目次
資産管理会社とは?
資産管理会社とは、その名の通り資産の管理を目的に設立された法人です。
資産とは現金や預貯金、債券、株式、不動産などが該当します。
また、一般的な法人が事業の展開などで利益を上げるのに対して、資産管理会社は利益をあげるのではなく、純粋に資産管理のみを目的としているのが特徴です。
一般的な法人のような株主、従業員などのステークホルダーが存在しない、プライベートな法人でもあります。
法人を設立する、というと資本金や手続き費用など、多くの資金が必要と思う人も多いでしょう。
実は、個人が法人を設立するのに多くの費用は必要ありません。
2006年に新会社法が施行されてから、会社法の制度の上では資本金が1円でも株式会社の設立ができるようになったからです。
これを受けて、個人が資産管理を目的にして、プライベートな法人である資産管理会社を設立するケースが多くなりました。
実際にかかる費用は、会社設立の登記料や、書類作成や登記代行を依頼する司法書士への報酬などのみで、資産管理会社設立ができます。
とはいえ「資産管理は個人でもできるので、わざわざ利益の出ない資産管理会社を設立するのはなぜか」と疑問に感じる人もいるかもしれません。
資産管理会社を設立する理由としては、純粋な利益は出なくても資産管理のうえで多くのメリットが得られるからです。
そのなかのひとつに節税効果があります。
資産管理のための会社設立は本当に節税になるの?
資産管理会社を設立する目的であり、メリットのひとつに節税があります。
資産を所有していると、所得税や相続税などが発生します。
個人ではなく、法人の税率を利用することでこれら資産管理にかかる税金が節税となる場合があるのです。
資産管理会社を設立するメリットは、節税効果をはじめ多くあります。
次に、資産管理会社を設立する具体的なメリットについて解説します。
資産会社を設立するメリット
資産管理会社は、以下の4つのメリットから設立されることが多くなっています。
- 資産管理に関する節税ができる
- 資産管理による所得を分散できる
- 資産の相続時に節税になるなど得である
- 法人のため厚生年金に加入できる
それぞれのメリットについて具体的に解説していきます。
資産管理に関する節税ができる
所持している資産を運用し、不動産投資などをおこなって利益を得た場合には、所得税が課されます。
よって、資産管理で得た収入に対して税金を支払わなければいけません。
この所得税の面で、個人よりも法人のほうが優遇されているので、資産管理会社を設立することで節税効果が期待できるのです。
日本の税制区分は個人と法人で分かれていて、個人よりも法人のほうが優遇されている傾向にあります。
個人の場合は、所得が高ければ高いほど加算される税金が多くなりますが、法人にすれば税制上での優遇措置を受けられるのです。
よって、不動産投資などによって得た利益など、資産管理に関する税金を節税する目的で資産管理会社を設立する人が多くなっています。
個人の場合、年収5,000万円(課税所得4,000万円)以上なら、45%の所得税の税率が課されます。
さらに、所得税に住民税と合わせると、個人では最大55%の税金がかかることになるのです。
自分で働いたり、資産管理に関して得たりした収入の、半分以上が税金として取られてしまうことになります。
一方、法人税の実効税率は個人と比較すると低くなっています。
実際に課される税率は法人のある地方自治体によって異なりますが、東京都の場合の法人税率は、所得400万円以下が21.421%、400万円超~800万円以下が23.204%、800万円超が33.585%となっています。
つまり、個人で年収5,000万円以上なら半分以上を税金で取られてしまうのに対して、法人で年収5,000万円以上なら、約3割しか税金がかからず、のこり7割を手元に残すことができるのです。
プライベートカンパニーである資産管理会社は、従業員が自分ひとりだけであっても法人として登記されていれば、法人税率が適応されます。
一方で、個人事業主が従業員を雇って事業を行っていても、法人登記をしていなければ個人にかかる税率が適応されるのです。
資産管理による所得を分散できる
法人の場合、所得を従業員へ給料として支払うことで所得の分散ができます。
