会社を設立しようとするとき、まず始めに考えなければならないのが「どの形態の会社を設立するか」ということです。
起業を考えている方や、個人事業主の方の中には、
「会社を設立したいけれど、どの形態で設立すべきなのか分からない…」
「どの会社形態で設立するのが最もお得なのかわからない…」
という方が多くいらっしゃるのではないでしょうか。
そういった方は、ぜひこの記事を読んで、自分に最も適した形の会社の種類を見つけてください。
目次
現時点での会社形態の分布割合
会社形態の割合はどれくらいなのでしょうか。
現在最もポピュラーな会社形態なのが株式会社であり、その割合は全体の約95.4%を占めます。
そして合資会社が0.85%、合同会社が0.82%、合名会社が0.17%と続いており、いずれも1%にも及びません。
日本では株式会社を選択する企業が圧倒的に多いわけですが、個人が負うリスクの面から見てみましょう。
まず株式会社は有限責任社員のみで構成されているため、会社が多額の負債を抱えたとしても自分が出資した分のみで構いません。
それに比べて合名会社や合資会社の場合は無限責任の社員がいるため、個人の資産面から考えると株式会社よりリスクを負っていると言えるのです。
合同会社は新しい会社形態であるためまだまだ数は少ないのですが、有限責任社員のみで構成されており合名会社や合資会社のデメリットをカバーしています。
海外の有名企業にも合同会社は多数ありますので、今後合同会社の割合が増加していくこともあり得るでしょう。
・日本企業のほとんどが株式会社。
・合同会社を選択する企業も増加している。
4つの会社の種類とそれぞれの特徴をわかりやすく
「会社」と言われて真っ先に思い浮かぶのは「株式会社」だと考える人は多いですが、会社の形態は株式会社だけではありません。
現在設立できる会社の形態は、大きく分けて4つあり、それぞれに特徴が存在します。
今回は、会社の4つの形態について特徴を比較しながら紹介していきます。
設立する会社の形態に悩んでいる方は必見です。
株式会社
株式会社とは、株式を通じて投資家が金銭を出資し、出資した投資家によって選ばれた経営者が実際に会社を運営していく形態を指します。
事業が成功し利益が上がれば、株価が上昇し株の所持数に対応して配当金や株主優待等の利益を得ることができます。
その一方で、事業が衰退し利益を十分に出せていない場合は、株価が下がり、株主は配当金を得ることができなくなります。
株主は会社の活動に直接的に参加することはありませんが、株主が会社の方針や重要事項について決定する株主総会に参加します。
この株式総会で、会社の経営を担う「取締役」を選ぶことになります。
この取締役が取締役会を開き、会社の代表者である「代表取締役」を選ぶ運びとなります。
ただ、「代表取締役」と「社長」は必ずしも同じ人を指すとは限らないので注意が必要です。
「代表取締役」とは、会社法の規定にある呼称であり、経営や業務の執行、外部取引、裁判などに関わる人物を指します。
代表取締役は1名であるとは限らず、場合によっては複数人存在することもあります。
その一方で「社長」は同じく経営や業務執行を担うものの、会社「内」の経営や事業を取りまとめる内部的な責任者であり、外部との取引や裁判等の外部責任に関わる事象には関与しません。
一般的には、「代表取締役社長」という肩書を目にすることが多いと思いますが、この場合は、「代表取締役」と「社長」の役割を兼任している形になります。
内部責任と外部責任を分けると、オペレーションで面倒になるケースが多々ある為、「代表取締役社長」と1人が2つの役割を持つことが多いようです。
そんな株式会社ですが、運営上の規制が多いデメリットがある一方で、株の発行によって大きな資金を集めることが出来ます。
株式会社では、経営者と株主が同一である必要がなく、株主(出資者)を獲得することができれば自己資金が自前で調達できない方でも起業することができます。
また、社会的信用力が非常に高いことも株式会社の長所の一つです。
法人でない場合は取引不可としている企業も多々あり、中小企業との取引が見込まれる場合は、その信用度の高さから株式会社を選択する方も多くいらっしゃいます。
会社を将来的に大きくするビジョンを持っている方については、株式会社が最適です。
先述しましたが、現在設立される法人の80%前後は株式会社であり、多くの人が選択する会社形態だと言えるでしょう。
<株式会社設立がオススメの人>
- 十分な自己資金が準備できない
- 中小企業との取引が見込まれる(BtoB事業を行いたい)
- 大きい資本調達が必要である
- 会社を上場させたい
合同会社
合同会社とは、金銭を出資した投資家だけで構成される会社形態を指します。
原則として出資者全員が経営に携わらなければなりませんが、有限責任であるために、出資額以上の負債を出資者が負うリスクはありません。
取締役会などの機関設置が必要なく、また利益配分を自由に決められるなど、柔軟な経営を行うことが出来るのが強みです。
株式会社では、株の所有に応じた利益配分が行われますが、合同会社では出資額に関わらず社内で決定することが可能となります。
