「独立して理容室を開業したいけれど、何にいくら必要なのか?」
「理容師として勤めてきたけれど、理容室を開業するために自己資金はどのくらい必要?」
理容室の開業資金を考えると、いくつも疑問が出てきます。
理容業界は、他と少し違う特徴があり、同様に他業種とは違う注意点もあります。
そこで今回は、理容室の開業資金でいくつかのポイントを、融資審査する銀行員の視点から解説していきますので、参考にしてください。
Contents
理容室の開業資金~理容室の現状を知る
理容室の開業資金を見る前に、まず自分の周囲がどういった状況か見回してみることも役に立つと思います。
そこで理容室や理容業界の置かれている現状を簡単に見てみましょう。
理容室の現状
ここでは厚生省の公的なレポートから、そのポイントを箇条書きで紹介していきます。
◆店舗数は減少傾向
昭和 60 年をピークに平成10年:142,786 店から 平成21 年:134,552 店と減少傾向
◆理容師の数は10年間でほとんど変わらない
平成 10 年:251,859 人~平成 21 年: 243,644 人で減少比率は 96.7%と10年間でほとんど変わっていない
◆ほぼ全てが個人経営
個人経営が94.3%に対し会社組織は5.5%と個人経営がほぼすべて
◆ほとんどの店が広さ7~10坪未満
15 坪以下が 80.8%を占め、中でも「7~10 坪未満」が最多
規模を表す椅子台数も4台までが94.2%で、その中でも椅子2台が4割強と最大
◆店舗の場所は住宅地区が最多
店舗立地は1位「住宅地区」45.7%と最多、次いで2位「商業地区」35.3%、3位「郊外幹線道路沿い」10.8%と続き、この3地区に集中
◆設備資金は自己資金でまかなっている
1位「自己資金」39.1%、2位「借入金」16.2%と自己資金でまかなっている割合が多い
上記したような理容室の状況を振り返ることで、ご自身の状況や目指す方向性などの、目標や課題も見えてくるのではないでしょうか?
理容室開業に必要な資金とは?
続いて、理容室開業に必要な資金の種類と所要額について、解説します。
なお統計データや公的資料に乏しいのも理容業の特徴の一つなので、筆者調べに基づいた内容となりますので、その点はご留意ください。
理容室開業の初期費用
初期費用の目安は借り店舗で1,400万円程度です。
モデルケースとしては「繁華街のビルテナントで広さは15坪の店舗を開業する場合」をイメージしています。
<初期費用モデルケース>
物件費(入居保証金、仲介手数料など) :330万円
工事備品(内装工事、店内装飾、備品) :920万円
開業費(開業前の家賃、人件費、広告費) :171万円
【合計:1,421万円】
理容室の開業資金で利用できる融資
理容室の開業資金で利用できる融資について、日本政策公庫と銀行など金融機関でそれぞれ説明していきます。
理容室開業資金で利用できる融資~日本政策金融公庫
理容室開業資金で利用できる日本政策金融公庫の融資はいくつかありますが、条件などからおすすめできる「生活衛生新企業育成資金(新企業育成・事業安定等貸付)<特例貸付>」について紹介します。
(*理容室は日本政策金融公庫による分類で「生活衛生関係の事業」となります)
生活衛生新企業育成資金(新企業育成・事業安定等貸付)<特例貸付>
日本政策金融公庫 国民生活事業の生活衛生貸付では、生活衛生関係の事業を創業する方または創業後おおむね7年以内の方が必要な資金について、特別なご融資を設けております。
ご利用いただける方 |
生活衛生関係の事業を創業する方又は創業後おおむね7年以内の方 |
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資金のお使いみち |
振興計画認定組合の組合員の方 |
左記以外の方(注1) |
設備資金および運転資金 |
設備資金 |
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融資限度額(注2) |
振興事業貸付の融資限度額 |
一般貸付の融資限度額 |
ご返済期間 |
設備資金 20年以内 |
設備資金 20年以内 |
利率(年)(注3) |
○設備資金(注4) |
○設備資金 |
担保・保証人 |
お客さまのご希望を伺いながらご相談させていただきます。 |
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併用できる融資制度 |
無担保・無保証人を希望される方 |
【税務申告を2期終えていない方】 【税務申告を2期以上終えている方】 |
新たに事業を始める方・税務申告を2期終えていない方 |
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設備投資を行う方 |
