これから法人成りを検討している方は税務調査について不安を抱いているかもしれません。
法人成りして税務調査されることがあるのか、どんな点に注意しておきたいのか気になるでしょう。
この記事では法人成りで税務調査はどうなるのか、何に気をつければいいのか解説します。
目次
法人成りすると税務調査はどうなるのか?
法人成りしたら税務調査はどうなるのか解説しましょう。
個人事業を廃業した後も税務調査は行われる
個人事業を廃業して法人成りしたとしても、個人事業主時代の税務調査は実施されます。
税金には通常は5年、不正の場合は7年まで時効があるからです。
そのため、個人事業主を廃業したからといって、過去の申告の誤りが見逃されるわけではありません。
法人化後も税務署が個人時代の調査をするのは珍しくないです。
法人成りして3年目以降は個人事業主時代の税務調査の可能性は低くなる
法人成りしてから3年目までは、個人事業主時代の税務調査が実施される可能性が高いです。
逆に3年目を過ぎると不正の疑いが強いケースを除き個人事業主時代について調査される可能性は低くなるでしょう。
一般的に税務調査では過去3年分まで調べる傾向があるからです。
法人成りした情報を税務署は把握している
個人事業主を廃業して法人成りしたという情報を常に税務署は把握しています。
個人事業主の廃業や法人化の際には税務署に届け出をしなければいけないからです。
そのため、個人事業主から法人成りした情報は常に税務署に把握されていて、怪しい点がないか細かくチェックされていると考えましょう。
法人の方が税務調査されやすい
個人事業主で実際に税務調査を受けるのは全体の1%程度とされています。
一方、法人の場合は全体の3%程度の割合で税務調査が実施されているのが特徴です。
したがって、法人の方が税務調査されやすい傾向にあります。
これは法人の方が売上の規模が大きく、経費として計上できる金額も大きいからです。
法人化後は税務調査の可能性が高くなることを意識しましょう。
法人成りして3年間は税務調査の可能性が高くなる理由
法人成りしてから3年間は個人時代の税務調査の可能性が高くなる理由について詳しく説明しましょう。
個人事業主の頃の税金について時効になる前に調査したいため
税金には時効があるため、個人事業主の廃業から長い期間が経過すると調査できなくなります。
時効になれば過去の申告漏れや不正について追求することができなくなるため、その前に税務署はしっかりと税務調査をしたいと考えるはずです。
そのため、法人成りしてから3年程度は税務調査の可能性が高いと意識しておきましょう。
特に法人成りした翌年に税務調査が実施されやすい
個人事業主を廃業した直後に税務調査が実施されやすい傾向にあります。
早めに調査を実施した方がより過去の申告内容までチェックできるからです。
廃業してから時間が経つほど個人時代の税務調査を受ける可能性は低くなります。
個人と法人で申告内容に差が生じると税務調査されやすい
法人成りの際には、個人事業主時代と申告内容に矛盾が生じないように注意しましょう。
法人成りする際には資産などの引き継ぎを行います。
正しく引き継ぎを行うには個人事業主時代から正しい会計処理をしていることが重要です。
しかし、個人事業主時代の処理の仕方に誤りがあると、法人化した後の会計処理にも影響します。
引き継ぎの処理を正しく行わずに個人と法人で帳簿の内容に矛盾が生じることもあるのです。
これでは税務調査の対象になりやすいため気をつけましょう。
法人成りして急激に売上が伸びると税務調査が行われやすい
基本的に個人事業主から法人成りする場合は、売上が急激に伸びるケースがあります。
法人の方が事業規模を拡大しやすいため、売上が伸びるのはおかしなことではありません。
しかし、売上が伸びると税額が増えるため、所得を抑えるために工夫しようとする法人は多いです。
そこで不正が行われるケースがよくあるため、税務署は売上が急激に伸びた法人に注目します。
法人成りする際の注意点
これから法人成りする際に注意するべき点について解説しましょう。
個人事業時代の帳簿や請求書などをきちんと保管しておく
法人成りした後も5年間は個人事業主時代の税務調査を受ける可能性があります。
不正が見られる場合は7年前までさかのぼって調べられるのです。
そのため、帳簿や請求書などは7年間の保存義務があります。
法人化したからといって、個人事業主時代の書類をすべて処分することがないように注意しましょう。
保存していないと義務違反となり罰則があります。
基本的に申告内容は個人事業時代と法人化で一貫性をもたせるべき
法人成り後の会計処理や申告の内容は個人事業主時代から一貫性をもたせましょう。
