飲食店で資金調達を成功させるには、飲食店の融資が難しい理由を知り、それをクリアしていく必要があります。。
長年融資の現場で多くの相談を受けてきた銀行員は、そう考えています。
そこで今回は
- ◆飲食店の資金調達はどこが難しいのか?
- ◆資金調達を成功させるポイントは?
これらについて、融資を審査する銀行員がわかりやすく説明しますので、飲食店の経営者の人、あるいはこれから飲食店開業を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
飲食店が資金調達を成功させるために、下記の項目を順に説明していきます。
<飲食店が資金調達を成功させるには?>
◆飲食店の資金調達が難しい3つの理由を知る
◆飲食店が資金調達を成功させるポイント
Contents
飲食店の資金調達が難しい3つの理由
飲食店が資金調達をするのは、実は難しいです。
これは融資を審査する銀行員が言っていることなので、間違いありません。
難しい理由をいくつか説明します。
<飲食店の資金調達が難しい3つの理由>
①飲食店は数が多く、料理の種類で全く別物だから
②飲食店の「飲」と「食」では取扱いが変わるから
③飲食店は基本的に「日銭商売」だから
理由1.飲食店は数が多く、料理の種類で全く別物だから
融資審査をする側にとって、飲食業は数が多く、ある意味「お得意様」なのですが、その反面、数が多いことと料理の種類(和洋中、国別の料理など)によって、時には審査手法がガラッと変わることもあります。
つまり「飲食業」という大きなグループではくくり切れず
「日本料理の割烹料理屋」
「ランチ主体のイタリアンレストラン」
「〇〇系ラーメンのフランチャイズ店」
「ブラジル出身者向けのブラジル料理店」
「駅前の町中華」
このように、一つずつが別業種といっていいほどに違います。
参考として、法律によって飲食業は約20種類に分類され(参考出典1より筆者調べ)、ほとんどの飲食業が事業資金融資の対象です。(*信用保証協会の保証付き融資の場合 参考出典2)
自分がどの業種に属するのか?興味のあるひとはご覧ください。
【参考出典1】
(筆者前略)
業種
商工業のほとんどの業種でご利用になれます。
ただし、農林・漁業、風営法第2条第5項に規定する性風俗関連特殊営業、金融業、宗教法人、非営利団体(NPOを除く)、LLP(有限責任事業組合)等、その他当協会が支援するのは難しいと判断した場合は利用できません。
東京信用保証協会/ご利用のご案内/ご利用いただける中小企業とは
【参考出典2】
(筆者前略)
中分類76-飲 食 店
総説
この中分類には,客の注文に応じ調理した飲食料品,その他の食料品,アルコールを含む飲料をその場所で飲食させる事業所及び主としてカラオケ,ダンス,ショー,接待サービスなどにより遊興飲食させる事業所が分類される。
なお、その場所での飲食と併せて持ち帰りや配達サービスを行っている事業所も本分類に含まれる。
総務省/日本標準産業分類/M.宿泊業、飲食サービス業/中分類76飲食店
理由2.飲食店の「飲」と「食」では取扱いが変わるから
飲食店の中でも「飲」ここでは「酒」が関連すると、事情が変わってきます。
飲食店の中でも「接待を伴う飲食業」になると「風俗営業法(風営法)」(正式には「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」)で規制される業種に属する可能性もあり、その場合は融資が受けられないからです。(上記【参考出典1】参照)
また、そうした業種に属していなくても「それに近い」と判断されると、やはり融資は難しくなりますので、しっかりと確認しておく必要があります。
風俗営業法に関して具体的な業種は例示しませんが、対象となる業種は以下で確認してください。
ただし、あくまで「融資が受けられない、受けにくい」という意味であり、特定の業種・業界を否定する意図はありません。
【参考出典】
e-Gov法令検索/風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律/第一章第二条(用語の定義)
理由3.飲食店は基本的に「日銭商売」だから
「日銭商売(ひぜにしょうばい)」とは、毎日の売上がそのままダイレクトに収入として得られる商売のことです。
例えば会社員は月給として毎月の収入ですし、建設業などでは工事完成までの分割払いといったように、業種により収入を得るタイムスケジュールが異なります。
飲食店は日銭商売の代表格で日々の売り上げと支払など、原則として「日々決算」の状態と言えます。
したがって一般的な商業などの運転資金(例:仕入れから販売、売上入金までのあいだをつなぐ「経常運転資金」など)のような資金需要は発生しないと考えられています。
飲食店が資金調達を成功させるポイント
飲食店が資金調達を成功させるポイントは、上記した難しい理由をクリアーしていくことが、ひとつの近道です。
そこで、難しい理由への対策を知り、ハードルを一つずつ越えていくイメージで進めていきましょう。
【飲食店は数が多く、料理の種類で全く別物だから】の対策
理由の説明でも触れましたが、自分の属する業種が何か?ここをしっかりと押さえることが第一歩です。
「業種なんてどうでもいい。自分は店のことだけ考えている」
といった姿勢も決して間違いではありません。
しかしながら、融資を受ける場合には自分の属する業種を知り、同業他社との違いから自分のつよみや弱みを分析するなどの姿勢が必要になってきます。
自分の店だけでなく、もう一歩「高所から俯瞰する視点」が求められるのです。
【飲食店の「飲」と「食」では取扱いが変わるから】の対策
銀行融資を受けたいなら風俗営業では無理と知ることと、意図せず風俗営業に関してトラブルにならないように注意が必要です。
ごく少数ですが、飲食店の創業相談で話しを聞くと、風営法で規制される業種の方が銀行融資の申込みに来られるケースがあります。(原則としてお断りさせて頂きます)
また、もともとは一般的な飲食店だった人が「改装して接待を伴う飲食を提供する資金を借りたい」という申し出をされ、こちらの新規融資をお断りしただけでなく、今までの融資も資金使途などに問題がなかったか?再調査した経験があります。
これなどは、風営法について知らなかったことが原因のハプニングです。
ちなみにこのケースでは、改装と新事業の計画を中止し、今まで通りの飲食業を続けることで事なきを得ました。
このように、銀行融資と風俗営業は相反するもので、銀行は敬遠しますので、ぜひ覚えておいてください。
【飲食店は基本的に「日銭商売」だから】の対策
飲食業は数が多く、ある意味「お得意様」と書いた通りで、銀行もできる限り飲食店に融資はしたいのが本音です。
しかし「お金が足りないから貸してよ」といったアバウトな説明では、そもそも資金管理ができておらず、いわゆる「どんぶり勘定」だと公言しているようなもので、これでは融資を受けることはできません。
そこで(実態は日銭が足りないとしても)このような説明が効果的です。
「仕入れ先を変更した。こちらでは一括仕入れすると購入単価が割安になる、だから半年分の仕入れ資金を融資して欲しい」
このように、大事なのは「飲食店は日銭商売」と知る(認識)することと、具体的で妥当性のある理由付けなのです。
まとめ
飲食店で資金調達を成功させるには、まず飲食店が資金調達するのは難しいと知り、その理由を分析し、対処法を考えながらハードルを越えていくことです。
この記事が参考になれば幸いです。