訪問看護は近年需要が高まっている業界です。
高齢者の増加によって看護の需要が高まっていますし、自宅での看護を希望する人も増えています。
そのような状況にあるため、訪問看護で起業したいと考える人が増えています。
ただ、訪問看護で起業したいと考えても、どうすればいいのか理解できていない人が大半でしょう。
今回は訪問看護で起業する際の基本的な流れをご説明します。
訪問看護で起業するとは
訪問看護で起業するといわれてもイメージが沸かない人は多いはずです。
まずは訪問看護で起業するとは何かをご説明します。
訪問看護とは
訪問看護とは自宅などを看護師などが訪問して、看護を提供するサービスです。
訪問看護ステーションなどで日頃は待機をして、定期的に看護が必要な自宅などを訪問します。
基本的には医師の指示に従って医療処置などを行い、点滴注射や在宅酸素、各種創傷の手当などを担当します。
看護師の判断で対応する部分は少なく、医師へ訪問看護計画を提出して、内容に合意が取れてから処置などを行うのが基本です。
なお、訪問看護で起業するといえば、このようなサービスを提供する訪問看護ステーションの開業を指します。
看護師や医療機器を管理するための事務所が必要となるため、このような場所を開業することが起業することを意味するのです。
訪問看護で起業するためには法人設立が必須
訪問看護で起業するためには必ず法人を設立しなければなりません。
世の中には個人でも営める事業が多数ありますが、訪問看護については法人からの申請しか受け付けないルールとなっています。
法人でしか受付されない理由については公開されていません。
ただ、訪問看護の申請要件には人材や事務所など様々な条件があるため、これらの条件を満たしやすくするために法人化を必須にしていると思われます。
例えば人材の要件を満たすために、一般的に人を雇いやすい法人を推奨しているわけです。
必ず法人を設立しなければならないため、訪問看護の起業はハードルが高まってしまいます。
個人で訪問看護を始めようとしていた人は、実現不可能であるため注意しなければなりません。
訪問看護で起業する流れ
訪問看護で起業するならば基本的な流れは決まっています。
具体的には以下のとおりです。
- 事前準備
- 法人設立
- 市区町村・都道府県への相談
- 事務所や人員の用意
- 必要書類の用意
- 賠償責任保険への加入
- 書類提出
- 事業の開始
それぞれ、何をしなければならないのか順番にご説明します。
起業の流れ1:事前準備
最初にどのような訪問看護を起業するのかを詳細に決定しておきましょう。
事前に細かく決定しておかなければ、訪問看護の起業がスムーズに進められない可能性があります。
最初に決めておくべきことは、どのような訪問看護で起業するかです。
訪問看護の目的や方針を決定しておかなければ、起業しても事業として成り立たなくなります。
事前に市場調査をしておくなどして、どのような訪問看護で起業すれば成功する可能性があるか考えておきましょう。
また、それらと並行してどのように人材を集めるかやどこに事務所を構えるかなども検討しておくべきです。
訪問看護で起業する場合は事前に法人登記する必要があり、法人登記に関わる情報は事前に決定しておかなければなりません。
事務所を構える場所を踏まえて市場調査を行い、訪問看護の戦略を立てるべきです。
なお、事前検討した内容は明文化するようにしましょう。
後ほど都道府県の担当者などに相談する必要があるため、文章化されている方が話を進めやすくなります。
起業の流れ2:法人設立
ご説明したとおり訪問看護で起業するためには、事前に法人を設立しておかなければなりません。
訪問看護は個人ではなく法人でしか事業の申請ができないため、必ず事前に法人設立を済ませておきましょう。
法人の種類には指定がなく、株式会社でも合同会社でも訪問看護で起業できます。
それぞれにメリットやデメリットがあるため、それらの内容を踏まえて法人設立の手続きをしましょう。
どの種類が訪問看護に良いとは一概には言えません。
訪問看護で起業する際に注意してもらいたいのは、法人の設立にはお金と時間がかかる点です。
まず、法人を設立するとなると法務局に提出する書類を10種類程度作成しなければなりません。
量が多いですし専門的な知識も求められるため、どうしても時間を要してしまいます。
また、法人登記するためには登録免許税や資本金の支払いが必要です。
ここで必要なお金は訪問看護で起業するためのお金として見落としやすいため、必ず考慮しておく必要があります。
なお、訪問看護で起業するために自力で法人登記するのはハードルが高いかもしれません。
そこで法人登記に困った際は、手数料無料で24時間受付の経営サポートプラスアルファにご相談ください。
訪問看護で起業するために必要な法人登記をサポートします。
<関連記事>
起業の流れ3:市区町村・都道府県への相談
市区町村や都道府県の担当者と面談をして、訪問看護ステーションの開業に向けて相談をしておきましょう。
事前に協議をしておかなければ、後ほど指定申請をしても却下される可能性があります。
どのような訪問介護ステーションを事業するのかや運営方針などを明確に伝えておく必要があります。
なお、政令指定都市以外の地域の場合は都道府県知事の指定を受けて開業することになります。
