クリニックを開業したいと思っても、クリニックの開業にどのくらいのお金が必要なのかわからない人も多いでしょう。特に、新規でクリニックを開業する人の場合はどのくらいの資金が必要なのかイメージをつけにくいことも多いです。
そこで、この記事ではクリニックの開業に必要な費用の相場を紹介します。
Contents
クリニック開業で必要な費用項目
クリニックの開業で必要になる費用項目には以下のようなものがあります。
- ◆不動産取得費用
- ◆テナント関連費用
- ◆什器・備品
- ◆諸経費
- ◆運転資金
それでは、詳しく見ていきましょう。
不動産取得費用
新規でクリニックを開業する際に、新たに土地を取得して、そこに建物を建設して1からクリニックを新築していく場合は土地取得費用がかかります。
不動産取得費用の大まかな内訳としては、土地代・建設費・内外装工事費用です。
特に、土地代は立地する場所によって大きく異なり、所有権かもしくは借地権のどちらかによっても異なります。
東京や大阪、名古屋など大都市圏の場合は、立地の良い場所に土地を取得するだけで数億円の費用が最初にかかるでしょう。
地方であっても大規模なクリニックを建設する場合は、それなりの費用がかかってきます。
建設費に関しては、地域に関係なくどのくらいのクオリティで設計するかによって異なります。
ただ、概ね5000万円程度あれば、問題なく建設することが可能です。
テナント関連費用
テナント取得費用は、クリニックをテナントとしてビルに出店する場合にかかる費用で、含まれる費用としては礼金・保証金・仲介手数料です。
保証金は、おおむね家賃の半年分から1年分になることが多く、礼金と手数料二つ合わせて100万円弱になることが多くなっています。
保証金に関しては、テナントが出て行く時に返還されることも多いですが、クリニックの場合、原状回復費用が高くなることもあるので、保証金が原状回復費用に充てられることが多いです。
什器・備品
什器・備品は、クリニックを開業するにあたり必要な机やイスなどの什器、クリニック運営を行う中で必要になるペンや医療器具などの購入費用です。
什器・備品費用に関してはどのレベルのクオリティーでクリニックを作り上げるのかによっても異なり、高級感を全面に押し出すインテリア構成の場合は什器・備品費用だけで数千万円になることもあるでしょう。
一般的なクリニックの場合は、200万円前後が相場と言われています。
医療機器費用
医療機器費用は、クリニックを開業する際に必要な医療機器をするための費用になります。
一般的に、医療機器のように高額なものの場合、一括で購入するのではなく税制上の問題や支払いの問題などから、リースという形で契約して毎月一定金額を支払うことが多いです。
医療機器にかかる費用は、クリニックの診療科によっても大きく異なり、整形外科のように必要な医療機器が多い診療科は、医療機器にかかる初期費用が多いです。
一方で、皮膚科は必要な医療機器が少ないので、医療機器にかかる初期費用が少ないとされています。
運転資金
運転資金は、クリニックを安定して運転していくために必要な費用で、2000万円から3000万円あれば問題ないと言われています。
運転資金が必要になるのは、クリニックの場合すぐに診療報酬を受け取ることができず、医療報酬の支払いはおおむね2ヶ月から3ヶ月後です。
このようにタイムラグがあるため、しっかりした運転資金を用意できないと、診療報酬を受け取る前にクリニックの経営が危機的状況になってしまうこともあります。
そのほかにも、クリニック経営では通常のビジネスと同様に、取引の時にその場で現金が動くことは少なく、支払いや受け取りに関しては1ヶ月から2ヶ月のタイムラグがあるのが普通です。
このようなタイムラグに対応するためにも、運転資金は多めに用意しておいた方がいいと言われています。
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診療科別クリニック開業費用相場
ここでは、診療科別のクリニック開業費用を紹介します。
内科
内科は開業にあたり5000万円前後が必要です。
内訳としては、医療機器などの購入費用2000万円・土地などの物件費用が3000万円。
内科では診療用ベッドやX線診察機、内視鏡などの医療機器が必要になります。
内科の立地としては大きく2つに分けられ、1つ目が都市部で集客を見込める場所です。
2つ目が、郊外で診療圏が大きく車での来店をメインとした立地です。
前者の場合は、テナントとして入居することが多く、その場合保証金なども合わせると初期費用で1000万円、その他に内装費用で2000万円前後かかることが多いです。
後者の場合は、土地の取得費用で3000万円程度かかることが多く、他に内装・外装費用で2000万円前後かかることが多くなっています。
