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設備資金と運転資金の違いは?
開業するにあたって「内装工事や設備をそろえるのにお金がかかりそう」「イメージと合う物件があるけど、賃料を払い続けられるか心配」など、資金について考えている人もいるでしょう。
どのような業態でも開業するためにはさまざまな準備があり、それに伴って資金も必要です。
開業資金は一括りに言うことが多いですが、大きく分けると「設備資金」と「運転資金」に分けられます。
どの費用がどちらになるのか今は曖昧でも、今後資金調達をすることになった場合は必要になる知識となるため、これを機会に確認しておきましょう。
設備資金
設備資金とは、簡単に言うと開業に必要な設備購入に必要な資金です。
製造業なら機械装置など、飲食店なら物件の敷金・礼金なども設備資金に該当します。
以下に業種ごとの設備資金の例をまとめました。
業種 | 設備資金 |
---|---|
飲食業 | ・店舗の敷金、礼金 ・改装工事費 ・冷蔵庫やコンロなどの厨房機器の購入費 ・テーブルや椅子、食器などの購入費 ・Webサイト作成にかかる費用など |
クリニック | ・クリニックの敷金、礼金 ・改装工事費 ・治療に使用する機械などの購入費 ・待合室や診察室に使用するソファーや椅子、電話機、PC、プリンターなどの購入費 ・Webサイトや予約システム作成にかかる費用など |
運送業 | ・事務所の敷金、礼金 ・事務所の改装費用 ・車両代 ・事務所の机や椅子、電話機、ファックス、プリンターなどの購入費 |
運転資金
運転資金とは事業を継続していく上で定期的に発生する資金です。
店舗の賃料やスタッフへの給与などが運転資金に該当します。以下にまとめました。
業種 | 運転資金 |
---|---|
飲食業 | ・店舗の賃料・スタッフに毎月支払う給与・光熱費・料理や飲み物の仕入れにかかる費用・紙ナプキンやレシート用紙などの消耗品を購入する費用 |
クリニック | ・クリニックの賃料・スタッフに毎月支払う給与・治療に使われる機器のリース代・光熱費など |
運送業 | ・事務所の賃料・従業員に毎月支払う給与・光熱費・ガソリン代など |
設備資金と運転資金は同じようですが、設備資金が開業準備期間に一時的に発生するものに対し、運転資金は開業後も継続的に発生するものです。
また、設備資金と運転資金では決算書の計上方法も異なります。
原則、設備資金は「貸借対照表」運転資金は「損益計算書」に計上されます。
設備資金か運転資金で迷ったら、発生する時期や期間を確認しましょう。
設備資金 | 運転資金 |
---|---|
一時的に発生 | 継続的に発生 |
貸借対照表に計上 | 損益計算書に計上 |
資金調達額の平均
開業するためには資金はどのくらい用意したらよいのか気になるところです。
日本政策金公庫が実施した「2022年度新規開業実態調査」によると、2022年の平均資金調達額は1,274万円でした。その内訳は以下の通りです。
・自己資金271万円
・配偶者・親・兄弟・親戚49万円
・友人、知人など52万円
・金融機関などからの借入882万円
・その他20万円
1991年の調査開始以来最も少ない2021年の1,177万円と比べて上昇。
平均調達額に占める割合は金融機関などからの借り入れが最も多く69.2%、次いで自己資金が21.3%で全体の90.5%です。
多くの場合、資金調達に金融機関を利用しています。
開業資金の返済期間
日本政策金融公庫の新規開業資金では設備資金と運転資金の返済期間が以下の通りに定められています。
設備資金 | 運転資金 |
---|---|
・20年以内 (うち据置期間2年以内) | ・7年以内 (うち据置期間2年以内)(注1) |
(注1)「廃業歴等があり、創業に再チャレンジする方」は、前事業に係る債務を返済するために必要な資金も使用でき、運転資金は15年以内(うち据置期間2年以内)まで利用できる。
返済期間は各金融機関の判断により異なります。
また、運転資金よりも設備資金の方が高額になる傾向にあるため、無理なく返済できるよう借入を考えている金融機関へ事前に相談するのも良いでしょう。
資金調達の方法
資金調達する方法は金融機関だけでなくさまざまな方法があります。
それぞれに特徴やメリット・デメリットもあるため、適した方法を見つけることが大切です。
以下にそれぞれ解説します。
親戚から借りる
親戚や知人から借りるという方法があります。
融資を受ける前に身近な人に借りて自己資金を増やしておくと融資を受けやすい状態をつくれます。
いくら親しいとしても口約束だけで借りると後々トラブルになることも考えられるため、借用書を作成し返済期限や利子について書面で明確にしておきましょう。
日本政策金融公庫
日本政策金融機関では民間金融機関では難しい起業前の資金調達を行いやすいため、多くの事業主に利用されています。
審査には明確な事業計画書を求められるため、コンセプトをしっかりと決め、事業計画書をきちんと作成することが必須です。