基本的に法人成りした後は、個人事業主時代の資産を活用して、同じ業種でビジネスを進めることが多いです。
そのため、法人成りしてから申告内容に大きな変化が見られると怪しまれます。
法人の方が税務調査が厳しく行われることを覚悟しておく
基本的に税務署は法人に対してより厳しく税務調査を実施しています。
法人の方が経費にできる項目が大きく節税しやすいからです。
節税しやすいからといって、事業と関係ないものまで経費に計上すれば、すぐに税務調査で厳しくチェックされるでしょう。
税務署は法人を常に厳しく監視していることを自覚して会計処理を進めてください。
帳簿内容の引き継ぎをきちんと行う
法人成りする際には帳簿内容の引き継ぎを丁寧に行いましょう。
基本的に個人事業主時代の資産は法人へ売却する形で引き継ぎを行います。
そのときの価格は帳簿価格により譲渡するケースが多いです。
固定資産については時価で取引します。
棚卸資産は通常の販売価格の70%以上で売買しなければいけません。
課税事業者の場合は資産の売却が課税対象になる点にも気をつけましょう。
借入金や負債の引き継ぎにも注意しましょう。
銀行からの借入金を引き継ぐ場合は銀行に相談する必要があります。
銀行があらためて審査するからです。
借入金や負債は個人事業主で完済するケースもあります。
売掛金など債権も引き継ぎ可能です。
ただし、債権の引き継ぎは債務者の同意を得る必要があり手続きが煩雑になります。
そのため、個人事業の方で回収するケースが多いです。
同様に買掛金については法人へ引き継がず個人で支払いを完了させるのが良いでしょう。
このように個人事業主時代の帳簿内容について、さまざまな勘定科目の引き継ぎをする必要があります。
それぞれの科目について正確な引き継ぎ処理をしましょう。
法人成り後の税務調査の対策
法人成り後に税務調査を受ける場合の対策について説明します。
個人事業主時代の誤りを見つけたならばすぐ修正申告する
法人成りする際には、しっかりと個人事業主時代の申告内容の見直しをしましょう。
もし自分で誤りを見つけたならば、税務署に指摘される前に修正申告することをおすすめします。
税務調査の後で修正申告するのと自主的に修正するのでは、罰則内容が異なるからです。
自主的に修正した方が罰金は軽くなります。
個人事業分で無申告になっている部分がないか調べておく
個人で事業をしていたときに無申告の部分がないか調べておきましょう。
たとえば、法人化する前に個人事業主としてまったく申告していなかったというケースがあるかもしれません。
法人化するのだから個人の確定申告は不要だと安易に考えてはいけません。
もし法人化した後で税務調査を受けると、そこで過去の事業について質問されて無申告がバレてしまうケースもあります。
通常、税金の時効は5年ですが、悪質なケースでは7年前までさかのぼり調査します。
個人事業分の無申告を意図的に行っていたならば、かなり悪質なケースと判断されるでしょう。
大きな罰則を課せられるリスクがあります。
また、個人事業時代の確定申告をしていないと融資を受けることもできません。
法人成りした後に銀行などから融資を受ける際には過去の事業について聞かれるからです。
仮に無申告のことを黙っていたとしても、個人事業時代の実績がないと融資の審査で不利になります。
このように個人事業分が無申告だとさまざまなリスクがあるのです。
法人成りする前に、きちんと個人事業主時代の確定申告を済ませましょう。
個人事業主時代の帳簿や書類を整理しておく
法人化したからといって、個人事業主時代の帳簿や書類の保存義務がなくなるわけではありません。
個人事業主時代の帳簿などはきちんと保存しておきましょう。
また、法人化する際に過去の帳簿や書類をキレイに整理しておくことをおすすめします。
そうすれば、帳簿などがきちんと保存されているか確認できるからです。
請求書などが紛失している場合は、再発行の依頼などで対応する必要があります。
将来の税務調査へ備えるためです。
税理士に相談をして対策を練る
税務調査の対策として税理士への相談をおすすめします。
税務調査の事前準備から調査の立ち会い、税務調査後のフォローまで任せられるからです。
税理士に相談するかどうかで税務調査の結果が変わるケースがあります。
税務調査で対応を誤らないためにも税理士に相談しましょう。
法人成りで税務調査が心配ならば専門家に相談しよう
法人成りしても個人事業主時代の税務調査の可能性があります。
税金の時効が来るまでは個人事業主の申告内容について税務署は調査できるからです。
きちんと帳簿を整理して、資産の引き継ぎも行い、税務調査に備えましょう。
また、税理士に相談をして対策を練り、万全の体制で税務調査を受けられるように準備することをおすすめします。