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自営業者は脱税しまくり?実際に自営業者は脱税できません

自営業者は脱税しまくり?実際に自営業者は脱税できません

よく「自営業は脱税しまくり」だと世間的に言われたりします。

しかし、実際にそうなのでしょうか?

ここでは、脱税や所得隠し、申告漏れの違いや税務署による調査について解説していきます。

所得隠し・申告漏れ・脱税との違いとは?

税金の支払いを不当に逃れようとする行為のうち、もっとも悪質なものを脱税といいます。

脱税と所得隠しに定義上の違いはありません。

それに対し、ミスによる過少申告をおかした場合を申告漏れといいます。

申告漏れとは?

税金逃れの意図がなかったとしても、ミスによって少なく申告してしまった場合や申告の手続きが遅れてしまった場合、また納付が遅れてしまった場合も申告漏れに該当します。

この場合でも、ペナルティーとして加算税や延滞税が課せられます。

課せられる加算税の種類は、ケースに応じて次の2つです。

過少申告加算税

納める税金が少なすぎた場合や、還付される税金が多すぎた場合には、過少申告加算税がかかります。

加算税の課税割合は、10%相当額です。

ただし、新たに納める税金が当初の申告納税額と50万円とのいずれか多い金額を超えている場合には、その超えている部分は15%です。

そのため、間違えたことに気づいたら、早めに申告しましょう

税務署の調査を受ける前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません。

ただし、調査の事前通知を受けた後にした場合は、50万円までは5%、50万円を超える部分は10%がかかります。

無申告加算税

定められた申告期限(課税期間の翌年の2月16日~3月15日)までに確定申告をしなかった場合は無申告加算税が課されます。

課税割合は、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%です。

ケースによっては加算されないこともあります。

また、税金が定められた期限までに納付されなかった場合には延滞税が課せられます。原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じての利息に相当する額です。

なお期間によって課税割合が変わります。

つまり、納税期限の翌日から2か月を経過する日までが原則として年「7.3%」、納税期限の翌日から2か月を経過した日以後は、原則として年「14.6%」の割合で日割りで課されるます。

所得隠しとは?

個人が1年間に得た収入から、その収入を得るためにかかった必要経費を差し引いた金額を所得といいます。

所得を意図的に少なく見せて、所得にかかる税金である所得税を不正に免れようとする行為を、脱税あるいは所得隠しといいます

個人事業主の場合は、売上を低く見せかけたり、業務とは関係ない費用を経費として見せかけたりするというものです。

所得隠しと脱税との間に明確な定義上の違いはありません。

脱税とは?

所得隠しと脱税との明確な違いはありませんが、より悪質で検察庁に告発され刑事罰の対象になったものを脱税とよぶケースが多いです。

所得隠しや脱税の罰則は厳しい

うっかりしたミスである申告漏れに対して、故意に税金を免れようとする所得隠しや脱税に関しては厳しい罰則が科せられます。

税法上のペナルティーとしての加算税のほかに刑事罰があり、逮捕される可能性もあるのです。

まずペナルティー(行政処分)としては、重加算税が課せられます。

通常、35%の加算税、無申告の場合には40%の加算税です。

対象となるのは「隠蔽又は仮装」といわれる行為で「二重帳簿」「帳簿書類の隠匿、虚偽記載等」などがこれにあたります。

そして、特に悪質な脱税とされた場合には、以下のような懲役、罰金、もしくはその両方という重い刑罰の対象となります。

  1. 第238条 偽りその他不正の行為により、……所得税を免れ、又は……所得税の還付を受けた者は、10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
  2. 第64条 次の各号のいずれかに該当する者は、10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
    一 偽りその他不正の行為により、消費税を免れ、又は保税地域から引き取られる課税貨物に対する消費税を免れようとした者
    二 偽りその他不正の行為により……還付を受けた者

なお、近年の裁決の例に以下のようなものがあります。

「事業所得の金額を正確に把握していたにもかかわらず、収入金額を1,000万円を下回るように調整して極めて過少な所得金額を記載した所得税等の確定申告書を長年にわたり継続的に提出し続け、調査の際にも、調査担当者に対し、帳簿書類の存在を秘し、事後的に作成した虚偽の帳簿書類を複数回提示したことなどが認められ、これらの一連の行為によれば、請求人は、重加算税の賦課要件を満たすとしたものである。」(令和2年2月19日)

「3年間にわたり、多額の所得を継続的に過少に申告しており、作成したメモの状況とあいまって、当初から所得を過少に申告する意図があったと認められる。そして、請求人の事業における関係書類の作成及び外注先への支払の状況を踏まえれば、請求人は収入及び外注費のおおよその金額を認識していたと認められるところ、平成26年分においては、当該認識に沿う主要な売上先に係る売上金額及び外注費等の実額が記載されたメモを作成し、また、その後の平成27年分及び平成28年分においては、申告準備段階において事実とは異なる申告すべき金額を記載したメモを作成し、これらを相談会場に持参し、真実の所得を大幅に下回る金額を記載するなど所得金額を少なく偽った収支内訳書を作成し、所得税等の申告をしていたものである。これら一連の行為は、請求人が外部からうかがい得る特段の行動をしたものと評価することができ、重加算税の賦課要件を満たすものである。」(平成31年4月23日)