地方自治体
地方自治体と民間の銀行・信用金庫が提携した「制度融資」は金融機関によって内容は異なりますが、利息の一部あるいは全部を地方自治体が負担してくれる場合もあります。
借入れには審査があり、融資を受けるには信用保証協会の保証が必要です。
返済に関しては各金融機関の定めによります。セミナーや相談会などを実施していることも多く、疑問や気になるところがある場合に気軽に相談が可能です。
補助金・助成金
国や自治体が実施している補助金や助成金を申請する方法です。
給付を受けられるのは諸経費を支払った後になるため、あらかじめ資金は用意しておく必要があります。
補助金と助成金は同じように感じますが以下のような違いがあるので確認しましょう。
補助金 | 助成金 |
---|---|
・募集期間が決まっている ・審査を受ける必要がある | ・随時受付 ・要件を満たせば受給対象のものもある |
クラウドファンディング
サイト上でプロジェクトや社会貢献度の高さなどを後悔し、興味があり応援してくれるユーザーが支援者となり資金を調達する仕組みがクラウドファンディングです。
寄付型・購入型・投資型・融資型などがあります。
目標金額を達成できずに資金調達できない場合もあるため、クラウドファンディング開始前に成立するためにどのくらいの支援者から支援が見込めそうか、クラウドファンディング以外の資金調達ができないかなど情報を調べておきましょう。
以下にそれぞれの資金調達方法のメリット・デメリットをまとめました。
方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
親戚から借りる | 審査がない | 返済が滞ると関係がこじれる可能性がある |
日本政策金融公庫 | 開業前の資金調達が可能 | 審査を受ける必要がある |
地方自治体 | ・相談会などがあり気軽に相談できる | 審査を受ける必要がある |
助成金 | ・原則返済義務がない | ・審査を受ける必要がある ・入金までに時間がかかる傾向にある |
クラウドファンディング | ・少額から資金を調達できる ・ネット上で話題になる | ・希望している融資額に達するかどうかは分からない |
設備資金で運転資金に使うのはNG
設備資金で借入れた資金を運転資金で使うことはできません。
借入先では資金用途に応じて融資額や返済期間、金利などを設定し、融資の判断をします。
設定した用途と異なる使い方をしたことが借入先に分かれば信用を失い即時の返済を求められるため、用途を守るのは必須です。
設備資金は貸借対照表に計上され減価償却されるわけですが、運転資金は損益計算書で計上されるため、確定申告で決算書に減価償却費が計上されていないことで借入先にはすぐわかってしまいます。
バレないだろうと安易に考えず、設備資金と運転資金の用途をしっかりと守りましょう。
資金を抑えることも考える
資金調達にどこを利用するか、いくらまで調達できるのかが気になるところです。
それはもちろん大切ですが、なるべく借入を少額にするために初期費用を抑える方法を考えることも重要。以下にいくつかの方法を解説します。
居抜き物件を検討する
物件は居抜き物件とスケルトン物件から選ぶことになります。
スケルトン物件は壁紙や備品なども何もない物件で、内装をすべて自分で一から行うことが必要。
一方、居抜き物件は前の店が使っていた壁紙やカウンターなどが残っている物件で、うまく活用できれば内装工事料を抑えることが可能です。
スケルトン物件は自分の思い描く通りに店の内装デザインを手掛けることができますが、内装工事代は高くなる傾向にあります。
設備資金を抑えたい場合は居抜き物件も視野に入れて探してみると良いでしょう。
中古備品を活用する
飲食店ならフロアに設置するテーブルや椅子、厨房の大型冷蔵庫など、新品で購入すると設備費用が大きくなる要因です。
居抜き物件に前の店で使われていたものが状態の良い状態なら継続して使えることもあります。
また、新品でなく中古で購入できれば設備資金の削減にもつながるでしょう。
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まとめ
開業するために必要な資金には運転資金と設備資金の2つに分けられることを解説しました。
どちらも開業に必要な資金だと分かってもその違いを明確に説明できるでしょうか。
金融機関から融資を受ける際、資金用途が運転資金か設備資金かを聞かれます。
また、借入申込書にも記載する欄があるため、曖昧なままでは困るシーンが多々あるでしょう。
金融機関などから融資を受ける場合は、運転資金と設備資金の違いを理解しておくと相談する際や実際に融資を受ける際もスムーズです。
また融資を受けた後も設備資金を運転資金で使うなどのトラブルを回避できるでしょう。
資金を抑えるため居抜き物件を選んでも、スケルトン物件ほど大がかりでなくても改装工事は必要です。
内装工事リースでは手元に資金がなくても内装工事が行えるため、開業資金で苦労している人はぜひご検討ください。