「マッサージ店って誰でも開業できるの?」
「必要な資格や届け出は?」
マッサージ店の開業を思い立ったものの、開業の手続きや必要資格など、いくつかの疑問点をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
マッサージ店の開業には、開業に必要な国家資格と、あると良い民間の資格があります。
この記事では、必要資格の他に、開業までの道のりや、運営スタイルなど、網羅的に解説しています。
マッサージ店の開業で独立したいとお考えの方は、ぜひ記事内容をご確認ください。
マッサージ店を開業するために必要な手続き
マッサージ店を開業するにあたって、必要な手続きの詳細を以下に解説します。
施術所開設届出書
マッサージ店を開業するには、管轄の自治体へ施術所開設届出書を提出しなければいけません。
開業から店舗の検査までの流れは以下の通りです。
◆ 開業にあたって保険医療担当へ事前相談
◆ 開設
◆ 開設届の提出
◆ 保健所職員による検査
マッサージ店の工事を行う前に、設計図をもとに保健医療担当へ相談します。
適合しない設計になっていると保険医療担当から指摘を受け、修正します。
マッサージ店開設10日以内に開設届を提出し、保健所の職員による検査をクリアして完了です。
届出内容の相違、書類の不備がなければその場で、開設届の写しを貰います。
開業までの手続きが少し面倒ですが、開業にあたって必要な手続きなので忘れないようにしましょう。
税務署へ開業届の提出
個人事業主としてマッサージ店を開業する場合、税務署へ開業届けを提出します。
開業届は個人事業主として活動することを申請するための書類で、開業して1ヶ月以内に最寄りの税務署に提出します。
絶対に出さなければいけない書類ではありませんが、青色申告で確定申告をしたい場合、開業届の提出は必須です。
都道府県へ事業開始等申告書
事業開始申告書は、都道府県の税事務所に個人事業の開業を申告する書類です。
都道府県ごとに提出期限や提出先に違いがあり、東京都は事業開始から15日以内、神奈川県は1ヶ月以内となっています。提出しなくても特に罰則はありません。
開業届の管轄は税務署ですが、事業開始等申告書は都道府県あてに提出します。
国税の管轄は税務署で、地方税の管轄が都道府県税事務所と別れているため、開業届と事業開始等申告書の提出先が異なるのです。
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マッサージ店を開業するための資格
マッサージ店を開業するために必要な国家資格と、あると良い民間資格について解説します。
国家資格
国家資格はあん摩マッサージ指圧師と鍼灸師です。
あん摩マッサージ指圧師
マッサージ師といえば、あん摩マッサージ指圧師、という程に代表的な資格です。
あん摩マッサージ指圧師の資格があれば、健康保険が適用される治療を行うことができ、整体師との区別化が可能です。
あん摩マッサージ指圧師の資格を取得するには、養成機関に3年~4年通いながら資格の勉強が必要なので、資格取得の難易度は高いとされています。
養成機関に通っても最終的に、国家資格に合格しなければ資格を取得することができません。
あん摩マッサージ指圧師の資格は、マッサージ店の開業に必要ですが、開業できなかったとしても福祉施設や治療院、病院など就職できる選択肢が増えますので、汎用性が高い資格でもあります。
鍼灸師
鍼灸師はツボを指圧、またはお灸や針で刺激して人間が本来持っている自然治癒力を高めるための施術を行います。
鍼灸師になるには、「はり師」、「きゅう師」という二つの国家資格を取得しなければいけません。
3年~4年を経て鍼灸師養成学校を卒業すると、受験資格を得ることができます。
養成学校では、はりきゅうの実技や、東洋医学概論、ツボについての勉強、解剖学を学びます。
マッサージ店を開業するにあたって、取得しているとお客さんを呼べる経歴となります。
マッサージ店の開業以外にも、鍼灸院や、介護、福祉施設、スポーツトレーナーなど、あん摩マッサージ指圧師とならんで汎用性の高い資格です。
民間資格
必須の資格ではありませんが、取得することで経歴としてアピールできる資格です。
リンパドレナージュセラピスト
リンパドレナージュとは、リンパマッサージによって人の体内に存在するリンパ液の流れを促進し、効率よく老廃物除去ができることを目的とした施術です。
施術方法は、あん摩マッサージ指圧師が行うマッサージに似ていますが、施術方法が微妙に違います。
リンパドレナージュセラピストの民間資格は美容用途と医療用と合わせて、多くの民間資格があります。
開業するマッサージ店の運営スタイルに合わせて、資格をとっておくと経歴としてアピールできます。
あん摩マッサージ指圧師の資格がないと取得できないリンパドレナージュの資格を取るとより説得力のある経歴としてアピールできるでしょう。
マッサージ店の運営スタイル
マッサージ店の運営スタイルには、いくつかの種類があります。
3つの運用方法を解説します。
店舗を構える
立地の良い物件を探して、テナントを借りるベーシックな運営スタイルです。
立地の良い場所を自ら選んで営業をスタートできる利点はありますが、高額な初期費用や、家賃がネックです。
高い初期費用や家賃と引き換えに、人通りが多い場所で開業すると、最初からある程度の来客を見込むことができます。
店頭の立て看板でもある程度の宣伝効果を見込むことができ、集客のための広告費を抑えることが可能です。
店舗を構えることで信用度もアップしますので、出店にともなう費用対効果はそれなりに高いといえます。