所得を分散させることで、大きな節税が期待できるのです。
法人化していない個人事業主でも、従業員を雇ったり、事業の一部をアウトソーシング(外注)したりした場合は、経費にできるので節税になります。
ところが、前述の通り法人に比べると個人の税率が優遇されていないため、給料やアウトソーシングの経費も一時的なものでしかならないのです。
また、資産管理による所得だけでなく、資産そのものを分散させることもできます。
資産管理会社を設立して資産を分散させると、役員に就任した人たちで資産を共有することになるのです。
個人よりも法人のほうが資産や資産による所得の分散がしやすくなります。
また、資産そのものを分散して共有することで、相続面でも多くのメリットが得られます。
資産の相続時に節税になるなど得である
資産管理会社を設立して、資産や資産による所得を分散させると、相続面でも以下2つのメリットが得られます。
- 相続税の節税になる
- 相続がスムーズになる
相続税の節税になる
個人が資産管理会社を設立する理由として、もっとも大きなものと言ってもよいのが、相続税の節税です。
所有している資産を本人が生きているうちに親族などに譲渡した場合、生前贈与となります。
生前贈与を個人がおこなう場合、非課税枠は年間110万円です。
年間で110万円を超える資産や所得を個人間で移転させると、最高で税率55%の贈与税の課税対象となります。
一方、資産管理会社を設立すると資産を役員での共有が可能です。
資産や資産運用や投資による所得を役員へ報酬を支払う、という形にすると、少しずつ資産を移転できます。
親族を役員にして、報酬という形で資産を少しずつ移転していけば、高い贈与税よりも金額の低い所得税のみで相続が可能になるのです。
なお、「法人になると個人ではかからなかった法人税がかかるので結局節税にならないのでは?」と疑問に思う人もいるかもしれません。
資産を個人間での贈与ではなく、資産管理会社の役員報酬として支払うことで、法人としての利益が減少します。
その結果、支払う法人税そのものの節税にもなるのです。
相続がスムーズになる
相続に関して節税効果が期待できるだけでなく、相続そのものをスムーズにできるのも、資産管理会社を設立するメリットのひとつです。
個人で相続が発生すると、現金、預貯金、不動産などそのままの形で分配されます。
一方、資産管理会社を設立すると、分配するのは資産そのものではなく、会社の株式という形です。
個人間での資産相続は土地などの不動産の場合とくに分配が難しく、相続問題などのトラブルに発展してしまう可能性があります。
一方、資産管理会社が資産である不動産を所有し、その株式という形で分配すれば公平性があり、相続トラブルに発展する可能性が低いのです。
また、相続税を支払う上でもスムーズに対応できます。
相続が発生するまえに役員報酬と言う形で資産を少しずつ移転しておくと、資産を持っている本人が亡くなって相続が発生した場合にも有利となります。
あらかじめ役員報酬という形で相続に関して発生する資金を確保できているからです。
発生する相続税率は、実際に相続した資産の内容によって異なります。
たとえば、預貯金や現金は相続税評価額が高いため、相続すると多くの税金がかかります。
一方、不動産は預貯金や現金よりも相続税評価額が低いため、預貯金や現金と同じ価値の不動産を相続した場合は、相続税率は低くなるのです。
よって相続する資産がある場合は、相続税対策として預貯金や現金の割合を少なくし、不動産の割合を多くしている人も多くなっています。
ところが相続が発生して相続税を支払う場合、当然現金が必要になります。
預貯金や現金が少なく不動産が多いと、現金化するのにも時間がかかるためスムーズに相続税を支払えない可能性があるのです。
とくに、相続が発生して相続税を支払う場合、被相続人の死去を知ってから10ヵ月以内という納税期限が設けられているため、納税期限内に納税しなければいけません。
あらかじめ役員報酬という形で少しずつ現金を移転することで、支払うべき相続税を確保できるので、スムーズな相続にもつながるのです。
さらに、資産管理会社の株式そのものを相続する場合にも節税になるメリットもあります。
設立から3年以上経っている法人の株式を相続した場合、相続税評価額は不動産と同じ算定方法がもちいられます。
