近年、少子高齢化と健康寿命の伸びに伴い、介護が必要となる高齢者の人口は増加しています。
これに伴い、デイサービスの需要も大きく伸びています。
このため、デイサービスを開業しようと考える人も増えてきているのではないでしょうか。
しかし、デイサービスの開業は、簡単なものではありません。
今回はデイサービスの開業を検討している方向けに、デイサービス事業の現状や、開業する際の注意点について解説します。
目次
デイサービスの開業は儲かる?
まず、デイサービスの事業は儲かるのでしょうか。
結論から言うと、簡単に儲かることはないでしょう。
このため、デイサービスを開業する場合、お金だけをモチベーションに始めてしまうと苦労する可能性があります。
しかし、デイサービスを開業して儲かっているケースもあるため、以下の内容を知っておきましょう。
需要は増加している
高齢化の進展により、デイサービスの需要自体は伸びているのが、現状です。
しかし、需要が伸びているからといって儲かっているわけではなく、赤字のデイサービスの事業者が多いというのも事実です。
独立行政法人福祉医療機構が発表した「2018年度通所介護事業所の経営状況について」という資料によると、事業者の規模に応じて多少差はあるものの、約3割から4割のデイサービス事業者が赤字に陥っているとされています。
また、2010年代から全体的にデイサービスの倒産件数も増加傾向にあり、デイサービス事業の厳しさを表しています。
開業すれば儲かるわけではない
では、なぜ需要が伸びているにも関わらず、デイサービスは儲かりにくいのでしょうか。
人材の確保が難しい
デイサービスの仕事は、高齢者のサポートがメインであり、肉体的、精神的にも大変な仕事です。
また、職種によっては看護師資格や介護に関する資格、マッサージ師の資格などが必要です。
このように労力もかかり資格も必要な一方で、福祉業界全体として給与が安く、人材が集まりにくい、もしくは、集まったとしてもすぐ辞めてしまうという問題を抱えています。
このため、人材確保のために利益に見合わない給与を支払うことになったり、辞めた人材の後釜を採用するためのコストがかさんだりして、赤字体質に陥りやすいのです。
介護報酬の削減された
介護報酬とは、介護サービスを民間事業として行っていることに対して国から与えられる補助金のようなものです。
この介護報酬が2015年の改定により、およそ10%ほど削減され、デイサービスをはじめとする介護事業者の運営が厳しくなっています。
競合他社との差別化が難しい
差別化がしやすい業種は、激戦区であっても利益を得ている中小事業者は多いです。
例えば、大手チェーンの飲食店が競合であっても、そのようなチェーン店が扱わないようなメニューを展開すれば、小規模の飲食店でも一定の顧客を獲得できる見込みがあります。
これは、飲食という業種が差別化をしやすいためです。
一方、デイサービスは事業の性質上、差別化がしづらく、知名度がある大規模な事業者に顧客が寄ってしまいやすい特徴があるでしょう。
固定費がかかる
デイサービスで多くの利益を上げる場合は、たくさんの被介護者を受け入れる施設を作る必要があります。
また、被介護者が通いやすい立地に施設を立てることも大切です。
一方で、こうした受け入れ数を増やす施策は、固定費に直接的に影響します。
特に中小事業者は広い土地に施設を建設したり、都心に事業所を構えたりすることが難しく、事業を拡大しにくいのです。
・デイサービス自体の需要は高まっている。
・デイサービスの開業は、人材不足や差別化をするのが難しい。
・デイサービスは被介護者を受け入れる施設を作る必要があるため、固定費がかかりやすい。
デイサービスの開業にかかる主な費用
ここでは、デイサービスを開業するのに実際どのくらいの費用が必要になるのか、解説します。
法人の設立費用
法人を設立してデイサービス事業を始める場合は、法人の設立費用が必要です。
一般的に株式会社だと20万円、合同会社だと6万円の設立費用が必要になります。
法人設立の代行サービスを使うと費用を安く抑えられたり、設立の手続きの手間を省けたりするため、活用すると良いでしょう。
人件費
実際に高齢者と接点を持つスタッフの給料などが該当します。
また、後述しますが、デイサービスを開業する際には、人員基準を満たす必要があるため最低限、それぞれの人員によってかかる人件費が異なります。
採用費用
