レストラン開業資金融資を成功させるには、成功事例からヒントを探るのが有効です。
また、レストランに限らず開業資金では事業計画が重要です。
そこで今回は銀行員として、レストラン開業資金融資を含め、多くの開業資金融資を審査してきた経験から、事業計画に必要なポイントに沿って説明していきます。
レストラン開業資金融資を検討している人や、将来レストランを開業しようと夢見て頑張っている人はぜひ参考にしてください。
Contents
レストラン開業資金はいくら必要か?~レストラン開業に関するトピックス
まず、レストラン開業資金はいくら必要か?など、レストラン開業資金に関する状況やトピックスなどを銀行員の視点から解説します。
レストラン開業資金はいくら必要か?
レストラン開業資金は平均して1,000万円必要と言われています。
※(筆者調べ)これは都内で借り店舗からスタートした金額です。
もちろんフランチャイズ(FC)形式を選んだり、自宅を回収するなどケースにもより上下はしますが、何と言ってもお客様を迎える最低限の施設を構えるには数百万から1,000万円、あるいはそれ以上が必要になります。
レストラン開業資金を銀行はどう見ているか?
上記したように、レストラン開業はまず「店舗・設備ありき」だと銀行は考えます。
またレストランを含め、「飲食業で事業資金融資を必要とするのは設備に関するお金だけ」という考えも銀行融資審査の根底にはあります。
これはなぜかというと、飲食業では開業して通常営業に移れば、基本的には売上で仕入支払いから人件費までのいわゆる運転資金は充分まかなえる業種で、むしろここで運転資金が必要なのは、売上や利益面で問題があり、経営がうまくいっていないのでは?と考えられるからです。
もちろんこれはお金を貸す側の理論であり、レストランでも運転資金の融資はあるのですが、上記したようにその審査のハードルは高い、ということはぜひ覚えておいてください。
そして、だからこそレストラン開業で1,000万円近いお金が必要になる点については、それは業種的に当たり前のこと、と捉えるので金額はあまり問題ではありません。
むしろレストラン開業資金の融資で重視されるのは、設備が必要になる理由に妥当性がある(華美ではないか?ムリしすぎではないか?など)ことと、計画性(売上がいくらで経費がいくら、そしてこれだけ残るから借りたお金は返済できる)で、この点は後半でも詳しく説明します。
なお銀行など金融機関では、上記したように融資の審査ではその業種、業界毎の特性(売上の構成、事業のどこに資金が必要か?など)を事細かに分類し「建設業なら〇〇」「飲食業は▲▲」といったように重視するポイントが異なることも覚えておくといいでしょう。
銀行では業種別の融資審査マニュアルといったものがあります。
これは販売されているものもあり、一般の人でも購入すれば見ることができます。(ただし銀行では独自の内部資料を使いますので、市販のもとのは内容が異なります)
参考に金融庁が公表している金融機関の職員研修用資料を添付します。
業種別審査時点ではありませんが、内容は近いものがありますので興味のある人はご覧ください。
金融庁/業種別支援の着眼点
レストラン開業資金融資を成功させるポイント3選
では次に、レストラン開業資金融資を成功させるポイントとして、銀行員の私が実際に融資審査で対応した事例から成功例と、その成功ポイントを解説していきます。
<レストラン開業資金融資を成功させるポインと3選>
- 特異性〜ウチ(当店)はココが違う!
- 妥当性〜現場を把握している証明
- 現実性〜冷静な経営計画には説得力がある
1.特異性〜ウチ(当店)はココが違う!
