目次
会社設立は自分でできない?
会社設立手続きは自分でもできますが、司法書士などの士業へ依頼した方が確実です。
自分で会社設立をすると、以下のデメリットがあるためです。
- ミスがあると多額の税金がかかる場合がある
- 設定が難しい場合がある
会社設立手続きの設定で間違いをすると、多額の税金がかかる場合があります。
士業への依頼費用をおさえるために自分で手続きをしたにも関わらず、結局多額の税金を支払うことになる可能性もあるのです。
また、設立する会社の業種によっては設立手続きの設定が難しい場合があります。
よって、会社手続きは行政書士や司法書士などの士業に依頼するのが確実です。
設立したい会社の形態(株式会社・合同会社)によって、依頼すべき士業は異なります。
自社の形態に合わせた士業を選んで依頼しましょう。
会社設立を依頼する場合、行政書士か司法書士などに依頼することになります。
会社設立の流れ
会社を設立する際に、以下の手続きが必要です。
- 登記に必要な事項と印鑑の作成
- 定款の作成と認証
- 資本金の払込
- 必要書類作成と登記申請
それぞれの詳細を流れに沿って解説します。
登記に必要な事項と印鑑の作成
会社設立登記をする際には会社の基本事項を決めておくことと、印鑑の作成が必要になります。
会社の基本事項は以下の通りです。
- 商号
- 役員報酬
- 資本金額
会社設立登記でもうひとつ必要となるのが、提出する申請書に押印する会社の代表印です。
会社の代表印は登記申請時に一緒に届け出なければいけません。
登記申請に間に合うように、会社の代表印作成も進めておきましょう。
定款の作成と認証
会社設立に必要なもののひとつに「定款(ていかん)」があります。
定款とは会社を運営する際に定める基本的な事項をまとめたものです。
定款には、絶対に決めなければいけない以下の絶対的記載事項があります。
- 事業の目的
- 商号(社名)
- 本店の所在地
- 設立に際して出資される財産の価額もしくは最低額
- 発起人の氏名・名称・住所
- 発行可能株式総数(株式会社のみ)
上記いずれかの事項がひとつでも記載されていないと、定款は効力を失います。
それぞれの事項について解説していきます。
事業の目的
定款に記載してある事業以外は行えません。
将来的に行う予定の事業がある場合は、合わせて記載しておきましょう。
定款の事業目的の最後に、「前各号に付帯または関連する一切の事業」と記載しておくと、将来関連する事業を行う際に定款を変えなくてもよくなります。
商号(社名)
商号とは、会社名のことです。
基本的には自由に決められますが以下の決まりに気を付けて会社名を考えましょう。
- 同一住所に同一の商号がある場合は登記できない
- 不正競争防止法等にも注意
- 商号を変更する可能性も考えておく
- 株式会社を前後どちらかに付ける
同一住所に同一商号がある場合は登記できないため、あらかじめ本店所在地を管轄している法務局で似たような商号がないかをチェックしておきましょう。
また、銀行ではないのに「〇〇銀行」とつける、など不正競争防止法に抵触するような商号も避けます。
商号は会社の製品やサービスと深い関わりがあります。
事業経営をするなかで、会社名よりも製品やサービスの方が有名になった場合、ブランディングのために商号を製品やサービス名に変更する企業も多いです。
商号を変更する可能性についても考えておきましょう。
株式会社を設立する場合は会社名の前後どちらかに株式会社を付けて、「株式会社〇〇」または「〇〇株式会社」を商号とします。
本店の所在地
定款には本店所在地の最小行政区画まで記載します。
たとえば東京23区の場合「東京都〇〇区」までを最低限記載しなければいけません。
すべての住所の記載も可能です。
賃貸物件の自宅を本店とする場合は、法人可の物件かどうか契約書を確認しておきましょう。
設立に際して出資される財産の価額もしくは最低額
株式会社を設立する際、定款には株数ではなく出資財産額、または出資最低額を記載します。
確定している額ではなく最低額を決めれば問題ありません。
