フリーランスとして活動する方の中には、インボイス制度対策をしなければならない方も多いでしょう。
しかし、インボイス制度について良く分からないという方も多いはずです。
そこで、ここではインボイス制度の概要と、インボイス制度導入を見据えた対策を紹介します。
目次
インボイス制度の概要とは?
インボイス制度とは、一言で述べると売り手と買い手の間で詳細な請求書をやり取りすることを義務付ける制度です。
消費税の誤納付や不当利益の発生を防ぐことを目的としています。
消費税改正が行われた令和元年から、消費税率は8%のものと10%のものが混在するようになりました。
この制度改正により、8%の税率で仕入れた商品を10%で計上したり、逆に10%で仕入れた商品を8%で計上したりと、消費税にまつわる様々な不正やミスが発生するようになったのです。
この誤納付や不正を防ぐために、売り手と買い手の間でインボイス=適格請求書をやり取りすることを義務付け、適用税率や消費税額を把握できるようにしました。
具体的には、現行の請求書である「区分記載請求書」に「登録番号」「適用税率」及び「消費税額等」の記載を義務付けています。
売手側は、買手側から求められたときはインボイスを交付しなければなりませんし、交付したインボイスの写しを保存しておく必要があります。
買い手側も、原則として売手から交付を受けたインボイスを保存しなければ、仕入税額控除の適用を受けられません。
(参考元:国税庁HP)
フリーランスができるインボイス制度対策
インボイス制度の導入により問題になるのが、課税事業者と免税事業者の取引です。
課税事業者は、仕入額控除の適用を受けるためにはインボイス制度に則る必要があります。
逆に言えば、インボイスを発行できない相手と取引をすると、仕入額控除の適用を受けられないことになるのです。
つまり、課税事業者はインボイスを発行できない免税事業者と取引をすると税制面で損をする可能性が高いということになります。
このため、免税事業者はインボイス制度を見越した対策が必要になります。
フリーランスができるインボイス制度対策は、以下の6つになります。
- 適格請求書発行事業者の登録申請書を提出
- 消費税課税事業者選択届出書を提出
- クライアントとより親密な関係になる
- 自分でサービスを展開していく
- 1000万円以上の売り上げをあげる
- 雇用契約にしてもらう
適格請求書発行事業者の登録申請書を提出
適格請求書発行事業者登録のためには、申請書を提出する必要があります。
ここで税務署の審査に合格し、晴れて適格請求書発行事業者となるのです。
消費税課税事業者選択届出書を提出
免税事業者がインボイス制度に則り、課税事業者と取引を行うためには、「本来納めなくても良い消費税を納める」課税事業者になるという方法もあります。
この課税事業者になることを選択する場合、消費税課税事業者選択届出書を提出しなければなりません。
当然、消費税の納付も事業主にとって負担となることも予想されます。
(参考元:国税庁HP)
クライアントとより親密な関係になる
課税事業者であるクライアントと、免税事業者のままでも取引を続けてもらえるよう親密な関係になるのも1つの方法です。
親密な人間関係を築くだけでなく、取引を独占できるようなサービスや仕掛けを考えることも有効でしょう。
自分でサービスを展開していく
インボイス制度の打撃を受けやすいのは、発注者ではなく受託者です。
なぜなら、受託者は「選ばれる側」であり、免税事業者であれば課税事業者から「選ばれない」可能性が出てきてしまいます。
このため、自らWEBサービスなどを展開し、発注側、すなわち「選ぶ側」になるのも1つの方法と言えるでしょう。
1000万円以上の売り上げをあげる
インボイス制度で取引減の憂き目に遭う可能性が高いのは免税事業者です。
しかし、1000万円以上の売上を出せば、必然的に課税事業者になります。
課税事業者となってしまえば、「インボイス発行主体かどうか」が原因で取引を停止されることはなくなります。
雇用契約にしてもらう
「インボイス発行主体ではない」ことが原因で取引先に切られる可能性があるのは、「個人事業主」に限った話です。
個人事業主はクライアントと業務委託契約を結んでいますが、クライアント先の正社員になることで、インボイスの影響は受けなくなります。
クライアントと良好な関係を築けており、クライアントに正社員を雇う余裕があるならば、正社員登用を依頼してみるのもインボイス制度による影響回避の1つの方法と言えます。
インボイス制度は2023年からすぐに開始する?