飲食業を営む人、あるいはこれから独立を目指している人がまず考えるのは「ウチ(当店)はココが違う!」というポイントでしょう。
これが特異性、あるいは独創性・オリジナリティといったものだと思います。
とはいえ「他店より美味しい」というのでは説得力には欠けてしまいます。
なぜなら美味しいのは大前提で、これはある意味「当レストランでは食事を提供しています」と説明しているだけとも言えるのです。(ちなみに「2番めに美味しいお店」といった看板をたまに見かけますが、これは謙遜している表現で1番目は家庭・奥さんやパートナーが作る料理には敵わないが、その次にはウチが一番、という意味だと、看板の店主から聞いたことがあります)
銀行員の私が出会った経営者で印象に残っている人がいます。
その人は和食で長く腕を磨いて独立したのですが、和食はもちろんとんかつや洋食、そしてケーキなどのスイーツまで提供するレストランを開業しました。
地元では「あそこはいったい何料理の店なんだ?」と話題になり、しかも独創的で美味しい料理ばかりで大成功しました。
その経営者曰く「うちのレストランは、うちに来なければ食べられない料理、つまり和食でも洋食でもないオレの料理を求めてきている。だから慢心せず常に新しい工夫が必要なんだ」と語っていました。
これは私が銀行に入社した30年以上前の話で、今なら「高級ホテルのフランス料理シェフだったがラーメン店を開業」など珍しくありませんが、当時はレストランなどの飲食業は「徒弟制度(有名店に弟子入りして修行し、暖簾分けで独立し、顧客も修行先からついてきたり、親方が紹介してくれたりといった日本に昔からあるかたち)」が残る時代で、この経営者のような店は珍しかったことを覚えています。
しかしながら、この店が成功した要因は
「その店に行かないと食べられないメニュー」を打ち出したことで、まさに「特異性〜ウチ(当店)はココが違う!」を体現したからでしょう。
2.妥当性〜現場を把握している証明
飲食業で最もお金がかかり、また必要不可欠なのが設備です。
自前の店でも、あるいは借店舗でも外装や内装、テーブルや家具調度類、そして調理場と調理器具などあげたらキリがありません。
最近では「汚いがうまい店」などがテレビなどにとりあげられますが、これらのお店も開店当時は新品のピカピカだったものが、長く店を続けてこられたからこそ年季が入って古くなっているわけです。
そして汚いといっても衛生に問題があれば、こうなる以前に食中毒が発生するなど淘汰されていたはずです。
これなどは極端な例ですが、大事なのは経営者が自分の店のドコを重視し、自分の店に必要な設備を考えているか?という点です。
たとえばレストランの設備で銀行に融資を申し込む場合には計画書(「設備計画書」「事業計画書」など)が必要になります。
設備の計画書は①必要な設備とその金額②設備の必要性の説明③設備を導入したことによる売上の増加予想といったポイントが盛り込まれている必要があります。
融資を審査する銀行ではこうした計画を検証して融資審査をするのですが、担当者として私の場合は設備計画書を経営者自ら説明してもらうようにしています。
そして、そのあとは現場にお伺いして、経営者の方に実際必要な設備などを案内して教えてもらうようにしています。
もちろん融資審査は銀行によって異なりますし、審査担当者によっても手法は違ってきますが、設備計画の必要性を経営者が説明できないようでは計画自体の実現性が怪しまれるので、現場を把握している証明ができすに審査はスムースには進まないでしょう。
3.現実性〜冷静な経営計画には説得力がある
設備計画でも、設備導入後の売上予想は欠かせません。
とはいえ、ただ売上増加を目指します、といった内容では十分とは言えません。
「来年の売上は前期の2倍、その次も2倍と倍々ゲームのようにがんばります」これは実際、私の融資窓口で設備資金を申し込んだレストラン経営者の言葉で、その人は計画書も作っておらず手ブラで来店されました。(このケースでは計画の必要性を説明し、税理士さんなどを紹介して経営を考えるところからスタートするようアドバイスし、最終的に融資ができました)
上記とは逆に、飲食業だからこそ冷静に経営計画を考えられた経営者の人もいました。
その人も前述の経営者と同じように料理人の経験だけで経理や税務を学んだわけではありませんでした。
しかしその人は資金繰りを掴むために、自己流で帳簿を作り、しっかりと経営をす噛んでいました。
実際に融資申し込みのとき見せてもらいましたが、帳簿というよりは野球監督の戦略ノートといった感じで、1ページにびっしりと書き込まれた、お世辞にも整理されたキレイなものではありませんでした。
しかし銀行員として審査の視点で眺めると「今は季節外れのあの食材は仕入れを抑えよう」「あの料理は売れるが、そのためだけに必要な調理機器1台の電気代は賄っていないからやめよう」など実際に経営の現場に立つからこそ描ける冷静な経営計画なので、銀行員の私も「さすがです!」とうなるものでした。
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まとめ
今回はレストラン開業資金について、主に銀行の融資審査の視点から解説してきましたので、レストラン経営の指針、ガイドラインといったものとは少し方向性が違います。
ただし、お金を貸す融資審査で重視することは経営でも重要なポイントなのです。
この記事が参考になれば幸いです。