たとえば定款作成後、定款に記載した発起人の出資額のうち一部のみしか出資の履行ができず出資財産額に満たなかった、という場合でも株式会社の設立は可能です。
一方定款記載ではなく株式登記申請時には、資本金の額の確定が必要になります。
登記すべき事項に資本金の額、発行済株式の総数がふくまれているからです。
発起人の氏名・名称・住所
株式会社設立の際、最低1株を引き受けて設立手続きを実際に行う人である「発起人」が必要です。
定款には発起人の氏名と住所、引受株数の記載と発起人の署名が必要になります。
発行可能株式総数(株式会社のみ)
発行可能株式総数は定款認証時に定めておかなくても問題ありません。
ただし、定款に定めない場合は会社の成立までに定款を変更、定めを設ける必要があります。
設立時発行可能株式総数は、非公開会社の場合を除き発行可能株式総数の4分の1を下回ることはありません。
これら必要事項を記載して定款が完成すれば、定款の認証を行います。
定款の認証
定款の記載が正しいものであるかどうかを第三者に証明してもらう手続きが、定款認証です。
会社の本店所在地を管轄する法務局に所属する公証役場で行います。
定款を紙ではなくPDFで作成する、電子定款も可能です。
電子定款にすると定款に貼らなければいけない収入印紙代の4万円を節約できる、定款の認証もWeb上でできる、といったメリットがあります。
自分で電子定款を作成・認証する場合には専用の機器や特殊なソフトウェアが必要です。
電子定款の作成・認証は、行政書士への代行依頼もできます。
電子も含めて定款の作成・認証代行は士業のなかでも行政書士しか行えません。
資本金の払込
資本金は1円から決められますが、100万円~1,000万円ほどが目安になります。
資本金が1,000万円を超えると、会社設立初年度から消費税が課税される点に注意しましょう。
資本金の払込は、以下の流れで行います。
- 資本金は振込の必要があるため、自分名義の口座に自分名義で振込む
- 通帳の表紙、1ページ目、振込をしたページのコピーを取る
- 払込証明書を作成し、コピーと一緒にとじる
- 書類の継ぎ目に会社代表印を押印する
- 法人設立完了後、法人名義の口座を開設する
- 資本金の金額を個人名義から法人名義へと移行する
必要書類作成と登記申請
会社の形態に合わせて以下のなかから、登記申請に必要な書類をA4サイズで作成します。
- 登記申請書
- 登記事項などを記載した別紙
- 印鑑届書
- 定款
- 発起人の決定書
- 就任承諾書
- 選定書
- 設立時代表取締役の就任承諾書
- 印鑑証明書
- 本人確認証明書
- 出資の払込みを証する証明書
- 資本金の額の計上に関する証明書
印鑑証明書以外の作成した書類の左側をホチキスで留め、製本します。
製本した必要書類と、15万円分の収入印紙を添えて登記手続きをします。
登記手続きは資本金払込後2週間以内に、法務局へ足を運ぶか郵送で行います。
なお、会社設立日は法務局で手続きをした場合は登記申請書を提出した日、郵送の場合は書類が法務局に到着した日になります。
行政書士が会社設立において行える業務とは
会社設立手続きは、自分で行う以外にも一部手続きを行政書士へ依頼して行うことも可能です。
行政書士が会社設立でできる業務は以下の4つになります。
- 許認可の申請
- 定款の認証と作成の代行
- 契約書の作成
- 法律改正時のアドバイス
それぞれ解説していきます。
許認可の申請
法律上許可や認可、認証、届出等をしなければ営業ができない業種を事業とする場合、事業についての許認可申請が必要になります。
行政書士は、許認可申請で官公署に提出する書類の作成や相談、官公署に提出する手続の代理が可能です。
行政書士ができる許可申請業務の一部には、以下のものがあります。
- 旅館・ホテル業許可申請
- 旅行業許可申請
- 金融商品取引許可申請
- 建設業許可申請
- 風俗営業許可申請
- 酒類販売業関連手続き
- 宅地建物取引業免許申請
- 解体工事業登録申請
- 運送事業関連手続き
- 産業廃棄物収集運搬業許可申請
- 貸金業登録申請
- 古物商許可申請
