板金屋として独立するときに注意すべき点は何でしょうか。
今回は板金屋として独立するときの注意点や板金屋の種類について解説します。
未経験からでも仕事に就ける板金屋ですが、スキルがなければ独立後にやっていくことはできません。
板金屋の種類
板金屋として独立を考える場合、「建築板金」と「塗装板金」の2種類があります。
双方とも板金屋と呼ばれるものですが、それぞれ仕事内容は違うので詳しく見てみましょう。
建築板金
建築板金は、屋根・外壁・雨といをはじめ、厨房用金物・ダクト・天蓋・排気筒、さらに内壁・工芸品など、主に建築板金製品を製造して、これらを建築物の所定個所に取り付ける工事までおこなう業態をいいます。
別名「雨じまい」ともいい、これは住宅を雨風から守る仕事だからです。
屋根といっても家ごとに形がさまざまに異なる外壁に合わせなくてはならず、金属板を自在に加工して取り付けなくてなりません。
多様な現場に的確に対応する難しさもあり、緻密に仕上げるためには職人技と呼ばれる技術が必要です。
塗装板金
塗装板金は、自動車が傷ついたりへこんだりしたときの修理作業のことをいい、「板金」と「塗装」の2つの工程に分かれています。
まず板金とは、車が傷ついたりへこんだりして修理が必要になった際、車のボディーの変形した部分を元の形状に戻すための一連の作業を指します。
またボディーだけでなく、車の損傷が激しい場合は、パネル交換やパーツ交換といった作業も板金作業の一環です。
そのため、自動車を直すための技術がかなり必要となります。
次に塗装とは、修復した部分に調色した塗料を塗り、元の色合いに塗装していく作業のことです。
ただ塗装するだけでなく、修理部分の色をきれいに塗装するために、パテなどで下地を整えなくてはなりません。
板金屋で独立するのために持っておいた方がいい資格
板金屋として独立するために持っておいた方がいい資格は、建築板金と塗装板金とで異なってきます。
建築板金
建築板金で持っておいた方がいい資格は、以下3つです。
- 建築板金技能士試験
- アーク溶接作業主任者特別教育
- 玉掛け技能講習
それぞれ見てみましょう。
建築板金技能士試験
建築板金技能士試験は、厚生労働省が認定している国家資格です。
建物の外壁や屋根、ダクトや雨どいなどを作るために何を気を付ければいいか、建築板金加工に関して高い技術と広い知識を身に着けていると見なされる資格になります。
等級は1~3級まであり、3級は建築板金の作り方の基本的な知識や安全面の知識。
2級は屋根やダクトなどの実際の作り方、図面の読み方など専門的な内容、そして1級はさらに専門的な上級技術者としての知識、技能に加え、見積りなど計画を立てる知識も問われます。
受験資格は、3級はとくにありませんが、2級は実務経験が2年以上、または3級合格者である必要があり、1級になると7年以上の実務経験を持っている人、2級合格後2年以上の実務経験を持っている人、または3級合格後4年以上の実務経験を持っている人です。
アーク溶接作業主任者特別教育
正式には「特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習」といい、溶接ヒュームが特定化学物質に指定されたため、別で受講しなくてはならなくなりました。
アーク溶接のメリットは、安価で比較的高品質な加工が可能なため、板金溶接でもよく使用される手法です。
建築板金を行うとき、作業者としてではなく作業主任として監督する立場になるには持っておいた方がいい資格といえるでしょう。
玉掛け技能講習
玉掛け技能講習は、つり上げ荷重1トン以上のクレーン、移動式クレーン若しくはデリック、揚貨装置による玉掛作業に従事する場合に必要です。
玉掛けはクレーンや移動式クレーンなどで荷を吊るとき、ワイヤロープなどの荷を吊り上げるための用具の準備から、当該用具を用いてフックへ用具を掛ける作業、フックから用具を取り外す作業までの一連の作業をいいます。
屋根工事などの建築板金工事の場合、屋根材を運ぶためにクレーンを用いることもあるため、玉掛け作業に対応できれば現場で活躍できるでしょう。
塗装板金
塗装板金で持っておいた方がいい資格は、以下3つです。
- 自動車車体整備士
- 自動車整備士
- 金属塗装技能士
それぞれ資格の内容を解説します。
自動車車体整備士
自動車車体整備士は、主に自動車車体の整備、たとえばフレームやボディ部分の点検や修理・整備を行います。
自動車の車体における知識と整備技術を持ったスペシャリストといってもいいでしょう。
フレームなど車体の表立った部分の整備をできれば、塗装板金の際に有利になります。
なお、正式には特殊整備士という資格分類の中の「自動車車体整備士」という資格です。
特殊整備士は他にも「自動車タイヤ整備士」と「自動車電気装置整備士」があります。
受験は誰でもできるわけではなく、基本的に専門学校や機械科等を卒業していない場合は、受験するために2年以上の実務経験が必要です。