そのため、現金や預貯金として相続するよりも、資産管理会社の株式として相続したほうが相続税評価額をおさえられ、節税となるのです。
法人のため厚生年金に加入できる
資産管理会社を設立し、役員や社員として所属すると給与所得者になるため、厚生年金に加入できます。
個人事業主の場合は企業から給与や報酬を支払われる給与所得者ではないため、加入する年金は国民年金です。
国民年金は日本全体での未納率も少しずつ上がってきていて、受給年齢や金額なども不安定になっています。
そのため、国民年金よりも手厚い厚生年金に加入したい、と思っている個人事業主や自営業者も多くなりました。
資産管理会社を設立すれば、法人に属する給与所得者になるため、国民年金から厚生年金への切り替えが可能です。
手厚い保障の面でも、資産管理会社を設立するメリットがあると言えるでしょう。
資産管理会社を設立すると、節税効果やスムーズな相続など、多くのメリットが得られることが分かりました。
一方で資産管理会社を設立するうえでは、デメリットも発生します。
次に、資産管理会社を設立するまえに知っておくべき、デメリットを解説します。
資産会社を設立するデメリット
資産管理会社を設立するうえでは、以下4つのデメリットがあります。
- 設立時に費用がかかる
- 社会保険料や住民税、経営コストが発生する
- 事務負担がある
- 会社としての価値は低い
それぞれのデメリットの内容について解説します。
設立時に費用がかかる
資産管理会社は法人のため、設立のさいには費用がかかります。
株式会社を設立する場合には以下の費用が必要で、合計金額は約25万円です。
- 定款認証の公証人手数料…5万円
- 登録免許税…15万円
- 定款印紙代…4万円
- 定款、登記簿の謄本手数料…数千円
また、法人設立のための登記手続きなどもしなければいけません。
以下の流れにそって、会社設立の手続きが必要です。
- 社名や本店所在地(自宅でもよい)、出資者、役員(自分、家族、親族でもよい)、資本金(1円でもよい)、決算月(設立から1年以内であればいつでもよい)を決める
- 代表者印、角印、銀行印、定款、就任承諾書、出資金、会社設立費用の作成や準備をする
- 本店所在地の管轄の法務局に登記申請をおこなう
- 法人設立届書(定款コピー、株主名簿、設立時貸借対照表を添付)、青色申告承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、事業開始の届け出を税務署や自治体の役所などに提出する
社会保険料や住民税、経営コストが発生する
資産管理会社を設立すると、厚生年金をはじめとした社会保険料、毎年7万円の住民税、法人税や事業税の支払いが発生します。
ただし、資産管理にかかる税金への節税効果のほうが経営コストを上回るため、必要経費と割り切れるでしょう。
事務負担がある
社会保険料や各種税金の支払いに関して、経理処理が加わります。
費用面でのデメリットは少ないものの、経理処理の事務負担が大きくなるのはデメリットといえるでしょう。
会社としての価値は低い
一般的に法人の価値は所有している株式や資本金などの資金力だけでなく、その企業の将来性などの無形のものによっても決まります。
資産管理会社はあくまで個人の資産管理や節税、スムーズな相続を目的に設立された会社のため、法人や企業としての価値は低いとみなされるのです。
企業としての価値が高いとみなされる法人は、たとえ会社を手放すときでも価値が高いため、高値での売却や譲渡が期待でき、すぐに買い手も見つかります。
一方、資産管理会社はプライベートカンパニーのため企業としての価値は低いため、手放すときに売却しようとしても、買い手がつく可能性は低いと思っておきましょう。
資産管理会社はメリットも多い反面、設立に手間や費用がかかるなどのデメリットもあります。
メリットとデメリットを考えて、資産管理会社を自分は設立するべきか迷う人も多いでしょう。
次に、資産管理会社を設立した方が得な人、損な人それぞれを紹介します。
資産管理会社を設立した方が得な人
どのような人が資産管理会社を設立すると得をするのでしょうか
資産管理会社を設立した方が得な人は、以下の5人です。
- 一定売り上げがある個人事業主、フリーランス
