これから株式会社設立を考えている人は、定款を公証役場で認証してもらわなければなりません。
しかし定款認証の目的や公証役場ですべきことがわからない人もいるでしょう。
そこで今回は、定款認証や公証役場について詳しく解説します。
慎重に定款を作成しなければ認証もされず、株式会社設立も遅れてしまう原因となるので、ぜひ理解しておきましょう。
目次
定款とは?
定款は、会社の基本規約や原則が定められているもので、別名「会社の憲法」や「会社のルールブック」とも呼ばれるものです。
会社設立に必要な書類の1つであり、記載すべき項目は会社法で定められています。
これまでは紙による作成が一般的でしたが、昨今はPDF化したデータによる提出も認められており、作業もしやすくなりました。
定款に記載する内容
定款に記載する内容は大きく3つに分かれています。
- 絶対的記載事項
- 相対的記載事項
- 任意的記載事項
文字通り必ず記載しなければならない項目は絶対的記載事項ですが、内容の違いをしっかり覚えておきましょう。
これは、記載漏れがあると定款に定められていないことを理由に効力を持たないからです。
絶対的記載事項
必ず記載されていなければならない事項で、記載漏れがあると定款そのものの認証ができません。
内容は以下になります。
◆ 目的
◆ 商号
◆ 本店の所在地
◆ 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
◆ 発起人の氏名又は名称及び住所
引用:会社法第27条
相対的記載事項
相対的記載事項は、記載がなければ効力を認められない事項を指しており、主な内容は、以下の通りです。
◆ 変態設立事項(会社法28条)
◆ 設立時取締役及び取締役選任についての累積投票廃除(会社法89条、342条)
◆ 株主名簿管理人(会社法123条)
◆ 譲渡制限株式の指定買取人の指定を株主総会(取締役会設置会社にあっては取締役会)以外の者の権限とする定め(会社法140条5項)
◆ 相続人等に対する売渡請求(会社法174条)
◆ 単元株式数(会社法188条1項)
◆ 株券発行(会社法214条)
◆ 株主総会、取締役会及び監査役会招集通知期間短縮(会社法299条1項、368条1項、376条2項、392条1項)
◆ 取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人及び委員会の設置(会社法326条2項)
◆ 取締役、会計参与、監査役、執行役及び会計監査人の責任免除(会社法426条)
引用:日本公証人連合会 7-4定款認証
任意的記載事項
記載しなくてもよく、定款作成時点で決まっていない内容や定款以外の書面で明確にしていれば効力の認められる項目が任意的記載事項です。
たとえば、役員数や取締役会の議長などが挙げられます。
定款に記載する時のポイント
定款記載時のポイントは次の通りです。
- 将来的に展開したい事業内容も記載する
- 事業内容が明確にわかるようにする
- 違法性がないことを記載する
ポイントを押さえて、認証時の差し戻しがないように定款を作成しましょう。
将来的に展開したい事業内容も記載する
事業開始当初はできなくても、将来的に展開したい事業があれば定款に記載しておきましょう。
もし、定款に記載していない事業を行いたくなった場合、定款修正を行わなければならず、手間と時間が必要です。
そのため、今すぐに展開する予定がなくても、関係ありそうであれば事業内容に加えておけばその心配がなくなります。
ただし、あまりにも多くの事業を書きすぎると何を目的として作られた会社なのかがわからなくなり、取引先などに不審がられる可能性もあるため、税理士や司法書士などに相談しながら進めるといいでしょう。
事業内容が明確にわかるようにする
事業内容は誰が見ても明確にわかるよう記載しなければなりません。
何をしているのかがわからなければ、金融機関から融資を受けづらくなるだけでなく、取引相手からもどんな会社なのかを疑われる可能性もあります。
会社が向かうべき方向性や事業の目的、どんな業種かなどを定款には明確に記載してください。
事業内容をまとめるには、事業計画書をしっかり練り上げると定款にも書きやすくなるでしょう。
書き方などは司法書士や税理士などに相談できるでしょうが、自分の想いは自分からしか出てきません。
定款作成時に事業内容をしっかりまとめましょう。
違法性がないことを記載する
これから自分たちが営む事業は、全く違法性がないものだと明確に記載しましょう。
たとえば麻薬の密輸や人身売買、詐欺などの犯罪行為を事業目的とすることは当然できません。
また、違法ではありませんが営利目的でなければ認められないため、たとえばボランティアや寄付行為などの利益を産まないものは事業目的にできません。
違法でなく且つ営利目的であることをしっかり記載してください。
公証役場で定款を認証してもらう目的
定款認証は、正当な手続きを経て定款を認証されたと証明することが目的であり、これがなければ株式会社の設立はできません。
また、もしも出資者と経営者で争いが起きた場合、解決のベースとなるのが定款です。
そんな不測の事態のためにも第三者である公証役場で定款を認証して、証拠書類として保管する目的もあります。
なお、合同会社や合資会社、合名会社の場合は、定款認証は必要ありません。
合同会社の場合は、経営者と出資者が同一であるケースが多いことが理由です。
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そもそも公証役場とは?
