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運送業許可が必要なのはどんなとき?法律を元に詳しく解説

2020年初頭から始まったコロナ渦でも業績を伸ばしている職種の1つに、運送業があります。

そのため、「新しく事業を始めるなら運送業」と考えている人もいるでしょう。

しかし、運送業はほかの業種のように会社を起こせばできるものではありません。

運送業を起こすには「運送業許可」が必要なケースがあります。

今回は、運送業を起こしたい場合、運送業許可が必要なのはどのようなときか、詳しく解説しましょう。

一口に運送業といってもいろいろな種類があります。

この記事を読めば、どのような形態で事業を行うなら運送業許可が必要なのか、不要な場合の条件は何か詳しくわかるでしょう。

運送業の開業を考えている人は、ぜひ参考にしてください。

運送業許可が必要になるときは?

運送業許可とは、事業として一般貨物自動車運送業を行う際に必要な許可です。

この許可はいったいどのような形態の運送業を行う際に必要なのか、詳しく解説していきます。

貨物自動車運送事業法とは

貨物自動車運送事業法とは、貨物自動車運送事業の運営を適正かつ合理的なものとし、貨物自動車運送事業の健全な発達を図り、公共の福祉の増進に資することを目的とした法律です。

貨物自動車運送業とは、以下の3種類が該当します。

  • 1.一般貨物自動車運送事業
  • 2.特定貨物自動車運送事業
  • 3.貨物軽自動車運送事業

1番の「一般貨物自動車運送事業」は、最もポピュラーな形態です。

自社で用意したトラックや普通自動車を使って、荷主から有償で荷物を預かって指定された場所に運びます。

2番の「特定貨物自動車運送事業」とは、1番と形態は一緒です。

トラックや普通自動車を用いて有償で荷物を運びますが、荷主が1社に限定されます。

たとえば、自社の荷物だけを運ぶ専門の運送会社を子会社として立ち上げる場合は、これに該当します。

3番目の「貨物軽自動車運送事業」とは、軽自動車や排気量125㏄以上の自動二輪車を使い、荷主の荷物を有償で運ぶ事業です。

軽自動車は一般貨物自動車運送事業で使うことができません。

軽自動車で荷物を運びたい場合は許可をとってください。

ただし、貨物軽自動車運送事業では、普通自動車やトラックを運搬に用いることはできませんので、注意が必要です。

 運送業許可が不要なとき

以下のような場合は、運送業許可はいりません。

自社の荷物を運ぶ

運ぶのが、自社の荷物のみの場合は運送業許可が必要ありません。

たとえば、支社が複数あって荷物のやりとりが多い場合、トラックを買って荷物を運ぶこともあります。

この場合は運送業許可を得なくても荷物を運ぶことが可能です。

運賃が発生しない場合

荷主に頼まれて荷物を運んでも、運賃が発生しない場合、運送業許可は必要ありません。

たとえば、造園業者や建築業者が仕事で使う荷物を運んだ場合などが該当します。

「荷物を運ぶこと」に別途運賃が発生しないので、運送業許可はいらないのです。

軽自動車で荷物を運ぶとき

前述したように、軽自動車は「貨物軽自動車運送事業」に該当するので、一般貨物運送事業に使うことはできません。

ですから、運送業許可は不要です。

ただし、軽自動車で運送業ができないわけではありません。

「貨物自動車登録」を行い、貨物軽自動車運送事業のルールに沿って運送業を行うことは可能です。

なお、一般貨物自動車運送事業より、貨物軽自動車運送事業のほうが参入しやすいので、まずは貨物軽自動車運送事業を始めるという方もいます。

自動二輪車を使って荷物を運ぶ

125cc以上のバイクは、貨物軽自動車運送事業に該当するので運送業許可は必要ありません。

125cc未満のバイクは規制がないので、そのまま荷物の運搬をしても大丈夫です。

たとえば、飲食業が配達に使うバイクは、125cc未満が一般的なので運送業許可は必要ありません。

バイク便なども125cc未満のバイクだけならば同様です。

運送業許可の申請手順

では、運送業許可の申請はどのような手順で行えば良いのでしょうか?ここでは申請手順を項目別に詳しく紹介していきます。

運輸局での書類審査に合格する

運送業許可を得るためには、まず以下の書類を揃えます。

  • 履歴事項全部証明書(原本)定款・役員全員の履歴書:申請者が法人の場合
  • 戸籍抄本および住民票(原本)・資産目録・事業者の履歴書:申請者が個人の場合
  • 法人の場合は役員全員、個人の場合は事業主の履歴書
  • 運行管理者資格者証
  • 整備管理者の整備士3級以上の資格者証
  • 営業所や休憩室・睡眠施設の使用権限がわかる登記簿謄本、もしくは賃貸借契約書
  • 営業所や休憩室・睡眠施設の位置図・平面図・求積図・写真
  • 登記簿謄本、もしくは賃貸借契約書:車庫の使用権限がわかるもの
  • 車庫の位置図・平面図・求積図・写真
  • 事業用自動車の車検証、使用権限を証明するための売買契約書、もしくはリース契約書など
  • 道路幅員証明書、もしくは幅員が車両制限令に抵触しない旨の証明書

これだけの書類を作成するのは大変かと思われますが、運送業許可を得るためには以下の条件を満たしているということを証明しなければならないのです。

  • 自己資金:平均1,500万前後
  • 車両の台数に合わせた人数の運転者
  • 運行管理者資格(運行管理基礎講習を修了している者)1名以上
  • 整備管理者1名以上
  • 運送業に使用する営業所・休憩室・睡眠施設(睡眠施設は必要な場合のみ設置)
  • 事業に使用するトラックを駐車する車庫