- 副業で一定収入を得ているサラリーマン
- 不動産取引をしている人
- 多額な資産を相続する可能性がある資産家
- オーナー社長
それぞれ解説していきます。
一定売り上げがある個人事業主、フリーランス
個人事業主やフリーランスとして働き、一定以上の売り上げがある場合、個人事業を法人化した方が税制面で有利となる場合があります。
個人事業主やフリーランスが法人化することを法人成りとよびます。
法人成りをしたほうがよいタイミングは、以下の通りです。
- 個人事業の利益(所得)が800万円を超えたとき
- 消費税の納税義務が出たとき
個人事業の利益(所得)が800万円を超えたとき
個人と法人では所得による税率が異なり、ある所得を超えた時点で法人のほうが税制面で優遇されます。
その基準となるのが所得800万円です。
個人事業主には、「事業による利益で得た事業所得-基礎控除や配偶者控除などの所得控除」によって出される課税総所得金額に対して、所得税と復興特別所得税、住民税が課税されます。
これらの税率は所得税が所得金額に応じて5%~45%、復興特別所得税は所得税額の2.1%、住民税は10%です。
なお、所得税は所得金額が増えると税率が高くなる超過累進税率が適用されているので、所得が高くなれば高くなるほど加算する所得税が多くなります。
法人の場合は法人税や事業税などが課税されます。
中小法人は所得800万円まで15%、大法人と中小法人の所得800万円を超える所得については23%程度、そのほかの税金を加えても、加算される税率は30%ほどです。
個人事業主の所得税が超過累進税率である一方、法人に加算される税金のほとんどは所得が増えても税率が変わらない比例税率が適用されています。
そのため、ある一定の収入を超えたとき同じ所得でも、個人のほうが法人よりも高い税金を支払うことになります。
そのボーダーラインが所得800万円です。
所得が800万円を超えた場合法人成りした方が節税となる可能性が高いため、法人成りを考えるタイミングとなります。
消費税の納税義務が出たとき
個人事業主の場合、以下いずれかの条件を満たすと消費税の納税義務が発生します。
- 2年前の消費税課税売上高が1,000万円を超える場合
- 2年前の課税売上高が1,000万円以下であっても、前年の前半6カ月の課税売上高が1,000万円を超える場合
個人事業主が消費税の納税義務者になると、毎年10%の消費税が加算されることになります。
ただし、個人事業主が消費税の納税義務者になるタイミングで法人成りすると、消費税の納税義務が免除されます。
新規で設立した法人は個人事業主と別格とみなされるため、過去の課税売上高の影響を受けないためです。
さらに、法人成り翌年度も2年前の売上高はなく、初年度の開始半年間の売上高が1,000万円以下であれば消費税の納税義務のない、免税事業者になります。
副業で一定収入を得ているサラリーマン
企業の従業員として働いているサラリーマンで、給与と別に副業による一定収入を得ている場合、資産管理会社を設立して法人成りした方が税制面で得になる可能性があります。
ただし、サラリーマンは個人事業主やフリーランスと違って事業以外の所得(副業による所得)があるという状態です。
さらに、個人事業主やフリーランスと所得控除されるものも異なります。
どのくらいの売り上げになったら法人成りした方がよい、というタイミングは状況によって異なるのです。
副業で一定収入を得ているサラリーマンで、資産管理会社を設立するベストなタイミングを知りたいときには、税理士などの専門家へ相談するのがよいでしょう。
不動産取引をしている人
不動産取引をしている人は、個人で取引をするよりも法人として取引をした方がより有利になります。
資産管理会社を設立して所得税よりも法人税のほうが優遇されて節税になることに加えて、法人ならではの以下のメリットが得られるからです。
- 5年以内に不動産売却するときに有利
- 経費計上できるものが多い
5年以内に不動産売却するときに有利
不動産取引で不動産を売却する場合、法人なら5年以内の期間を考慮せずに売却できるメリットがあります。
個人の不動産取引で不動産を売却した場合、「売却代金-(取得費用+売却時の経費)=譲渡所得」に所得税と住民税が課されます。
