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法人登記後の住所変更は可能?必要な手続きと注意点について

法人登記後の住所変更は可能?

法人登記後の住所変更は可能です。

ただし、個人が引っ越したときには役所に転入出届を出すのと同じように、法人は法務省や税務署、都道府県や市町村に住所変更となったことを届けなければいけません

次に、法人の住所変更をするときに必要な手続きややるべきことについて解説します。

会社の住所変更にともなって管轄の法務局や都道府県、市町村も変更になった場合の手続きも合わせて紹介しています。

法人の住所変更をする際に必ずすべきこと

法人登記後の住所変更をするさいにすべき4つのことを解説します。

法務局へ必要書類を出す

会社の移転後、まず行うべきなのが法務省での手続きです。

移転後2週間以内に管轄の法務省へ足を運び、法人の住所変更に必要な以下の書類を提出します。

必要書類一覧

  • 変更登記申請書
  • 株主総会議事録
  • 株主の氏名または名称、住所及び議決権数等を証する書面
  • 取締役会議事録
  • 印鑑届書
  • 印鑑カード交付申請書

変更登記申請書は法的要件をそろえて作成するため、一般的には行政書士に作成を依頼します。

作成費用がかかることを覚えておきましょう。

定款を変更する必要がある場合は、株主総会議事録、株主の氏名または名称、住所及び議決権数等を証する書面が必要です。

また会社の住所変更にともない法務省の管轄が変わる場合は、以下の手続きも必要になります。

  • 旧住所の法務省に新住所を管轄する法務局の申請書を提出する
  • 新住所を管轄する法務局で新しい印鑑カードを発行する

税務署へ異動届を出す

法務省での変更登記手続きが完了したあとは、税務署に異動届を提出します。

なお、異動届の提出は異動前の税務署のみで問題ありません。

必要書類一覧

  • 異動届
  • 所得税・消費税の納税地の異動に関する届出書
  • 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
  • 登記事項証明書

