独立開業してビジネスを展開する場合、個人事業主で経営をするのか、それとも法人を設立するのか迷う人が多いです。
そこで知っておきたいのが、個人事業主と法人の違いやメリット・デメリットです。
違いやメリット・デメリットを比較することで、個人事業主・法人のどちらでビジネスを行うべきなのか判断することができます。
そこで今回は、個人事業主と法人の違いやメリット・デメリットを紹介していきます。
個人事業主と法人の違いを比較しよう
個人事業主と法人では、様々な面が違います。
そのため、どう違うのかを知ることで、個人事業主と法人のどちらを選ぶべきなのかを判断することができます。
そこでまずは、簡単に個人事業主と法人の違いを表にまとめてみました。
どう違うのか、参考にしてみてください。
個人事業主 | 法人 | |
---|---|---|
開業・設立手続き | 開業届を提出 | 定款作成・登記が必要 |
設立費用 | 不要 | 25万円程度 |
資本金 | 不要 | 1円以上 |
事業の廃止 | 届出を提出 | 解散登記、広告などが必要 |
税金 | 経費として認められる範囲が狭い。 | 経費に認められる範囲が広い。
ただし、赤字でも法人税の均等割がかかる。 |
赤字の繰越 | 青色申告の場合は3年 | 9年 |
社会的な信用度 | 低い | 高い |
会計・経理 | 個人の確定申告 | 法人決算書・申告 |
生命保険 | 所得控除 | 全額経費 |
社会保険 | 会社負担分なし | 会社負担分あり |
・個人事業主は経費として認められる範囲が狭く法人は広い。
・青色申告の個人事業主は赤字の繰越を3年、法人は赤字の繰越を9年できる。
・個人事業主は社会的信用度が低く法人は社会的信用度が高い。
個人事業主のメリット
個人事業主には大きく分けて、以下の3つのメリットがあります。
- 開業や廃業の手続きが簡単
- 費用をかけずに始められる
- 赤字の場合に税金がかからない
それぞれ、どんなメリットなのかを紹介していきます。
開業や廃業の手続きが簡単
個人事業主のメリットは、開業・廃業の手続きが簡単であることです。
個人事業主の開業では、開業届を税務署に提出するだけです。
複雑な手続きはありません。
これに対し、法人の設立になれば、登記をする必要があります。
登記をするために、「会社登記申請」「定款作成」「印鑑証明書の取得」「代表者印の準備」などの手続きが必要です。
そのため、開業手続きの容易さが個人事業主のメリットとなっています。
また、開業だけでなく廃業の手続きも簡単です。
個人事業主なら、届出を提出するだけです。
しかし、法人なら解散登記をしなければなりません。
法人の解散は、なかなか複雑な手続きが必要です。
そのため、廃業の手続きも個人事業主にメリットがあります。
費用をかけずに始められる
費用をかけずに始められるのも、個人事業主のメリットです。
個人事業主は、設立費用が不要となっています。
そのため、無料でビジネスを始めることが可能です。
しかし、法人だと設立費用がかかります。
合同会社なら6万円、株式会社なら25万円の設立費用が必要です。
この費用を抑えることができるため、個人事業主には設立費用でメリットがあります。
赤字の場合に税金がかからない
個人事業主のメリットは、赤字経営なら税金がかからないことです。
個人事業主は、所得に応じて取得税がかかります。
そのため、赤字で所得がなければ、税金がかかりません。
しかし、法人だとそうはいきません。
法人住民税には、法人税割と均等割があります。
この均等割は、赤字であっても支払わなければなりません。
そのため、法人になると赤字であっても、支払わなければならない税金があるのです。
その点、赤字なら税金がかからない個人事業主にはメリットがあります。
ただし、赤字繰越では個人事業主にはデメリットなので注意してください。
個人事業主で青色申告の場合、赤字繰越は3年となっています。
これに対し、法人なら9年です。
そのため、赤字繰越では法人の方がメリットとなるのです。
・個人事業主は開業や廃業の手続きを簡単に行える。
・個人事業主になるために設立費用はかからない。
・個人事業主は赤字の際に税金が発生しない。
法人のメリット
法人にもメリットがあります。
主なメリットは、以下の4つが挙げられます。
- 取引先や金融機関からの信用が高まる
- 一定以上の所得なら税金負担を軽減できる
- 有限責任にできる
- 社会保険に加入できる
それでは、それぞれのメリットを紹介していきます。
取引先や金融機関からの信用が高まる
法人を設立するメリットは、取引先や金融機関からの信用が高くなることです。
個人事業主と法人を比較した場合、法人の方が対外的な信用度が高いです。
実際に、企業によっては法人としか取引しないというケースもあります。
個人事業主では信用できず、取引をしない企業もあるのが現実です。
また、金融機関から資金融資を得る際にも、法人の方が有利です。
法人の方が金融機関からの信用度が高くなり、融資を受けやすくなります。
このように、対外的な信用度という面では、法人の方にメリットがあるのです。
一定以上の所得なら税負担を軽減できる