公証役場は法務省が管轄する役所の1つで、全国に約300箇所あります。
必ず1人以上の公正証書を作成する公証人が置かれており、その他書記などの職員がおりますが、職員数は規模によって変わるので何人などの決まりはありません。
また、役場というと市役所などと関係があると思う人もいるかもしれませんが、組織上はまったく関係がないので覚えておくといいでしょう。
公証役場に行かなくても定款は認証してもらえる?
行くのが面倒、わざわざ出向いて定款認証したくないという人もいるのではないでしょうか。
公証役場に行かなくても、以下の手続きで認証が可能です。
- オンライン
- テレビ電話
それぞれ詳しく見てみましょう。
オンラインでの定款認証
オンラインによる定款認証は、まず電子データで定款を準備しなければなりません。
手書きではなく、ほぼPCでの作業となるでしょうから、ここは問題ないでしょうが、提出できるファイル形式は決まっているので、オンライン申請時の注意点を参照ください。
そして、法務省が運営する「登記・供託オンライン申請システム」から申請を行ってください。
また、公証人の指定も必要となるため、オンライン申請の前に事前に公証役場と調整も必要です。
なお、認証後は公証役場に足を運ばなくてはならないので、全てオンラインで済むわけではないと覚えておきましょう。
テレビ電話での定款認証
テレビ電話による定款認証も可能ですが、オンラインと同様に「登記・供託オンライン申請システム」での作業は必要です。
ただし、テレビ電話により本人確認が取れるため、認証後も公証役場へ行く必要はなく、郵送で認証証明書を受け取れます。
公証役場で定款認証してもらうのに必要な書類
公証役場で定款認証してもらうために必要な書類は、以下の通りです。
- 定款
- 発起人の印鑑登録証明書
- 定款認証費用
- 定款の謄本交付手数料
- 印紙代(電子定款以外の場合)
- 委任状(委任されて認証をする場合)
それぞれ説明します。
定款
紙定款の場合は3通必要で、それぞれ公証役場向け、法務局向け、会社保管用となります。
なお、発起人全員で定款の各ページの間に実印で割印をするか、袋とじの綴じ目に実印で割印もしなければなりません。
割印のやり方はサンプルページ(京橋公証役場)を参考にするといいでしょう。
発起人の印鑑登録証明書
3ヶ月以内の発起人の印鑑登録証明書が必要です。
定款認証費用
公証人手数料令第35条改正により、2022年1月1日より株式会社の定款認証費用は以下になりました。
・資本金の額等が100万円未満の場合「3万円」
・資本金の額等が100万円以上300万円未満の場合「4万円」
・その他の場合「5万円」
定款の謄本交付手数料
定款の謄本1枚につき250円なので、約2,000円ぐらいと見ておけばいいでしょう。
印紙代(電子定款以外の場合)
4万円の収入印紙が必要です。
なお、印紙は貼らずにそのまま持参してください。
委任状(委任されて認証をする場合)
公証役場に発起人が来られない場合、発起人全員からの委任状が必要です。
定款認証はどこの公証役場で行う?
定款認証は、公証役場ならばどこでもいいわけではなく、「会社の本店所在地と同一の都道府県にある公証役場」だけなので注意しましょう。
たとえば、住んでいる場所と本店住所が違う都道府県の場合、自宅のある都道府県ではなく、本店のある都道府県の公証役場に行って下さい。
なお、同一都道府県内であればどこでも構いません。
定款が公証役場で認証されないこともある?
定款が認証されないケースは、定款に必要事項が記載されていないことがまず考えられます。
記入漏れがあれば認証はされないので、定款作成を慎重に行わなくてはなりません。
もし、心配ならば会社設立の専門家など定款作成に詳しい人に相談して進めると間違いがないでしょう。
また、必要書類が足りない場合も認証されないので、公証役場に行く前に書類チェックを必ずして下さい。
せっかく準備しても認証されなければ意味がありません。
何度か会社設立を行った人ならば慣れているかもしれませんが、とくに初めての場合は念入りに確認をして下さい。
まとめ
記載すべき項目が書かれてなければ定款の意味を成しませんし、認証もされないので慎重に定款を作成しましょう。
特に事業内容は明確にしつつ、すぐやる予定のない事業も盛り込んでおけば後々変更をしなくても済むので、将来のことを見据えてから定款作成を進めて下さい。
また、公証役場もどこでもいいわけではなく、本店所在地のある都道府県内でなければなりません。
公証役場に行かなくてもオンラインやテレビ電話による定款認証も可能なので、便利な方法で行うといいでしょう。
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