- 医薬品店舗販売業許可申請
- 自動車運転代行業認定申請
- 美容室開業届出
- クリーニング所開設届出
- 運送業許可申請
- 車庫証明関連手続き
- 外国人在留許可申請・VISA申請
- 医療法人・社団法人・NPO法人認証申請
- 介護施設指定申請
- 農地法許可申請
- 著作権申請
- 種苗法申請
特に行政書士が代行している書類作成や申請手続きは、許認可申請に関するものがほとんどです。
定款の認証と作成の代行
行政書士は会社設立に必要な定款の作成と認証の代行が可能です。
紙はもちろん、電子定款の作成と認証も代行できます。
行政書士に依頼すれば正しくスムーズな定款の作成の認証ができるだけでなく、収入印紙代4万円分の節約もできます。
契約書の作成
行政書士が請け負う業務のひとつに、「権利義務に関する書類の作成とその代理、相談業務」があります。
権利義務に関する書類には、会社設立や運営に欠かせない、各種契約書が含まれています。
行政書士には、以下の契約書作成代行や作成に関する相談なども可能です。
- 社内のコンプライアンスについての規則
- 労働契約書
- 機密情報・個人情報の取り扱いについての規則
- 取引先との基本取引契約
- 取引先との売買契約
- 代理店契約
- 請負契約 など
法律改正時のアドバイス
法律が改正されると、事業において影響を受ける場合があります。
法律改正時に必要な対応をスピーディにできるのも行政書士の特徴のひとつです。
法改正によって会社経営上今後必要なものが増えた場合、または必要なことが変更される場合に、行政書士は許認可申請を含めた書類作成により企業が法律に対応できるように整備します。
今後法改正によって起きるであろうリスクも、行政書士への相談によって対策し、回避可能です。
会社設立に必要な許認可とは
会社設立時、事業内容によっては許認可の取得が必要です。
法律上許可や認可、認証、届出等をしなければ営業ができない業種は、許認可取得のための手続きをしなければいけません。
許認可申請は行政書士へ書類作成および申請代行、相談ができます。
許認可の種類
許認可には、以下5つの種類があります。
- 登録
- 届出
- 認可
- 許可
- 免許
それぞれについて解説します。
登録
所轄官庁が事業者として把握している名簿への掲載をもって、手続きが完了するのが登録です。
ガソリンスタンドや旅行代理店、解体工事業などがあります。
届出
所轄官庁に対して事業内容を記載した書類提出のみで済むのが届出です。
会社側が官庁に対して通知したいときに行う手続きで、届出が行政機関に到達したことで法律上の効果が発生します。
そのため、所轄官庁側から返事などは来ません。
たとえば、税務署に対して減価償却費の計算方法の届出などの経理方式の選択を行なったことを通知するときには、届出を行うのが一般的です。
届出が必要な場合は、事業開始後に提出します。
美容室や床屋などの美容・理容業は届出をするだけで開業可能です。
認可
第三者による法律行為を補充することにより、その法的効力を完全にすることを認可といいます。
必要な要件を満たし、申請書類等に不備がない場合、行政機関は原則認可を出されなければいけません。
私立学校や保育所などの公的な意味合いの強い事業や、分解整備業や運転代行業など自動車に関する事業が認可の対象となります。
許可
公共の秩序の維持などの観点から法律で事業として行うのを禁止している行為を、行政機関が禁止を解除し、適法に行えるようにするのが許可です。
たとえば、医薬品販売業やリサイクルショップなどは許可が必要です。
認可とは異なり、事業者が必要な要件を全て満たしていても所轄官庁の裁量によって許可が下りない場合もあります。
飲食業や旅館業を開くときには行政機関の許可、スナックやキャバレーなどの風俗営業を行うときには公安委員会の許可が必要です。
許可は事業を開始する前に申請し、承認を得なければ事業として行えません。
免許
免許とは、慣習的に免許という名称がついているだけで、法律的な分類としては許可とほぼ同じです。
宅地建物取引業や酒屋などの事業が該当します。
許認可が必要な業種