自動車整備士
自動車整備士は、自動車の点検や修理、メンテナンス・調整、分解・組立などをおこなう専門的な仕事です。
自動車板金塗装修理をするとき、エンジンの脱着やブレーキの脱着など、分解整備に関わる作業をすることもあるので、分解整備を行える国家2級自動車整備士以上の資格を取得しているといいでしょう。
なお、自動車整備工場に併設されている自動車板金塗装工場やカーディーラの自社板金塗装工場へ就職希望の場合は、入社条件が国家2級自動車整備士以上と設定されていることが多いため、独立前の技能習得のために取得もおすすめです。
金属塗装技能士
塗装技能士は、塗装に関する技能を認定する国家資格で、1級・2級・3級に分かれています。
検定試験は「木工塗装作業」、「建築塗装作業」、「金属塗装作業」、「噴霧塗装作業」、「鋼橋塗装作業」に分かれていますが、塗装板金の場合は金属塗装作業で受験するといいでしょう。
塗装工の技術によって仕上がりも変わりますので、塗装板金で独立するならば、塗装技術や知識、実績を裏付けられるため、ぜひとも取得しておきたい資格です。
3級は誰でも受験できますが、2級以上から受験資格があるため注意してください。
板金屋で独立する際の注意点
板金屋で独立する際の注意点は、次の3つです。
- スキルや経験が収入に直結する
- 初期投資が必要になる
- 個人に対しての営業も必要になる
それぞれ詳しく見てみましょう。
スキルや経験が収入に直結する
板金は目に見える部分なので誰もが出来栄えを理解できます。
そのため、スキルや経験がないまま独立してしまうと顧客のリクエストに対して満足に応えられず、クレームが起きるだけでなく、その後の仕事も増えていきません。
スキルや経験が収入に直結するので、ある程度の技術力をつけてから独立してください。
初期投資が必要になる
板金屋として独立するには、加工できる作業場の用意のために初期投資が必要です。
小さな部材は自分たちで加工を行うことがほとんどなので、独立・開業するにはこれらを加工するだけの工場や作業場がなくてはなりません。
また、加工のために必要な工作機械も購入しなくてはならず、仕事があれば独立できるわけではないので初期投資のための資金も事前に準備しておきましょう。
個人に対しての営業も必要になる
建築板金の場合、とび職のように工務店などから依頼を受けるだけでなく、個人から修理などの依頼を受けるケースもあります。
そのため、仕事を増やすためには個人に対しての営業も必要となります。
また、いくら工務店などから仕事が来るといっても、独立すれば勝手に仕事が入ってくるわけではないため、やはり営業やそれに伴う事務作業は必須です。
板金屋として独立するメリット
板金屋として独立するメリットは、次の3つです。
- 付帯業務で利益を出せる
- 需要がなくなる可能性が小さい
- 未経験でもスキルを身につけられる
それぞれ説明します。
付帯業務で利益を出せる
独立すれば主業務である板金作業だけでなく、付帯業務を行うことで利益を稼げます。
たとえば塗装板金の場合は、一緒に自動車の車検を行うことで見積金額を増加させることなどが考えられます。
独立すれば業務の幅を広げやすいため、収入アップを見込めます。
ただし、それだけ仕事量は増えますし、知識が必要なことも認識しておきましょう。
需要がなくなる可能性が小さい
板金業務の需要はなくなる可能性が小さいので、独立しても全く仕事がなくなるとは考えにくいです。
板金建築は、住宅や建築に関わるものなのでなくなるとは考えられませんし、板金塗装も自動車がある限りなくなることはないでしょう。
しかし、日本の人口は減ってきていますし、若者の自動車離れにより購入者は減っています。。
仕事としてなくなることはありませんが、絶対数は減ることも考えられます。
板金屋で独立したら、スキルを磨くだけでなく営業などにも力を入れなければ淘汰されると認識しておいた方が安全でしょう。
未経験でもスキルを身につけられる
板金業務は未経験からでもスキルを身につけられるので、参入しやすいといえるでしょう。
そのため、まずはスキルを付けるために板金工場に勤めることをおすすめします。
そして、ある程度のスキルが身についてから独立を検討してみてください。
また、独立したての頃は人脈が大切になってくるため、コミュニケーションを取って自分自身を覚えてもらうといいでしょう。
まとめ
未経験からでも板金屋自体の仕事には就きやすいです。
しかしながら、素人でも板金の見た目で仕上がり具合がわかるので、やはり板金屋としてある程度のスキルを持ってから独立するといいでしょう。
また、経営サポートプラスアルファであれば、会社立ち上げの最初から最後までしっかりとサポートできます。
そのため、板金屋で独立を検討している人は、ぜひとも経営サポートプラスアルファにご相談ください。