皮膚科
小児科は開業にあたり3000万円前後が必要です。
内訳としては、医療機器などの購入費用400万円・土地などの物件費用が2600万円。
皮膚科では電子カルテ・レセコンなどの医療機器が必要になります。
皮膚科は、他の診療科と比較してクリニックに設置しないといけない医療機器が少ないのが特徴です。
一方で、治療も行う大規模なクリニックの場合は、レーザー照射器などが必要になり、その分医療機器を用意するための初期費用は高くなるでしょう。
また、皮膚科の場合は、小児科と違い待合室を大きくしたり、医療機器を設置するために診察室を大きくする必要がないので、土地も小さくて大丈夫という利点があります。
小児科
小児科は開業にあたり4000万円前後が必要です。
内訳としては、医療機器などの購入費用1000万円・土地などの物件費用が3000万円。
小児科では電子カルテ・レセコン・超音波診断装置などの医療機器が必要になります。
小児科を開業する際には、医療機器として最初に用意するものが少なく済む一方で、内装・外装にはお金をかけることが必要です。
クリニックでは、子供が飽きないようにプレイスペースなどを設けるだけではなく、親子連れでも来訪がメインなので、ベビーカーや子連れであっても問題なく通行できるくらいの広さの通路が必要になります。
そのほかにも、待合室には児童用のイスを設けたり、親子連れでも等間隔で座れるような広さを確保することも必要でしょう。
クリニックの開業費用のポイント
クリニックを開業する際の費用面でのポイントは以下のものです。
- ◆自己資金は2000万円程度必要
- ◆リースで初期費用を抑える
- ◆経費よりも利益を重視する
ここでは、これらのポイントを詳しく紹介していきます。
自己資金は2000万円程度必要
クリニックを開業する際に必要になる自己資金は、2000万円程度と言われています。
これは、銀行融資が原因です。
一般的に、クリニックを開業する際には、自己資金のみではなく銀行から融資を受けることが多いと思います。
その際に、ある程度自己資金がないとお金は借りられないのが事実です。
特に、過去に実績がなく新規でクリニックを開業する医師の場合、銀行も融資に対して慎重になる傾向があります。
そのため、お金を借りるためにも自己資金はある程度用意しておいた方がいいでしょう。
一般的に、クリニックを開業するためには5000万円から8000万円程度必要と言われています。
リースで初期費用を抑える
クリニックを開業する際に、初期費用を高くしてしまうと、クリニックの経営が立ち行かなくなってしまう可能性もあります。
そのため、クリニックでは開業の際の初期費用を抑えるために、リースで医療機器などを購入することが多いです。
リースで医療機器を購入することで、毎月一定の支払額で医療機器を使うことができるメリットがあります。
また、リースで契約できるものには、医療機器の他に什器なども含まれます。
そのため、クリニックにある全てのものをリースでまかなえると言っても過言ではありません。
リースでまかなうことで、減価償却の計算が楽になり税金の支払いの面でも有利になるという側面もあります。
経費よりも利益を重視する
クリニックを開業する時には、経費よりも利益を重視するようにしましょう。
クリニックを開業したばっかりの医師がやってしまう間違えとして、経費を削減することで利益を大きくしようとすることです。
一般的に、利益と経費は比例しないことが多いです。
簡単に言うと、経費を抑えたところで利益が上がるとは限らないということ。
また、逆に経費を使ったからといって、その分利益が減るとも言えません。
例えば、1000万円分の医療機器を購入して、その分業務を効率化ができ以前の3倍の患者を捌くことができる場合、1人あたりの診療利益が1000円と計算して以前の患者数が1000人/月の場合、増加分の2000人×1000円で200万円追加で利益をあげられることになります。
その場合、1000万円経費を使っても5ヶ月で元をとることができ、6ヶ月目以降は毎月200万円多く利益をあげられることになります。このように、経費を使ったらその分利益が減るということはなく、むしろ経費を使った方が最終的な利益は大きくなることの方が多いです。
まとめ
クリニックを開業するための費用は、診療科ごとに異なることが多いです。
また、開業費用の考え方ではポイントもあります。
クリニックを開業する際には経営を行う上で知っておかないといけないことが多く、特に経費と利益の関係は経営を行う上では欠かすことができない感覚と言えるでしょう。
今後、クリニックを開業しようと思っている人は、ぜひ今回の記事を参考にクリニックを開業するようにしてみてください。