法人を設立するメリットは、税負担を軽減できることです。
ただし、このメリットを得るためには、一定以上の所得が必要となります。
法人税と所得税の税率を比較した場合、ある程度の所得があるなら法人税の方が安いです。
個人によって法人を設立することにより、税金が安くなる所得額は違いますが、一般的には所得が500万円以上なら法人を設立した方が税負担を軽減できます。
そのため、まずは個人事業主としてビジネスを始め、成功して所得が大きくなったら法人を設立するという方法もあります。
有限責任にできる
法人を設立することで、有限責任にできるというメリットもあります。
個人事業の場合、経営が悪化すればすべて個人の負債となります。
ビジネスに失敗した場合、状況によっては自己破産に追い込まれることもあるのです。
しかし、株式会社や合同会社として法人化しておけば、有限責任にすることができます。
有限責任になれば、個人保証による借入以外は、出資金の範囲内での責任となります。
そのため、ビジネスに失敗した際の、リスクを抑えるメリットがあるのです。
ビジネスは必ずしも成功するわけではないため、リスクを抑えることができるのは大きなメリットです。
社会保険に加入できる
法人設立によって、社会保険に加入できるのもメリットです。
法人なら、健康保険と厚生年金に強制加入となります。
国民健康保険や国民年金と比較した場合、 健康保険や厚生年金は補償が手厚くなっています。
そのため、社会保険に加入できるのは、大きなメリットとなっているのです。
とくに年金は、国民年金と厚生年金では、大きく違ってくるので将来的なことを考えると法人化し、厚生年金に加入しておくのがおすすめです。
・法人は社会的信用度が高く資金調達で有利。
・法人はビジネスに失敗しても有限責任になる。
・法人を設立することで社会保険に加入できるようになる。
法人化のタイミングの見分け方
どのタイミングで法人化に取り組むべきか見分け方について説明します。
年収の目安は1000万円
法人化の目安として売上1,000万円が一つのラインとされています。
その理由は、売上が1,000万円を超えると課税事業者になるからです。
課税事業者は消費税を納税する必要があります。
法人化すれば個人事業主にはないさまざまな節税対策ができるため、消費税納税の負担を軽減できるのです。
ただし、実際には売上500万円程度であっても、法人化にはメリットがあります。
法人化すれば所得を役員報酬として扱うことができ、給与所得控除の恩恵を得られるからです。
年収が上がれば上がるほど節税の効果は大きくなり、1000万円を超えると法人化しないとかなり損をしてしまうので、見切りを付けて法人化を行いましょう。
節税効果の高い月
要件を満たせば会社設立してから1期目と2期目の消費税は免除されます。
ただし、2期目については、特定期間の課税売上高と給与支払額が1,000万円を超えないことが免除要件です。
特定期間とは、1期目の事業年度開始日から6ヶ月の期間とされています。
免除要件を満たせるのであれば、1期目と2期目の消費税免除は積極的に狙いましょう。
そのためには、会社設立日を年度初め、決算日を年度末にすることをおすすめします。
1期目と2期目の事業年度が少しでも長くなるように決算月を決める方が免税において有利だからです。
会社の設立日から決算日までできるだけ離すようにすれば、1期目の期間を長くできます。
たとえば、1月4日を設立日にして決算日を12月31日にした場合は、1期目はほぼ1年間になるのです。
その間の消費税をすべて免税できればかなりの節税効果を期待できます。
ちなみに決算日は事業を開始した後に変更することが可能です。
そのため、消費税免除の恩恵を得られなくなった後で、決算日を別の日に変更するケースもあります。
・年収が1,000万円を超えたときが法人化の目安。
・法人化して要件を満たすと1期目と2期目の消費税が免除される。
・会社の設立日と決算日をできるだけ離すことで免税の特性を最大限に活かせる。
法人化を決めたなら税理士に相談を
法人化を検討しているならば税理士に相談することをおすすめします。
税理士であれば、法人化をすることでどれくらいの節税効果があるのか詳しく説明してくれます。
また、税理士に相談することで法人化のためのさまざまな手続きを手伝ってもらうことができます。
作成する必要のある多くの書類について税理士から細かな助言を受けることが可能です。
税理士の力を借りることで手続きをスムーズに進められます。
また、税理士を頼ることで、より節税効果の高い法人化が可能です。
たとえば、設立のタイミングについても税理士のアドバイスに従うことで高い節税効果を見込めます。
税理士であれば、法人化した後の経営に関する相談にも乗ってくれるでしょう。
法人化後の経営戦略や経営方針などについて対応してくれます。
経営コンサルティング業務にも対応できる税理士は多いです。
このようなケースで税理士を頼りたいのであれば、経営サポートプラスアルファがおすすめです。
経営サポートプラスアルファには、法人化について詳しい税理士が多く在籍しています。
法人化で税理士への相談を検討している人は、ぜひ経営サポートプラスアルファにお問い合わせください。