許認可が必要な業種を、必要な許認可の種類や届け出先別にまとめました。
業種 | 必要な許認可の種類 | 届け出先 |
---|---|---|
飲食店業 | 許可 | 保健所 |
美容業 | 届出 | 保健所 |
理容業 | 届出 | 保健所 |
旅館業 | 許可 | 保健所 |
クリーニング業 | 届出 | 保健所 |
興行場運営業 | 許可 | 保健所 |
墓地経営業 | 許可 | 保健所 |
建設業 | 許可 | 都道府県 |
宅地建物取引業 | 免許※ | 都道府県 |
一般産業廃棄物処理業 | 許可 | 都道府県 |
貸金業 | 登録※ | 都道府県 |
医薬品製造販売業 | 許可 | 都道府県 |
旅行業 | 登録 | 都道府県 |
通訳案内業 | 免許 | 都道府県 |
電気工事業 | 登録 | 都道府県 |
動物取扱業 | 登録 | 都道府県 |
測量業 | 登録 | 国土交通省 |
風俗営業 | 許可 | 警察署 |
探偵業 | 届出 | 警察署(公安) |
中古品販売業 | 許可 | 警察署 |
警備業 | 認定(公安委員会) | 警察署 |
質屋業 | 許可 | 警察署 |
酒類販売業 | 免許 | 税務署 |
職業紹介業 | 許可 | 公共職業安定所 |
駐車場 | 届出 | 市町村 |
古物商 | 許可 | 警察署(公安 |
米穀類販売業 | 登録 | 市町村 |
一般貸切旅客自動車運送事業 | 許可 | 運輸局 |
会社設立を行政書士に頼むメリット
行政書士とは官公署へ提出する書類や、権利義務や事実証明に関する書類を作る書類作成業務、およびその申請を代わりに行う許認可申請の代理ができる国家資格です。
会社設立と深く関わりのある許認可申請は、行政書士へ依頼できます。
許認可申請のプロなので安心
行政書士は、会社設立時に国や地方自治体などに提出する書類の作成ができます。
会社設立に必要な定款(会社の基本事項を定めたもの)をはじめとした書類作成を依頼できるので、間違いなく確実な手続きにつながります。
さらに、作成した書類を依頼したい人に代わって申請する、許認可申請代行もおこなっています。
行政書士が会社設立をしたい人と、国や地方自治体をつなぐパイプ役となるため、スムーズな会社設立手続きが可能です。
会社設立を行政書士に頼むデメリット
会社設立に必要な書類作成や許認可申請代行ができる行政書士に依頼すると、多くのメリットがあります。
ただし、行政書士はすべての会社設立手続きができるわけではありません。
行政書士が会社手続きで依頼できない範囲は、司法書士などのほかの士業へ依頼しなければいけません。
登記手続きは依頼できない
行政書士が会社設立でできることはごく一部です。
作成できる書類は、定款などのみとなり、登記手続きはできません。
登記手続きとは、会社等に関する取引上重要な事項(商号・名称、本店所在地、資本金の額、事業目的、代表者の氏名など)を法務局に届出をして登記として記録し、国民に公示する制度です。
会社設立に必要となる登記手続きは、司法書士が代理でおこなえます。
さらに会社設立時の登記手続きだけでなく、会社設立後の役員変更や商号、目的の変更、本店移転、増資減資など登記変更についても代理でおこなえるのは司法書士です。
もしも「登記手続きまで代行する」という文言のある行政書士事務所があれば、違法行為鳴ります。
他の士業を通したほうが安心
行政書士が代行できる定款作成は、実は司法書士もおこなえます。
また、会社設立時には法務や税務に関する手続きも必要です。
法務は弁護士、税務は税理士が専門職となります。
行政書士は法務や税務の専門家ではないため、会社設立のすべてを任せることはできません。
会社設立を行政書士に頼む場合の費用
定款作成や許認可申請など、会社設立で必要な業務を行政書士に依頼する場合、かかる費用について解説します。
10万円~が一般的
会社設立に必要な業務を行政書士に依頼した場合の報酬相場は、一般的に最低10万円からとなります。
ただし、会社を設立するときにかかる費用は行政書士への依頼費用だけではありません。
会社の設立費用や資本金が必要なことも覚えておきましょう。