インボイス制度が始まるのは2023年です。
しかし、インボイス制度導入によって、免税事業者・課税事業者共に負担増となることが予想されます。
このための経過措置として、インボイス制度導入後も免税事業者からの仕入れに関して、部分的ではありますが仕入税額控除ができる期間が設けられているのです。
期間 | 免税事業者からの仕入税額控除可能な割合 |
---|---|
令和5年10月1日~令和8年9月末 | 80% |
令和8年10月1日~令和11年9月末 | 50% |
偽のインボイスを発行すると刑罰がある?
インボイス制度は、多くの免税事業者にとって痛手になることが予想されます。
しかし、偽のインボイスを発行すると、刑罰の対象になることがあるので、絶対にやってはいけません。
インボイス制度がやばいと言われる理由
インボイス制度が免税事業者に大きな打撃を与える理由は下記の3点です。
- 消費税分の値引きを強要される可能性がある
- 年商1000万円未満でも課税業者にならないといけない
- 取引先が減る可能性がある
消費税分の値引きを強要される可能性がある
インボイス制度導入後、免税事業者は課税事業者から消費税分の値引きを強要される可能性があります。
その理由は、課税事業者は免税事業者と取引する場合、仕入額控除が適用されないからです。
仕入れ額控除適用のためにはインボイスの発行が必要ですが、免税事業者はインボイスの発行ができません。
このため、免税事業者との取引の場合、課税事業者は仕入れにかかる消費税を自己負担しなければならないことから、免税事業者に値引きを強要することが予想されます。
しかし、この「値引き強要」に違法性はありません。
課税事業者は今まで通りの仕入負担を求めているに過ぎないのです。
年商1000万円未満でも課税事業者にならないといけない
年商1000万円未満の個人事業主は、消費税納税を免除される、いわゆる「免税事業者」です。
しかし、インボイス制度導入に伴い、課税事業者が仕入れ額控除適用のために取引先を課税事業者に限定することも想像に難くありません。
このため、取引継続のために免税事業者も課税事業者にならざるを得ないというケースも考えられます。
取引先が減る可能性がある
免税事業者は課税事業者と取引できなくなる可能性が高まります。
インボイス制度導入後は、課税事業者は仕入れ額控除適用のために、取引先をインボイス発行が可能な課税事業者に限定することが予想されるからです。
つまり免税事業者は、消費税免除の恩恵に預かり続けるか、課税事業者との取引停止を回避するかの二択を迫られることになります。
簡易課税制度とは?
インボイス制度の導入により免税業者の消費税負担が大きくなりそうですが、簡易課税制度を適用すれば、節税できる可能性があります。
簡易課税制度とは、売上をベースに一括で消費税を計算するやり方です。
具体的な計算方法は、下記の式で計算できます。
納税額=課税売上の消費税(A)-(A)×みなし仕入率
みなし仕入率とは、事業種類別に定められた割合となります。
具体的には下記の通りです。
- 卸売業→90%
- 小売業→80%
- 製造業→70%
- その他の事業や飲食業→60%
- サービス業→50%
- 不動産業→40%
このように、簡易課税制度を適用すれば、消費税を全て負担するよりも節税になる可能性があります。
但し、事前に「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出しなくてはならないので注意が必要です。
また、簡易課税を一度選択したら、最低2年間は簡易課税で消費税を申告・納税しないといけません。
このように、簡易課税制度の適用により、インボイス導入に伴う消費税負担は軽減できる可能性もありますが、諸注意は必要になります。
(参考元:国税庁HP)
インボイスと現在の請求書の違いとは?
インボイスと現在の請求書には、どのような違いがあるのでしょうか。
まず、消費税率が一律だった時代に採用されていたのが、請求書等保存方式です。
仕入税額控除を受けるために、請求書や納品書といった第三者が発行した書類を経理書類の証拠として保存することが義務付けられていました。
税率が一律だったことから、適用税率や税額の記入は義務ではありませんでした。
しかし、軽減税率の導入された2019年10月1日からは、区分記載請求書等保存方式が適用されています。
請求書等保存方式との違いは、軽減税率に対応している点です。
具体的には、請求書などの経理に関わる書類の中に、8%と10%の税率ごとに分けた合計金額を記載する必要があるという点が挙げられます。
2023年10月から始まるインボイス制度では、「適格請求書発行事業者の名称」と「登録番号」の記載が新たに義務付けられています。
また、区分記載請求書等保存方式との大きな違いは「適格請求書の発行主体が限定される」という点です。
インボイス制度では、請求書などの適格請求書を発行できるのは、税務署に登録を済ませた適格請求書発行事業者だけになります。
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まとめ
インボイス制度導入開始前に、多くの免税事業者は工夫が必要になることでしょう。
まずはインボイス制度をしっかり理解し、自分ができる最良のやり方で取引停止の回避や納税額減に努めることが重要になります。
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