運送業許可とは、トラックで荷物を有償運送する事業を営むために国土交通大臣の許可を受ける「一般貨物自動車運送事業」の許可のことです。
申請書は営業所の所在地を管轄する運輸支局へ提出します。
📋 この記事で分かること
- 運送業許可(一般貨物)と軽貨物運送事業との違い
- 許可取得に必要な5つの要件(人・車両・車庫・資金など)
- 取得までの流れ・期間と、かかる費用の目安
- 個人事業主と法人どちらで取るべきか、2025年法改正のポイント
目次
運送業許可とは?軽貨物運送事業との違いに注意

結論として、運送業許可が必要になるのは「緑ナンバー」のトラックで有償運送を行う一般貨物自動車運送事業です。
軽自動車(黒ナンバー)による軽貨物運送事業は許可ではなく届出のみで開業できます。
一般貨物自動車運送事業許可の対象
一般貨物自動車運送事業とは、他人の需要に応じて有償でトラック等により貨物を運送する事業です。
普通貨物自動車(緑ナンバー)を使用する場合はこの許可が必須で、無許可営業は貨物自動車運送事業法違反として罰則の対象になります。
運送会社を新規に立ち上げる場合、まずこの許可の対象に該当するかどうかを確認することが出発点です。
軽貨物運送事業(黒ナンバー)との違い
軽自動車を使う軽貨物運送事業(貨物軽自動車運送事業)は、運輸支局への「届出」のみで開業でき、一般貨物のような許可審査は不要です。
参入のハードルが低い分、車両1台からでも開業しやすい一方、積載量や事業規模には制約があります。
なお軽貨物運送事業では、2025年4月1日から新たに事業を始める事業者に対し「貨物軽自動車安全管理者」の選任・届出が義務化されました。
黒ナンバーだからといって規制がゼロというわけではない点には注意が必要です。
運送業許可を取得するための5つの要件
運送業許可の審査では、人的要件・物的要件・資金的要件・欠格要件・法令遵守体制の5点が中心に確認されます。
どれか一つでも欠けると許可は下りないため、申請前の段階でセルフチェックしておくことが重要です。
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| 要件 | 概要 |
|---|---|
| ①人的要件 | 常勤役員1名以上の法令試験合格、運行管理者・整備管理者の配置 |
| ②物的要件 | 営業所・休憩施設・車庫の確保、車両5台以上の保有 |
| ③資金的要件 | 所要資金と同額以上の自己資金の確保 |
| ④欠格要件 | 許可取消しから原則5年未経過等の欠格事由に該当しないこと |
| ⑤法令遵守体制 | 安全規程の整備、社会保険・労働保険への加入見込み |
①人的要件(法令試験・運行管理者・整備管理者)
事業を執行する常勤役員のうち1名以上が、運輸開始前の法令試験に合格する必要があります。
試験は○×方式・選択式で30問出題され、8割(24問以上)の正解が合格ラインです。
あわせて、運行管理者と整備管理者を営業所ごとに配置する必要があります。
整備管理者は自動車整備士資格を持つ人のほか、2年以上の実務経験と選任前研修の修了によって要件を満たす場合もあり、国家資格が必須とは言い切れません。
乗務員は日雇いや短期契約ではなく常勤雇用で確保することが求められます。
②物的要件(営業所・車庫・車両5台以上)
営業所、休憩・睡眠施設、車庫の3つの施設を用意する必要があります。
営業所と車庫は原則として直線距離で10km以内であることが条件です。
この基準は地方運輸局ごとに定められており、たとえば関東運輸局管内では東京都特別区・横浜市・川崎市に限り20km以内でも認められます。
地域によって基準が異なり、申請前に管轄の運輸支局・運輸局で最新の基準を確認することが需要です。
車両については、原則として最低5台の事業用車両(緑ナンバー)を保有・使用できる状態にしておく必要があります。
③資金的要件(所要資金と自己資金)
「所要資金」は、主に次のような費用を積み上げて算定し、これと同額以上の自己資金を常に確保していることを証明しなければなりません。
- 車両費(購入・リース費用)
- 土地建物費(営業所・車庫・休憩施設の取得・賃借費用)
- 保険料(自賠責保険・任意保険)
- 各種税(自動車税・登録免許税など)
- 6か月分の運転資金(人件費・燃料費など)
都市部では総額でおおむね2,000万〜2,500万円程度が目安になるケースが多いとされています。
ただ、車両台数や営業所の立地によって変動するため、あくまで目安として捉えてください。
資金要件は許可申請の直前に慌てて準備すると間に合わないケースが多いため、会社設立や事業計画の策定段階から資金計画を並行して進めることをおすすめします。
④欠格要件
貨物自動車運送事業法上の欠格事由に該当する場合は、許可を受けられません。
