会社の設立で悩むポイントが、「資本金をいくらにするのか？ 」です。
資本金は多い・少ないによってメリットとデメリットを生み出します。
そこで今回は、資本金の額とメリット・デメリットの関係性や会社の最低資本金について紹介していきます。
既に会社を設立していて、増資や減資にお悩みの方はこちらの記事もおすすめです。
資本金とは
資本金とは、開業時点における会社が所有している運転資金のことです。
株式会社であれば、株主が出資した金額を指します。
あくまで資本金は事業を行うための元手金であり、売上高や利益とは関係性がないものです。
一般的に、資本金＝開業時点の運転資金だと覚えておきましょう。
最低資本金額は？
会社の資本金は最低1円から設定できるようになっています。
会社法が改正されたことにより、資本金の最低金額に関するルールが撤廃され、自由な金額が認められるように変化しました。
しかし、実際に1円で会社を設立することは基本的に難しく、運転資金として必要な金額を設定します。
平均的な資本金
会社の平均的な資本金の金額は、約300万円です。
300万円ほどあれば、事業を始めても数カ月は運営できることから、この金額が相場になっています。
もし、事業運営にあまりお金がかからないなら、もう少し資本金の金額が少なくても問題ありません。
資本金の多い・少ないが会社に与える影響
資本金が多い状況や少ない状況は会社にどのような影響を与えるのでしょうか。
消費税の納税義務が免除されるか
一般的に、会社設立して事業を営むならば、サービスの消費によって発生した消費税を納める必要があります。
しかし、新しく設立された法人は、例外的に設立1期目と2期目について、消費税の納税義務が免除される仕組みです。
売上高など特定の条件を満たした場合には納税義務が生じますが、例外的に免除される仕組みが整えられています。
しかし、事業年度の開始日における資本金が1,000万円以上の法人は、上記の例外が適用されません。
もし、資本金1,000万円以上で会社を設立すると、設立した段階から例外が適用されず、消費税の納税義務が生じるのです。
税金を電子申告する義務が生じる
資本金が1億円を超える会社などについては、税金を電子申告することが義務付けられています。
具体的には、法人税や法人事業税、消費税などを電子申告しなければなりません。
何かしら特別な状況を除いて、書面での提出はできない仕組みなのです。
電子申告は、環境を整えるなどの準備が必要となるため、この点はデメリットといえます。
また、電子申告の義務がある場合で、紙での申告を済ませた場合、無申告と扱われてしまうこともデメリットです。
なお、電子申告の義務があるかどうかは、事業年度の開始日時点の資本金額で判定されます。
もし事業年度の途中で資本金を1億円以下に変更した場合であっても、その年度については電子申告の義務が生じたままであるため注意しなければなりません。
大会社に分類される可能性がある
資本金が5億円を超える非常に多い場合は、会社法で大会社に分類されます。
この場合、法律でいくつもの制約や規律が設けられているため、これがデメリットとなりかねません。
- 会計監査人の設置
- 監査役会設置
- 内部統制システムの決定
- 損益計算書についての公告
- 連結計算書類作成
会計監査人を準備する必要があるなど、利害関係者の権利を守るために、いくつもの対応が必要なのです。
資本金が多いメリット
良い影響も悪い影響もありますが、まずは一般的に資本金が多い場合のメリットを解説します。
会社への信用力が高まる
資本金が多い大きなメリットは、会社の信用力が高まるということです。
基本的に、資本金の金額が大きければ大きいほど、会社への信用力は高くなります。
これは資本金が多いことで資金力がある証明でき、支払い能力が評価されるからです。
なお、起業後に資本金を増資すると選択肢はありますが、増資には手続きに費用がかかるため、最初からある程度の資本金にしておくことをおすすめします。
債務超過になりにくい
起業したばかりでは、売り上げをあげることは難しく、資本金が少ないと、すぐに債務超過となってしまいます。
債務超過は、倒産寸前の状態と認識されるため、債務超過の会社に融資してくれる金融機関はごく少数です。
つまり、債務超過になってしまうと、経営の危機となってしまいかねません。
逆に、資本金が多ければこの問題を回避しやすくなることがメリットです。
融資を受けやすい
