別会社を設立する際には社長を同じにしたいケースがあります。
しかし、別会社で社長が同じだと法的に問題はないか、経営上トラブルは起きないのか不安になるでしょう。
この記事では、別会社と社長が同じケースはあるのか、注意するべき点は何か詳しく解説します。
目次
そもそも社長とは?
社長とはそもそもどういった存在なのか基本的な定義を紹介します。
社長は法的な呼称ではなく厳密な定義はない
実は会社法において社長に関する規定は一切存在しません。
社長は会社が独自に定める肩書のことであり、法的に根拠のある呼称ではないのです。
一般的には会社を代表する役職として社長は認識されています。
しかし、社長を名乗っていたからといって、必ずしもその人が代表者であるとは限らないのです。
実際に社長であるのに代表権がないケースや取締役ですらないのに社長という肩書が与えられているケースがあります。
社長は社内における最高責任者
一般的には社長は社内における最高責任者とされています。
アメリカでは社内の最高責任者はCEOと呼称されていて、日本でもCEOと呼ばれるケースがあるのです。
ただし、法的には会社の代表権を持つものは取締役あるいは代表取締役とされています。
社長やCEOという呼称は法的な裏付けは一切ありません。
社長が代表取締役を兼任しているケースは多い
日本の法律において会社を代表して権限を有しているのは代表取締役です。
一般的に社長としてイメージされる役職に最も近いのは代表取締役といえます。
実際に社長という肩書を持っている人物は、その会社の代表取締役を務めているケースが多いです。
ただし、代表取締役に法的な権限が与えられるのは代表取締役制度を導入している会社に限られます。
代表取締役制度のない会社では、たとえ代表取締役という肩書が使われていても、法的には何の権限もないのです。
別会社と社長が同じことはありえるのか?
別会社と社長が同じケースについて説明しましょう。
複数の会社で社長を兼務することは可能
法律上は複数の会社で社長を兼務することに問題はありません。取締役が複数の会社を兼務することを規制する法律はないからです。
ただし、監査役については兼務について規制があるためその点は注意しましょう。
親族経営している会社で社長を兼任するケースは多い
実際に別会社で社長が同じケースとして親族経営している会社の事例は多いです。
家族や親戚など身内で複数の会社を経営していて、すべての会社で社長が同じになるのは珍しくありません。
既存の社長が退くことになり別会社の社長が役割を引き継いで、結果的に複数の会社で社長が同じになるパターンもあります。
グループ会社の場合はコンプライアンス体制構築のために社長の兼務はよくある
大きな規模のグループ会社においても社長が兼務するケースはよくみられます。
グループ内の会社の社長が同じであれば、コンプライアンス体制の強化に効果があるからです。
社長が共通していればグループ全体の考え方や価値観などを統一することができます。
全社への方針伝達が行いやすくなり、グループ全体で整合性や統一性を維持しやすくなるからです。
社長が同じであれば事業の効率性が高まる
社長が同じであれば、意思決定や業務執行について連続性を確保できます。
そのため、効率よく経営を進めることができるのがメリットです。
社長を兼務することでグループ全体の求心力を高めることができ、企業の活性化にもつながります。
別会社と社長が同じで問題になるケース
別会社と社長が同じ場合にどういった問題が起きるのか解説します。
競業避止義務に違反する可能性がある
事前の承認がないのに会社と競業する取引を取締役が行うのは競業避止義務に違反します。
取締役には大きな権限があり、企業秘密に容易にアクセスできるため、自分の地位を利用して自己や第三者の利益のための取引をする恐れがあるからです。
それを防ぐために競業避止義務が規定されています。
取締役を兼任する場合、片方の会社に有利でもう片方の会社に不利な取引をするケースがあります。
この点で競業避止義務の違反を指摘されることがあるため注意しましょう。
利益相反取引で問題になるケースがある
取締役が自己または第三者の利益のために会社の利益を阻害する取引をする場合、利益相反取引とみなされるケースがあります。
利益相反取引にあたる取引は取締役会での事前承認が必要です。
会社Aと会社Bの取締役を兼任していて、会社Aと会社Bが取引をする場合も、利益相反取引に該当するケースがあります。
この場合はそれぞれの会社で承認を得なければいけません。
ただし、会社に不利益がない場合は、事前の承認を得ずに取引できます。
独占禁止法上の問題になることがある
取締役を兼任することで独占禁止法上の問題が指摘されることがあります。
兼任したことで他方の会社の競争を制限する場合には、取締役を兼ねてはいけないという規定があるのです。
そのため、競争関係にある別会社の取締役を兼任する際には注意しなければいけません。
別会社と社長が同じだと税務調査で追求されることがある