課される税率が不動産を所有していた期間によって異なり、5年以上なら「長期譲渡所得」として15.315%の所得税と5%の住民税(合計20.315%)が適用されます。
ところが、5年以内なら「短期譲渡所得」として30.63%の所得税と9%の住民税(合計39.63%)と、5年以上よりも高い税率が加算されるため、個人の不動産取引で売却を待ってしまう人も多いでしょう。
その間に不動産価値が下がってしまうと、大きな損失になります。
一方、法人は5年以内でも実効税率35%の法人税が課されます。
個人の5年以内の不動産売却よりも、低い税率で売却できるので節税になるだけでなく、ベストなタイミングでの不動産取引が可能です。
経費計上できるものが多い
資産管理会社なら不動産取引に関するものでも経費計上できるものが多いため、個人の不動産取引よりも多くの節税が見込めます。
法人の経費として計上できるものは以下の通りです。
- 役員報酬(家族を役員として報酬を支払うと、人件費になる)
- 生命保険(家族を役員にした場合、生命保険料は生命保険料控除として上限12万円までを所得から控除できる)
- 自宅(自宅を法人所有にすると社宅扱いになり、減価償却が認められる)
- ローンの支払利息(自宅や自動車を法人所有にすると社宅・社用車扱いになり、経費になる)
多額な資産を相続する可能性がある資産家
将来的に相続が発生する土地・建物や預金等の財産から借入金や未払金等の債務を引いた見込みの遺産額が1億円を超える場合、資産管理会社の設立を検討したほうが得になります。
多額な資産を個人で相続する場合、所得税や住民税、相続税などの多額の税金が発生します。
あらかじめ資産管理会社を設立したうえで、役員報酬として少しずつ移転することでこれらの税金の節税が可能です。
相続税の支払いが発生した場合にも、あらかじめ役員報酬として相続税の資金をためられるので、相続から10ヶ月以内の納税期限内に相続税を支払えます。
また、多額の資産を平等に分配するうえでは、相続トラブルが発生する可能性も高いです。
資産管理会社の株式という形で分配すれば、公平性が生まれて相続もスムーズに進められるでしょう。
また、現金や預金などで渡さず資産管理会社の株式として分配・相続させることで、相続した子どもや孫が受け取った遺産を使い切ってしまった、というリスクも防げます。
節税の面以外でも、スムーズな相続のために多額の資産を相続する可能性がある場合は、資産管理会社を設立しておいた方が有利です。
オーナー社長
オーナー社長も、資産管理会社の設立を検討すべきでしょう。
オーナー社長の場合は、資産管理会社を活用すると自社株の相続対策に有利となるからです。
オーナー社長が自社株を親族に生前贈与すると相続税の節税になる一方、自社株を分配することで経営へのリスクが生じる場合があります。
たとえば生前に自社株を子どもに分配したところ、自分と子どもで会社の経営に関して意見が対立し、経営権をめぐってトラブルになることがあります。
ほかにも、上場後に分配した株を他社に売却されてしまった、自社株を分配した子どもが先に亡くなってしまい、配偶者が株主になってしまった、など自社株の生前贈与が会社の経営に悪影響となる場合があるのです。
資産管理会社を設立して自社株を資産管理会社に移し、そのうえで生前贈与をすればこれらのリスクが解消できます。
資産管理会社の株を贈与されるため、かんたんに株を換金できなくなるからです。
また、相続が発生したときも資産管理会社の株として相続されるので、社外に株が流出するのも防げます。
資産管理会社を設立して損する人
資産管理を設立して得をする人もいれば、その反面損をしてしまう人もいます。
資産管理会社を設立すると、損になってしまうのは以下の4人です。
- 一定売り上げがない個人事業主、フリーランス
- 副業の売り上げが低いサラリーマン
- 不動産取引時に経費がない人、額が小さい人
- 資産がそんなに多いわけではない人
一定売り上げがない個人事業主、フリーランス
資産管理会社の設立には、法人登記や定款の認証手数料など設立時の費用がかかります。
株式会社の場合は25万円ほどです。
また、資産管理会社を維持するためにも、法人税や事業税の支払い、税理士への報酬などの維持コストがかかります。