よくあるプラン設計と注意点
行政書士に会社設立に必要な業務を依頼する場合、事務所やサービスによっていろいろなプランが用意されています。
行政書士に依頼する場合のよくあるプラン設計と、選ぶさいの注意点を解説します。
0円、無料でやってくれるプラン
会社設立時の定款作成や許認可申請代行を無料でおこなうプランがあります。
ただし、行政書士はボランティアではありません。
会社設立後、顧問契約を結ぶことを条件に定款作成や許認可申請代行を無料でおこなう、というプランになっていることが多く、そこでマネタイズしています
顧問契約時は顧問料がかかり、長期的にお金を支払っていかなければいけません。
電子定款のみなどスポットのプラン
定款作成時、電子定款を利用すると4万円の印紙代が0円になるメリットがあります。
個人では電子定款が作れませんが、行政書士に依頼すれば電子定款の作成が可能です。
電子定款のみ格安で作成する、などスポット業務を依頼できるプランもあります。
やってほしい業務だけ行政書士に格安で依頼できるので、柔軟な依頼ができるのがメリットです。
ただし、ほかの会社設立に関するサポートなどは受けられません。
あくまでスポット的な依頼と考えておきましょう。
フルサポートプラン
行政書士のなかには、会社設立に関する業務や手続きをすべて代行するフルサポートプランをかかげているところもあります。
費用さえ支払えば会社設立に必要なことをすべてお任せできますし、困ったことがあれば相談できるなどメリットも多いです。
ただし、会社設立に関するすべてのことを代行する、と明記されているのなら、行政書士以外の士業も関わっていることを確認しましょう。
行政書士が会社設立手続きで代行できるのはごく一部です。
企業や事務所のなかに司法書士や弁護士、税理士がいてフルサポートプランを設けているなら安心して依頼できるでしょう。
一方、行政書士しかいない場合は専門外のことを行政書士がおこなっている可能性が高いです。
間違いのもとになるだけでなく、違法行為のため避けた方が無難です。
会社設立のフルサポートプランを利用する予定なら、行政書士以外に司法書士、弁護士、税理士などがいるかどうかも確認しておきましょう。
行政書士と司法書士の違い
会社設立手続きを依頼できる士業には、行政書士のほかに司法書士もあります。
行政書士と司法書士は会社設立で代行できる領域や業務が異なるので注意が必要です。
行政書士と司法書士の違いについて解説します。
司法書士が何をしてくれるか
会社設立に関する手続きで司法書士に依頼できるものは、登記業務です。
以下の登記に関する手続きの代行や相談ができます。
- 登記手続きのための書類作成
- 登記手続きの代行
- 定款の作成と認証
- 会社の顧問になってもらう
- 会社の事項の変更手続き代行
登記業務は、司法書士の独占業務です。
会社設立に必要な登記手続きのための書類作成や、法務省への登記手続き代行は、司法書士にしかできません。
ほかに、定款の作成や認証なども可能ですので、司法書士は会社設立に関するほぼすべての手続きの代行ができます。
会社を設立した後は、司法書士に会社の顧問になってもらうこともできます。
会社の基本事項や定款の記載事項などに変更が生じた場合の手続きも代行してもらえます。
たとえば会社設立後引っ越しして住所が変わったときなどに、司法書士に変更手続きを依頼可能です。
費用相場の比較
行政書士や司法書士などの士業に会社設立業務を依頼する場合、当然報酬を支払うための費用が発生します。
行政書士と司法書士に依頼した場合の費用の相場は、以下の通りです。
- 地方の場合…5~10万円
- 大都市圏(東京・大阪)の場合…10~15万円
- 登録免許税を含めた場合…25~35万円
士業は自由報酬制度です。
費用が安い行政書士や司法書士を選びたい人もいるでしょう。
けれども、費用が安いだけの理由で行政書士や司法書士を選んで会社設立の依頼をするのは注意が必要です。
費用が安い行政書士や司法書士は経験が浅い、または依頼の完了までに時間がかかる可能性があります。