基本はターミナル駅の人通りが多い場所へ出店することが望ましいでしょう。
自宅兼店舗
自宅を店舗として開業する場合、家賃や初期費用がかからないので経費削減になりますが、生活感のある空間のままだと、店舗としてふさわしくありません。
多くの場合、改装を検討することになるでしょう。
自宅の改装を前提とした開業初期費用は改装の規模にもよりますが、内装のみの場合、おおよそ100万円あれば足りるのではないでしょうか。
増改築を含むとさらにお金がかかります。
自宅で開業する場合、立地の良い店舗に比べて広告費用が多めにかかることも、抑えておきましょう。
出張
出張の運営スタイルでは、物件を借りる費用や、改装の費用がかからないので初期費用を割安に抑えることができます。
出張先に施術環境がない時に備えて折りたたみ式のベッドを用意する場合でも、10万円もあれば十分でしょう。
出張でマッサージ店を運営していく場合、広告宣伝に集中して費用を投入しましょう。
十分に宣伝しないと、マッサージ店の存在を知ってもらう機会さえありません。
宣伝方法は様々ありますが、まずは基本となるWEBサイトを制作し、ターゲット層に向けて、SNS、チラシ、看板などさまざまな分野に広告出稿を行います。
マッサージのメニューや施術内容を決める
マッサージ店運営の要となる施術内容や料金設定の決め方について、解説します。
周辺状況の調査
出店を決めた場所の周りに競合店がある場合、事前に調査しておきましょう。
料金体系や価格を事前に調べて相場を把握しておく必要があります。
オフィス街や歓楽街。住宅地など、立地によって見込める客層が異なります。
ご年配の腰痛、肩こりに対する施術なのか、サラリーマンや主婦、OLに対するリラクゼーション効果を取り入れた施術なのか、スポーツトレーナーとして、スポーツ動作に関する痛みに対する施術なのか、選択肢はさまざまです。
あん摩マッサージ指圧をメインとした施術では、特徴が分かりにくいので、ターゲット層に合わせた強みをアピールしたいところです。
独自性や優位性を明らかにする
競争が激しい立地を選んだ場合、競合店より多く集客することを目標におかなければ、やがては閉店に追い込まれてしまうでしょう。
店舗ならではの強みや独自性をアピールするための要素はさまざまありますが、施術するスタッフの経歴は強いアピールポイントとなります。
あん摩マッサージ指圧師の資格を始めとして、あると良い鍼灸師の資格や、リンパマッサージの民間資格など、マッサージ店の運営に関係がありそうな資格は取得しておいたほうが良いでしょう。
施術内容は、資格や経歴の裏付けがあってこそ説得力を持ちますので、他店との競争に勝つために資格を保有しておくことは有効な手段です。
価格で競争する手段もありますが、ディスカウント合戦になると、エリアの店舗が共倒れになってしまう可能性がありますので、あまりおすすめできません。
独立開業とフランチャイズ
マッサージ店の開業には、最初から自分の力で独立する方法と、フランチャイズに加盟する方法があります。
それぞれのメリットやデメリットについて解説します。
独立開業のメリット・デメリット
個人で独立すると、営業時間や店休日、営業方針や接客のルールなど、店舗の運営に関する重要なことをすべて自分で決めることができます。
フランチャイズは、運営会社へ売上金からロイヤリティを支払いますが、個人の独立開業では、売上はすべて自分のものとなります。
自由度の高さと、売上金をすべて確保できる点が独立開業のメリットです。
大きなデメリットとなるのは、運営方法のノウハウを自分で会得しなければならない点です。
店舗運営のノウハウがない状態で開業すると、フランチャイズよりもスタートが少し出遅れるかもしれません。
フランチャイズのメリット・デメリット
フランチャイズの場合、最初から知名度があり、店舗運営のノウハウをもっているため、開業の初期段階からスムーズに店舗運営ができます。
組織としての力が最初から備わっているので、競合の他店舗にも対抗できる可能性が高いのです。
個人事業主として全く経験がない状態でスタートしても、本部から十分な指導を受けられるため、最低限のスキルを持った状態で店舗運営が可能です。
定期的に指導を貰えるので、すぐにスキルが上がっていくでしょう。
開業初期に店舗運営がうまくいかず、思うように収入が得られない場合、収入補償の制度を設けている会社もありますので、いきなり閉店に追い込まれる可能性は低いでしょう。
フランチャイズのデメリットは自由度が低いことと、売上金からロイヤリティを支払う義務があることです。
営業時間や店休部、接客のルールや料金体系など、すべてテンプレートで決まっていますので、従う以外の選択肢はありません。
ロイヤリティの支払いは、ノウハウの共有や、知名度を借りていることを考えると、デメリットとは言い難いかもしれません。
まとめ
マッサージ店の開業には、保健所への届け出とあん摩マッサージ指圧師の国家資格が必要です。
ツボの指圧や、はり、お灸の施術を行う場合、鍼灸師の国家資格も必要になります。
運営スタイルにもよりますが、両方の国家資格を取得しておいたほうが、先々の店舗運営に役立ちます。
マッサージに関する民間資格の取得は、経歴のアピールにつながり、集客に役立ちます。
開業には、独立とフランチャイズの加盟の選択肢がありますが、ある程度の運営基盤が期待できる場合、独立、全くの白紙状態から始めるならフランチャイズが無難です。
店舗の強みや特徴をうまくアピールしつつ、うまく店舗運営を行いましょう。