脱税はバレる

実際には、脱税等の行為は100%バレるといっても過言ではないでしょう。

なぜなら、申告に不審な点があれば、税務署による税務調査が行われるからです。

税務調査とは、申告内容が正しいかどうかを帳簿などで確認し、誤りや申告漏れがあった場合には是正するために、税務署が行う調査です。

税務調査は原則として任意ですが、国税通則法に基づいて、税務署職員が質問査察権を行使することもあります。

また通常は事前通知がされますが、税務署等が保有する情報から、事前通知を行うことにより正確な事実の把握を困難にする、又は調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認められる場合には、事前通知せずに税務調査を行うこともあります。

税務調査は毎年20万件も行われています。

税務調査が行われる理由とは?

税務調査が行われる理由はいくつかあります。

申告内容が正しいかどうかを確認することが目的なので、申告に不審な点がある場合に行われるケースが多いです。

取引先の税務申告から分かる(反面調査)

事業で取引している相手先の申告や税務調査によって税務調査されることを反面調査といいます。

反面調査は、事前に通知されず抜き打ちで行われます。

また、反面調査には、質問検査権の行使が認められているほか、反面調査に従わない場合には罰則があります。

罰則の内容は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。

このように申告内容に不備がある場合は、取引先の申告や税務調査と照らし合わせればすぐに分かるのです。

不審な資産の動き

申告によって売上(収入)と必要経費を申告しているわけですから、税務署によって資産状況は把握されています。

その場合たとえば、赤字申告をしているにもかかわらず、家や自動車を買うなどの大きな買い物をしていたら、売上の隠蔽が疑われるわけです。

経費に不審なところがある

収入から必要経費を差し引いた部分が所得であり、ここに所得税が課税されます。

その内容において、前年と比べ経費が大きく変動している場合や、同業者と比べて経費が多すぎると判断された場合などに税務調査が入りやすくなります。

密告

税務署では、脱税等に関する「情報の提供」を受けつけており、申告があれば当然税務調査が行われます。

事例としては以下のようになります。

  • ◆租税回避スキーム(節税商品や特定の取引手法を利用した租税回避など)に関する情報やその組成・販売をしている者又は利用をしている者に関する情報
  • ◆虚偽の売上金額(収益)や必要経費(費用)に基づく経理等により、不当・不正に所得金額等を低く(又は還付税額を多く)申告している者及びその手口の情報
  • ◆事業が活況を呈するなど、申告する必要があると考えられるにもかかわらず申告をしていない者に関する情報
  • ◆他人名義での取引、他人名義の口座等を利用した取引又は事実に基づかない契約書、領収書、請求書、納品書等の書類の作成、交付、作成依頼等(白紙領収書等の交付依頼等を含む。)を行っている者に関する情報
  • ◆海外で稼得した所得に係る課税を免れている者や各国の税制の違い・租税条約を利用して課税を免れている者に関する情報
  • ◆国税を滞納しているにもかかわらず、財産を隠匿している者に関する情報

自営業は脱税しているといわれるのはなぜか?

以上述べてきたように、脱税行為をすると、ほぼ確実に税務署に摘発されます。

しかし、社会的に、「自営業は脱税している」と思われがちなのはなぜなのでしょうか。

所得税

所得税は納税者が自分で税額を計算して申告する申告納税方式です。

そのため、売上や経費をごまかしているのではないかと思われることがあります。

つまり、売上を過少申告したり、事業以外に使った金額についても経費として計上しているのではないかと疑われがちだということです。

しかし、現実的には事後的にこのような脱税行為は必ず発覚するといってよいでしょう。

消費税

消費税の課税対象となる取引を行っている事業者は、個人事業主であっても消費税の納税義務者となります。

ただし、課税売上高が1,000万円以下の場合には、消費税の納税義務が免除されます

これは制度として決められていることなのですが、脱税しているかのようなイメージを持たれるのかもしれません。

世間的なイメージ

現実には、1999年以来、国税総合管理システム(KSKシステム)によって全国の国税局と税務署はネットワークで結ばれ、一元的に管理されています。

ただ、手作業だったそれ以前のイメージで語られるという側面もあるのではないでしょう。

まとめ

脱税や所得隠し、また故意ではないミスによる申告漏れについても、現実には税務署の調査によって摘発され、ペナルティーや刑罰の対象となります。

そして、自営業(個人事業主)であっても法人であっても同じです。


記事監修者の情報

税理士法人
経営サポートプラスアルファ

代表税理士 高井亮成

保有資格:税理士・行政書士

税理士の専門学校を卒業後、会計事務所に入社。
その後、税理士法人に転職をして上場企業や売上高数十億円~数百億円規模の会計税務に携わる。

現在は税理士法人の代表税理士として起業・会社設立をする方の起業相談からその後の会計、決算、確定申告のサポートを行っている。