「設立登記無料」などをうたっている司法書士の場合、その後会社の顧問契約をするのが条件となっていることがほとんどです。
設立登記の依頼料が無料でも、顧問契約料が高い場合もあります。
ただ費用が安い、という理由で行政書士や司法書士を選ばないようにしましょう。
行政書士と違う点
司法書士と行政書士の違いは、独占業務です。
司法書士は登記業務が独占業務のため、会社設立の登記手続きをふくめて、ほぼすべての手続きを依頼できます。
行政書士の独占業務は、許認可申請です。
許認可が必要な事業で会社設立をする場合は、行政書士に依頼をするとよいでしょう。
定款や一部書類作成なども代行できます。
許認可に関する業務は行政書士に依頼し、登記手続きは自分で行う、または司法書士に依頼する、という手段もあります。
ほかの士業と違う点
行政書士や司法書士のほかにも、会社設立のサポートを行っている士業に税理士と社会保険労務士があります。
これらの士業も、会社設立業務の一部を依頼できます。
税理士が会社設立でできることは、税務や決済に関することです。
税務業務が税理士の独占業務になります。
会社設立に関する業務では、一部書類の作成、補助金や助成金に関するサポート、事業計画の策定、開業資金や予備資金に関することなどがあげられます
会社設立後の顧問契約を前提に会社設立業務を依頼すると、依頼費用が安くなるのもメリットです。
たとえば、顧問契約を前提に会社設立業務のサポートを依頼した場合、行政書士や司法書士が10~15万円かかるのに対して、税理士は無料または5万円程度で請け負ってくれることが多いです
会社設立後は税務や決済に関する業務を依頼できるので、税務署への届け出書類の作成、決済や申告、会計記帳などを任せられます。
節税対策なども相談可能です。
また、資金調達についても相談できるので、補助金や助成金、金融機関への融資などいろいろな面での資金調達のサポートが受けられます。
社会保険労務士は、労働関係や社会保険に関することを独占業務としています。
行政書士、司法書士、税理士に比べると会社設立サポートを行っている社会保険労務士はあまりいません。
一方、会社設立後に欠かせない雇用保険や社会保険、厚生年金についてのサポートが一緒に受けられるのがメリットです。
会社設立業務の依頼を受けている士業のなかには、ほかの士業と提携していて自分ができない業務はほかの士業に依頼する、というワンストップサービスを提供している事務所も多くなりました。
士業同士が提携している場合は、会社設立に関する業務をすべて依頼することもできます。
士業に会社設立を依頼したいときには、提携の有無などもチェックしておきましょう。
行政書士の選び方
許認可が必要な事業を行う会社を設立する際に、行政書士に依頼すると許認可手続きも依頼できてスムーズです。
行政書士へ会社設立業務を依頼したい場合、行政書士を見つける必要があります。
行政書士の見つけ方と、選ぶときに覚えておきたいポイントを解説します。
行政書士を見つける方法
行政書士を見つける方法は、インターネットを利用する方法と、知人に紹介してもらう方法があります。
それぞれの見つける方法を解説します。
インターネットから
インターネットで検索して、行政書士を見つける方法があります。
日本行政書士会連合会、東京都行政書士会の各支部のウェブサイトから登録している行政書士を探したり、「地域名+行政書士」で検索したりすると、行政書士が見つけられます。
インターネットで行政書士を探す際に抑えておきたいポイントが、行政書士事務所の事務所と取り扱い業務です。
実際に書類を取り交わすなど対面での対応が求められることが多いため、できるだけ自宅や勤務先に近いところなど、足を運びやすい場所にある行政書士事務所を選びましょう。
行政書士は行政に提出する業務を行います。
許認可手続きや契約書の作成など、行政書士によっておもに取り扱っている業務は異なります。
許認可申請の必要な事業の会社設立をしたい場合は、許認可申請や会社設立業務のサポートを行っている行政書士を選ぶのが重要です。
知人の紹介から
行政書士を知っている友人や知人、家族から紹介してもらう方法もあります。