さらに、法人のお金を設立した本人(オーナー)が自由に使うことはできません。
資産管理会社のお金をオーナーが使うには役員報酬や配当という形で個人に移動する必要があります。
このとき、総合課税あつかいとなり最高で約55%の税金を支払わなければいけません。
一定売り上げがない個人事業主やフリーランスが法人成りのために資産管理会社を設立しても、節税効果も見込めず費用のほうが多くかかってしまうので、損してしまうのです。
副業の売り上げが低いサラリーマン
副業の売り上げが低いサラリーマンの場合も、一定売り上げがない個人事業主やフリーランスと同じく、設立と維持、資金移動コストが節税効果を上回ってしまうため損になります。
不動産取引時に経費がない人、額が小さい人
不動産取引をおこなっている人で、経費が発生しない場合は資産管理会社の恩恵が受けられません。
たとえば、不動産取引でアパートやマンション経営をしている場合、家賃収入は所得として計上される一方、アパートやマンションの維持費などは法人の場合経費計上できます。
一方、個人で不動産取引をしていても不動産売買のみなど経費が発生しない場合は、法人になっても計上できる経費がないため節税効果はあまり見込めません。
また、不動産取引の額が小さい場合は、資産管理会社の設立や維持、資金移動コストのほうが節税額を上回ってしまい、結局損をしてしまう可能性が高いです。
資産がそんなに多いわけではない人
相続や生前贈与の対象となる資産は資産評価額が高ければ高いほどかかる税率は高くなります。
相続や生前贈与の対象となる資産がもともと少ない人や、資産よりも負債のほうが上回りそうな人は、節税になる、相続がスムーズになるという資産管理会社のメリットを最大限に活かせません。
相続や生前贈与自体が発生しない可能性もあるため、資産管理会社の設立や維持、資金移動コストのみがかかってしまうこととなり、損をしてしまうのです。
資産管理会社を設立すると、得する人もいれば損する人もいます。
自分の所得や不動産取引の有無、資産状況を把握したうえで設立するか、しないかを考えるのが重要です。
次に、資産管理会社を活用するまえに知っておきたい、注意点やリスクを解説します。
資産管理会社を活用するうえでの注意点、リスク
資産管理会社を設立して節税や相続対策で活用したい場合、以下の注意点・リスクを知っておくのが重要です。
- 露骨な課税逃れとみなされないようにする
- 役員報酬の額に気を付ける
順に解説していきます。
露骨な課税逃れとみなされないようにする
資産の節税や相続対策のために、資産管理会社を設立する人も多くなりました。
その一方で、資産管理会社に対して税務当局による監視も厳しくなっていることを覚えておかなければいけません。
税務当局によって、資産管理会社を利用した露骨な課税逃れをしていると判断された場合、きびしいペナルティを受ける可能性があります。
たとえば資産管理会社が所有している資産のうち「株式および出資(株式等)」が50%以上を占めると「株式保有特定会社」として、「不動産」の占める割合が70%もしくは90%の場合は「土地保有特定会社」と税務当局からみなされ、課税率が高くなってしまいます。
株式や出資が会社の大半を占めているのは、資金管理会社を露骨な課税逃れのために利用している、と判断されるからです。
「株式および出資(株式等)」と見なされるのは、証券会社が売買を仲介する株式や外国株式、株式制のゴルフ会員権です。
匿名組合への出資や投資信託は対象になりません。
株式保有特定会社または土地保有特定会社とみなされないために、あわてて株式や出資、不動産を手放して占有割合を下げる行為は、「株特はずし」や「土地特はずし」として露骨な課税逃れと判断されます。
株式および出資と不動産の占有割合を下げた正当な理由を説明できないと、税務当局からマークされて厳しい処罰が適応される可能性が高いです。
税務当局から資産管理会社を課税逃れだとマークされないためには、「法人の事業として、純粋に資産運用をおこなっている」という姿勢を保つこと、株式や不動産の占有割合を下げる場合には正当な理由を説明できるようにしておくことが重要です。
役員報酬の額に気を付ける
資産管理会社に移転された資産は、役員報酬という形で移転・分散されます。
