取締役の任期をご存じでしょうか。
基本的には2年ですが、最長で10年まで延長可能です。
今回は、取締役の任期の決め方や途中変更方法を紹介します。
任期は長ければいいわけでもないですが、変更するたびに事務手数料が必要なので、費用を節約したい場合は長めに設定するといいでしょう。
これから会社を設立する人や取締役へ打診されている人は、ぜひ参考にしてください。
目次
取締役の任期とは?
取締役の任期は、原則2年です。
しかし、非公開会社ならば定款で取締役の任期を最長10年まで延ばせます。
10年以内ならば、1年でも3年でも8年でも構いません。
任期終了となった取締役は原則退任ですが、継続する場合は一度退任して重任手続きをしなければなりません。
この場合、株主総会の決議を行い定時株主総会の議事録を基に法務局で役員変更登記が必要です。
なお任期満了で退任する場合、決議の必要はありません。
中小企業は企業オーナーが経営者となっているので、重任となる可能性が高いでしょう。
しかし、法務局での手続きが重任ごとに必要となり手間がかかるので、よほどのことがない限り変わらない場合は最初から10年で設定するといいでしょう。
取締役の任期を10年にするには?
会社設立時から取締役の任期を10年にしたい場合は、定款で10年と定めてください。
取締役の任期は定款で定められたものとなるので、設立時にとくに言及がなければ自動的に2年となります。
任期は1年から10年の間で自由に選べますが、定款に記載しなければ効力を持たないので注意してください。
ただし、10年の間で自由に選べるからといっても、何も考えずに10年とするのはやめましょう。
どうしてその年数の任期なのかを考えて設定するべきです。
取締役と監査役の違いとは?
取締役は会社を代表する立場ですが、監査役は会社法第381条で取締役・会計参与の職務の執行を監査する立場にある会社の機関と定められています。
監査役は必ずしも設置しなければならないわけではなく、会社が自由に決めて構いません。
その際、定款で定めることがルールとなっています(会社法第326条第2項)。
しかし、取締役会設置会社・会計監査人設置会社においては、監査役を置かなければならないので注意しましょう(会社法第327条第2項・3項)。
なお、株主総会以外の機関として取締役は必ず設置しなければなりません(会社法第326条第1項)。
取締役と役員の違いとは?
取締役は、株主総会で選任され、会社の業務執行に関する意思決定をする人を指します。
一方で役員は、法律によって定義が異なるため注意が必要です。
- 会社法の場合:取締役、会計参与、監査役
- 会社法施行原則の場合:取締役、会計参与、監査役、執行役、理事、監事
- 独占禁止法の場合:理事、取締役、執行役、業務を執行する役員、監事もしくは監査役もしくはこれらに準ずるもの(相談役・顧問・参与など)、支配人または本店もしくは支店の事業主任者
会社法で「役員等」という場合は、取締役・会計参与・監査役だけでなく、執行役と会計監査人も含められます。
「法律上の役員」という場合は会社法の「役員」を指しますが、一般的に役員という場合は、執行役員を含めるケースが多いです。
執行役員は、取締役会の決定に基づいて業務の執行を行う人となります。
経営と業務執行の役割分担をする立場であり、執行役員が取締役であるケースはあまりなく、取締役の下に置かれるポストであり、経営権や法律上の責任もありません。
そのため、執行役員は部長や課長など社内の役職名と同じと考えていいでしょう。
取締役の任期の延長方法
取締役の任期を延長する場合は、株主総会で特別決議を行わなくてはなりません。
特別決議では、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の多数で決議することが条件です。
定款に定めた任期を変更してしまうと、必然的に在任中の取締役の任期も伸びてしまうので、もし複数名の取締役がいる場合は注意しなければなりません。
任期を伸ばすための定款変更をした株主総会決議の時点で、既に任期満了の取締役については影響はありません。
取締役の任期の決め方とは?