そのため、都道府県の担当者とも面談しなければなりません。
開業する場所によって市区町村だけで良いのか都道府県も必要となるのかで変化するため、市区町村や都道府県の案内を確認しておきましょう。
起業の流れ4:事務所や人員の用意
訪問看護ステーションの開業に向けて合意が取れれば、実際に開業に向けた準備を進めます。
事務所を用意したり職員を確保したりしなければならないため、順番に準備を進めていきましょう。
まず、訪問看護で起業する場合、専用区画の事務室を用意しなければなりません。
もし病院などの建物と併設で起業する場合は、区画を分離しなければならないため要件を確認しましょう。
独自に事務所を構える場合は特に意識する必要がありません。
また、事務所には事務室の他にも面談室や倉庫、洗面所や洗濯場所が必要で駐車場も求められます。
これらについても要件を満たせるように準備しなければなりません。
これと並行して働いてくれる職員の確保も進めましょう。
訪問看護ステーションを利用するならば、看護職員を常勤換算で2.5人配置しなければなりません。
こちらは義務付けられているため、労働基準法も加味しながら条件を満たせるように職員を用意する必要があります。
また、保健師や看護師、准看護師の他にも理学療法士や作業療法士などが必要になる可能性があります。
そして、保険請求業務を担当する事務職員も用意しなければなりません。
訪問看護で利用する際には自分だけではなく多くの人を巻き込まなければならないのです。
起業の流れ5:必要書類の用意
訪問看護で起業するにあたり、「訪問看護サービス提供や事業運営に必要な書類」と「事業運営に必要な規程等」の用意をしなければなりません。
数多くの書類を用意して提出する必要があるため、抜け漏れがないように丁寧に準備しましょう。
具体的に必要となる書類は以下のとおりです。
◆訪問看護サービス提供や事業運営に必要な書類
・管理記録
・市町村等との連絡調整に関する記録
・利用者との契約に関する書類
・指定訪問看護に関する記録
・会計経理に関する記録
・設備・備品に関する記録
・運営規程
・事業所のパンフレット
・訪問看護サービス提供のための各種マニュアル
◆事業運営に必要な規程等
・組織諸規程
・人事諸規程
・業務諸規程
必要書類の作成にあたり、フォーマットが指定されているものはほとんどありません。
訪問看護で起業する際にフォーマットの作成から行い、そのフォーマットで必要な事項を記録するようにしていきましょう。
内容が適切に記録されていれば必要書類として認められます。
起業の流れ6:賠償責任保険への加入
訪問介護ステーションを開設する際は、賠償責任保険への加入が義務付けられています。
これは全業務の過程において利用者が家族などにケガや物損を与えてしまった場合に賠償責任を補償するためです。
加入する保険については選択肢があるものの、訪問看護事業共済会による法人向け総合補償制度が提供されています。
必ずこちらに加入しなければならないルールではないものの、賠償保険の概要についてはこちらを参照してみると早くできるでしょう。
起業の流れ7:書類提出
事前準備が完了すれば訪問看護事業の指定申請をします。
こちらの指定を受けられなければ起業できないため、できるだけ早い段階でスムーズに申請をしてしまいましょう。
指定申請には介護保険法に基づく指定と健康保険法に基づく指定があります。
介護保険法の指定を受けておくと健康保険法による指定をみなし規定で受けられるようになります。
そのため、基本的には介護保険法に基づく指定を都道府県知事や指定都市の市長から受けるようにしましょう。
都道府県に提出するか市区町村に提出するかは、起業する場所が政令指定都市にあるかどうかによって異なります。
事前に面談した際に届け出の仕方についても説明があるため、どこに提出するのかを確認し間違えないように対応しましょう。
なお、介護保険法のみの指定を希望するならば「指定訪問介護事業を行わない旨の申請書」と呼ばれるものを提出します。
こちらについては今回割愛しますが、必要に応じてこのような書類を利用する可能性もあると理解しておきましょう。
起業の流れ8:事業の開始
基本的に1ヶ月から2ヶ月程度で指定申請が承認されます。
承認されれば事業を開始できるため、訪問看護で起業できたといえるでしょう。
なお、承認されるまでの期間は事業を開始できないだけで準備は可能です。
例えば開業に向けて広告を作成したり職員の研修をすることは差し支えありません。
利用者との契約に向けて契約書の作成などをしておくのも良いでしょう。
承認されてから様々な準備をしていると時間を無駄にしてしまいます。
訪問看護の起業ではスピーディーさが重要となるため、指定申請をしている間にできるだけのことを済ませておくべきです。
まとめ
訪問看護での起業についてご説明しました。
訪問看護は法人での運営が必須となるため、起業のハードルはそのぶん高くなります。
また、多くの職員を確保しなければならないため、その点でもハードルがやや高くなるでしょう。
なお、訪問看護で起業する準備をしながら、法人設立もするのは負担がかかりやすいはずです。
そのため、法人設立については経営サポートプラスアルファにご相談ください。
24時間受付かつ手数料無料で、起業のプロが皆さんのサポートをします。