役員報酬をどれくらい支払うかによって、税制上の取り扱いが異なるのに注意が必要です。
以下のポイントを踏まえて役員報酬の金額を決めましょう。
役員報酬で法人と個人どちらを重視するか
資産管理会社のオーナーと役員は利害関係が同じ、という一般的な企業のオーナーと役員とは違う特徴があります。
一般的な企業の場合、役員報酬を決めるうえで重視するのは、「会社」「役員」どちらかにウェイトを置くかです。
一方、資産管理会社の場合は、オーナーと役員の利害関係が同じのため、役員報酬は「個人」「法人」どちらにウェイトを置くかで決めます。
個人、法人の税制上の取り扱いを考えたうえで、どちらに多くキャッシュを置いたほうが得かを考え、役員報酬を決めましょう。
報酬額の目安は527万5,000円以下
資産管理会社を活用するメリットのひとつに、不動産収益が高い場合に大きな節税効果があることがあります。
不動産収益が高いと税率も上がるのと同じく、役員報酬が高すぎると所得税率が高くなってしまうのです。
法人税の最低実効税率は22.86%です。
所得税の実効税率が法人税の最低実効税率22.86%を下回る金額なら、役員報酬として分配したほうが支払う税金が少なくなります。
支払う役員報酬が527万5,000円までなら、所得税実効税率は20.21%のため、法人税の最低実効税率を下回り、節税効果があります。
役員報酬を決める目安として、527万5,000円という金額を頭に入れておきましょう。
なお、相続対策として生前贈与を早めたい目的で資産管理会社を設立する場合は、税率による金額はこの限りではありません。
生前贈与を早める目的で資産管理会社を設立する場合、役員報酬を高くすれば高くするほど、一度に多くの資産を分配でき、その分生前贈与を早められるからです。
節税対策か、生前贈与をスピーディにしたいかなど、資産管理会社を設立する目的に応じて役員報酬を決めましょう。
資産管理会社を設立するなら?やるべきこと
資産管理会社を設立する場合、以下の3つをやるべきこととして覚えておきましょう。
- 合同会社か株式会社か決める
- 定款や事業目的を決める
- 設立代行会社を探す
それぞれ解説していきます。
合同会社か株式会社か決める
資産管理会社を設立するさい、株式会社か合同会社か、いずれかの法人形態選ばなければいけません。
株式会社は聞いたことがある人が多い一方、合同会社はあまり耳慣れない言葉だと感じる人も多いでしょう。
合同会社とは、有限会社に代わる組織形態として導入されたものです。
家族経営の会社や小規模事業などに適した会社組織として、合同会社を設立する事例が増えてきています。
法人形態は株式会社、合同会社どちらが有利・不利といったことはありません。
設立費用は合同会社が6~10万円、株式会社は24万円程度と、合同会社のほうが低コストで設立できます。
また、法人形態のほか「資産管理会社に何をさせるか」という分類として保有型と管理委託型に分けられます。
保有型とは、「資産管理会社が不動産を保有して経営の主体となる」管理委託型とは「資産管理会社に個人資産である不動産管理をまかせる」分類です。
実際に資産管理会社を設立する場合には、保有型のほうが多くなっています。
保有型のほうが管理委託型よりも節税効果が高いからです。
法人形態と分類別に特徴を分けると、以下の通りになります。
- 合同会社・保有型…管理コストが安い、節税効果が高い
- 株式会社・保有型…管理コストが高い、節税効果ともに高い、対外的な信用が高い
- 合同会社・管理委託型…管理コストが安い、節税効果は低い
- 株式会社・管理委託型…管理コストが高い、節税効果も低い
コストや節税効果重視で設立したいなら保有型の合同会社、管理コストは高くても社会的な信頼も欲しいときには保有型の株式会社を選ぶことになります。
定款や事業目的を決める
定款(ていかん)とは、事業内容など資本管理会社の基本的なルールを定めたものです。
管理する資産のなかで不動産をあつかう場合、不動産経営を事業内容に入れます。
また、定款の最後に「前各号に付帯する一切の事業」という文言を入れておくのがよいです。
会社は、定款に記載されていない事業をおこなうことができないからです。
前各号に付帯する一切の事業、という文言を入れておくことで、不動産経営などに関する業務も事業としておこなえるので、将来的な業務の幅が広げられるメリットがあります。