自宅や勤務先の近くに事務所を構えている行政書士が見つかりやすい、自分からインターネットなどで行政書士を探す手間が省けるのがメリットです。
一方、相性が悪いと感じたら断りづらいことがあります。
インターネットで行政書士が見つかった場合でも、知人から行政書士を紹介してもらった場合でも、安心して会社設立業務を依頼できる行政書士を選ぶのが重要です。
次に、行政書士を選ぶ際に覚えておきたいポイントを解説します。
選ぶ際のポイント
行政書士を選ぶ際には、以下の4つのポイントを踏まえておきましょう。
- 専門分野で選ぶ
- 相談のしやすさで選ぶ
- 料金で選ぶ
- ワンストップサービスの有無
専門分野で選ぶ
会社設立のために許認可が必要な場合、その許認可の取得を得意としている行政書士に依頼するのが重要です。
かならず専門分野は何かを聞いておきましょう。
行政書士は行政に対する手続きを独占業務としています。
許認可業務も必要な届け出や提出先が異なります。
専門分野を明示していない、または「なんでもやる」という行政書士に依頼してしまうと、依頼した許認可申請が今までやったことのない分野の場合もあります。
未経験の分野の許認可申請だったため、申請がうまくいかず会社設立が伸びてしまうリスクもあるのです。
「専門分野を行政書士に聞くのは失礼」と思う人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
依頼したい許認可申請や書類作成を専門分野としている行政書士が見つかれば、会社設立もスムーズになります。
相談のしやすさで選ぶ
相談しやすい、相性のよい行政書士を選ぶのも重要です。
実際に会ってみて、話しやすい、説明が分かりやすい、安心できると感じた行政書士を選びましょう。
相談しやすい行政書士なら、許認可や会社設立の手続きに関することで不安や疑問があればすぐに相談できるので、安心感があります。
会社設立後も顧問として依頼したいときも、相性のよい行政書士なら安心です。
ほかにも、こちらの質問に対して答えと理由を具体的、かつていねいに説明してくれる行政書士を選ぶのが重要です。
質問に答えても、理由が具体的でなければ納得できないことも多いでしょう。
なかには説明が不明瞭のまま手続きをしてしまい、失敗してしまうと「運が悪かったですね」で片づけてしまう行政書士もいます。
納得できる説明をていねいにしてくれるか、無理な場合は代替案を出してくれるか、なども行政書士を選ぶうえで重要なポイントです。
料金で選ぶ
行政書士を含めた士業は自由報酬制のため、費用の一律料金が決められているわけではありません。
かならず、見やすいところにわかりやすく料金表示のある行政書士を選びましょう。
料金がただ安いだけの行政書士を選ぶと、経験が浅かったり顧問料が高かったりする可能性があります。
行政書士の料金で選ぶ目安となるのが、日本行政書士会連合会で公表している報酬データです。
行政書士法第10条の2第2項にもとづき、2年に1度全国的な報酬額統計調査を実施、実際に業務を請け負った行政書士の報酬を公表しています。
料金は適切か、相場はどのくらいかを知りたい場合は、データも調べておきましょう。
業務内容によっても、報酬は変動します。
かならず料金や報酬、費用の内容や金額を明確にしている行政書士を選びましょう。
報酬の内容を明確にすることや、相談内容を外部に漏らさないなどの義務が、行政書士法によってきめられています。
法令順守の意識の高い行政書士を選ぶのも重要です。
ワンストップサービスの有無
行政書士を含めた士業事務所では、最初におとずれた事務所ですべての手続きが完了するワンストップサービスを提供しているところもあります。
ワンストップサービスとは、司法書士や社会保険労務士、税理士などと提携していて、業務を共同で行っていきます。
ワンストップサービスを提供している行政書士事務所は、会社設立に関することをすべて任せられる、手間や負担が軽くなるメリットがあります。
複数の業務をまとめて依頼したいときには、ワンストップサービスを提供している事務所を選ぶのも重要です。
行政書士との顧問契約
