現物出資とは、会社を設立する際にお金ではなく、資産(不動産、車、知的財産権など)を出資する方法です。これにより、手元に十分な現金がなくても会社を設立できるというメリットがあります。ただし、現物出資には特有のリスクや注意点もあります。
本記事では、現物出資を活用する際のメリットとデメリット、そして実際の手続きについて詳しく解説します。
現物出資とは
会社設立する際に、パソコン、不動産、車、債権や有価証券などのお金以外の物による出資を「現物出資」といいます。
発起人(各種手続きを行う代表者)は、会社法第25条により、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を一株以上引き受けなければならないと決められています。
一般的には、自己資金を準備して出資を行いますが、上記に挙げた物を出資金に充てることも可能なのです。
会社設立の出資の時でも可能ですし、後で増資することも可能です。
財産引き受けとの違い
現物出資は財産引き受けとは違います。現物出資は金銭ではなくて、特定の物を出資して株式を得ます。
それに対して、財産引き受けは、特定の人が特定の財産を、会社の成立を条件に譲渡する契約を結ぶことです。
何が違うのかというと、現物出資の場合は見返りにもらうのが株式で、財産引き受けの場合は、会社成立後の開業準備行為にあたり、株式ではなく金銭を見返りとして受けます。
また、株式引受人は第三者でも可能です。
ここで、現物出資と財産引き受けにおいて問題になるのが、物の過大評価です。
例えば、現物出資の場合、発起人が100万円の価値しかない車を持っていないのにも関わらず、1000万円の株式を取得すると、株式を発行した会社の財産的基盤が危うくなり、会社債権者を害する恐れがあります。
当該発起人のみ得をすることになるのです。また、財産引き受けの場合も同様です。
Aさん、Bさん、Cさんという株式引受人を想定します。
Aさん、Bさんはそれぞれ50万円の車を会社に譲渡する約束をしたのに対して、Cさんは20万円しか価値のない中古車を100万円で引き受けてもらう約束をしたとします。そうなると、Cさんは80万円の儲けを得ることになり、他の株式引受人と不平等であり、会社債権者を害する恐れも生じます。
現物出資のメリット
1. 手元資金の節約
現物出資の最大のメリットは、現金がなくても会社設立が可能である点です。たとえば、価値のある不動産や車、パソコンなどを出資することで、現金を使わずに資本金を用意できます。これにより、資金繰りの余裕を持ちながら、事業をスタートすることができます。
2. 資本金の増加
資本金は企業の信用力に直結します。現物出資により資本金を増やすことで、金融機関からの融資が受けやすくなり、取引先からの信頼も得やすくなります。特に、初期段階で大きな資本を必要とする事業を計画している場合、現物出資は非常に有効な手段となります。
3. 減価償却の活用
現物出資した資産が減価償却資産(建物、車両など)の場合、法人税の節税効果が期待できます。減価償却によって計上される損金が法人税の課税対象から控除されるため、長期的な税負担の軽減が可能です。
現物出資のデメリット
1. 現金化の難しさ
現物出資された資産は、そのままでは現金化できません。たとえば、現物出資として不動産や車を提供した場合、その資産を売却しない限り、現金としての利用はできません。これは、事業資金としてすぐに利用できる現金が不足する可能性を意味します。
2. 手続きが複雑
現物出資には、現金出資にはない複雑な手続きが必要です。たとえば、現物出資を行う際には、定款にその内容を記載する必要があり、またその価値を第三者(税理士、公認会計士など)が査定する手間が生じます。さらに、出資する資産の所有権を会社に移転するための手続きも必要です。
3. 追加の税金が発生する可能性
現物出資を行うと、資産譲渡に伴う譲渡所得税や消費税が発生する可能性があります。たとえば、不動産を現物出資した場合、譲渡所得税が課される可能性があります。また、特定の資産を現物出資する際には、消費税の対象となる場合もあるため、税務上のリスクを十分に考慮する必要があります。
現物出資を行う際の手続き
1. 定款への記載
現物出資を行う場合、定款に出資する資産の詳細を記載する必要があります。具体的には、出資者の名前、資産の種類、評価額、および発行する株式数などを明記する必要があります。
2. 資産の価値査定
出資する資産の価値が適切であることを証明するため、第三者による価値査定が求められます。査定結果を基に、法務局への登記申請時に必要な書類を作成します。
3. 所有権の移転手続き
現物出資を行った資産が不動産や車などの場合、その所有権を会社に移転する手続きが必要です。これにより、現物出資された資産が正式に会社の所有物となります。
現物出資出来るものについて
基本的に、賃借対照表に資産として計上できる物が、現物出資の対象となります。
以下にいくつか例を挙げます。
- ローンを支払い終えた車
- オフィスの家具
- 有価証券や債権
- ホームページ
- ゴルフ会員権やリゾート会員権
- 不動産
- 特許権などの知的財産権
労務、信用などは認められず、上記に該当する物が現物出資の対象となります。
現物出資するものが多いと会社設立後の資産計上業務が大変であるため、10万円以上の資産であることが1つの目安となるでしょう。
まとめ
会社設立時における現物出資は様々な財産で行うことができます。
現物出資を行うことにより、創業時の資金を増やすことができるため、ビジネスチャンスの拡大に大いに役立つ資金調達方法になります。
ただし、会社にまとまった現金が入るわけではないため、思わぬ形で出費が出ないよう、事前に確認しておきましょう。
会社設立をする際には、現物出資だけでなく、注意するべきポイントが多いです。
ただ、会社設立の専門家を活用することで、スムーズに会社設立をすることができます。
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