設立代行会社を探す
資産管理会社は資産管理が目的ですが、設立する手順は一般的な合同会社や株式会社を設立する際と同じです。
代表者印、角印、銀行印の準備や就任承諾書、会社設立費用の準備、法務省への登記申請や税務署、市町村役所への法人設立届書、青色申告承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、事業開始の届出の提出が必要です。
必要書類を準備するのが面倒、できるだけ手間や時間をかけずに資産管理会社を設立したいときには設立代行会社を探すのがおすすめです。
設立代行会社とは、資産管理会社をふくめ会社設立を代行してくれるサービスを提供する会社です。
設立代行会社を利用すると、以下のメリットがあります。
- 会社設立に必要な準備や手間、時間を省いて任せられる
- はやく資産管理会社を設立したいときにも対応できる
- 資産管理会社設立後もサポートが受けられる
会社設立に必要な準備や手間、時間を省いて任せられる
設立代行会社を利用すると、必要書類の作成や法務局への登記申請など、資産管理会社設立に必要な手続きを代行してくれます。
個人事業主やフリーランス、副業をしているサラリーマンやオーナー社長など、ほかの業務が忙しく会社設立の手続きの時間がとれないという人にも向いています。
はやく資産管理会社を設立したいときにも対応できる
また、必要書類を作成するときには自分で情報を集めたり、提出のために足を運んだりしなければいけません。
間違いがあれば訂正して再提出が必要です。
設立代行会社なら、司法書士などのプロが代行してくれるので、正確かつスムーズな会社設立手続きができます。
事業継承や相続などで資産管理会社を設立したいときなど、できるだけ早く設立したいときにもぴったりです。
資産管理会社設立後もサポートが受けられる
最後に、設立代行会社のなかには司法書士のほか弁護士や税理士など、ほかに会社の経営や管理のサポートをしてくれる専門家がそろっているところもあります。
生前贈与や相続、節税のために資産管理会社を設立する場合は、書類作成や登記申請は司法書士に任せられ、生前贈与や相続は弁護士、節税は税理士と多方面からサポートを受けられます。
資産管理会社を設立しただけでは、節税や生前分与、相続はできません。
設立後に資産管理会社の目的を果たすためにも、設立代行会社を利用するとよいでしょう。
まとめ
資産管理会社とは、個人の持っている現金や預金、不動産などの資産を管理する目的で設立されるプライベートカンパニーです。
資産管理会社に個人の資産を移すことで、生前贈与や相続にかかる税金をおさえられる、相続トラブルを回避してスムーズな相続につながるなどのメリットがあります。
また、節税や消費税課税者となった一定収入のある個人事業主やフリーランスが、法人成りをする目的でも設立可能です。
資産管理会社を設立すると、節税や相続以外にも給与所得者になるので厚生年金に加入できる、不動産取引にかかる経費を計上できるのでほかの面でも節税になる、といったメリットもあります。
資産管理会社を設立するには、会社名や所在地、定款を決めたり、必要書類を作成して法務省への登記や、税務署、自治体の役所への申請をしたりといった準備も必要になります。
資産管理会社を手間や時間をかけずに設立したい、設立したあと相続や節税の面でもサポートを受けたいときには、設立代行会社を利用するのがおすすめです。
資産管理会社を最大限に活用できるほか、生前贈与のためなどできるだけ早く資産管理会社を設立したいときにも向いています。
また、資産管理会社を設立したあとは、露骨な課税逃れとみなされないように資産や不動産が占める割合にも気を付けなければいけません。
課税を逃れるために資産や不動産割合を変動させる行為は、不当行為とみなされてしまいきびしい処罰を受けてしまう可能性もあります。
設立代行会社を利用すれば、資産管理会社設立後の税制上での注意などもサポートを受けられます。
スムーズな相続や生前贈与、節税のためにも、設立代行会社を利用しての資産管理会社設立を検討してみましょう。
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