法人の場合は役員個人についても同様のチェックが行われます。
⑤法令遵守体制
運行管理・整備管理の体制、事故防止のための教育体制、社会保険・労働保険への加入見込みなど、法令を遵守する体制が整っているかどうかも審査対象です。
なお、正式な「安全管理規程」の届出義務は、原則として事業用自動車を200両以上保有する事業者が対象です。
整っていない状態での見切り発車の申請は、審査の長期化につながります。
運送業許可取得の流れと期間

結論として、申請準備から許可・運輸開始までは、事前準備を含めると半年〜1年程度を見込んでおくと安全です。
なお許可後は原則として1年以内に運輸を開始する必要があり、この期限も見込んでおく必要があります。
申請書提出後、運輸支局・運輸局による審査の標準処理期間はおおむね3〜5か月とされています。
これに営業所・車庫の選定や資金準備といった申請前の準備期間を合わせると、全体では半年から1年程度を見込んでおくのが現実的です。
書類に不備があると審査が中断・長期化するため、精度の高い申請書類を一度で提出できるかが期間短縮の鍵になります。
運送業許可の取得にかかる費用
許可取得そのものにかかる費用と、開業後に必要な初期投資は分けて考える必要があります。
| 費用項目 | 目安 |
|---|---|
| 登録免許税 | 12万円 |
| 行政書士への依頼費用 | 数十万円〜100万円程度(申請代行の範囲により変動) |
| 車両費・保険料・営業所整備費など初期投資 | 数百万円〜(車両台数・立地により大きく変動) |
登録免許税・行政書士費用の目安
許可そのものに必須の登録免許税は12万円です。
申請書類の作成や運輸支局とのやり取りを行政書士に依頼する場合の報酬は、事務所や依頼範囲によって数十万円から100万円程度まで幅があります。
自分で申請すれば行政書士報酬は不要ですが、専門知識が必要な分、準備に相応の時間がかかる点も踏まえて検討することが大切です。
開業後にかかる初期投資(車両・保険等)
許可取得後は、緑ナンバー車両の購入・リース費用、任意保険料、営業所や車庫の賃料・整備費用といった初期投資が発生します。
この初期投資部分だけでも数百万円単位になりますが、これに6か月分の運転資金なども必要です。
「所要資金」全体では、前述のとおり都市部で2,000万〜2,500万円程度が目安であり注意しておきましょう。
資金計画は、許可申請の段階から所要資金全体を見据えて一体で考えておく必要があります。
個人事業主と法人、どちらで運送業許可を取るべきか
結論として、運送業は個人事業主でも許可を取得できます。
ただ、資金調達力や社会的信用の観点から法人での取得を選ぶケースが多いです。
資金力・信用力で法人が有利なケース
運送業は車両購入や営業所整備に多額の初期投資が必要な業種であり、金融機関からの融資を活用する場面が少なくありません。
法人は個人事業主に比べて決算書類の信用力が高く、複数の出資者から資金を集めやすいというメリットがあります。
また、荷主企業との取引では法人格を求められる場面もあるため、B to Bでの事業拡大を見込む場合は法人化を検討する価値があります。
【参考】個人事業主は会社設立すべき?それぞれのメリット・デメリットや違い、やるべきことなどを紹介
会社設立の流れと必要書類
法人で運送業許可を取得する場合は、先に会社設立の手続きを済ませておく必要があります。
株式会社であれば定款作成・公証人による認証・資本金の払い込み・法務局への登記申請、合同会社であれば定款認証は不要で定款作成・資本金の払い込み・登記申請という流れです。
定款の事業目的欄には「一般貨物自動車運送事業」などの文言を正確に記載しておかないと、後から目的変更登記が必要になるため注意が必要です。
【参考】定款に事業目的を記載する時の6つの注意点|違反をした際のペナルティは
2025年法改正で変わる運送業許可制度

2025年6月11日に貨物自動車運送事業法の改正が公布され、運送業許可を取り巻く制度は段階的に変わってきています。
今回の改正で特に押さえておきたい変更点は次の2点です。
- 許可の更新制導入(公布から3年以内、2028年6月までに施行予定。既存事業者には経過措置あり):5年ごとに財務状況や法令遵守状況が改めて審査される
- 荷主への規制強化(2026年4月1日に施行済み):無許可業者への委託に100万円以下の罰金が科される可能性
許可の更新制導入(2028年6月までに施行予定)
これまで一般貨物自動車運送事業の許可は、一度取得すれば実質的に終身有効でしたが、改正により5年ごとの更新制へと移行します。
公布から3年以内(2028年6月まで)に施行される見込みで、更新のたびに財務状況や法令遵守状況が改めて審査される仕組みになります。