また、設立費用にかかるコストや必要書類の量が株式会社より少ないです。
そのため、個人事業主が法人化したり、スタートアップが起業する際に合同会社が選ばれることが多々あります。
最近設立件数が非常に伸びていることも特徴です。
経済活性化を目的として行われた2006年の会社法改正により、会社形態の自由度が高まりました。
合同会社はこの会社改正法により新しく出来た会社形態となります。
2007年に約6000件(占有率約6%)であった合同会社設立数は2016年には約23000件(占有率約20%)となっています。
2011年にはApple Japanが株式会社から合同会社に変更しており、合同会社への注目度の高まりが見て取れます。
<合同会社設立がオススメの人>
- 個人事業を法人化したい
- スタートアップとして創業したい
- 設立費用や設立準備への投資を小さくおさえたい
- 自由度や柔軟性が高い経営を行いたい
近年では合同会社を設立し、後に株式会社に移行させる事業主も多くいらっしゃいます。
次項では、株式会社と合同会社の特性の違いについて解説します。
合資会社
合資会社とは、無限責任社員と有限責任社員の両方で構成される会社形態のことを指します。
無限責任社員とは、会社の債務に対して無限に責任を負う社員のことです。
このため、会社が負債を抱えた場合は個人の資産を投げうってでも返済に充てなければならないというリスクを抱えています。
しかし、その分経営に大きく介入でき、無限責任社員は有限責任社員よりも強い業務執行権限を有しているのが特徴です。
<合資会社設立にオススメの人>
- 設立時の手間やコストを抑えたい方
- 経営の自由度が欲しい方
ただしこれらは、合同会社も持つ特徴であり、合資会社だけ限定された長所はあまり目立ちません。
合名会社
合名会社とは、無限責任社員のみで構成される会社形態のことを指します。
原則として社員全員が会社に対して無限の責任を負う代表者であり、会社の債務に対して無制限に責任を負います。
<合名会社設立にオススメの人>
- 設立時の手間やコストを抑えたい方
- 経営の自由度が欲しい方
合名会社についても、合同会社が持つ長所と同じであり、合名会社だけ特定された長所は特にありません。
設立するなら株式会社か合同会社
現在ほとんどの新設法人は株式会社か合同会社を選択しています。
まずは株式会社についてですが、株式会社には信用力という圧倒的なメリットがあると言えるでしょう。
日本のほとんどの企業が株式会社ですから、株式会社というだけで取引を行いやすかったり、出資を受けやすかったりするのです。
また経営と所有が分離しているので多様な人材を活用でき、事業も展開しやすいのも特徴です。
日本では、株式会社ではない企業の方が珍しくそれ以外の会社形態であるだけで相手は疑念を抱く可能性もあります。
このような引っかかりは少なからず取引にも影響するでしょう。
株式会社であるだけでこれだけの恩恵を受けられるのであれば、やはり選択する方も多くなるのです。
また合同会社は2006年に新たにできた会社形態ですが、こちらを選択する起業家も増えています。
合同会社は、株式会社に比較すると設立の手間やコストが少ないのがメリットです。
加えて株主総会や決算広告も不要なので素早い経営判断を実現します。
AppleやAmazonなどの有名企業も採用されており、マイナーなイメージも徐々に払拭されつつあると言えるでしょう。
このように実用的で効率的な会社形態であることが証明されているため、近年設立件数を伸ばしているのです。
・日本では株式会社の信用力が非常に高い。
・合同会社は海外の有名企業でも採用されている会社形態。
株式会社と合同会社の違い
では、株式会社と合同会社では、どちらを設立するのがよいのでしょうか。
以下、4つの観点から両者の違いを比較していきます。
自分に合う方法で会社設立を選んでください。
設立費用:合同会社の方が安い
会社を設立する際には、登録免許税を支払う必要があります。
この登録免許税が、合同会社では6万円です。
一方、株式会社を設立する場合には、登録免許税15万円に加え、定款の認証の際に公証人手数料を5万円支払う必要があり、設立費用は合計20万円を超えてきます。
よって、設立費用は合同会社の方が約14万円も安いということになります。
安く会社を設立したい場合には合同会社がオススメです。
経営の自由度:合同会社の方が高い
合同会社では、出資額の比率に関係なく、利益の配分を自由に決めることが出来ます。
また、株主総会の開催や取締役会の設置も必要ないため、規制の多い株式会社に比べて、経営上の自由度は非常に高いです。
ただし、自由度が高い分議論が長引いたり対立が起きやすいという特徴もあり、そういった点では株式会社の方が運営しやすいと言えます。
資金調達:株式会社の方がしやすい
資金調達は、株式会社の方が容易にすることができます。
理由は大きく3つです。
理由①:社会的信用力の違い
1つ目は、社会的信用力の違いです。
株式会社の方が合同会社に比べて社会的な信用が高く、外部からの出資や融資を受けやすくなっています。
理由②:株式の発行の有無
2つ目は、株式の発行の有無です。