書類は、運送業を開業するのに必要な条件を満たしているか証明するためのものです。

運送業はほかの職種と異なり、自宅を事務所として開業するということはできません。

申請先は、お住まいの自治体にある地方運輸局です。

提出した書類は4~5カ月かけて審査されます。

法令試験に合格する

書類審査に合格したら運送業許可申請受付後、最初に来る奇数月に法令試験を受験します。

たとえば、6月に受け付けをしたら7月に試験を受けなければなりません。

法令試験は2カ月に1度実施されますが、2度連続して不合格になると書類審査合格も取り消されてしまいます。

ですから、できれば1度目で合格できるように勉強する必要があります。

試験を受けるのは個人事業主ならば事業主本人です。

法人の場合は常勤の役員から受験者を選びます。

取締役でなくてもかまいません。

法令試験の合格率は地方によって異なり、49~80%と幅があります。

問題は30問で8割の正解率で合格です。

地方によってはセミナーが開催されるので、確実に合格したい方は受けてみましょう。

独学の場合は過去問が販売されているので、何度も解いてみてください。

2度目の残高証明書の提出する

法令試験に合格したら、2度目の残高証明書を提出します。

書類申請受付から2カ月後をめどに地方運輸局から「証明書を提出してください」という通知がきますので、金融機関で残高証明を取ってきて提出しましょう。

保険に加入する

運送業を開業するには、従業員や役員を健康保険・厚生年金・労災保険・雇用保険加入させる必要があります。

ただし、役員は雇用保険が不要です。

運送業許可が出たら、すぐに運輸局へ保険に加入した証明書を提出しなければなりません。

早めに申請しておきましょう。

運送業許可証の交付式に出席する

法令試験に合格し、正式に運送業許可が下りることがわかったら運送業許可証の交付式に出席し、交付を受けます。

交付式の開催場所は営業所を管轄する地方運輸支局です。

交付式には個人事業主や法人の役員が出席します。

登録免許税納付書の取得

交付式は2時間ほどです。

運送業に関する法令や運送業許可取得後に提出が必要な書類の説明がされた後、登録免許税納付書が渡されます。

登録免許税の納付

運送業許可の登録免許税は、12万円です。

納付期限は1カ月で、コンビニで支払うことはできません。

必ず郵便局や銀行で支払ってください。

運行管理者と整備管理者選任届の提出

前述したように、運送業を開業するには運行管理者と整備管理責任者が各1名以上必要です。

運送業許可が下りたら、運送業の営業所を管轄する地方運輸支局に「選任届」という書類を提出します。

どこに提出すれば良いのかは、交付式のときに知らされるのできちんと聞いておきましょう。

運輸開始前届の提出

運輸開始前届には、以下のような添付書類が必要です。

  • 運行管理者と整備管理者の選任届の写し(運輸支局受付印があることが必要)
  • 健康保険・厚生年金保険・労災保険・雇用保険に従業員や役員が加入したことを証明する書類
  • 36協定書を労働基準監督署に提出したという証明書類

この3つは、作成に時間がかかるので早めに準備をしておきましょう。

事業用自動車等連絡書の取得

一般車の車庫証明にあたる書類です。

運輸開始前届を提出すると地方運輸支局が発行してくれます。

必要事項を記入して提出してください。

緑ナンバー取得

緑ナンバーとは、事業に使うトラックに付ける営業ナンバーです。

これを付けていないと違法営業になってしまいます。

緑ナンバーを取得した後には、任意保険などの切り替えが必要です。

忘れずに手続きしてください。

個人事業主で運送業許可を取るときの注意

個人事業主でも運送業許可を取り、運送業を起こすことはできます。

しかし、必ず緑ナンバーの取得は必要です。

また、個人事業主が1人で運送業を請け負うことはできません。

違法です。

また、個人事業主から法人化した場合、また運送業許可を取得する必要があります。

個人事業主から法人へ名義を切り替えることはできません。

運送業許可取得にかかる費用

運送業許可取得にかかる費用は以下のとおりです。

  • 人件費:従業員と役員の給与。取得までの期間を半年と考えて6カ月分
  • 燃料費:車両のガソリン代など×6カ月分
  • 油脂費:オイルやグリス代など
  • 修繕費:換えのタイヤ代、事故を起こした際の車両修繕費など
  • 車両費:運送業に使う車両の購入費やリース代
  • 車両関係税金:自動車取得税・重量税・自動車税×台数分
  • 保険料:車両の自賠責保険や任意保険の料金
  • 事務所・駐車場費用:購入費や家賃など、ローンも該当する
  • 什器・備品:事務所で使う机や椅子、事務用品など
  • 登録免許税:運送業許可を取得した際に納める税金、12万円
  • その他:水道光熱費や宣伝費、書類作成や申請を行政書士や司法書士に依頼した場合の費用など

運送業を始めるならば経営サポートプラスアルファにご相談ください

さて、ここまで記事を読んでいただければ、運送業を始めるには費用と手間がかかることがおわかりいただけたと思います。

これから運送業で会社設立をしたいとお考えの方にとって、これらの作業はたいへん煩わしいものとなるでしょう。

そこで弊社、経営サポートプラスアルファに会社設立をお手伝いさせていただきたいのです。

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記事監修者の情報

税理士法人
経営サポートプラスアルファ

代表税理士 高井亮成

保有資格:税理士・行政書士

税理士の専門学校を卒業後、会計事務所に入社。
その後、税理士法人に転職をして上場企業や売上高数十億円~数百億円規模の会計税務に携わる。

現在は税理士法人の代表税理士として起業・会社設立をする方の起業相談からその後の会計、決算、確定申告のサポートを行っている。