取締役の任期を決める方法は、以下の3つです。
- 取締役会で決定する
- 定款で規定する
- 株主総会で決定する
取締役会で決定する
取締役会がある会社の場合、取締役選定を取締役会の決議で行いますが、このときに任期も一緒に決められます。
取締役会は3人以上の取締役で構成され、決議には取締役の過半数が出席し、出席した取締役の過半数が賛成するのが条件です。
定款で規定する
取締役の任期は定款で定められますが、とくに定めがなければ2年となります。
途中で取締役の任期を変更する場合は、株主総会で定款の変更を決議しなければなりません。
なお、役員任期変更にともなう定款変更では登記の申請は必要なく、議事録を会社に備え置いて管理してください。
株主総会で決定する
取締役の任期は株主総会で決定できます。
任期を決めたら特別決議を行い、定款変更の決議を行ってください。
その後は議事録を作成して、法務局へ提出しなければなりません。
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取締役の任期を決める時の注意点
取締役の任期を決める時に注意すべき点は、以下の3点です。
- 取締役に試用期間がない
- 取締役の着任には事務費用がかかる
- 基本的には任期いっぱいまで取締役になる
注意点を抑えてから取締役の任期を決めるといいでしょう。
取締役には試用期間がない
取締役には一般的に試用期間がありませんので、選任されるとすぐ辞めさせることは難しいです。
そのため取締役の選任は慎重でなければならず、もし人物の資質や過去の実績に不安要素・不明確要素がある場合、選任を控えた方がいいでしょう。
取締役の着任には事務費用がかかる
取締役の着任には事務費用が必要なので、たとえば任期を2年にしていると着任ごとに支出が必要です。
そのため、任期を10年にしておけば事務費用を抑えられます。
特に家族経営の会社などは最初から長めの任期に設定しておくと、支出を抑えられるでしょう。
基本的には任期いっぱいまで取締役になる
取締役に選任されると、基本的に途中で任期が終わることなく、事前に決められた任期が続くと考えた方がいいでしょう。
途中解任は可能ですが、株主総会で決定するなど手続きが必要です。
そのため、あまり任期を長くしすぎると問題が起きて解任となった際に面倒かもしれません。
もちろん取締役として選ぶ人なので、素行不良など問題がある人でないことが多いでしょう。
しかし、何があるかわからないので任期について慎重に考えるべきです。
取締役の任期は途中で中断できる?
取締役を任期途中で解任することはできますが、簡単ではありません。
もし、正当な理由がないのに任期終了前に解任したときは、会社はその取締役に対して解任によって生じた損害賠償をしなければならないと会社法339第条2項で定められています。
そのため、不正行為や法令・定款に違反する重大な事実がある場合など、正当な理由がなければ任期途中の解任は難しいです。
また、解任する場合は株主総会を開き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数が賛成しなければ解任を認められません。
取締役を変更した場合には登記の変更が必要
取締役に変更があった場合は登記の変更も必要です。
登記変更は管轄の法務局に登記申請書と必要書類を提出もしくは郵送し、審査を受ける必要があります。
書類内容に不備があると訂正と再手続きが必要なので、やり直しがないように司法書士などに相談した方が確実です。
なお、取締役変更時の定款変更は必要ありませんが、任期期間を変更する場合は必要となるので注意しましょう。
取締役になることのリスクとは?
取締役になることのリスクは、以下の3つです。
- 株主代表訴訟の対象になる
- 損害賠償を請求されることがある
- 法的な責任を負うこともある
これから会社を作ろうとしている人は取締役になるケースも多々あるでしょう。
そのためリスクもしっかり認識しておくべきです。
株主代表訴訟の対象になる
取締役になると株主代表訴訟の対象となるリスクがあります。
株主代表訴訟とは、株主が会社に代わって会社経営者である取締役の経営責任を追及し損害賠償を請求する訴訟です。
取締役になって利益を生み出す任務を怠ったことで損害を生じさせてしまったら、株主から訴訟されるリスクがあると認識しておくといいでしょう。
損害賠償を請求されることがある
法律に違反する行為や悪意、重過失が認められて会社が倒産した場合、取締役は損害賠償を請求される可能性があります。
たとえば、詐欺的な商法や会計に虚偽記載などが発覚した場合などです。
法的な責任を負うこともある
取締役は、法令や定款に従って常識的な行動を取らなかった場合や、任務を怠った場合には責任をとらなくてはなりません。
取締役が得をすることで会社側が損害を被るような利益相反行為や、第三者である株主や会社の債権者、取引先に対して悪意もしくは重大な過失があった場合は、会社以外の第三者に対して損害賠償をする責任があります。
まとめ
基本的には2年となっていますが、最長で10年まで延長可能です。
しかし、途中解任するには株主総会で決議を取らなければならず面倒な作業が必要となり、逆に任期を長くしたければ定款変更が必要と煩雑な作業をしなくてはなりません。
そのため、任期の長さは設立段階で慎重に決めるといいでしょう。
また、取締役は法的な責任を負う立場でもあるため、信用できる人に任せるべきです。
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