げというわけにはいかず、会計帳簿などの経理に関する管理は代表者が行う必要があるのです。
税理士にお願いするにも費用がかかりますし、経理担当として人を雇うにも人件費がかかります。
だからといって全て代表者1人で事務処理をしてしまうと、そればかりに時間が取られ、肝心の事業が疎かになりかねません。
このように、法人化した場合、事務処理には時間やコストがかかるというデメリットがあると理解しておいた方が良いでしょう。
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売上1000万円で法人化する際によくある質問(FAQ)
売上1,000万円で法人化すべきかについて、よくあつ質問をまとめました。
Q1. 売上1,000万円を超えたら必ず法人化すべきですか?
必ずしも法人化する必要はありません。
所得の状況や今後の売上見込み、経費の多寡などを踏まえて判断するのが重要です。
節税や信頼性向上のメリットもあれば、社会保険料の増加や事務負担などのデメリットもあるため、総合的に検討しましょう。
Q2. 法人化した後、消費税の免税期間はどうなりますか?
新たに法人を設立した場合、原則として最初の2期は消費税が免除されます(ただし、資本金や特定要件により異なる場合があります)。
そのため、売上が拡大するタイミングを見計らって法人化することで、より大きな節税効果を得られる可能性があります。
Q3. 法人化すると社会保険の加入は必須ですか?
はい。
法人の代表者はたとえ1人でも、健康保険・厚生年金への加入が義務付けられます。
これにより会社と個人で保険料を折半する必要があります。
Q4. 法人化したら家族を役員にできますか?
可能です。
家族を役員にして役員報酬を支払うことで、所得分散による節税効果が期待できます。
ただ、形式的な名義貸しなどは税務上問題となるため、実態を伴った業務が求められます。
Q5. 法人化にかかる初期費用はどれくらいですか?
株式会社の場合は定款認証や登録免許税などで約20万円以上、合同会社なら約6〜10万円程度が目安です。
電子定款を活用することで費用を抑えることも可能です。
まとめ
大切なのは今年度や前年度のみの売上を見るだけでなく、しっかりと分析を行い、来年度以降の売上もこれまでの分析に基づいて予測を立てることです。
もし法人化した方がメリットが大きいという結論に至った場合には、予測を立てた来年度以降の売上を考慮して、消費税の免税期間となる2年間をいつ活用するか検討し、適切なタイミングで法人化することをおすすめします。
年商が1000万円を超えたからといって、焦って法人化する必要はないので、さまざまなパターンを予測して、結果的に黒字になるように事業を行なっていきましょう。
経営サポートプラスアルファでは、個人でも法人でも独立を少しでも考えている人のご相談に乗らさせていただいております。
相談は何度でも無料なので、お気軽にご相談ください。