既存の許可事業者については、施行後2年間の経過措置が設けられる予定です。
具体的な更新申請の時期や審査方法は、今後の政省令や国土交通省の公表資料で確認する必要があります。
これから許可を取得する事業者は、取得して終わりではなく、5年ごとに許可基準を満たし続ける前提で経営しなければなりません。
荷主への規制強化(無許可委託の罰則)
荷主等が無許可の運送業者(いわゆる「白トラ」)に運送を委託することを禁止する規制強化は、2026年4月1日にすでに施行されています。
違反した荷主には100万円以下の罰金が科される可能性があるほか、国土交通大臣からの勧告を受けると事業者名が公表されることもあります。
運送業許可を取得する側にとっては、荷主から「許可の有無」をこれまで以上に厳しく確認される時代になっている、と捉えておくとよいでしょう。
今後は許可の有無だけでなく、5年ごとの更新審査に耐えられる経営体制を維持しているかどうかが、荷主からの信頼を左右するポイントになります。
運送業許可取得を成功させるポイントと専門家への相談
結論として、運送業許可の取得を一度で通すには、資金計画と事業目的の設計を会社設立の段階から専門家と一緒に詰めておくことが近道です。
事前準備で失敗しないための注意点
営業所・車庫の立地選定、車両5台分の資金確保、常勤役員による法令試験対策など、要件は多岐にわたります。
どれか一つを後回しにすると、審査の途中で計画の見直しが必要になり、結果的に全体の期間が延びるのです。
申請前の段階で、資金計画・人員体制・施設の3点を並行して準備することが、期間短縮につながるといえるでしょう。
行政書士・税理士へ相談するメリット
運送業許可の申請自体は行政書士の専門領域ですが、会社設立や資本金の設定、税務面での有利不利は税理士の専門領域です。
これから法人として運送業に参入する場合は、設立段階から税理士に相談し、資本金の額や事業目的の記載方法を許可要件と整合させておくと、二度手間を避けられます。
運送業許可の取得は行政書士、会社設立・税務は税理士と、専門領域ごとに早めに相談窓口を持っておくことが、遠回りを避ける近道です。
まとめ
運送業許可(一般貨物自動車運送事業許可)とは何かについて解説しました。
押さえておきたいポイントは次のとおりです。
- 運送業許可とは?軽貨物運送事業との違いに注意
- 運送業許可を取得するための5つの要件
- 運送業許可取得の流れと期間
- 運送業許可の取得にかかる費用
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よくある質問(FAQ)
Q. 運送業許可は個人事業主でも取得できますか?
個人事業主でも一般貨物自動車運送事業の許可は取得できます。
ただし資金調達力や信用力の面で法人が有利になる場面が多いため、事業拡大を見込む場合は法人化もあわせて検討すると安心です。
Q. 運送業許可と軽貨物運送事業の届出はどう違いますか?
運送業許可は緑ナンバーの一般貨物自動車運送事業に必要な許可で、審査には数か月かかります。
軽貨物運送事業(黒ナンバー)は届出のみで開業でき、審査を伴わない点が大きな違いです。
Q. 運送業許可の取得にはどのくらいの期間がかかりますか?
運輸支局・運輸局の標準処理期間はおおむね3〜5か月です(地方運輸局により基準が異なり、書類の補正等に要する期間は含みません)。
申請前の営業所・車両の準備期間を含めると、全体では半年から1年程度を見込んでおくのが現実的です。なお許可後は原則として1年以内に運輸を開始する必要があります。
Q. 運送業許可の取得に必要な車両は何台からですか?
原則として最低5台の事業用車両(緑ナンバー)を保有・使用できる状態にしておく必要があります。
台数の下限は資金要件の算定にも直結する点に注意しましょう。
Q. 2025年の法改正で運送業許可は更新が必要になりますか?
2025年6月に公布された貨物自動車運送事業法の改正により、公布から3年以内(2028年6月まで)に一般貨物自動車運送事業の許可は5年ごとの更新制へ移行する見込みです。既存事業者には経過措置が設けられる予定です。
また、無許可業者への運送委託を禁止する荷主向けの規制強化は、2026年4月1日にすでに施行されています。取得後も継続的に許可基準を満たす経営が求められます。
Q. 運送業許可の取得費用はどのくらいかかりますか?
許可そのものに必須の登録免許税は12万円です。
行政書士に申請を依頼する場合は別途数十万円〜100万円程度の報酬がかかるほか、車両購入や営業所整備などの初期投資が数百万円単位で必要になります。
監修:税理士法人経営サポートプラスアルファ(本記事は税理士法人が運営するメディアの編集方針に基づき作成しています)