行政書士とは、会社設立後に顧問契約をすることもできます。
顧問契約とスポット契約との違いと、顧問契約をした場合のメリット、費用の相場を解説します。
スポット契約との違い
顧問契約とは行政書士と依頼者の間で結ぶ期限のない、または長期的な期限での契約になります。
顧問契約を結んだ行政書士は、おもに相談を業務とします。
会社設立後に顧問契約を行政書士と結ぶと、許認可申請や契約書作成、法改正時の対策などの相談が可能です。
スポット契約とは、顧問契約とは逆に契約期間に限りのあるものを指します。
また、業務内容は相談以外もあります。
たとえば、許認可申請手続きを代行してほしい、定款を作成してほしい、という依頼はスポット契約です。
顧問契約をした場合のメリット
行政書士と顧問契約を結ぶと、以下3つのメリットがあります。
- 許認可をはじめとした相談ができる
- 新規依頼よりも費用が安くなることが多い
- 経営相談ができる場合がある
それぞれ解説していきます。
許認可をはじめとした相談ができる
行政書士と顧問契約を結ぶと、許認可をはじめとしたいろいろな相談ができます。
事業を拡大したいとき、補助金や助成金を申請したいとき、法改正がおこなわれたときなど、いろいろな悩みを相談できます。
顧問契約上では、月に相談できる回数などが決まっている場合がほとんどです。
上限を超えないかぎりどんなことでも相談できるので、許認可が必要な事業を経営する上でとても心強い存在になります。
新規依頼よりも費用が安くなることが多い
新規事業の開始、もしくは事業の拡大に応じて新しく許認可申請が必要な場合もあります。
そのさい、顧問契約している行政書士に許認可申請手続きを依頼すれば、新しく行政書士に依頼するよりも費用が安くなることが多いです。
新しく行政書士を依頼する場合には、初回面談料や着手金が費用に上乗せされます。
一方で、すでに顧問契約を結んでいる行政書士に依頼する場合は初回面談料や着手金が不要のため、料金が安く済むのです。
経営相談ができる場合がある
行政書士以外の資格を持っていて、許認可だけでなく経営相談ができる行政書士もいます。
たとえば、行政書士と中小企業診断士の資格を持っている行政書士と顧問契約を結ぶと、許認可に関することだけでなく経営に関する相談も可能になります。
行政書士以外の資格を取得していて、幅広い対応ができる行政書士は経営上でも強い味方になります。
一方で、会社の事業に合致した分野を専門としている行政書士と顧問契約するのも重要です。
行政書士と顧問契約を検討する場合には取得している資格だけでなく、専門分野もかならず確認しておきましょう。
顧問契約の費用相場
顧問契約の費用は行政書士事務所によって異なりますが、月3~15万円ほどが相場になっています。
顧問料無料をうたっている行政書士の場合、メールが月1回往復で来るだけ、メルマガが配信されるだけ、といった場合もあります。
顧問契約を行う行政書士は、専門的な知識と責任ある対応への対価として報酬が支払われます。
料金の安さのみだけでなく、信頼できる行政書士へ顧問契約を依頼しましょう。
会社設立はワンストップサービスの利用がおすすめ
会社設立の手続きを行政書士へ依頼した場合、できることの範囲が限られてきます。
ほかの士業を探してあらためて依頼したり、自分で手続きをしたりといった手間がかかってしまうでしょう。
行政書士以外にも士業がそろっていて、会社設立のフルサポートをおこなっているところを探して依頼すると、スムーズかつ確実な会社設立手続きにつながります。
例えば、当社「経営サポートプラスアルファ」であれば、行政書士、司法書士、税理士、社労士、弁護士によるワンストップサービスを提供しています。
会社設立時の手続きから、税務、会計、融資、助成金と経営に関する悩みや業務へ専門家によるサポートを提供します。
電子定款作成で印紙代をカットするなどの工夫をおこない、ご満足いただける費用でサービスをおこなっています。
会社設立後も、多方面でエキスパートが会社経営をサポート可能です。
長い付き合いができるパートナーをお探しのさいにも、ぜひご検討ください。