スタッフを採用するためには、スタッフを募集していることを候補者に届けなければなりません。
駅のポスターやチラシ、HPの作成、求人サイトへの掲載など、採用するための費用がかかります。
施設の費用
デイサービスを開業するにあたり、施設の準備が必須です。
敷金、礼金などの初期費用に加え、内装費用、ランニングコストとして家賃が発生します。
送迎に使用する車両費
デイサービスは、基本的に朝に車で利用者の家を周って迎え、夕方になったら各利用者の家に送り届ける必要があります。
このため、送迎に使用する車両を購入する必要があります。
高齢者の中には車椅子が必要な方や、足腰が悪い方も多いため、自家用車ではなく専用のバンを購入する必要があるでしょう。
・法人を設立する際には、代行サービスに依頼すると設立費用が安くなる場合がある。
・スタッフの給料に加えて、採用するための費用もかかる。
・施設の家賃や車両購入費などの費用がかかる。
デイサービスの開業における資金調達の方法
上記の通り、デイサービスの事業を始めるためには、施設を借りたり、車両を購入したりする必要があり、多額の費用がかかります。
できる限り、出費を抑えるために、助成金の利用を検討するのが良いでしょう。
資金が足りない場合は、融資制度を活用するのも有効です。
補助金や助成金
介護事業に関する助成金には、以下のようなものがあります。
介護労働環境向上奨励金
介護労働者が働きやすい環境をつくるために支給される助成金です。
介護福祉機器等助成
介護福祉機器を導入することで、介護労働者の負担を減らすことができた際に支給される助成金です。
300万円を上限に、導入した介護福祉機器の費用の半分が支給されます。
融資制度
事業を始めたばかりの事業主は、日本政策金融公庫の創業融資を活用すると良いでしょう。
実績のない事業主は通常金融機関から融資を受けることが難しいですが、日本政策金融公庫の創業融資であれば、最大3000万円の融資を受けることができます。
・助成金や補助金を上手く活用することが有効である。
・創業したての事業主は、日本政策金融公庫の創業融を利用するのも良い。
デイサービスの開業に必要な人員基準
デイサービスの開業に必要な人員基準は、以下の通りです。
デイサービスの人員基準
デイサービスを適切に運用するためには、以下のような人員が必要です。
- 管理者
- 生活相談員
- 看護職員
- 介護職員
- 機能訓練指導員
常勤で業務管理を担う管理者に加え、入所の手続きなどの庶務を行う生活相談員、緊急時に医療行為を行ったり利用者の健康チェックを行ったりする、看護職員などが必要です。
・デイサービスの開業する際には、人員基準がある。
・デイサービスを適切に運用するためには、様々な専門知識を持つ人が必要である。
デイサービスの開業に失敗しないためには?
デイサービスの開業に失敗しないためには、以下の点に注意する必要があるでしょう。
スタッフの確保と育成に力を入れる
デイサービスは人材不足に陥りやすいため、サービスを十分に提供できるだけのスタッフを確保することが大切です。
また、初めからスキルのあるスタッフをたくさん雇うことは難しいため、スタッフを育成する仕組みを作ることも大切です。
独自のアピールポイントを作る
食事が美味しい、独自のレクリエーションがある、など他のデイサービスにはない差別化ポイントを作って売り出すことで、利用者を集めやすくなります。
開業に詳しい専門家を活用する
法人を設立するためには、税務や経理に関する専門知識が必要です。
1人で進めていても効率が悪く、ミスをする可能性も高いため、開業に詳しい専門家を活用するのがおすすめです。
・デイサービスの開業では、スタッフの確保と育成が大切である。
・他のデイサービスにはないアピールポイントを作ることが大切である。
・税務や経理に関する専門知識が必要である。
デイサービスの開業のサポートなら
デイサービスを開業する際は、初期費用が多くかかります。
デイサービスの場合、事業所が必須であるだけでなく、利用者を送迎するための車両も購入しなければなりません。
このため、デイサービスを開業する際には、どのようにして資金をやりくりするかが重要です。
経営のプロ集団である経営サポートプラスアルファでは、資金調達や助成金、補助金周りのサポートに加え、節税対策も事業主の方の目線に沿ってご提案します。
その他、会社設立手続きの代行も可能です。
デイサービスの開業を検討している方は、ぜひ1度ご相談ください。