会社を設立する際、「株式会社」「合名会社」「合資会社」「合同会社」といった形態を選んで設立することになります。
これらの中で、もっとも設立のハードルが低いのが合同会社です。
プライベートカンパニーのような小規模の会社を作る場合は、合同会社にする人が多いでしょう。
しかし、手続きの際に選んだ形態はどうすれば変更することができるのでしょうか?
また、組織の形を変更することで、どんなメリットがあるのでしょうか?
今回は、合同会社から株式会社への組織変更について解説します。
合同会社から株式会社へ変更するメリット
株式会社には、合同会社では得られない様々な利点があります。
最初に、合同会社から株式会社への組織変更にどんなメリットがあるのかについて解説します。
社会的信頼度が上がる
1つめに挙げられるメリットとして、周りからの信用度の上昇があります。
そもそも合同会社には、きちんとした会社として見られないことがあるというデメリットがあります。
株式会社よりも設立するハードルが低いこと、合同会社という制度自体が新しく、形態に親しみのない人が多いことが理由です。
よりきちんとした会社だと思われやすい形である株式会社に変更することで信用力が上がり、顧客が増加したり、人材が集まりやすくなったりといった効果が望めます。
株として出資してもらえる
合同会社と株式会社の違いは、誰が事業に出資するかです。
合同会社は経営者自身もしくは社員が出資し、株式会社は出資者に株式を購入してもらうことで資金を調達します。
合同会社の場合は、資金の額は経営者の経済状況に大きく依存しますが、株式会社の場合は経営者以外からも出資をしてもらえるため、合同会社よりも大きな資金を得ることができます。
資金が増えると、事業の拡大や優秀な人材の登用など、より良い会社の運営に生かすことができます。
上場できる
証券取引所で会社の株式を取引できるようにすることを上場といい、会社を上場させるためには証券取引所の審査を受け、きちんと許可を取る必要があります。
全ての企業が審査を通るわけはありませんが、これをクリアした場合、公的に認められた企業であるとしてさらなる信用度の上昇、容易な資金調達が見込めます。
また、取引所の審査基準を通る必要があるため、社内の体制が整い、労働環境が改善されることもメリットのひとつと言えます。
合同会社は上場することができませんので、株式会社に変更して初めて上場のスタートラインに立つことができます。
会社設立の費用が節約することができる
合同会社を設立する際にかかる費用は、株式会社よりも少ないです。
まず合同会社として立ち上げ、会社が軌道に乗ったあとで株式会社に変更することで、最終的に必要な費用が少なくなる場合があります。
合同会社から株式会へ変更する手続き
株式会社に変更することで、主に信用力の面や経済面で大きなメリットがあることがわかりました。
ですが、合同会社から株式会社に変更するにはどんな手続きは必要なのでしょうか?
手続きには、大きく分けて4つのステップがあります。
1 <ステップ1> 組織変更計画書の作成
株式会社への手続きでまず準備しなければいけないのは、「組織変更計画書」です。
組織変更計画書は公的機関で入手で記入するものではなく、個人で作成する書類です。
決められた形態は存在しないので、自分で調べる、専門家に相談するといったプロセスが必要になります。
書かなければならない点は、主に
- 社名
- 事業目的
- 本店所在地
- 発行可能株式総数
- 定款
- 取締役の氏名
- 効力発生日
などが挙げられます。
どうしても分からないことがあれば、専門家へ相談するのが確実です。
2 <ステップ2> 総社員の同意
株式会社への変更のためには、社員全員からの同意を得なければいけません。
組織変更計画書に記入した効力発生日の前日までに、必ず全社員から同意を得ましょう。
社内の混乱を避けるために、前もって社員に話しておくのが良いでしょう。
3 <ステップ3> 債権者保護手続き
債権者がいてもいなくても、債権者保護手続きというステップを踏む必要があります。
債権者保護手続きは、
- ①官報への広告掲載
組織変更1ヶ月以上前に、場合によるが約30万円を支払って官報に広告を掲載 - ②個別債権者への勧告
債権者全員に形態変更について勧告をする
の流れで行います。
個別債権者の反対があった場合、組織変更を行うことはできません。
4 <ステップ4> 合同会社の解散及び株式会社の設立登記申請
最終ステップとして、合同会社を解散し、株式会社の設立登記を行う必要があります。
1週間程度の審査期間ののち、株式会社の登記簿謄本の取得ができるようになります。
合同会社から株式会社会社変更で必要になる費用
会社形態の手続きや申請には、いくらか費用が必要になります。
費用が必要になる工程は、
- 官報への広告掲載料
- 登録免許税
の2つです。
官報への掲載料は、発行部数など場合によって変わりますが、約30万円程度です。
登録免許税は合同会社の解散、株式会社の設立でそれぞれ必要です。
合同会社の解散の費用は3万円ですが、株式会社の設立の費用は3万円と資本金の1000分の1.5のどちらか高い方が課されます。
資本金が高額な場合を除き、株式会社への変更にかかる費用は40万円程度です。
合同会社から株式会社変更する際のよくある質問
手続きや費用については確認しましたが、公的な手続きが得意な人は少なくないでしょう。
申請や費用以外のことについて不安に思う点もあるはずです。
事前によくある疑問を確認しておきましょう。
1人でできる?
全社員の同意などを除けば、全て個人でこなすことができる手続きです。
しかし、計画書の作成、申請など、知識がないと時間や手間がかかる工程は多いです。
無理して1人で不備のある変更手続きをするのは効率的ではありません。
少しでも不安があれば、専門家に相談し、助言をしてもらうといいでしょう。
消費税の免除は延長される?
法人事業の形態が変わらない以上、免除はされない可能性が高いです。
ただ、実態で判断される要素ですので、専門家に頼るのが確実です。
タイミングに悩んでいる…
形態を変えるということは、会社を定義づける形を変えるということです。
程度はどうあれ、社内は混乱するでしょう。
適当なタイミングを見極めたスムーズな移行が求められます。
専門家に依頼して、客観的な意見をもらうといいでしょう。
まとめ
合同会社から株式会社に変更することにより、社会的信頼度が上がる、得られる資金の額が増えるといったメリットがあります。
手続きは組織変更計画書の作成、総社員の同意、債権者保護手続き、合同会社の解散及び株式会社の設立登記申請の4ステップを踏む必要があり、必要となる費用は場合にもよりますが40万円程度で済む場合が多いです。
知識がない状態での書類作成は得策とは言えませんので、少しでも不安があるなら専門家の力を借りるようにしましょう。