株式会社は株式を発行出来るため出資者を募りやすく、さらに上場すれば誰からでも出資を募ることができるようになります。
理由③:「所有と経営の分離」の違い
3つ目は、「所有と経営の分離」の違いです。
株式会社は所有(出資者)と、経営(経営者)が分離しているため、出資のハードルが低くなっています。
一方で、合同会社では出資者が必ず経営に参加しなければならないため、出資が集まりにくくなるのです。
また出資者が会社を退職する場合、出資金の払い戻しを求められる場合もあります。
よって、積極的に資金調達をして、会社を大きくしていきたい場合は、株式会社を設立するのが一般的です。
経営上の事務・経理:合同会社の方が簡単である
株式会社では、株主総会の開催、決算公告、役員の重任登記(任期が切れた役員を再び役員として登記すること)などを行う必要があります。
一方で、合同会社にはこれらを行う必要がなく、当然付随する事務・経理業務もなくなります。
株式会社 | 合同会社 | ||
---|---|---|---|
設立費用 | 登録免許税:約15万円 定款認証での公証人手数料:約5万円 計:20万円以上 |
> | 登録免許税:6万円 |
経営の 自由度 |
・経営の規制が多い ・株主総会の開催 ・取締役会の設置 ・株主の所有に応じた利益配分 |
< | ・経営の自由度が高い ・利益配分が自由 |
資金調達の しやすさ |
・社会的信用高 ・株式発行(出資を募りやすい) 上場すれば「誰でも」出資可 ・出資のハードルが低い |
> | ・社会的信用有 ・出資者による経営への参加が必須 (出資へのハードルが高い) |
経営上の 事務・経理のしやすさ |
・株主総会の開催、決算公告、役員の重任登記 | < | ・左記が必要なし |
合資会社
合資会社とは、無限責任社員と有限責任社員の両方で構成される会社形態のことを指します。
無限責任社員とは、会社の債務に対して無限に責任を負う社員のことです。
このため、会社が負債を抱えた場合は個人の資産を投げうってでも返済に充てなければならないというリスクを抱えています。
しかし、その分経営に大きく介入でき、無限責任社員は有限責任社員よりも強い業務執行権限を有しているのが特徴です。
<合資会社設立にオススメの人>
- 設立時の手間やコストを抑えたい方
- 経営の自由度が欲しい方
ただしこれらは、合同会社も持つ特徴であり、合資会社だけ限定された長所はあまり目立ちません。
合名会社
合名会社とは、無限責任社員のみで構成される会社形態のことを指します。
原則として社員全員が会社に対して無限の責任を負う代表者であり、会社の債務に対して無制限に責任を負います。
<合名会社設立にオススメの人>
- 設立時の手間やコストを抑えたい方
- 経営の自由度が欲しい方
合名会社についても、合同会社が持つ長所と同じであり、合名会社だけ特定された長所は特にありません。
まとめ
株式会社 | 合同会社 | 合名会社 | 合資会社 | |
---|---|---|---|---|
出資者の責任 | 有限 | 有限 | 無限 | 有限・無限 |
最低設立人数 | 1人 | 1人 | 1人 | 2人 |
出資者の呼び方 | 株主 | 社員 | 社員 | 社員 |
設立費用 | 高い(約20万円~) | 安い(約10万円~) | 安い(約10万円~) | 安い(約10万円~) |
新会社法により有限会社は設立できなくなった
ここまで、会社の4つの形態について解説してきました。
ここで注意しておきたいのが、有限会社の存在です。
実際に街中で「有限会社」の文字が掲げられた建物も多くあります。
結論から言うと、有限会社は現在設立することができません。
では、なぜ有限会社を現在でも見かけることがあるのでしょうか。
2006年に施行された新会社法により、有限会社は新設が禁止されました。
その結果、全ての有限会社は株式会社へと移行し、有限会社に変わる存在として合同会社が加えられたのです。
しかし、社名の変更などは強制されなかったため、現在も有限会社を名乗る企業が多く存在しているというのが現状です。
あくまでも、現在設立できる会社は、株式会社・合同会社・合資会社・合名会社の4つだけであり、存在している会社もこの4つであるということに注意しましょう。
起業に最適な会社の種類とは?
いかがでしたか。
設立できる4つの会社形態、そして合同会社と株式会社の違いについてご理解頂けたのではないでしょうか。
合同会社と株式会社、どちらを設立すべきかは、個々の状況によって異なります。
設立費用や運営上の事務作業をなるべく抑えたい方は合同会社、幅広い資金調達をして会社を大きく成長させたい方は株式会社を選ぶのがよいでしょう。
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しかし、株式会社にせよ合同会社にせよ、設立時には非常に煩雑な手続きを踏む必要があります。
設立手続きに工数を割かれ、事業の推進に集中できず困っている起業家の方も少なくありません。
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