都道府県税事務所へ必要書類を出す

会社を管轄する都道府県税事務所に足を運び、地方税に関する法人等異動届出書を提出します。

一般的には異動届に登記事項証明書を添付し提出しますが、提出様式や期限は書く都道府県税事務所によって異なるので、確認しておきましょう。

必要書類一覧

  • 異動届
  • 登記事項証明書

なお、会社の移転によって管轄する都道府県税事務所が変わる場合は、変更前・変更後両方の都道府県税事務所への書類提出が必要です。

事務所によっては足を運ばずに公式サイトで書式がダウンロードできる場合があるので、活用しましょう。

市区町村へ必要書類を出す

会社を管轄する市区町村役所へ足を運び、地方税に関する法人等異動届出書を提出します。

こちらも市区町村によって提出する様式や期限が異なってくるので、都道府県税事務所での書類提出童謡確認をしておきましょう。

必要書類一覧

  • 法人等異動届出書
  • 登記事項証明書

なお、会社の移転によって管轄する市区町村が変わる場合は、変更前・変更後両方の市区町村役所への書類提出が必要です。

公式サイトで書式がダウンロードできる場合があるので、こちらも活用しましょう。

従業員が支払う住民税は、会社が給料から天引きして市区町村へ支払っています。

そのため、会社を移転したさいには従業員の住んでいる市区町村への変更届の提出も必要です。

必要書類一覧

  • 給与支払者(特別徴収義務者)の所在地・名称変更届出書
  • 登記事項証明書

法人の住所を変更する際に忘れがちな注意点

法人の住所変更は提出書類の数や提出先も多いです。

さらに、法務省や税務署、都道府県や市町村などの公の場所以外での手続きも忘れてはいけません。

法人の住所を変更する際に特に忘れがちな6つの注意点をまとめました。

許認可を受けている際の変更届を出し忘れる

建設業、労働者派遣事業などの許認可を受けている場合、移転から30日以内に許可を受けている窓口への変更届の提出が必要です。

許認可の種類によって提出書類の様式や、必要書類、費用が異なってきます。

許認可を受けた先の役所にあらかじめ必要手続きについて確認をしておきましょう。

銀行、ネットバンキング等金融機関への手続きを忘れてしまう

会社で利用している銀行やネットバンキングなどの金融機関にも、住所変更の手続きは必要です。

金融機関の郵便物は転送不可扱いのため、金融機関の住所変更手続きを忘れてしまうと郵便物が新住所に転送されない可能性があります。

忘れずに金融機関への住所変更手続きを行いましょう。

必要書類一覧

  • 通帳
  • 口座の届印
  • 登記事項証明書
  • 本人確認書類 など

金融機関によって住所変更に必要な書類は異なります。

また手続きは金融機関の取引窓口で行いますが、インターネットバンキングの場合ネットで受け付けてから必要書類の郵送、という手続き方法が多いです。

必要書類や手続き方法を確認して、金融機関の住所変更を行いましょう。

日本政策金融公庫から融資を受けている場合で本社や本店の住所を変更したときには、公庫所定の変更届の提出による報告が必要です。

必要書類一覧

  • 本店所在地の変更届
  • 登記事項証明書
  • 印鑑証明書

法人名義のクレジットカードの変更を忘れてしまう

クレジットカード会社の郵便物も、転送不可扱いになります。

法人名義のクレジットカードの住所変更を行わないと、新住所に郵便物が届かないため必ず手続きをしておきましょう。

必要書類一覧

  • 登記事項証明書
  • 法人印鑑証明書

手続きに必要な書類や手順は、各クレジットカード会社の公式サイトに案内があります。

また、クレジットカード会社によっては窓口に出向かなくても、オンラインで変更手続きが可能な場合が多いのでぜひ活用しましょう。

取引先への連絡を怠る

取引先には、請求書や納品書などの住所を変更してもらう必要があります。

必ず各取引先への移転連絡は忘れないようにしましょう。

郵送またはFAXで移転の挨拶状を取引先に送付して移転連絡を行います。

各種契約書の変更を忘れてしまう

会社で各種契約しているものも手続きが必要です。

以下の契約の住所変更も忘れずに行いましょう。

・店舗やテナントを契約している場合は不動産管理会社への解約手続き
・電話、電気、ガス、水道の各公共料金の停止と開始の手続き
・携帯電話、インターネットプロバイダへの契約者情報(住所)変更
・社用車の住所変更
・団体保険、経営者保険、自動車保険、企業年金などを契約していれば保険会社への変更手続き など

不動産管理会社や家主への退去の連絡は、解約予告期限内に行わなければいけません。

あらかじめ賃貸借契約書に記載されている解約予告期限を確認しておきましょう。

また、移転後も賃貸物件を利用する場合は、退去届や解約届を出すタイミングによって移転元、移転先の家賃を2重で支払う期間が発生します。

移転スケジュールを移転希望から逆算して作成し、スムーズな解約と契約をしましょう。

公共料金の停止と開始の手続きは、公式サイトより手続きをすれば進めてくれます。

ただし、ガスの開栓作業時は立ち合いが必要なのを覚えておきましょう。

名刺や従業員のメール署名などを変更し漏れる

会社の住所が記載されている書類やデータなどは、変更が必要です。

変更漏れがないかをチェックしましょう。

・名刺
・メール署名
・会社案内やパンフレット
・社名入り封筒
・ゴム印
・ホームページ など

手続きが漏れるとペナルティや罰金?

移転による登記事項の変更は、会社法によって2週間以内の手続きが義務付けられています。

もしも期限内に手続きをしなかった場合は、会社の代表者に100万円以下の過料というペナルティが科されます。

ただし、期限後でも登記事項変更の手続きは可能です。

また、1日遅れたからすぐにペナルティが与えられる、という可能性も低いでしょう。

ただし、手続きが遅れれば遅れるほどペナルティが与えられる可能性が高くなるので、移転による手続きは期限内に忘れず行うようにしましょう。

住所変更が面倒な場合の対処法

法人登記後の住所変更は公的な手続きのほか、会社の契約や書類などの変更も必要なため面倒と感じるときも多いです。

もしも住所変更が面倒な場合に有効な対処方法を3つ紹介します。

本社を変更せず、店舗にする

法人登記されている住所は、本社や本店です。

よって、移転予定の事業所や店舗を本社や本店にする必要がない場合には、支社や支店として移管するのも方法のひとつです。

本社や本店はそのままになるので、法人登記に関する手続きは不要となります。

ただし、テナントビルなどの賃貸物件で移転後存続がない場合には、支社や支店としても残せません。

そのため、賃貸物件などで本社や本店として存続できない場合には、住所変更による諸手続きが必要になります。

新会社を設立する

会社の事業拡大による移転ではなく、事業変更によって移転を検討する場合があります。

すでに起こしている事業と違う新事業をはじめる場合、移転ではなく新会社にする方法もあります。

ただし新会社とする場合には、移転による住所変更ではなく、新会社設立のための手続きが必要です。

代行会社に頼む

法人登記の住所変更でそろえる書類が多すぎてわからない、法務局や税務署へ足を運ぶ時間がない、という場合には住所変更にともなう諸手続きを代行してくれる会社やサービスを利用する方法があります。

代行を利用する場合には、変更登記申請書の作成を行政書士に依頼するなど一部だけ代行してもらう場合から、必要な書類一式の作成から法務省への登記申請手続きまで代行してもらう場合まであります。

また、自分で手続きを行う際にアドバイスや相談だけを受けられるサービスもあります。

代行してもらいたい範囲や費用に応じた代行サービスや会社を選びましょう。

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記事監修者の情報

税理士法人
経営サポートプラスアルファ

代表税理士 高井亮成

保有資格:税理士・行政書士

税理士の専門学校を卒業後、会計事務所に入社。
その後、税理士法人に転職をして上場企業や売上高数十億円~数百億円規模の会計税務に携わる。

現在は税理士法人の代表税理士として起業・会社設立をする方の起業相談からその後の会計、決算、確定申告のサポートを行っている。