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生活衛生同業組合等から一定の会計書類を準備していることの確認および事業計画の確認を受けた方(注4) |
日本政策金融公庫/融資制度一覧から探す/生活衛生新企業育成資金(新企業育成・事業安定等貸付)<特例貸付>
理容室開業資金で利用できる融資~銀行融資
理容室開業に限定されてはいませんが、銀行や信用金庫などが取り扱う信用保証協会保証付融資があります。
まず全国共通の保証制度はこちらです。
●経済産業省/創業期に利用可能な信用保証制度について/創業関連保証
こちらは都道府県と連携してサポートする融資制度です。
●東京信用保証協会/保証制度のご案内/ニーズ別保証制度案内/創業融資(創業)
●神奈川県信用保証協会/保証制度のご案内/創業したい、創業して間もない/創業支援融資(県制度)創業支援融資(県制度)
●静岡県信用保証協会/保証制度のご案内 /開業パワーアップ支援資金
理容室開業資金「2つの注意点」
理容室の開業資金では、理容室・理容業特有の注意すべき点が2つあります。
理容室開業資金の注意点1.運転資金を借りるのはむずかしい
上記した理容室開業資金の中で「開業費」としているのは、いわゆる運転資金になります。
実は、理容業では運転資金を借入で調達するのは、ほぼ不可能なので注意が必要です。
なぜかというと、理容業では通常の店舗運営に必要なのはほぼ人件費だけです。
もちろん家賃や光熱費、店で使う整髪料などの薬剤も必要ですが、いずれも通常の売り上げでまかなえる範囲の金額だからです。
「理容室に運転資金は不要」
これは私の勤務する銀行で先輩から教わったことで、理容業が運転資金を借入申し込みに来たなら、経営が相当行き詰っていると考えるべきというたとえです。
もちろん開業の場合は、売上が入るまでのタイムラグがありますが、ここも自己資金で準備しておくべきとの考えが銀行では主流です。
創業資金融資では自己資金が必要で、自己資金の準備が融資審査の成否に影響する場合が多いのですが、理容室開業資金では特に重要なポイントになります。
理容室開業資金の注意点2.自己資金が「カギ」
理容室は、飲食店などに比べると所要資金も少なく、開業しやすいと思われるかも知れません。
しかしそのためか、新規参入の競争が激しく廃業する人が多いのも理容室の実態です。
これは、店舗が減少しているのに理容師の数は変わらないという現実からもわかります。
そして、自己資金の準備が重要な開業資金の中でも、理容室開業資金は特に注意が必要で、「理容室開業資金では、資金調達できない運転資金は自己資金で準備する必要がある」
この点はぜひ覚えておいてください。
そもそも理容室や美容院などの業界では、いわゆる「徒弟制度」が残っており、これは飲食業も同じなのですが
- 師匠のもとで修業しながら
- 自分の腕を磨き、技術と経営ノウハウを学び
- 自分のファン(未来の固定客)を集め
- 独立するための資金を貯めて
- 師匠から認められ、自分の店を持つ
こういった流れがよくあるパターンで、銀行など融資を審査する側でも「理美容業の独立開業の典型的なモデル」ととらえています。
したがって自己資金が少ない、あるいは自己資金なしでは、モデルケースと異なりますし、そもそも開業に向けた資金準備ができていないと経営意識自体が問われることになります。
また上記したように運転資金を借入で調達するのも難しいので、なおのこと理容室の開業資金を借りる場合、自己資金が無いと実現はムリと考えておくべきでしょう。
信頼できるプロの力を借りる~高いハードルをクリアするためにも
個人経営が多く、また職人気質も残る理容室では、どうしても経営に関して割く意識や時間が少なくなる傾向にあります。
だからと言って、理容室が経営を考えなくていいわけではありません。
自分の腕で営業にまい進したいなら、経営や資金調達については信頼できるプロに任せるべきでしょう。
特にこれから理容室の開業資金を考えているなら「数字のプロ」の力を借りるのが有効です。
「自己資金が少ない」
「自分はどの融資を利用すればいいのか?」
こうした疑問やハードルを、信頼できるプロと一緒に越えていきましょう。
税理士法人とは会計のプロであり、数字のプロです。
日々クライアント様の数字と向き合い、経営支援に取り組んでいます。
私たちは起業に強いとした税理士法人だからこそ
創業融資サポートの経験も豊富なのです。
(毎月150件ほどの起業相談をいただいております)
税理士法人とは会計のプロであり、数字のプロです。
数字のプロ×起業専門
の税理士法人だからこそ、起業準備で最も大切な資金調達である「創業融資サポート」において、力を発揮することができるのです。
社名にその想いも込められています。
税理士法人経営サポートプラスアルファ
社名の経営サポートプラスアルファの「プラスアルファ」は、常にお客様に「プラスアルファ」の価値を提供していくことを意味しています。
その価値の体現こそがまさに「創業融資サポート」なのです。