別会社と社長が同じことを税務調査で追求されるケースについて詳しく解説しましょう。
社長が同じ会社同士の取引は税務署にチェックされやすい
社長が同じ会社による取引は税務署にチェックされやすいです。
たとえば、相場よりも極端に高い価格で売却する、あるいは相場よりもかなり安い価格で買取するといったケースがあります。
税負担を少なくすることを目的とした取引は税務上問題になる
最初から税負担を逃れることを目的として取引する場合は、税務上問題になります。
取引には合理性が求められるからです。
明らかに税金を少なくすることを目的とした取引は税務調査で徹底的に調べられるため注意しましょう。
特に社長が同じ場合は、最初から節税目的で別会社を設立したと疑われやすいです。
ダミー会社として別会社を設立して脱税している事例はたくさんあります。
別会社設立で既存会社より従業員の転籍や資産の売却をするのも要注意
別会社との取引で注意するべき点は従業員の転籍や資産の売却などです。
たとえば、別会社を設立して従業員を転籍させて、別会社から元の会社へ人材を派遣させるケースがあります。
別会社の設立により消費税の免税を受けて、元の会社に人材派遣して同じ業務を行わせるのです。
このような行為は不正行為とみなされる可能性があります。
別会社に資産を売却する際には価格に気をつけましょう。
利益を上げたくないために時価を大きく下回る価格で売却するケースがあります。
この場合は、時価との差額を別会社に寄付したとみなされて、寄付金の損金不算入にあたると指摘されることがあるのです。
税務上問題にならないようにしっかりと検討して疑われないことが大切
社長が同じ別会社との取引については、脱税として扱われるかどうかはグレーな部分が多いです。
法律はさまざまな解釈が可能であり、判断が難しいからです。
最終的には税務調査を行い、税務署が判断します。
これから別会社と取引する際には、その行為が税務上問題にならないのかしっかりと検討することが大切です。
重要なことは合理的な理由であり、きちんと税務署を納得させることができれば、その取引は容認されます。
社長が同じ別会社を設立する際の注意点
社長が同じで、別会社の設立をする際の注意しておきたいポイントを説明します。
完全親子会社であれば社長が同じでも問題は起きにくい
社長が同じ別会社の設立で問題が起きるのは競争の妨げになる不正行為が疑われるからです。
一方、完全親子会社の場合は、利益相反取引などは該当しないと判断されることが多いです。
完全親子会社は親会社が子会社の株式を100%保有していて、利害対立する関係ではないとみなされます。
完全親子会社間で取引したとしても、それが競業取引に該当しないと考えられるため、事前の承認なく自由に取引できるとされているのです。
ただし、完全親子会社でも子会社が倒産すると子会社の財産は債権者の担保財産になります。
この場合は利害の対立が生まれるという見解もあるのです。
そのため、完全親子会社の取引が競合取引や利益相反取引に該当することは絶対にないと断定できるわけではないため注意しましょう。
社長を兼任するのは大きな責任を問われるため注意する
別会社の社長を兼任する場合は、それぞれの会社について責任のある立場で行動することが求められます。
1つの会社の社長を務めるよりも大きな責任を問われるのです。
取締役は、自社の利益を最優先する必要があり、兼任する場合は2つの会社の利益を尊重する必要があります。
そのために複雑な経営判断が求められ、失敗すれば大きな責任問題に発展するのです。
利益相反取引を行う際には取締役会の承認が必要
利益相反取引とみなされる可能性のある取引は慎重に判断しましょう。
利益相反取引は事前に取締役会の承認が必要だからです。
株式会社では株主総会において取引の重要な事実を開示して承認を受けるというプロセスが求められます。
承認のない利益相反取引については原則として無効になります。
利益相反取引は起きやすいため注意しましょう。
少しでも他方に損害を与える恐れのある取引は利益相反取引と判断されやすいです。
別会社設立の前に専門家に相談しよう
別会社設立で社長が同じだと法的にさまざまな問題が生じる可能性があります。
そこで、専門家に相談をして、あらかじめ想定されるリスクについて教えてもらいましょう。
そして、本当に既存の会社と別会社の社長を同じにする価値があるのか判断するのです。
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社長が同じ別会社の設立は十分に注意しよう
別会社の設立で社長が同じだと法的な問題に抵触するケースがあります。
税務調査で指摘を受けることもあるのです。
どんなリスクや問題があるのかしっかりと理解した上で別会社の社長を兼任するのか考えましょう。
また、あらかじめ専門家に相談をして助言を求めることも大切です。
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