資本金があると、銀行からの融資が受けやすくなります。
例えば、日本金融政策公庫の中には、自己資本を要件として掲げている制度があるのです。
新創業融資という制度では自己資本要件として要件を掲げているため、このような融資にも申し込みできるようになります。
人材採用がしやすい
資本金がある会社は運転資金が潤沢にあるからこそ、倒産しにくいと判断できます。
このため、社員が安心して働くことができると見られ、採用がスムーズに進みやすいです。
実際に、資本金額を会社選びの軸にする就活生もいます。
欲しい時に人材確保をスムーズに進めるためにも、資本金は多くしておくのが得策です。
・資本力があるため、会社への信用力が高まる。
・債務超過になりにくい。
・銀行や日本金融政策公庫から融資を受けやすい。
・人材採用がしやすい。
資本金が多いデメリット
資本金が多いことによるデメリットは基本的にありません。
ただ、1億円を超えるなど、非常に規模の大きな企業となる場合は業務に影響が生じるため注意すべきです。
ここでは1,000万円を超える程度の資本金で、多い場合のデメリットを強いて解説します。
税負担が増える
基本的に、資本金が大きいほど税金も大きいため、資本金を増やすと、税金が増えます。
登録免許税（会社設立時のみ）
法人登記をするには、登録免許税という税金を支払う必要があります。
登録免許税の金額は、2143万円以上か未満かで決まります。
資本金の金額が2143万円未満の場合には、登録免許税は一律で15万円ですが、2143万円以上である場合には「資本金の金額×0.7%」が登録免許税として必要です。
消費税（設立一期目、二期目のみ）
解説したとおり、設立時1期目と2期目は、資本金が1,000万円以下であれば、消費税が免除されます。
資本金を1,000万円以下にすることで、初年度から消費税が課税されずにすむので、その分かかる費用を抑えることが可能です。
法人住民税
個人に住民税が発生するとおり、法人にも住民税が発生するため考慮が必要です。
例えば、東京23区内に事業所を持つ人であり、従業員50人未満である場合は、資本金が1,000万円を超える場合には18万円、1,000万円以下の場合には7万円の法人住民税がかかります。
この法人住民税というのは会社が赤字であったとしてもかかる税金（均等割といいます）ですから、決して小さくない負担となる可能性があります。
経営者の存在が薄れがちになる
株式会社の場合、会社は株主の所有するものだと言えます。
会社の重要な意思決定では株主総会で決定を行わなくてはなりません。
小さな企業だと、経営者が株式の大半を所有する場合が多いですが、資本金を多くして、株主を大量に発行すると、経営者以外にも株式を保有することになるでしょう。
経営者は自由な意思決定ができなくなってしまうリスクもあるため注意点と考えられます。
・税負担が増える。（登録免許税、消費税、住民税）
・大会社になってしまうと、義務事項が増える。
・経営者の存在が薄れがちになる。
資本金の多い・少ないはどちらが良いか
資本金が多い場合と少ない場合のメリットやデメリットについて理解されたでしょう。
これを踏まえると、資本金が多い方が良いか少ない方が良いかは一概にいえません。
資本金が少ないことによって、法的な制約を受けることは少なくなりますが、会社の経営が不安定になるリスクを抱えます。
対して資本金が多いと会社を安定して経営できますが、金額によっては、法的な制限を受けかねません。
資本金が多い少ないどちらにもメリットやデメリットがあり、一長一短と言わざるを得ないのです。
重要なことは、会社の経営に最適な資本金を設定するということでしょう。
もし、資本金をいくらに設定すれば良いのか判断できないならば専門家の意見を仰ぐことをおすすめします。
まとめ
資本金をいくらにするのかは、会社設立の際に悩んでしまう事柄の1つです。
会社の平均的な資本金は300万円ですが、外部からの見え方や運転資金を考えて金額を決めるようにしましょう。
また、資本金が少なすぎると会社の信用力に悪影響を及ぼし、すぐに債務超過になってしまいかねません。
当社では、資本金のような会社設立前のお悩みについての相談も受け付けています。
これまで数多くの会社設立に携わっており、会社設立についてのお悩みについてアドバイスすることが可能です。
ぜひ、お気軽にお問い合わせください。
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